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晴れた日のカメラのトラウマ。2
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学校に足が向かって進んで行きません。
いえ、向かっていますけれど、正確には行きたくはないのです。
まるで虐めを受けていた公立中学にいた頃のような気分でした。 いつも声をかけてくれる同級生達に、私はいつものように笑顔で返事が出来ていますか……?
(それすら分からないでいるなんて……)
「……さ倉さん?」
「おーい、叶さん」
私はやっと我にかえった時は、すでに自分は執事の衣裳を身に纏い、ヘアメイクまで済んでいました。
髪はクラスメイトの皆さんが整えてくれたのでしょう。
そのクラスメイトに声をかけてもらって気付くなんて……。
「あ、ごめんなさい。なんですか?」
文化祭に集中しないといけないのに私は何を怖じ気づいているんでしょう!!
『私は男らしくないです!』と、自分に活を入れました。
「笹倉さん、俺の妹が今日の昼にウチのクラスに来る予定だからさ、時間帯変わってほしいんだけどさっ!」
「それは、裏方に回ってくれないかということでしょうか?」
「頼むよ!!」
「いいですよ」
(不幸中の幸いです。父さんが来るときは私は裏方です!!)
逃げるのは卑怯で嫌ですが、私は少しだけ救われた気がしといました。
するといきなり、後ろから筋肉質の男らしい腕が私を捕まえました。
「かーなえっ」 見知った声に振り向くと……、
「叶の執事姿が見たくて、来ちゃった」
……杉原先輩……。
杉原先輩も、もう執事姿でした。
「叶の執事思ってたよ、ちょーいいね。ソソるじゃん」
『似合ってるよぉ』、と先輩は笑顔で言ってくれました。
私は自分の執事姿を他の人から見て良いと感想をもらったのは初めてでしたから、内心ホッとしました。
それと同時に顔が熱くなりました。
(先輩が……褒めてくれました)
「……ありがとうございます」
褒めてくれたのが本当に嬉しいので、素直に私はお礼を言いました。
すると教室中が大騒ぎです。
「ひぇーっ!!」
「杉原センパイ、カッコイイ」
こういう声が黄色い声と言うものでしょうか?
私には縁のないもので、よく分かりませんでしたが、教室に悲鳴が響き渡りました。
「先輩っ!イケメンです!!」
「男前……っ」
「あれ?叶じゃない他からに褒められた……。でも何かその褒められかた、あんまり嬉しくないかな」
先輩はあの、困ったような笑顔です。
「大体さ、その褒め言葉は何?いつもはイケメンじゃないし、男前じゃないみたいな物言いデショ」
杉原先輩は、私の後ろの廊下側の窓に肘をついています。
この…先輩は雨の日に見たことのある杉原先輩。
前髪をかき上げた先輩は……、『雨の日に見た杉原先輩』に似ていました。
「杉原先輩はイケメンなのは校内で有名じゃないスか!!」
そうなんですか?
「彼女切らしたことないって噂、あれ本当なんですかね?」
そうなんですか。
「喧嘩強いし、負けたことないって!!」
……そうなんですか。
「んー、生憎彼女は切らしてるかな?もう片想い歴一年」
そうなんですか。
「えぇーーーーーっ!?先輩でも落とせない相手なんて!!」
「杉原先輩でも片想い……?」
「それ新聞部に言ったら号外出ますよ!!」
教室中が騒ぎになってしまいましたが、杉原先輩は笑ったまま、
「うん、だからナイショにしてね」
シーと人差し指を立てています。それだけで皆黙ってしまうので、そういうところも凄いと思ってしまいます。
それが……悪い噂の正体ですか?
それがそうなのでしょうか?
まぁ、確かに喧嘩はいけないです。
ですがそれ以外は本人の自由ですし、悪くはないだろうと思うのですけど。
「叶は誉めてくれないの?俺の執事の見た目の感想とかさ」
先輩は私の反応を待っていようです。
「ほら……『惚れ直した』、とか?」
そうでした、私はまだ杉原先輩の執事姿の感想を言ませんでした。
本音を言うと雨に濡れていたあのときの髪をかき上げた先輩のほうが好きなのですが……。
「格好良いと思います」
私は笑顔を作って言ってみました。
また間が空いた後に、
「……そう?あんがとね」
杉原先輩は笑ってはいましたが、あまり嬉しそうな口調ではありませんでした。
本当に素敵ですし褒めましたが、嬉しく思ってはくれていないようです。
でもそれは一瞬のことだったので、顔を向けられていた私以外は誰も気づいてはいないのと思います。
次の言葉を言うときには、すでにいつもの杉原先輩に戻っていて、
「じゃあ、今日は俺ほとんどウチの教室にいるから偵察に来てね。これはセンパイ命令!」
気が進まないですが、何かあったら先輩の教室に行ってみましょう。
(今日は晴れていますし……)
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