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第6章「愛されなさ過ぎて、愛されるのが怖かった」
6.4 迎え
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――――あちらの世界で父の声を聞いたように。
「はッ……?」
――――こちらの世界で、リュイの声が聞こえた気がした。
「オイオイオイオイ、オイ…!」
何もかも信じられなくて。
怖々と目を開ければ、岸波聡の手がわたしの身体に触れる直前で止まっていた。
「なんだあれ……!」
聡は焦茶色の鋭い目を天井に向け、顎が外れそうなくらい大きな口を開けていた。
「う、そ…?」
聡の視線を追うように後ろに目をやり、声が漏れ出た。
洗面器ほどの黒い染みが天井にあった。
うつくしい木目の天井に、雨も降っていないのに染みがどんどん広がっていく。
わたしには見覚えがあった。リュイの声が聞こえたから、確信すらある。
リュイに責め立てられていたあの日、父と一緒にベッドの上に現れた黒い水たまりによく似ていた。
「……ッ」
期待してしまう。緊張で手が震える。
大きな唾を飲み込み、振り向いた体勢のままで黒い水から目が離せなくない。
「うわ!クソ、なんだ!雨なんて降ってねえぞ!水漏れか!?つうか変な男の声が…っ」
雨漏りの如く。やがて天井から溢れ出るように、黒い水が滴り落ちてきた。
聡は大きな身体に似合わない声を上げ、水を避ける素振りを見せる。
彼にとっての突然の怪奇現象に、顔を青くして周囲に目をやり慌てふためく。
わたしたちの立っている畳以外の全てが水浸しになる。そこで、聡は気づく。
もはや天井一面に広がった黒い染みからの水漏れが、わたしと聡の周囲にだけ降っていないことに。
「あ……?あんた……これ。あんたに関係したやつか?」
「そうだと思いますよ?神隠しされたって聞いていたんですよね。分家だからですか?岸波のお家の方って、意外と怖がりなんですね」
わたしに乱暴しようとしたときは恐ろしく思えた男の怯える姿がいっそ可愛らしくて、つい煽ってしまう。今思えば、実家が神社のせいか、家にはワケアリの物が色々持ち込まれていた。夜ひとりでトイレに行くのが怖くて、母の視線に怯えながらも、父についてきてもらったことを思い出す。そちらに比べれば、正体がわかっている黒い水なんて怖くない。
「このクソ女が……っ!」
わたしに馬鹿にされたと気づいた聡の真っ青だった顔が、瞬時に赤く変わる。
激情のままに振り上げられた拳が、わたしの頭を狙う。
「―――――」
至近距離過ぎて避けられない。
予想通り短気な人だったなとどこか他人事のように考えながら見つめ、今度は目を閉じなかった。
「――――こんな男、触っても何も愉しくないんだけどな」
ぬっと現れた人影が、わたしと聡の間に割り込む。
父と違って、透き通っていなかった。はっきりとした実体として現れ、聡の拳を難なく受け止める。
ぱしん、と音を立て衝撃が吸収される。
「誰だ、あんた」
突然の乱入者に、聡が焦茶色の目を細める。
わたしと聡の足元までもが完全に黒い水で水浸しになっている。
「ぼく?リュイだけど?」
(ああ――――…)
ローブを着たリュイの後ろ姿に守られてるような形になる。
期待を裏切らないリュイの登場に、胸に熱い何かが込み上がってくる。
わたしは嬉しいような、そうでもないような複雑な気持ち。来て欲しかったけど、来て欲しくなかった。会いたいけど、会いたくなかった。あんな別れ方をして、いつもまともに向き合ってこなかったのに。どんな言葉と顔でリュイと話せばいいのかわからなかった。
「それより、トウコ。
ぼく以外の男を煽るのはやめたほうがいい。
愛だの恋だの関係なくても、貴女が他の男と触れ合う姿を見るのはとてもイライラします」
けれど、実際に会えば自分が思っているよりあっさりとしたもので。
あちらの世界に現れた父よりも実体とはいえ、それでも薄ら透けているリュイが、聡と対峙したまま呆れたような声でわたしを窘める。
「……っ、ご、ごめんなさい。
でも、リュイにはもう関係ないと思います。
父と同じように……どういった手段でこちらの世界にきたのかわかりませんが、
わたしはあなたのいない世界でこの子と生きていきますから」
帰ってください。
とは、言えなかった。言葉を紡ぐたびに、リュイの赤い瞳が不穏な光を帯びていった。
帰れと言おうとして、より赤く瞳が煌めきかけたように見えて。
わたしは反射的に口を噤んでいた。
「関係ない……?それはないよ。
―――トウコはぼくのことがよくわかっている良い子だと思っていたけど、自己完結してすぐ逃げようとするのは悪い癖だ」
リュイがにっこりと美しい笑みを浮かべる。
「だからさ。この男をどうにかしたら、一緒にあっちに帰ろう。トウコと、ついでにその腹の子どもも」
「リュイ」
ついでと言われたのがわかるのか。
こちらの世界にきて微動だにしなかったお腹の子どもが、主張するように胎動した。
「―――なんだよ、それ。このお化け野郎。岸上透子は俺がモノにする女なんだわ。勝手なこと言ってんな?」
片手で全力の拳を受け止められた聡は、下手な女性よりも美しい中性的な容姿に白い髪に赤い瞳、さらにはローブを着た日本人離れしたリュイの出現に、しばらくは呆気に取られ、口を開けていた。
だがリュイとわたしの会話を聞いて、我に返ったらしい。凄んで見せるが、リュイより背が高いにも関わらず先の醜態のせいか小さく見える。
「貴方こそ。これ以上トウコに構うなら――容赦できないかな」
「はあ……?…あ、ア、あぁ…?」
立ちはだかるリュイの背中越しに見える、聡の焦げ茶色の目に、リュイの赤く光り輝く目が見えた。
「―――さて、どうぞ。貴方、いや、【お前は、ぼくのこと好き】だよね?ほら、【イっていい】ですよ?」
「な、ん……で、だ?で、出ちまうッ」
聡は、言葉にならない声を発しながら、足をガクガク震わせ始めた。
真っ直ぐと目を見つめたままリュイの言葉を重ねて受け取った結果、聡は前屈みになる。
足を内股にして、最後には悲鳴にも似た嬌声をあげ、腰から崩れ落ち、果てた。
聡の黒いスーツの股間部分が、リュイの黒い水ではない、別の液体で色濃くなる。
「りゅ、リュイ様って呼んでもいいっスか?」
とろんとした目で、崩れ落ちた体勢のまま顔をあげた聡が、リュイの足元に縋り付く。
「ひぇ」
傲慢な聡の姿からかけ離れた無様な様子と、180度変わったリュイへの態度に背筋が冷える。
<だれとでも親密な関係を築ける素質>って、こんな危ない<素質>だったとは知らなかった。
「―――お断りします。
ぼくら、もう帰らないと行けないんですよね。
伝言お願いできます?」
「は、ハイ!俺に出来ることなら……!」
「センリに―――ああ、トウコの父親に一言伝えてくれますか?
トウコは、聡みたいなクズにやるくらいなら、ぼくみたいなクズがもらっていきますから」
「うっす!リュイ様、あ、えと、あんた様がクズなわけないっス!俺はクズですが!」
岸波聡の人格が変わったまま戻らない。リュイに尻尾を振るだけの犬に成り下がっている。
「はい喜んで……!」
リュイからお願いされたのが嬉しいのか。
居酒屋での受け答えのような返事をして、聡はわたしの父のもとに飛んで行くように旅館から出て行った。すれ違った旅館の仲居さんの悲鳴が遠くに聞こえた。
「この世界の人間は耐性なさ過ぎだね」
唖然としながら聡が走り去るのを見つめるわたしに、リュイが完全に振り返り、見下ろす。
「トウコ。……こんなぼくのこと、怖くなった?嫌いになった?」
リュイの赤い瞳は、聡に見せていた時のように、もう輝いていない。
初めて見るリュイのしゅんとした態度に、どきんと胸が跳ねる。
「そんなこと……そんなことないです。
それにわたしの答えをいまさら聞くだなんて、リュイはいじわるですね」
リュイが好きだから、薬を盛って襲った。
どんな姿を見せられたって、この想いは変わらないつもりだ。
「――――……そうだね、そうだった」
リュイにお腹を撫でて見せれば、ふっとリュイの身体から緊張感が抜ける。
「良かった。それじゃあ一緒に戻ろう。
あっちの世界で、トウコはしっかりぼくと話し合おうね?」
「あ、でも。それ、は―い、――嫌、で―――」
「駄目だから」
好きなのは変わらないが、リュイと一緒に帰るのは違う。
天井から滴り落ちていた黒い水が、足首が浸かるほどの水たまりになっていた。
逃げようとすれば笑顔のリュイに肩に手を置かれ、そのまま足元の黒い水たまりの中に沈められた。
「はッ……?」
――――こちらの世界で、リュイの声が聞こえた気がした。
「オイオイオイオイ、オイ…!」
何もかも信じられなくて。
怖々と目を開ければ、岸波聡の手がわたしの身体に触れる直前で止まっていた。
「なんだあれ……!」
聡は焦茶色の鋭い目を天井に向け、顎が外れそうなくらい大きな口を開けていた。
「う、そ…?」
聡の視線を追うように後ろに目をやり、声が漏れ出た。
洗面器ほどの黒い染みが天井にあった。
うつくしい木目の天井に、雨も降っていないのに染みがどんどん広がっていく。
わたしには見覚えがあった。リュイの声が聞こえたから、確信すらある。
リュイに責め立てられていたあの日、父と一緒にベッドの上に現れた黒い水たまりによく似ていた。
「……ッ」
期待してしまう。緊張で手が震える。
大きな唾を飲み込み、振り向いた体勢のままで黒い水から目が離せなくない。
「うわ!クソ、なんだ!雨なんて降ってねえぞ!水漏れか!?つうか変な男の声が…っ」
雨漏りの如く。やがて天井から溢れ出るように、黒い水が滴り落ちてきた。
聡は大きな身体に似合わない声を上げ、水を避ける素振りを見せる。
彼にとっての突然の怪奇現象に、顔を青くして周囲に目をやり慌てふためく。
わたしたちの立っている畳以外の全てが水浸しになる。そこで、聡は気づく。
もはや天井一面に広がった黒い染みからの水漏れが、わたしと聡の周囲にだけ降っていないことに。
「あ……?あんた……これ。あんたに関係したやつか?」
「そうだと思いますよ?神隠しされたって聞いていたんですよね。分家だからですか?岸波のお家の方って、意外と怖がりなんですね」
わたしに乱暴しようとしたときは恐ろしく思えた男の怯える姿がいっそ可愛らしくて、つい煽ってしまう。今思えば、実家が神社のせいか、家にはワケアリの物が色々持ち込まれていた。夜ひとりでトイレに行くのが怖くて、母の視線に怯えながらも、父についてきてもらったことを思い出す。そちらに比べれば、正体がわかっている黒い水なんて怖くない。
「このクソ女が……っ!」
わたしに馬鹿にされたと気づいた聡の真っ青だった顔が、瞬時に赤く変わる。
激情のままに振り上げられた拳が、わたしの頭を狙う。
「―――――」
至近距離過ぎて避けられない。
予想通り短気な人だったなとどこか他人事のように考えながら見つめ、今度は目を閉じなかった。
「――――こんな男、触っても何も愉しくないんだけどな」
ぬっと現れた人影が、わたしと聡の間に割り込む。
父と違って、透き通っていなかった。はっきりとした実体として現れ、聡の拳を難なく受け止める。
ぱしん、と音を立て衝撃が吸収される。
「誰だ、あんた」
突然の乱入者に、聡が焦茶色の目を細める。
わたしと聡の足元までもが完全に黒い水で水浸しになっている。
「ぼく?リュイだけど?」
(ああ――――…)
ローブを着たリュイの後ろ姿に守られてるような形になる。
期待を裏切らないリュイの登場に、胸に熱い何かが込み上がってくる。
わたしは嬉しいような、そうでもないような複雑な気持ち。来て欲しかったけど、来て欲しくなかった。会いたいけど、会いたくなかった。あんな別れ方をして、いつもまともに向き合ってこなかったのに。どんな言葉と顔でリュイと話せばいいのかわからなかった。
「それより、トウコ。
ぼく以外の男を煽るのはやめたほうがいい。
愛だの恋だの関係なくても、貴女が他の男と触れ合う姿を見るのはとてもイライラします」
けれど、実際に会えば自分が思っているよりあっさりとしたもので。
あちらの世界に現れた父よりも実体とはいえ、それでも薄ら透けているリュイが、聡と対峙したまま呆れたような声でわたしを窘める。
「……っ、ご、ごめんなさい。
でも、リュイにはもう関係ないと思います。
父と同じように……どういった手段でこちらの世界にきたのかわかりませんが、
わたしはあなたのいない世界でこの子と生きていきますから」
帰ってください。
とは、言えなかった。言葉を紡ぐたびに、リュイの赤い瞳が不穏な光を帯びていった。
帰れと言おうとして、より赤く瞳が煌めきかけたように見えて。
わたしは反射的に口を噤んでいた。
「関係ない……?それはないよ。
―――トウコはぼくのことがよくわかっている良い子だと思っていたけど、自己完結してすぐ逃げようとするのは悪い癖だ」
リュイがにっこりと美しい笑みを浮かべる。
「だからさ。この男をどうにかしたら、一緒にあっちに帰ろう。トウコと、ついでにその腹の子どもも」
「リュイ」
ついでと言われたのがわかるのか。
こちらの世界にきて微動だにしなかったお腹の子どもが、主張するように胎動した。
「―――なんだよ、それ。このお化け野郎。岸上透子は俺がモノにする女なんだわ。勝手なこと言ってんな?」
片手で全力の拳を受け止められた聡は、下手な女性よりも美しい中性的な容姿に白い髪に赤い瞳、さらにはローブを着た日本人離れしたリュイの出現に、しばらくは呆気に取られ、口を開けていた。
だがリュイとわたしの会話を聞いて、我に返ったらしい。凄んで見せるが、リュイより背が高いにも関わらず先の醜態のせいか小さく見える。
「貴方こそ。これ以上トウコに構うなら――容赦できないかな」
「はあ……?…あ、ア、あぁ…?」
立ちはだかるリュイの背中越しに見える、聡の焦げ茶色の目に、リュイの赤く光り輝く目が見えた。
「―――さて、どうぞ。貴方、いや、【お前は、ぼくのこと好き】だよね?ほら、【イっていい】ですよ?」
「な、ん……で、だ?で、出ちまうッ」
聡は、言葉にならない声を発しながら、足をガクガク震わせ始めた。
真っ直ぐと目を見つめたままリュイの言葉を重ねて受け取った結果、聡は前屈みになる。
足を内股にして、最後には悲鳴にも似た嬌声をあげ、腰から崩れ落ち、果てた。
聡の黒いスーツの股間部分が、リュイの黒い水ではない、別の液体で色濃くなる。
「りゅ、リュイ様って呼んでもいいっスか?」
とろんとした目で、崩れ落ちた体勢のまま顔をあげた聡が、リュイの足元に縋り付く。
「ひぇ」
傲慢な聡の姿からかけ離れた無様な様子と、180度変わったリュイへの態度に背筋が冷える。
<だれとでも親密な関係を築ける素質>って、こんな危ない<素質>だったとは知らなかった。
「―――お断りします。
ぼくら、もう帰らないと行けないんですよね。
伝言お願いできます?」
「は、ハイ!俺に出来ることなら……!」
「センリに―――ああ、トウコの父親に一言伝えてくれますか?
トウコは、聡みたいなクズにやるくらいなら、ぼくみたいなクズがもらっていきますから」
「うっす!リュイ様、あ、えと、あんた様がクズなわけないっス!俺はクズですが!」
岸波聡の人格が変わったまま戻らない。リュイに尻尾を振るだけの犬に成り下がっている。
「はい喜んで……!」
リュイからお願いされたのが嬉しいのか。
居酒屋での受け答えのような返事をして、聡はわたしの父のもとに飛んで行くように旅館から出て行った。すれ違った旅館の仲居さんの悲鳴が遠くに聞こえた。
「この世界の人間は耐性なさ過ぎだね」
唖然としながら聡が走り去るのを見つめるわたしに、リュイが完全に振り返り、見下ろす。
「トウコ。……こんなぼくのこと、怖くなった?嫌いになった?」
リュイの赤い瞳は、聡に見せていた時のように、もう輝いていない。
初めて見るリュイのしゅんとした態度に、どきんと胸が跳ねる。
「そんなこと……そんなことないです。
それにわたしの答えをいまさら聞くだなんて、リュイはいじわるですね」
リュイが好きだから、薬を盛って襲った。
どんな姿を見せられたって、この想いは変わらないつもりだ。
「――――……そうだね、そうだった」
リュイにお腹を撫でて見せれば、ふっとリュイの身体から緊張感が抜ける。
「良かった。それじゃあ一緒に戻ろう。
あっちの世界で、トウコはしっかりぼくと話し合おうね?」
「あ、でも。それ、は―い、――嫌、で―――」
「駄目だから」
好きなのは変わらないが、リュイと一緒に帰るのは違う。
天井から滴り落ちていた黒い水が、足首が浸かるほどの水たまりになっていた。
逃げようとすれば笑顔のリュイに肩に手を置かれ、そのまま足元の黒い水たまりの中に沈められた。
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