43 / 71
曇りの日の日常勉強。1
しおりを挟む後夜祭をサボってしまった杉原先輩と私は堂々と正門から下校なんて出来ませんでした。
後ろめたいと言ったのは私なのですが。
業務員用の出入り口から人目を忍んで学校から下校することにしました。
夜になり辺りはすっかり暗くなっていました。
私は自宅に遅くなると一本電話で連絡を入れました。
家政夫長はとても心配していてくれたらしく『今どちらのお出でですか?』と聞くので『後夜祭が長引いてしまい、こんなに遅くなってしまいました』と結局嘘をついてしまいました。
ですがそう口にしたら、安心してくれました。
更に、杉原先輩が電話を替わってくれて『自分が責任を持って自宅まで送りますので、安心してください』と付け足してくれたので、私も随分と夜道を安心して歩くことが出来そうな気持ちになりました。
杉原先輩は学校のある日の早朝は必ず私の自宅まで迎えに来て、下校も送ってくれると言ってくれました。
「先輩は何故そこまで私に気遣ってくれるんですか?」
疑問に思ったので私は聞いてみたら、杉原先輩は『綺麗』な笑顔で、
「そりゃ好きだからだよ。それ以外何かあるの?」
(……あまり『好き』と言わないでください!!
嬉しいです。
嬉しいのですが、毎回毎回言われていたら何故か聞いているこちらの心臓のが早く鳴り出して、ショック死してしまいそうで困るんです……。
「叶は本当に、後夜祭の映画が見たかったわけ?」
「……?そうですね、映画はたまにDVDを家で観るくらいなので、大きなスクリーンで映画が見たいです」
私は素直に答えたのに先輩は、
「とか言ってるけど、自宅にそういう設備くらいあるんじゃないの?お屋敷だし」
『スクリーンとかありそう』と笑ってますが、そんなものがあるわけがありません。
私は真面目に答えました。
「いえ、私の家は豪邸のような『綺麗』な家ではないんです。元々祖母の持ち家で、どちらかというと『古い洋館』みたいな家でしょうか?」
私がそう説明すると、先輩に間が出来てしまいました。
「……そうなんだ?金持ちってみんなそんなもんだと思ってた」
先輩は笑っています。
何か私は変なことを言ったのでしょうか?
「じゃあさ、明後日は一緒に映画でも観に行く?」
「えっ?!連れていってくださるのでしたら、是非行きたいです!!連れて行ってください!!」
先輩のそのお誘いが嬉しくて、私は即答していました。
純粋に映画を観に行けるのも嬉しいですが、杉原先輩と出掛けられるのも嬉しかったんです。
先輩は浮かれている私にビシッと付け加えました。
「そう。なら明後日は、叶は俺とデートだからね?」
『遊びにいくわけだけど、ただの遊びじゃないよ。勘違いしないでね?』と、付け足されました。
「デート……ですか?」
「でも、あくまで一般庶民のデートだからね!!」
「はいっ!!」
私は勢いに負けて返事をしました。
しかし次の瞬間、私はとんでもないことに気付きました。
私は友達と出掛けた経験がないので、どんな服を着ていけば良いのか分からなかったんです。
杉原先輩と映画に行くことに楽しみでしたが、私はデートの前に友達と出かけた経験もないので、本当に困っていました。
(よく考えてみたら、私はフォーマルと制服と部屋着とパジャマくらいしか持っていないです)
それに相談出来る相手もいなくて、結局杉原先輩に頼ってしまうわけなんです。
「あの、先輩。そのデートについて教えていただきたいことがあるんですけど……」
私が先輩を見上げながらそう言うと、
「うん、いいよ。じゃあ明日の朝は少し早めに叶ん家の前に迎えに行くから」
と、優しい返事を返してくれました。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる