68 / 71
今日は晴れて良かった。6
しおりを挟む「俺はつまんなくて悪かったねぇ、光さん」
「 杉原先輩っ!!」
私は先輩の登場に安心しました。
「……先輩のご家族ですか?」
「まるっきり赤の他人。小雪さんの『お兄さん』のただの『愛人』」
『愛人』……。
この人も男の人ですよね。
先輩の質問の答えに男の人も否定しないので、本当にそうなのでしょう。
「光さん、この子は俺の後輩の『笹倉』くん」
先輩ニッコリ素敵に笑ってそういうと、男の人『光さん』もニッコリ笑っています。
「へぇ、この子が『笹倉 叶』くんか。なら今日は何も遊ぶ用意してないから退散するわ」
……ひょっとして、『笹倉』の名前に反応したのでしょうか?
ですがそれを聞く前にお風呂場から去ってしまいました。
その男の人『光さ』んが脱衣場からも去って行くと、先輩は内鍵をかけました。
……何故鍵をかけるのですか?
「まったく、叶って結構受難なの?」
『油断できなくて参っちゃう』と言いながらも、足袋を脱いでいます。
「杉原先輩も一緒に入るつもりなんですか?……今っ?!」
私は先程自分の気持ちに気が付いたばかりなので、困ります!!
今入ってこられたら私は逃げ場が無くなります!!
「先輩、お風呂私出ます!!」
私は慌てています!!
慌てているのは自分でも自覚しています!!
「叶の着替えはまだないから、出たら裸だよ?寒いし止めておいたほうがいいよ」
「ですが……、本当に困ります!!」
それでも先輩は着物を脱ぐ手を止めてくれません。
「なにもしないよ。一緒に入りたいだけ」
それが困ってしまうんですって……。
広い浴槽で私は杉原先輩を見ないように背を向けて小さくなりました。
ガラッっとお風呂場の扉が閉まった音がして、ヒタヒタとタイルの上を歩く音が聴こえてきて……私は更に身を固まりました。
……けれど、桶でお湯を掬ってサバァッっとかける音しかしません。 そのあとポンプを二・三回押す音がして……髪を洗う音がしました?
私は確認のために、少しだけ……本当に少しだけ先輩が何をしているか確認したら、やはり髪を洗っているだけでした。
(本当になにもされないのでしょうか?)
一昨日保健室で見た先輩の体は、本当に無駄な脂肪はなく綺麗に筋肉が付いていました。羨ましい身体つきで、少しだけ見るつもりでしたが魅とれてしまっていました。
「なぁに見てんの?」
『叶のえっちー!!』と言われると私は、顔が熱くなりました。
「見てなんかないです」
「ウソー。ここの鏡で、叶が見てたの見えてたし」
先輩側にある鏡に私は気が付いて、一瞬だけその中で目が合い私は背を向けました。
「……ごめんなさい」
「なんでぇ?ムリに入ってきたんだから、俺がゴメンね?デショ」
「……違うんです。私から色々沢山ごめんなさいがあるんです」
私はここで言うことにしました。ここなら誰にも聴かれることもない上に、『お風呂は命の洗濯』と言います。
ここが最適だと思います。
身体は裸ですから、心も裸になれる……そんなことを思ったからです。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?


真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
フィクション
犀川稔
BL
変わらない日常送る恋(れん)は高校2年の春、初めての恋愛をする。それはクラスメートであり、クラスのドー軍の存在に値する赤城(あかし)だった。クラスメイトには内緒で付き合った2人だが、だんだんと隠し通すことが難しくなる。そんな時、赤城がある決断をする......。
激重溺愛彼氏×恋愛初心者癒し彼氏

ふつつかものですが鬼上司に溺愛されてます
松本尚生
BL
「お早うございます!」
「何だ、その斬新な髪型は!」
翔太の席の向こうから鋭い声が飛んできた。係長の西川行人だ。
慌てん坊でうっかりミスの多い「俺」は、今日も時間ギリギリに職場に滑り込むと、寝グセが跳ねているのを鬼上司に厳しく叱責されてーー。新人営業をビシビシしごき倒す係長は、ひと足先に事務所を出ると、俺の部屋で飯を作って俺の帰りを待っている。鬼上司に甘々に溺愛される日々。「俺」は幸せになれるのか!?
俺―翔太と、鬼上司―ユキさんと、彼らを取り巻くクセの強い面々。斜陽企業の生き残りを賭けて駆け回る、「俺」たちの働きぶりにも注目してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる