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忌み月-皇子様は隻腕の騎士になりました-
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ここはフォーガード皇国。
国の周囲は豊かな山々と、広大な河川に囲まれている。
自然豊かで実りも多く、観光地となるようなうつくしい場所も国に散見されるが、この国の第一産業は軍事力である。
国旗を見ると、その由来の一端が垣間見える。
フォーガード皇国の国旗は、中央に一本の剣が配置された漆黒の国旗である。
秋の最初の朔の日を建国記念日と定め、その日は朔の宴が王宮で開かれ、昼はお茶会、夜は女子どもは家に帰され男だけで晩餐会が開かれる。
フォーガード皇国が朔の日を尊ぶ謂われは、初代皇帝は数いる兄弟たちをあらゆる奸計を持って陥れ、最後に最も苦戦した兄皇子を月の無い夜にたった一人で寝所まで侵入し、その首を討ち取って新たに建国したことからと言われている。
そのことにあやかってか、皇族は『月』を嫌っている。
皇族の血を引くものは、親の容姿に関係なく様々な色の髪と瞳を持って生まれてくるが、『月』を連想させる『銀色』だけは好まれていない。
現在、皇帝には三人の母親の違う息子がいる。そのうちのひとり、第三皇子 アイゼン=ルタン・フォーガードは銀髪である。その容姿だけでなく、母親の身分も皇帝が高級娼館で手をつけた娼婦ということもあって、第三皇子は皇位から最も遠いといわれていた。
母親の身分及び容姿だけを考慮すれば、少々女癖が悪いが、公爵家出身の母を持ち、黒髪黒目の第一皇子 コルシャス=ルタン・フォーガードが有力だと言われていた。第二皇子 エスト=ルタン・フォーガードも母親の身分が他国の姫と悪くは無いが、冴えない茶髪に水色の瞳であるため、『月』から最も遠い『漆黒』を連想させる第一皇子に軍配が上がっていた。
―――この世界は、フォーガード皇国でのあれこれは、生前最後に見た映画の内容と酷似していた。
そのことに10歳の誕生日を迎えた朝に突然気がつき、推しだった俳優そっくりの登場人物を間近で見れるー!と浮かれた結果、『物語』を変えてしまった。
『忌み月』
生前最後に見たこの映画のタイトル。
『物語』では皇帝が次の皇位継承者は自分は指名しない、最も相応しい者が勝ち取るべきだと、ある朔の宴で宣言したことから始まる。
国内の多くの貴族は第一皇子に与し、他国は裏から第二皇子を支援し始めた。
第三皇子はふたりの皇子よりも武に優れることから、懐柔するか、抹殺するかで、それぞれの勢力は日々天秤を傾けるように決めかねていた。
そんな不安定な状況下で、第三皇子の運命を大きく変える事件が皇帝の宣言の翌年の朔の宴で起こる。第一皇子がお茶会帰りのとある令嬢を強引に物にし、その現場を見た第三皇子の側近がこれはマズイと皇帝に告発しようとするが、第三皇子の目の前で殺されてしまう。これに激怒した第三皇子が、激情に任せ、第一皇子の片腕を切り落とし、第二皇子に味方すると宣言したことから、『物語』が大きく動き始め、三人の皇子たちを演じるイケメン俳優、さらにはその側近たちも美形揃いと相まって、20代~50代の女性に爆発的にヒットしたのだが―――。
私、リーシェ・ハインベル。
前世病弱な日本人だった私は若くして命を落とし、今生ではハインベル子爵の長女として生まれました。波打つ黄金の髪と煌めくアメジストの如き紫色の大きな瞳、透けそうなほど白く滑らかな肌に、チークいらずの淡いローズピンクの頬。手足に余分な肉はなくすらっとして、自分のことながら可愛い顔に生まれたー!とほくほくしていました。
髪の毛が寂しくも自分と同じ紫の瞳を持つダンディなお父様と一緒に、朔の日に登城しました。母は私を産むときに亡くなったため、家のメイドと一緒にお茶会から帰ろうと馬車に乗ろうとしたところで、背後から羽交い締めにされ、口元にツンと匂いのするハンカチを押しつけられて気を失ってしまいました。メイドの顔が一瞬で蒼白になり、「殿下!」と叫ぶのを聞いた瞬間、朔の日と相まって、「あ、私が第一皇子に傷物にされる、例の令嬢か」とブラックアウトする直前に思うも時既に遅し。
次に寒さで目が醒めると、よりにもよってお茶会を行っていた庭園の四阿で第一皇子にドレスを剥かれ、本番直前でした。幸か不幸か、恐怖のあまり声がでないという状況に陥ることのなかった私は、力一杯叫びました。子どもの甲高い声ですから、やる気満々だった第一皇子はご立派な一物から手を離し、耳を塞いでその整った顔を顰め。その隙をついて第一皇子の下から抜け出した私のもとに、影が落ちました。
「コルシャス兄上!」
よく響く声が、焦ったように名前を呼ぶ。
声の主を見ようと顔を上げれば、走ってきたのか僅かに汗をかいた、冷たい月を思わせる銀色の髪を後ろでひとつに結び右の分け目で前髪を流した、凜とした柘榴色の眼差しが印象的な第三皇子 アイゼン様と目が合いました。私の惨状に気がつくと、すぐにはっとした彼は、険しい顔で第一皇子を見つめながら、自分のひらひらとした上着をかけてくれました。そして私を追いかけてきた第一皇子が、第三皇子の登場という事態の不味さに、へらへら笑って取り繕います。ハインベル家は子爵ですから、私の貞操程度なら、公爵家をバックに持つ第一皇子なら赤子の手をひねるようにもみ消せたのでしょう。ですが、皇位を巡る弟に見つかったのなら話は別です。それが『月』を連想させる『銀色』を持つ忌み嫌われる皇子だったとしても、です。
「これは、どういうことですか、兄上。
兄上が好色なのは知っていましたが、ハインベル家の……こんな幼い令嬢に手を伸ばすなど……」
驚きました。
さすが、『銀色』でなかったら、と惜しまれる第三皇子 アイゼン様ですね。
たいした特産もなく、お金もない、政治力もない我がハインベル家のこともご存じとは。
アイゼン様の指摘に、第一皇子 コルシャスはへらへらした笑みを引っ込めます。
夜も深い闇を思わせる漆黒の瞳を細め、アイゼン様に言葉を返します。
「それがどうした?この娘も我のお手付きとなれば、その栄誉に泣いて喜ぶと思うが?
最初は痛みに泣き、最後は悦びに啼くとしても、な」
なくで言葉遊びをする皇子の品性を疑います。
それはアイゼン様も同じようで、兄のコンシャスの言葉に、盛大に顔を顰めます。
「貴女は、こちらに。大丈夫、悪いようにはしません。
……兄上。このことは父に報告させていただきます。
俺は兄上のような幼い令嬢にも手を出すような人に、皇帝にはなって欲しくない」
そう吐き捨てるようにコンシャスに言い放ち、砂糖菓子でも持つような優しい手つきで、地面に転がっていた私を抱き上げます。
映画の『物語』と違って、私は傷物にならず、第三皇子の側近ではなく、第三皇子本人が助けにきてくれました。良い香りのする優しいアイゼン様に、私はこくりと頷いて、ほっと安心してその腕の中に身を委ねました。
さくさくと庭園の芝生の上を、アイゼン様は私を抱いたまま歩み出します。
後ろで、コルシャスが取り乱し、必死でアイゼン様に思い止まるように言っています。
私の実家にも褒美を与えるだとか辻褄の合わないことを叫びますが、アイゼン様は歩みを止めません。
それどころか重い溜め息を吐き、振り向きもせずに、王宮へと一直線に向かいます。
そこで、ふと気づきました。
『物語』は変わりました。でもひとつだけ、まだ変わってない部分があります。
映画では告発しようとした側近がコルシャスの手によって殺されてしまうのです。
「アイゼン様!後ろ!コルシャス皇子に気をつけ―――」
「うん?」
「―――ハッ、遅いわぁっ!!」
「っあぁ!!」
「ぐぅっ……!!」
凶行は、一瞬でした。
背後から隙をついて、コルシャスがその腰に下げていた剣で襲いかかります。
私の忠告にアイゼン様が間一髪でコルシャスの凶刃に気づき、躱すも、私を庇うためにぶちぶちぶちと嫌な音を立ててざっくりその右腕が切り落とされてしまいました。蛇口の壊れた水道のように血が勢いよく噴き出し、止めどなく溢れ、碧く生い茂る芝生を真っ赤に染めます。
「アイゼン様!いや、だれか!だれかー!」
「ハッ……ハハッ、ハハハハハ!この我の邪魔をしようとするからだ、アイゼン!
この忌まわしい――弟と呼ぶのも憎らしい!
そこの娘ごと、我の剣で殺してやる!こうなってしまえば、俺ももう終わりだ。お前も道連れにしてやる!」
コルシャスは正気を失い、正常な判断が出来ないのでしょう。
アイゼン様が私を襲ったことについて皇帝に告げ口するよりも、より重大で大きな罪を犯しました。
策略、陰謀、あるいは正式な宣言を行って戦争を起こし、肉親を手にかけることは暗黙の了解で認められています。
しかし今のこの状況のように、陽も落ちきらず、何の準備も無いまま激情に任せて肉親に手をかけることは許されません。
アイゼン様は私を片腕で抱き留めたまま、その場に崩れ落ちます。
私だけでも逃がそうと、迫り来るコルシャスから逃げろと、耳元で掠れた声で何度も口にされます。
もはやうわごとに近いそれに、私は必死に首を振り、だれかだれかと助けを求めて。
―――本来私と第一皇子の現場を目撃するはずだった第三皇子の側近が騒ぎを聞きつけて駆けつけ、腰に携えた剣の鞘でコルシャスを気絶させました。そしてアイゼン様の惨状を見るやいなや急いで王宮医師を呼び、意識を失ってもなお私を離さないアイゼン様ごとその場から運ばれました。
映画の『物語』通り、第一皇子 コルシャスに私が襲われなかった結果。
第三皇子のアイゼン様が右腕を失いました。
コルシャスは言い逃れできない一連の行動に廃嫡となり、『銀色』だけでなく片腕を失い不具となったアイゼン様も皇位には相応しくないと皇帝が判断し廃嫡。
映画のように三人で皇位を争うこともなく、自動的に第二皇子のエスト様が次期皇帝に決定したのでした。体面を気にする皇帝の判断により、コルシャスは生涯幽閉。罪はないけれど見苦しさからアイゼン様も幽閉する声がありましたが、私の父がアイゼン様に恩を感じた結果、引き取りたいと申し入れて。私も後からコルシャスに襲われた恐怖がやってきたようで、父とアイゼン様以外の男性に近づかれるのが怖くなってしまいました。皇帝と対峙する恐怖、緊張、畏怖に震えながらも、アイゼン様を引き取り、ハインベル家を継いで貰いたいという父の言葉の後押しをしました。
「構わぬが……。ハインベルの娘よ。代わりに、そなたがハインベルの爵位を継承することを生涯認めぬとしてもか?」
玉座で足を組み、肘をついた黒髪にワインレッドの目をした美丈夫が、背筋を撫でるような低く甘い声で私に問いかけます。
皇帝の言葉に、父が私を心配そうに見る気配がしました。
それでも私は、父のほうを見ることなく、皇帝だけを真っ直ぐ見て是と答えました。
「爵位よりも大事な命をアイゼン様は守っていただきました。それも片腕と引き換えに。
ハインベルの爵位程度は到底釣り合わないほど。
……我が家の爵位で、アイゼン様が陽の当たる場所に居場所を作れるというのなら、安いものです」
「ふむ……。幼いくせに、利発、いや小賢しいというべき可愛さか?なあ、ハインベル子爵」
「はっ、恐れ入りますっ」
皇帝はつまらなさそうな声音で、父に水を向けます。
父の頭がますます低く下がります。私も不敬に気づき、慌てて頭を下げました。
「ふん、娘よ、よい、顔を上げろ。そなたに免じて、私の息子をくれてやろう。
爵位でもなんでもくれてやるがよい。今この時をもって、あやつは私の息子ではなくなった。
ハインベル子爵、そなたの息子ということでよいな?」
「も、もちろんでございます!」
「……っ、ありがとうございます」
「感謝されてもな。こちらは息子たちの争いが見れると思ったのに、興ざめよ」
こうして、アイゼン様が医務室で治療に専念している間に、皇帝からアイゼン様の身柄をハインベル家で引き受けることが決まり。
アイゼン様を兄とし、ハインベルの爵位も譲るつもりで、屋敷に呼んだはずなのに。
片腕となったアイゼン様は、王宮からの場所から我が家に降り立った瞬間、出迎えた私と父の前で片膝をつき、その背に背負っていた皇家に代々伝わる夜明け前の青を思わせる鞘に入った大剣を手にとり、地面に突き立てました。
「父……いえ、皇帝陛下から話は聞いた。俺は貴方たち親子にハインベル家爵位を継ぐべく養子として迎え入れられたと」
アイゼン様の言葉に間違いはありません。
私は父と顔を見合わせ、頷きます。
アイゼン様が首を振ります。
「必要ない。欲しくない。
俺は、腕を失うことになり、出血と傷口の化膿で高熱を出し三日三晩生死を彷徨った」
淡々としたアイゼン様の言葉に、私は罪悪感で胸が押しつぶされそうになります。
私が声を上げたばかりに、『物語』が変わり、アイゼン様は腕を失い、生死を彷徨ったのですから。
父が、励ますようにぽんと私の両肩に手を置きます。
「俺は―――ーいや、俺も、兄のことは言えない立場だと気がついた」
「ど、どういうことでしょうか?アイゼン殿下」
コルシャスと同じ?話が見えません。
それは父も同じようで、アイゼン様に問いかけました。
「この腕に抱いていた貴女の感触が離れなかったのです、リーシェ様。
それどころか生死の淵で、何度も貴女を夢に見た。
夢の貴女は見るも無惨な姿で、血だまりの中で頼りなく笑い、最期に儚くなる。
夢を見るたびに、貴女への想いが深まりました。俺は―――この命に換えても――貴女を守らなければならないと、大いなる意思によって気づかされたのです、リーシェ様」
雲行きが怪しくなってきましたね。
アイゼン様の柘榴色の瞳に奇妙な熱が灯ります。
私と目が合うと、硬質な美貌といった感じのアイゼン様の頬に、朱が差します。
「俺は皇子ではない。ならば貴女を守る自由な騎士になりたい。
皇帝との約束により貴女が爵位を得られぬとならば、俺が貴女の伴侶となればいい。
俺は、俺以外の全てから貴女を守る騎士になると誓う」
アイゼン様は片腕で大剣の柄を掴み、地面から抜き取り、私の目の前に掲げました。
それは片腕を失ったアイゼン様による騎士の誓いでした。
アイゼン様の言葉に父はふっと笑って後ろに倒れ、そばに控えていた使用人たちが騒ぎ出します。私も父と同じように気を失いたい。けれどアイゼン様の魂を縫い付けんとばかりの鋭い眼差しから逃れることはできず、それこそアイゼン様から出る無言の圧に屈するようにふらふらと掲げられた大剣を受け取り、重さにぷるぷる震えながらも左肩を剣の平で叩きました。
「ありがとう。俺は、俺以外の全てから貴女を守ろう、リーシェ」
うっとりと蕩けるような笑みを浮かべ、アイゼン様に微笑みかけられて、私は固い笑みを浮かべることしかできませんでした。
騎士はまあいいです。伴侶って。アイゼン様は私の記憶が確かなら、今年で20歳。私とは10歳差ですね。アイゼン様以外のすべてから守るという誓いを喜ぶべきか悲しむべきなのか、10歳になってしまった私の脳みそでは判断つかないのでした。
そうして忌むべき月の皇子だったアイゼン様は、私というイレギュラーな存在によって、常照の月の騎士として常に私のそばに侍るようになったのです。
コルシャスに襲われて他の男性が怖くなったということを差し置いても、アイゼン様は父以外の男性をほとんど近づけさせませんでした。それどころか、女性も。身の回りのことは、片腕ながらも器用にアイゼン様によってすべてなされ、ハンデを全く感じさせずに大剣を振るい何故か襲ってくる刺客をなぎ倒され。
アイゼン様が私の騎士になって、3年が経ちました。
あと2年すれば、15歳となり、この国での成人を迎えます。
「もうすぐだな、あと2年。成人したらすぐ婚姻しよう。それに、もうリーシェは俺の妻も同然だろう?
貴女は俺の責任を取りたいんですよね……?」
夜。
アイゼン様と一緒にされた私室のベッドの上で、そう言ってわざと覚束ない手つきで騎士服の前を寛げられれば何も言えません。
熱っぽく熟れた柘榴色の瞳を潤ませられ、皇帝よりもなお腰にクルような甘い声で懇願されれば、男性経験のない令嬢たる私に拒否することはできません。
「ふぅ~~~んんぅぅっ、ッ、や、やだッ、あいぜんさま、も、やめて……ひぅっん!」
アイゼン様の堅苦しい騎士服を脱ぐのを手伝い、ハインベルの屋敷に引き取ってから夜ごと教えられた通りの手順で、互いに昂め合っていきました。
左腕で優しくベッドの上に押し倒され、いつもそうするように何一つ身につけていない下半身――無毛のそこを嬲るように舐められ、吸われ、堪えきれない気持ちよさに視界が何度も明滅する。何度も刺激され、奥から奥から愛液がどんどん溢れ出していくのがわかりました。アイゼン様はちょうど喉が渇いていたんだなどとうそぶいて、薄い唇で覆うように吸いつき、じゅるじゅるとわざと大きく音を立てて吸われます。私が羞恥で泣けば、獰猛に、そして意地悪く微笑んで、もっと酷くするのです。
何度も何度も秘所を舌と手で愛撫され、前後不覚になった頃。陸に打ち上げられた魚のようにぴくぴく痙攣し、うわごとしか言えなくなると、ようやくアイゼン様は体格に見合った立派な肉棒を私に宛がうのです。
「いいのか?リーシェ。ほうら、拒否しないと、またこのまま入ってしまうよ…?」
どくどくと血管がほとばしるグロテスクといっても差し支えないソレ。
アイゼン様はくすくす笑いながら、抵抗できない私の秘所に、避妊具を一切身につけず押し込むように差し入れます。最初は私の規格に見合わなかったそれも、アイゼン様に何度も可愛がられ、広げられ、馴らされれば飲み込むのは容易くなります。
私はまだ未成年ですー!と最初に抵抗してから、アイゼン様は男性専用の皇族用の避妊薬を飲んでくれているようなのですが、それでもわざと意地悪く挿入のときはそう言って私を煽るのです。
「あ、あ、あああぁ……」
問いかけに意味はありません。
アイゼン様は集中しているのか無表情になって、ぐうっと割れ目を押し広げるようにして奥の奥まで太いソレをはめ込みました。
そうしてその大きな体で私の小さな体を覆い尽くすように被さると、そのままナカに入れたままじっと動きません。こうすると、アイゼン様の肉棒と私のナカが馴染んで、とっても良くなるのだと教えてもらいました。
「良い子だな、リーシェは。動くぞ」
アイゼン様の潰されそうなほどの暑苦しさを感じながらも、私は押し入れられた圧迫感と気持ちよさに、ふぅーふぅーと息を整えることしかできません。教えられた通りに、アイゼン様の厚い背中に腕を回し、抱きつきます。
「あ、あ、あん、あ、あ、きもちいい、きもちいです、あ、そこ、きもちぃー……」
アイゼン様の灼熱の切っ先が、私のナカの良いところを擦るたびに体が跳ね、甲高い声を上げてしまいます。奥を嬲るようにぐりぐりと押し当てられれば、魂が抜けてしまいそうな心地よい声をだして甘えてしまいます。
アイゼン様の腰の動きに合わせていやらしい音色を奏でれば、よく出来ましたと言わんばかりにより深く繋がる形で唇を塞がれます。大きな舌がゆっくり、ゆっくりと触れ合い、絡め取られます。背中の神経を快楽がゆーっくり駆け上がり、鼻から抜けるような声がでます。
「は、ぁ、ア、きもちい、あ、あ、すき、あいぜんさま、だいすき、あ、あっ」
「リーシェ……!……っ、イきそうだ、一緒にイこう」
「あ、あ、あ、あ、……ぁああんっ!!」
「――――ッッ」
興奮が最高潮になり、アイゼン様によりいっそう奥を激しく突かれ、強く締めつけてしまいます。
その締めつけに応じるように火傷しそうなほどの熱棒からどろっとした液体が吐き出され、奥に叩きつけられます。アイゼン様との行為に慣れない頃、愛撫でイくのと同時にアイゼン様の精液と接触させられたせいで、私の身体はすっかり条件付けられました。アイゼン様の射精と同時に、私はよりいっそう深く絶頂を迎えます。頭が完全に真っ白になる恐怖に、ぎゅううっとアイゼン様の背中に回した腕を強くして。
そのまま、ひどい倦怠感に襲われ、私は眠気に抗うことができませんでした。
いつもそう。
だから、気づかないのです。
もう永遠に。
「―――ああ、これで『運命』を変えられました。リーシェは俺のこの醜い腕の中で、永遠にまもることができる」
抱き潰されて寝落ちしてしまう私に、そうアイゼン様が病んだように囁いていることに。
国の周囲は豊かな山々と、広大な河川に囲まれている。
自然豊かで実りも多く、観光地となるようなうつくしい場所も国に散見されるが、この国の第一産業は軍事力である。
国旗を見ると、その由来の一端が垣間見える。
フォーガード皇国の国旗は、中央に一本の剣が配置された漆黒の国旗である。
秋の最初の朔の日を建国記念日と定め、その日は朔の宴が王宮で開かれ、昼はお茶会、夜は女子どもは家に帰され男だけで晩餐会が開かれる。
フォーガード皇国が朔の日を尊ぶ謂われは、初代皇帝は数いる兄弟たちをあらゆる奸計を持って陥れ、最後に最も苦戦した兄皇子を月の無い夜にたった一人で寝所まで侵入し、その首を討ち取って新たに建国したことからと言われている。
そのことにあやかってか、皇族は『月』を嫌っている。
皇族の血を引くものは、親の容姿に関係なく様々な色の髪と瞳を持って生まれてくるが、『月』を連想させる『銀色』だけは好まれていない。
現在、皇帝には三人の母親の違う息子がいる。そのうちのひとり、第三皇子 アイゼン=ルタン・フォーガードは銀髪である。その容姿だけでなく、母親の身分も皇帝が高級娼館で手をつけた娼婦ということもあって、第三皇子は皇位から最も遠いといわれていた。
母親の身分及び容姿だけを考慮すれば、少々女癖が悪いが、公爵家出身の母を持ち、黒髪黒目の第一皇子 コルシャス=ルタン・フォーガードが有力だと言われていた。第二皇子 エスト=ルタン・フォーガードも母親の身分が他国の姫と悪くは無いが、冴えない茶髪に水色の瞳であるため、『月』から最も遠い『漆黒』を連想させる第一皇子に軍配が上がっていた。
―――この世界は、フォーガード皇国でのあれこれは、生前最後に見た映画の内容と酷似していた。
そのことに10歳の誕生日を迎えた朝に突然気がつき、推しだった俳優そっくりの登場人物を間近で見れるー!と浮かれた結果、『物語』を変えてしまった。
『忌み月』
生前最後に見たこの映画のタイトル。
『物語』では皇帝が次の皇位継承者は自分は指名しない、最も相応しい者が勝ち取るべきだと、ある朔の宴で宣言したことから始まる。
国内の多くの貴族は第一皇子に与し、他国は裏から第二皇子を支援し始めた。
第三皇子はふたりの皇子よりも武に優れることから、懐柔するか、抹殺するかで、それぞれの勢力は日々天秤を傾けるように決めかねていた。
そんな不安定な状況下で、第三皇子の運命を大きく変える事件が皇帝の宣言の翌年の朔の宴で起こる。第一皇子がお茶会帰りのとある令嬢を強引に物にし、その現場を見た第三皇子の側近がこれはマズイと皇帝に告発しようとするが、第三皇子の目の前で殺されてしまう。これに激怒した第三皇子が、激情に任せ、第一皇子の片腕を切り落とし、第二皇子に味方すると宣言したことから、『物語』が大きく動き始め、三人の皇子たちを演じるイケメン俳優、さらにはその側近たちも美形揃いと相まって、20代~50代の女性に爆発的にヒットしたのだが―――。
私、リーシェ・ハインベル。
前世病弱な日本人だった私は若くして命を落とし、今生ではハインベル子爵の長女として生まれました。波打つ黄金の髪と煌めくアメジストの如き紫色の大きな瞳、透けそうなほど白く滑らかな肌に、チークいらずの淡いローズピンクの頬。手足に余分な肉はなくすらっとして、自分のことながら可愛い顔に生まれたー!とほくほくしていました。
髪の毛が寂しくも自分と同じ紫の瞳を持つダンディなお父様と一緒に、朔の日に登城しました。母は私を産むときに亡くなったため、家のメイドと一緒にお茶会から帰ろうと馬車に乗ろうとしたところで、背後から羽交い締めにされ、口元にツンと匂いのするハンカチを押しつけられて気を失ってしまいました。メイドの顔が一瞬で蒼白になり、「殿下!」と叫ぶのを聞いた瞬間、朔の日と相まって、「あ、私が第一皇子に傷物にされる、例の令嬢か」とブラックアウトする直前に思うも時既に遅し。
次に寒さで目が醒めると、よりにもよってお茶会を行っていた庭園の四阿で第一皇子にドレスを剥かれ、本番直前でした。幸か不幸か、恐怖のあまり声がでないという状況に陥ることのなかった私は、力一杯叫びました。子どもの甲高い声ですから、やる気満々だった第一皇子はご立派な一物から手を離し、耳を塞いでその整った顔を顰め。その隙をついて第一皇子の下から抜け出した私のもとに、影が落ちました。
「コルシャス兄上!」
よく響く声が、焦ったように名前を呼ぶ。
声の主を見ようと顔を上げれば、走ってきたのか僅かに汗をかいた、冷たい月を思わせる銀色の髪を後ろでひとつに結び右の分け目で前髪を流した、凜とした柘榴色の眼差しが印象的な第三皇子 アイゼン様と目が合いました。私の惨状に気がつくと、すぐにはっとした彼は、険しい顔で第一皇子を見つめながら、自分のひらひらとした上着をかけてくれました。そして私を追いかけてきた第一皇子が、第三皇子の登場という事態の不味さに、へらへら笑って取り繕います。ハインベル家は子爵ですから、私の貞操程度なら、公爵家をバックに持つ第一皇子なら赤子の手をひねるようにもみ消せたのでしょう。ですが、皇位を巡る弟に見つかったのなら話は別です。それが『月』を連想させる『銀色』を持つ忌み嫌われる皇子だったとしても、です。
「これは、どういうことですか、兄上。
兄上が好色なのは知っていましたが、ハインベル家の……こんな幼い令嬢に手を伸ばすなど……」
驚きました。
さすが、『銀色』でなかったら、と惜しまれる第三皇子 アイゼン様ですね。
たいした特産もなく、お金もない、政治力もない我がハインベル家のこともご存じとは。
アイゼン様の指摘に、第一皇子 コルシャスはへらへらした笑みを引っ込めます。
夜も深い闇を思わせる漆黒の瞳を細め、アイゼン様に言葉を返します。
「それがどうした?この娘も我のお手付きとなれば、その栄誉に泣いて喜ぶと思うが?
最初は痛みに泣き、最後は悦びに啼くとしても、な」
なくで言葉遊びをする皇子の品性を疑います。
それはアイゼン様も同じようで、兄のコンシャスの言葉に、盛大に顔を顰めます。
「貴女は、こちらに。大丈夫、悪いようにはしません。
……兄上。このことは父に報告させていただきます。
俺は兄上のような幼い令嬢にも手を出すような人に、皇帝にはなって欲しくない」
そう吐き捨てるようにコンシャスに言い放ち、砂糖菓子でも持つような優しい手つきで、地面に転がっていた私を抱き上げます。
映画の『物語』と違って、私は傷物にならず、第三皇子の側近ではなく、第三皇子本人が助けにきてくれました。良い香りのする優しいアイゼン様に、私はこくりと頷いて、ほっと安心してその腕の中に身を委ねました。
さくさくと庭園の芝生の上を、アイゼン様は私を抱いたまま歩み出します。
後ろで、コルシャスが取り乱し、必死でアイゼン様に思い止まるように言っています。
私の実家にも褒美を与えるだとか辻褄の合わないことを叫びますが、アイゼン様は歩みを止めません。
それどころか重い溜め息を吐き、振り向きもせずに、王宮へと一直線に向かいます。
そこで、ふと気づきました。
『物語』は変わりました。でもひとつだけ、まだ変わってない部分があります。
映画では告発しようとした側近がコルシャスの手によって殺されてしまうのです。
「アイゼン様!後ろ!コルシャス皇子に気をつけ―――」
「うん?」
「―――ハッ、遅いわぁっ!!」
「っあぁ!!」
「ぐぅっ……!!」
凶行は、一瞬でした。
背後から隙をついて、コルシャスがその腰に下げていた剣で襲いかかります。
私の忠告にアイゼン様が間一髪でコルシャスの凶刃に気づき、躱すも、私を庇うためにぶちぶちぶちと嫌な音を立ててざっくりその右腕が切り落とされてしまいました。蛇口の壊れた水道のように血が勢いよく噴き出し、止めどなく溢れ、碧く生い茂る芝生を真っ赤に染めます。
「アイゼン様!いや、だれか!だれかー!」
「ハッ……ハハッ、ハハハハハ!この我の邪魔をしようとするからだ、アイゼン!
この忌まわしい――弟と呼ぶのも憎らしい!
そこの娘ごと、我の剣で殺してやる!こうなってしまえば、俺ももう終わりだ。お前も道連れにしてやる!」
コルシャスは正気を失い、正常な判断が出来ないのでしょう。
アイゼン様が私を襲ったことについて皇帝に告げ口するよりも、より重大で大きな罪を犯しました。
策略、陰謀、あるいは正式な宣言を行って戦争を起こし、肉親を手にかけることは暗黙の了解で認められています。
しかし今のこの状況のように、陽も落ちきらず、何の準備も無いまま激情に任せて肉親に手をかけることは許されません。
アイゼン様は私を片腕で抱き留めたまま、その場に崩れ落ちます。
私だけでも逃がそうと、迫り来るコルシャスから逃げろと、耳元で掠れた声で何度も口にされます。
もはやうわごとに近いそれに、私は必死に首を振り、だれかだれかと助けを求めて。
―――本来私と第一皇子の現場を目撃するはずだった第三皇子の側近が騒ぎを聞きつけて駆けつけ、腰に携えた剣の鞘でコルシャスを気絶させました。そしてアイゼン様の惨状を見るやいなや急いで王宮医師を呼び、意識を失ってもなお私を離さないアイゼン様ごとその場から運ばれました。
映画の『物語』通り、第一皇子 コルシャスに私が襲われなかった結果。
第三皇子のアイゼン様が右腕を失いました。
コルシャスは言い逃れできない一連の行動に廃嫡となり、『銀色』だけでなく片腕を失い不具となったアイゼン様も皇位には相応しくないと皇帝が判断し廃嫡。
映画のように三人で皇位を争うこともなく、自動的に第二皇子のエスト様が次期皇帝に決定したのでした。体面を気にする皇帝の判断により、コルシャスは生涯幽閉。罪はないけれど見苦しさからアイゼン様も幽閉する声がありましたが、私の父がアイゼン様に恩を感じた結果、引き取りたいと申し入れて。私も後からコルシャスに襲われた恐怖がやってきたようで、父とアイゼン様以外の男性に近づかれるのが怖くなってしまいました。皇帝と対峙する恐怖、緊張、畏怖に震えながらも、アイゼン様を引き取り、ハインベル家を継いで貰いたいという父の言葉の後押しをしました。
「構わぬが……。ハインベルの娘よ。代わりに、そなたがハインベルの爵位を継承することを生涯認めぬとしてもか?」
玉座で足を組み、肘をついた黒髪にワインレッドの目をした美丈夫が、背筋を撫でるような低く甘い声で私に問いかけます。
皇帝の言葉に、父が私を心配そうに見る気配がしました。
それでも私は、父のほうを見ることなく、皇帝だけを真っ直ぐ見て是と答えました。
「爵位よりも大事な命をアイゼン様は守っていただきました。それも片腕と引き換えに。
ハインベルの爵位程度は到底釣り合わないほど。
……我が家の爵位で、アイゼン様が陽の当たる場所に居場所を作れるというのなら、安いものです」
「ふむ……。幼いくせに、利発、いや小賢しいというべき可愛さか?なあ、ハインベル子爵」
「はっ、恐れ入りますっ」
皇帝はつまらなさそうな声音で、父に水を向けます。
父の頭がますます低く下がります。私も不敬に気づき、慌てて頭を下げました。
「ふん、娘よ、よい、顔を上げろ。そなたに免じて、私の息子をくれてやろう。
爵位でもなんでもくれてやるがよい。今この時をもって、あやつは私の息子ではなくなった。
ハインベル子爵、そなたの息子ということでよいな?」
「も、もちろんでございます!」
「……っ、ありがとうございます」
「感謝されてもな。こちらは息子たちの争いが見れると思ったのに、興ざめよ」
こうして、アイゼン様が医務室で治療に専念している間に、皇帝からアイゼン様の身柄をハインベル家で引き受けることが決まり。
アイゼン様を兄とし、ハインベルの爵位も譲るつもりで、屋敷に呼んだはずなのに。
片腕となったアイゼン様は、王宮からの場所から我が家に降り立った瞬間、出迎えた私と父の前で片膝をつき、その背に背負っていた皇家に代々伝わる夜明け前の青を思わせる鞘に入った大剣を手にとり、地面に突き立てました。
「父……いえ、皇帝陛下から話は聞いた。俺は貴方たち親子にハインベル家爵位を継ぐべく養子として迎え入れられたと」
アイゼン様の言葉に間違いはありません。
私は父と顔を見合わせ、頷きます。
アイゼン様が首を振ります。
「必要ない。欲しくない。
俺は、腕を失うことになり、出血と傷口の化膿で高熱を出し三日三晩生死を彷徨った」
淡々としたアイゼン様の言葉に、私は罪悪感で胸が押しつぶされそうになります。
私が声を上げたばかりに、『物語』が変わり、アイゼン様は腕を失い、生死を彷徨ったのですから。
父が、励ますようにぽんと私の両肩に手を置きます。
「俺は―――ーいや、俺も、兄のことは言えない立場だと気がついた」
「ど、どういうことでしょうか?アイゼン殿下」
コルシャスと同じ?話が見えません。
それは父も同じようで、アイゼン様に問いかけました。
「この腕に抱いていた貴女の感触が離れなかったのです、リーシェ様。
それどころか生死の淵で、何度も貴女を夢に見た。
夢の貴女は見るも無惨な姿で、血だまりの中で頼りなく笑い、最期に儚くなる。
夢を見るたびに、貴女への想いが深まりました。俺は―――この命に換えても――貴女を守らなければならないと、大いなる意思によって気づかされたのです、リーシェ様」
雲行きが怪しくなってきましたね。
アイゼン様の柘榴色の瞳に奇妙な熱が灯ります。
私と目が合うと、硬質な美貌といった感じのアイゼン様の頬に、朱が差します。
「俺は皇子ではない。ならば貴女を守る自由な騎士になりたい。
皇帝との約束により貴女が爵位を得られぬとならば、俺が貴女の伴侶となればいい。
俺は、俺以外の全てから貴女を守る騎士になると誓う」
アイゼン様は片腕で大剣の柄を掴み、地面から抜き取り、私の目の前に掲げました。
それは片腕を失ったアイゼン様による騎士の誓いでした。
アイゼン様の言葉に父はふっと笑って後ろに倒れ、そばに控えていた使用人たちが騒ぎ出します。私も父と同じように気を失いたい。けれどアイゼン様の魂を縫い付けんとばかりの鋭い眼差しから逃れることはできず、それこそアイゼン様から出る無言の圧に屈するようにふらふらと掲げられた大剣を受け取り、重さにぷるぷる震えながらも左肩を剣の平で叩きました。
「ありがとう。俺は、俺以外の全てから貴女を守ろう、リーシェ」
うっとりと蕩けるような笑みを浮かべ、アイゼン様に微笑みかけられて、私は固い笑みを浮かべることしかできませんでした。
騎士はまあいいです。伴侶って。アイゼン様は私の記憶が確かなら、今年で20歳。私とは10歳差ですね。アイゼン様以外のすべてから守るという誓いを喜ぶべきか悲しむべきなのか、10歳になってしまった私の脳みそでは判断つかないのでした。
そうして忌むべき月の皇子だったアイゼン様は、私というイレギュラーな存在によって、常照の月の騎士として常に私のそばに侍るようになったのです。
コルシャスに襲われて他の男性が怖くなったということを差し置いても、アイゼン様は父以外の男性をほとんど近づけさせませんでした。それどころか、女性も。身の回りのことは、片腕ながらも器用にアイゼン様によってすべてなされ、ハンデを全く感じさせずに大剣を振るい何故か襲ってくる刺客をなぎ倒され。
アイゼン様が私の騎士になって、3年が経ちました。
あと2年すれば、15歳となり、この国での成人を迎えます。
「もうすぐだな、あと2年。成人したらすぐ婚姻しよう。それに、もうリーシェは俺の妻も同然だろう?
貴女は俺の責任を取りたいんですよね……?」
夜。
アイゼン様と一緒にされた私室のベッドの上で、そう言ってわざと覚束ない手つきで騎士服の前を寛げられれば何も言えません。
熱っぽく熟れた柘榴色の瞳を潤ませられ、皇帝よりもなお腰にクルような甘い声で懇願されれば、男性経験のない令嬢たる私に拒否することはできません。
「ふぅ~~~んんぅぅっ、ッ、や、やだッ、あいぜんさま、も、やめて……ひぅっん!」
アイゼン様の堅苦しい騎士服を脱ぐのを手伝い、ハインベルの屋敷に引き取ってから夜ごと教えられた通りの手順で、互いに昂め合っていきました。
左腕で優しくベッドの上に押し倒され、いつもそうするように何一つ身につけていない下半身――無毛のそこを嬲るように舐められ、吸われ、堪えきれない気持ちよさに視界が何度も明滅する。何度も刺激され、奥から奥から愛液がどんどん溢れ出していくのがわかりました。アイゼン様はちょうど喉が渇いていたんだなどとうそぶいて、薄い唇で覆うように吸いつき、じゅるじゅるとわざと大きく音を立てて吸われます。私が羞恥で泣けば、獰猛に、そして意地悪く微笑んで、もっと酷くするのです。
何度も何度も秘所を舌と手で愛撫され、前後不覚になった頃。陸に打ち上げられた魚のようにぴくぴく痙攣し、うわごとしか言えなくなると、ようやくアイゼン様は体格に見合った立派な肉棒を私に宛がうのです。
「いいのか?リーシェ。ほうら、拒否しないと、またこのまま入ってしまうよ…?」
どくどくと血管がほとばしるグロテスクといっても差し支えないソレ。
アイゼン様はくすくす笑いながら、抵抗できない私の秘所に、避妊具を一切身につけず押し込むように差し入れます。最初は私の規格に見合わなかったそれも、アイゼン様に何度も可愛がられ、広げられ、馴らされれば飲み込むのは容易くなります。
私はまだ未成年ですー!と最初に抵抗してから、アイゼン様は男性専用の皇族用の避妊薬を飲んでくれているようなのですが、それでもわざと意地悪く挿入のときはそう言って私を煽るのです。
「あ、あ、あああぁ……」
問いかけに意味はありません。
アイゼン様は集中しているのか無表情になって、ぐうっと割れ目を押し広げるようにして奥の奥まで太いソレをはめ込みました。
そうしてその大きな体で私の小さな体を覆い尽くすように被さると、そのままナカに入れたままじっと動きません。こうすると、アイゼン様の肉棒と私のナカが馴染んで、とっても良くなるのだと教えてもらいました。
「良い子だな、リーシェは。動くぞ」
アイゼン様の潰されそうなほどの暑苦しさを感じながらも、私は押し入れられた圧迫感と気持ちよさに、ふぅーふぅーと息を整えることしかできません。教えられた通りに、アイゼン様の厚い背中に腕を回し、抱きつきます。
「あ、あ、あん、あ、あ、きもちいい、きもちいです、あ、そこ、きもちぃー……」
アイゼン様の灼熱の切っ先が、私のナカの良いところを擦るたびに体が跳ね、甲高い声を上げてしまいます。奥を嬲るようにぐりぐりと押し当てられれば、魂が抜けてしまいそうな心地よい声をだして甘えてしまいます。
アイゼン様の腰の動きに合わせていやらしい音色を奏でれば、よく出来ましたと言わんばかりにより深く繋がる形で唇を塞がれます。大きな舌がゆっくり、ゆっくりと触れ合い、絡め取られます。背中の神経を快楽がゆーっくり駆け上がり、鼻から抜けるような声がでます。
「は、ぁ、ア、きもちい、あ、あ、すき、あいぜんさま、だいすき、あ、あっ」
「リーシェ……!……っ、イきそうだ、一緒にイこう」
「あ、あ、あ、あ、……ぁああんっ!!」
「――――ッッ」
興奮が最高潮になり、アイゼン様によりいっそう奥を激しく突かれ、強く締めつけてしまいます。
その締めつけに応じるように火傷しそうなほどの熱棒からどろっとした液体が吐き出され、奥に叩きつけられます。アイゼン様との行為に慣れない頃、愛撫でイくのと同時にアイゼン様の精液と接触させられたせいで、私の身体はすっかり条件付けられました。アイゼン様の射精と同時に、私はよりいっそう深く絶頂を迎えます。頭が完全に真っ白になる恐怖に、ぎゅううっとアイゼン様の背中に回した腕を強くして。
そのまま、ひどい倦怠感に襲われ、私は眠気に抗うことができませんでした。
いつもそう。
だから、気づかないのです。
もう永遠に。
「―――ああ、これで『運命』を変えられました。リーシェは俺のこの醜い腕の中で、永遠にまもることができる」
抱き潰されて寝落ちしてしまう私に、そうアイゼン様が病んだように囁いていることに。
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