あなたの遺伝子、ください

志藤みかづき

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小話

【小話】奇跡は一度だけだから

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「……まだ、あのおんなと繋がっている、の?」

 頭の整理ができていないようなトウコを退室させ、ふたりきりになった部屋で僕の腕に絡みついたキョウコがジト目で不敬な発言をする。
 血管が締めつけられるくらいの強さと、じとりと見上げてくる黒目の力強さに、僕は―――興奮が掻き立てられてたまらない。
 僕を全力で愛してくる妻が愛おしくて仕方がないな。

「うん。まあ【管理者】だからね?」

 平静を装い、キョウコの問いかけに頷く。

「元、でしょ。今は、私だけの、センリ。あの子――トウコにだってホントは、関わって、欲しくない」

 ぎゅうううと僕の腕にしがみつき、キョウコは幼子のように駄々をこねる。

「トウコが、他の男を好いてなければ、今頃、私―――」

 何かを探すように視線を彷徨わせるキョウコ。
 キョウコの手に掌を重ね、僕はダメだろとキョウコを諫める。

「いけないよ。キョウコが殺していいのは僕だけ。でもまた殺されたら今度こそ僕はおしまいだからね。あの世界の神も、さすがに二度は手を出せないよ?」

 あちらで死に、再度こちらでも死ねば。
 僕らを迎えてくれる世界はない。
 あちらの神ももう二度と運命操作ができない。
 次にキョウコの激しい嫉妬の結果、殺されれば僕にあとはない。

「センリ……ええ、わかってる…」

 渋々頷くキョウコの頭を、よしよしと撫でる。

 あちらの世界でも、【管理者】は特に神に寵愛されている。
 ということは、だ。
 元【管理者】である僕ができたんだ。
 きっとリュイも、この世界に手を伸ばし、追ってくるだろう。

 ―――トウコと、トウコの中に宿る己の遺伝子を縁に。

「リュイに言ってやろうかな。『娘はやらん』なんて」
「あげていい……」
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