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晴れた日の雨粒。2
しおりを挟む「叶?」
私が一人難しい顔をしていたのでしょう……気が付くと杉原先輩は顔を覗きこんでいました。
「!!」
それがあまりにも顔が近くて、私は咄嗟に身を引きました。
先輩のお母さん『小雪さん』がいるのに、本当に恥ずかしくないんですかっ……?!
「どした、叶?」
きっとこのまま私が何も言わなかったら先輩は多分『小雪さん』の前でもいつも通りに接してきてしまいます。
そう思ったので、私はどうしたらいいのか、どうにか反応しなければ!!
「俊さんの本気はこんなに『重い』想いだったのねぇ……」
……え?
『小雪さん』は溜め息と一緒に言葉を吐きました。
「えぇ?どして、だってそうデショ。俺は本気だし」
杉原先輩は当たり前デシヨ、と付け足すと『小雪さん』は、
「俊さんは本当に私の息子かしら。……少し不安になってしまいますね」
私は杉原先輩先輩と『小雪さん』のやり取りに呆然としてしまいました。何がなんだかわからないのです。
「俊さんは叶さんを真っ直ぐに観ていないですね」
その言葉は杉原先輩にも、私にも言っているようでした。
「見てるよ!!」
「観てないです、というか観れていないんですよ」
その言葉に反応してでしょうか、先輩は私を見ました。
じっと……。
じぃっと……。
(そ……そそそ……そんなに真っ直ぐに見られたら……困ります!!)
私はどう反応していいのか分からなくて、眉を寄せて身体を小さく丸めました。
「俊さん、叶さんはどうかしら?」
すると先輩は困ったようなあの笑顔で、
「うん!!可愛いね」
「……俊さん、貴方の感想じゃなくて。叶さんはどう思っていると感じたのでしょう」
「!!」
先輩の顔が真剣になりました。
……そして一言、
「叶は……困ってる」
「杉原先輩……?」
私は更に困ってしまいました。
……というか、不安になってしまいました。
先輩の気持ちが私から違う人に移ってしまうのではないか、それが怖かったんです。
「叶、ごめんね。叶の『特別』が他の誰かに移ったらヤだからって、……俺焦ってた」
「……杉原先輩?」
(では……杉原先輩から私を離す気なんですか?)
私は何都合のいいことを言葉にしようとしてるのを、喉元で止めました。
先輩の気持ちに頷いていない私が言ってはいけない気がしたので、止めました。
「ごめん……。小雪さん茶室借りていい?」
先輩は今何をしようとしているのでしょう……。
私はその思いを言葉にしていないのに、先輩は困ったように笑ってからこう言いました。
「大丈夫だよ!精神統一するだけ」
と、まるで私の心を読んだかのような言葉が帰ってきてしまって……素直に驚いてしまいました。
……ですが杉原先輩が私の言葉にしない気持ちを読んだり、私の表情を見破ってしまうことは今までに何回も合ったことだと思い出した。
「私に了解をとらなくても、俊さんですから大丈夫でしょう」
「あれ、……見抜かれてる?」
「部屋に着物も用意してありますよ……一応『母親』です。俊さんの気持ちは、ある程度でしたら分かるつもりでいますから」
「……まさか椿油まで?」
「勿論です!!」
『さあさあ、俊さんは精神統一!!』と『小雪さん』は襖を開けて杉原先輩を追い出そうとしています。
「叶、小雪さんにも気を付けてね!!」
……その念の押し方はまるで『鈴木先生』のときのようでした。
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