晴れの日は嫌い。

うさぎのカメラ

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晴れた日の雨粒。5

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 ……知りませんでした、杉原先輩はこの家を継ぐことを。 
 小雪さんは私をもてなすためにと、とびきりの茶菓子を買ってきると出掛けて行ってしまいました。 
(そんなに気遣ってくれなくても大丈夫名のですが……)
 小雪さんは杉原先輩は茶室にいると言っていたので、確か『茶室』というものは離で小さな建物だと聞き、とりあえずは知識にはあったので、それらしい建物を覗きに行くことにしました。
 それに小雪さんは『着物』という言葉を口にしていました。 
 着物を着た杉原先輩も見てみたかったですし……。
 ですが……。 
(あれ……?)
 『茶室』らしい建物を見付けたのですが、入り口が見つからないんです。
 私はオロオロと建物の回りを見歩いて見ましたが……扉は見つかりませんでした。
 すると『茶室』の小さな下の方についた木の襖のような扉?が開いて 
「……叶?」
 杉原先輩が顔を出してくれました。
 雨の日の杉原先輩のような髪型で、私は少しだけ心臓が一瞬高鳴ります。 
「どした?」
 何故か着物姿の先輩が見たかったとは正直に言えなくて……。 
「『茶室』が気になってしまって……」 
「見てみたくて、うろうろ歩いてたの?」 
「どうして気付いたんですか?!」 
 私は先輩に歩み寄り、今度は魅取れてし舞いました。
(……着物姿の……杉原先輩です)
 洋服の杉原先輩も素敵なのですが、着物姿の杉原先輩は艶があるというか……どう表現していいのか分かりませんでしたが、朝見た私服杉原先輩同様に新鮮でした。 
「砂利の音が聞こえてた。小雪さんがあんなにうろうろするわけないデショ?」
 『おいで』と言われて……ようやく『茶室』の入り口がここなのだと分かりました。
 長身で体が私より大きい先輩がここから出入りしていると思ったら、とても可愛く感じました。
 私は靴を脱ぎ、『お邪魔します』と入ると、まるで別世界でした。
 純日本の箱部屋、といった感じでしょうか。
 とても素敵なお部屋でした。 
「杉原先輩、素敵ですね……」 
「着物姿の俺が?茶室が?どっち」
「どちらもです!!」
 つい私は即答してしまいました。 
「え……?」
 私はその先輩の反応に気付いて我に返れました。 
「あ……あっその、『茶室』も素敵ですけど.着物の先輩も素敵です!!」 
「なぁに、その可愛い反応は?」 
 また杉原先輩に押し倒されてしまいました。
 私は本当にひ弱な人間ですね、と自己嫌悪していると、 
「小雪さんに何を聞かれたの?」
 ……あ。
 大変です!! 
「聞かれたのではなく.私自ら話してしまいました」 
 ごめんなさい、と謝る私に杉原先輩はにっこり笑ってます。 
「先輩のいうこと聞かないイケナイ叶には、お仕置きかな?」 
「お仕置きですか……?」
 私の血の気が下がってきます………。 
「叶には『合意』のお仕置きを受けてもらうよ」
 耳元て小さく呟いてからフッと息をかけられました。 
「……あっ」
 私はくすぐったくて身をよじりました。 
「キスしていい?」
 多分『合意』ですから返事が必要なんですよね。 
「……はいぃ」 
「晴れてるから、凄いの?」
 私は恥ずかしくて声に出来ませんでしたが、頷きました。
 先輩はクスクス笑って1回だけチュッと音を立ててキスを落としました。 
「叶、可愛いね……。舌、出して」
 私は言われた通り少しだけ、舌を出すと唇で挟まれて吸われます。
 吸われるだけじゃなくて……絡め取られました。
 息継ぎが上手くいかなくて…酸欠になりそうでしたが、先輩のは上手に息を吐いています。 
(……ズルいです) 
杉原先輩には何故こんなに余裕があるんですか?
 聴きたいです、……ですが怖くて聴けません。 
「……服の中に手ぇ、入れてもいい?」 
 今まで許可もなしに服の上から触っていたのに、今日からなんて聞かないで欲しいです。
 ですが恥ずかしいですが……入れて欲しいかもしれないです。 
「……はい」 
「じゃあ、入り口作って?」 
「!!」
 意地悪です、入り口なんて……。
 私は恥ずかしいですが、裾を少しだけたくし上げました。 
「触ってって言って?」 
「……先輩、あの……恥ずかしいですっ」
 私の顔は熱くて、多分これが恥ずかしいです。
 相手が……杉原先輩だから恥ずかしいんです。
「『合意』のお仕置きでしょ」
 ……っ。 
「さっ、触ってくだ……さぃ……」
 消えさりたいです。
 ……最後の言葉はもうほとんど聞こえていなかったと思います。触るのでしたら好きに触って欲しいです。 
「……言ったよね?『合意』?」
 杉原先輩の声がとても甘く甘く聴こえます。 
「『合意』……です」
 お願いですから、これ以上聞かないでください……。
「……ごめん叶、意地悪しすぎちゃった」
 ……え? 
「お仕置き終わり!!」
 そう言うと杉原先輩は身を起こしました。 
「これじゃ『合意』じゃなくて『強制』だもんね?俺はそんなのヤだし」
 先輩は押し倒された状態のまま寝転んだ私に手を差しのべています。 
「あの、……先輩」 
「俺は叶を求めたいけど、叶からも俺を求められたいし」
「私が求めたらいつでもくれるんですか?」
「いいよ、あげるよ。叶が俺を求めてくれるなら、いつでもあげる」
 杉原先輩はとても綺麗に笑っています。
 それを見たら私は急に泣きたくなってしまいました。 
 私は分かりました。
 私は自分のこの気持ちが、杉原先輩を想うこの『特別』と思う気持ちの名前がやっと理解出来ました。
「……うっ、……っうぇっ……っ」
 私の目からまた大量の雨粒が溢れ出はじめました。
「えぇ?!叶っ……なんで泣くのっ?」
 先輩は悪くないです!!
 ……そう言いたいのに、溢れ出てくる雨粒に苛まれて言えませんでした。 
「ゴメンね!!叶、いい子大好き愛してるから泣き止んで?」
 と、先輩は乱れたままの洋服を整えてくれて、抱きしめて慰めてくれましたが……私の雨粒は小春さんがとびきりのお茶菓子を買ってきてくれても中々止まりませんでした。


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