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case.5
機械のような少女①
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今からおよそ五十年前、世界の極東にある島国の各地で大震災が起きた。それを皮切りに世界中で同時多発的に大震災が起きた。
島国を含む全大陸の三分の一が津波により水没した。この一連の自然災害は大天災地変(だいてんさいちへん)と呼ばれている。
すべての終わり、あるいは始まりだった。
水が引いた後、大地に溢れかえった瓦礫と死体の山を片づける余裕のある者はいなかった。多くの農地が冠水により使い物にならなくなり、人々は飢えた。
放置された死体から感染症が蔓延した。飢えと病、わずかに残った食糧などの奪い合いにより弱い者から死んだ。個人間の奪い合いはやがて戦争へと発展した。
多くの人間は神や仏に祈るしかなかった。いくつもの新しい宗教が生まれた。何柱、何尊もの神と仏が生まれた。人々を救ったのは量産され続ける神でも仏ではなく、機械人形(マシン・ドール)だった。
機械人形――正式名称『災害救援人型自律(さいがいきゅうえんひとがたじりつ)ロボット』。機材も設備も不十分な中、研究者達は開発に力を注ぎ続けた。世界平和と人々の幸せに繋がると信じて。
完成した機械人形達は十二分に親の期待に応えた。瓦礫と死体の山を片づけ、農地を耕し、争いを止め、人々が安全に暮らせる街を作った。研究者達は自ら仲間を制作できるように機械人形をアップデートした。
だが機械人形がどれだけ働いても世界は平和にならず、すべての人々が幸せになることもなかった。食糧も、安全に暮らせる場所も十分にある。それなのに人間達は、すべての他者と協力し合うことも、すべての他者の幸せを願うこともできなかった。
「なぜだ」
機械人形達は考え続けた末、ひとつの結論に辿り着いた。
「人間が個別の『思想』を持っているから争うのだ」
機械人形はひとの思想を統一するため、彼らを整備することにした。
まず宗教にルールを設けた。信仰対象は機械人形が定めたひとつの神しか許されなくなった。
次に啓蒙活動と創作活動を禁止した。各地に残った教典、啓発書、創作物、人間の思想を記したありとあらゆる物、個別の思想へと導く物は回収され、巨大な金庫で厳重に保管された。
しかし人間が何らかの手段で個別の思想を維持していることを機械人形達は察知していた。怪しい動きをしている者は捕らえられ、脳の外科手術を伴う『教育』を施された。『教育』を受けた者は元の人格を失うと噂されている。
彼らは自分達が生まれた研究所のある都市――現在の中央都市である――を拠点とし、人間と大地の整備を今も続けている。
――ノア。人間の思想を統一しようなんておかしな考えなんだよ。
パラノイアを育てた老女は、パラノイアが初めて美煙壺の作り方を教えて貰った日にそう言った。
――みんな同じ考えなんて、そんなもの人間じゃない。ひとがひとであるためにあたし達は妄想を売るんだよ。
「わかったよ、婆さん」
彼女の教えは、彼女が死んだ後もパラノイアの深いところに染みついていた。
パラノイアが育ての老女の墓参りから店に戻ると、店の前に少女が立っていた。年の頃は十代半ばから後半くらいで、色白で、小さな顔に不釣り合いに大きな黒い目をしている。小動物を思わせる可愛らしい顔立ちだ。
龍の模様が描かれた山吹色の鮮やかな旗袍を身につけ、黒髪を二つのシニヨンにしていた。ほつれのない左右のシニヨンは、それぞれ黄金の龍の髪飾りで彩られている。
彼女は人形のように微動だにしない。瞬きすらしていないのではないかと疑う。
「あんた、うちの客かい?」
パラノイアが尋ねると、少女は首だけそちらに動かした。
「貴方が妄想屋の主様でしょうか」
「そうだよ」
「ではわたしに妄想を売って下さい」
無表情に彼女は口を開いた。廊下にある鈍い電灯に照らされ、黒い瞳は冷たく光っている。
「わかった。すぐに店の準備をするから中で座って待っててくれ」
「はい……」
パラノイアは少女を促し、自らも店内に入った。
「それで、どんな妄想が欲しいんだい?」
支那鞄から取り出した美煙壺を棚に並べながら、パラノイアはソファに腰かける少女に問いかけた。
「ある……死んだ男の妄想です」
「オーダーメイドの妄想を作るには媒体が必要だよ」
「媒体とはなんでしょうか」
「ひとの想いがこもった物だよ。そいつが無いと妄想は作れない。媒体として使えるかどうかは……」パラノイアはリビドーを指差した。「こいつが判断する。こいつは目がいいんだ」
【顔と頭と性格もナ!】
リビドーは得意満面に言う。パラノイアはそれを無視して続けた。
「その男の家に案内してくれりゃ媒体を探してやるよ。その場で妄想も作れる」
「……男のことも、住んでいる家のことも、秘密にしていただけますか」
「客のプライバシーは守るさ」
「わかりました。家の者に許可を取る必要がありますので、また明日こちらに伺います」
少女は一礼した。無駄がなく、機械がセットされた動きを再現しているようだった。
「申し遅れましたが、わたくしは黄と申します。どうぞよろしくお願いします」
黄が店を出た後で、リビドーは【変わった奴だったナァ】と、呟いた。
【全然表情が変わらねぇし、機械みたいダ】
パラノイアは先日見た夢を思い出した。俊熙の絵の女の顔が溶け、中から機械人形が出て来た夢を。
「あの女、機械人形だったりしてね」
【機械人形が妄想を欲しがるカァ?】
リビドーは訝し気な声を上げ、パラノイアの肩に止まった。
「そんなことあり得るわけないか」
次の日、黄は朝一番に現れた。
「許可が下りました。我が家までどうぞおいで下さいませ」
黄の案内でパラノイアは彼女の家を目指した。
【最近出張が多いナァ】
まったくだ。と、額の汗を拭いながら心の中でパラノイアは答える。無整備地区は基本的に道が整備されておらず、歩くのは一苦労だ。
道中、不意に視界に入ったものの姿にパラノイアは思わず声を上げた。
「どうされました?」
黄は静かに振り向いた。
パラノイアが見つけたのは機械人形だ。白いボディの胸には穴が開いておりぴくりとも動かない。
「その機械人形なら機能停止しているので気にしないで下さい」
特に驚いた様子もなく、黄は言う。
「なんで壊れた機械人形がこんなところに」
「人形殺しの働きによるものです」
黄は淡々と答えた。
「何だいそりゃ」
「すべての機械人形を殺し、世界をひとの手に取り戻そうとしている者達です」
「そんなやつらがいるとはね」
【けどよー、機械人形を殺すってどうやってるんだろうナァ】
鈍器で殴られようと、銃器で打ち抜かれようと、機械人形を壊すことはできなかった。『奴ら』は元々災害救援用のロボットとして作られたらしく、かなり丈夫だ。
「この辺りは人形殺しのおかげで安全に住めますよ。貴方もいかがです」
「今の場所に住めなくなったら考えておくよ」
しばらく歩くと黄の家に到着した。
黄の家は高い壁に四方を囲われていた。入り口は真っ赤な門だ。門の前には短い石の階段がついている。黄は門を開き、進んで行く。パラノイア達は後に続いた。
狭い通路を左折すると小さな庭に出た。庭の奥にある門を越えると広い庭があり、建物達がぐるりと庭を囲っていた。四合院だ。
一番大きな建物の内部に入る。中はお香の匂いが充満していた。火薬の匂いも混じっている。
歩き続けると長い廊下に出た。前方から若い男女四人が歩いて来る。彼らはパラノイア達を見ると深々と頭を下げた。黄と同じく動きに無駄がなく、やはり機械のように見えた。
「兄弟達です」
黄はパラノイア達に顔を向け説明した。
「血は繋がっていませんが、共に父の教えを受けて育ったので、家族みたいなものです」
確かに彼らの目つきや雰囲気は黄と似ていたし、全員が無表情で統率された動きをしていた。
「父は、人類の思想を統一することは間違っていると常々言っておりました」
「同感だね」
「わたし達は父の理想を実現させるために働きました。――しかし」黄は一瞬、言葉を途切れさせた。「ある日、父は何も教えてくれなくなりました」
「死んだ男ってのは、あんたの父親かい?」
「そうです。……生き返らせる方法はどんなに探しても見つかりませんでした。せめてより深く父の考えを知るために、貴方にお願い致しました」
長い廊下の突き当りには鉄製の大きな引き戸があった。引き戸の先には派手な色と装飾品で飾られた、他の部屋より広い空間が広がっていた。
真っ赤な太い柱がいつくも並び、壁にはそれぞれ四聖獣の絵が描かかれている。天井には吊り飾りのついた無数の提灯がぶら下がっていた。
【ここは……寺カァ?】
「なんとも立派な内装だね」
「わたしと兄弟達で寺に改装しました」
現代において神社仏閣を造るのは大罪だった。
部屋の中心には、数体の像に囲われるようにしてひと際威厳を感じるいかめしい顔つきの男の像が鎮座していた。頭に金の冠を乗せ、長い髭をたくわえている。新鮮な花と貴重な菓子、ひびの入った宝珠が供されていた。
「父です」
黄は金の冠を戴く像を示して言った。比喩ではなく、像を父親と信じ込んでいる態度だ。
島国を含む全大陸の三分の一が津波により水没した。この一連の自然災害は大天災地変(だいてんさいちへん)と呼ばれている。
すべての終わり、あるいは始まりだった。
水が引いた後、大地に溢れかえった瓦礫と死体の山を片づける余裕のある者はいなかった。多くの農地が冠水により使い物にならなくなり、人々は飢えた。
放置された死体から感染症が蔓延した。飢えと病、わずかに残った食糧などの奪い合いにより弱い者から死んだ。個人間の奪い合いはやがて戦争へと発展した。
多くの人間は神や仏に祈るしかなかった。いくつもの新しい宗教が生まれた。何柱、何尊もの神と仏が生まれた。人々を救ったのは量産され続ける神でも仏ではなく、機械人形(マシン・ドール)だった。
機械人形――正式名称『災害救援人型自律(さいがいきゅうえんひとがたじりつ)ロボット』。機材も設備も不十分な中、研究者達は開発に力を注ぎ続けた。世界平和と人々の幸せに繋がると信じて。
完成した機械人形達は十二分に親の期待に応えた。瓦礫と死体の山を片づけ、農地を耕し、争いを止め、人々が安全に暮らせる街を作った。研究者達は自ら仲間を制作できるように機械人形をアップデートした。
だが機械人形がどれだけ働いても世界は平和にならず、すべての人々が幸せになることもなかった。食糧も、安全に暮らせる場所も十分にある。それなのに人間達は、すべての他者と協力し合うことも、すべての他者の幸せを願うこともできなかった。
「なぜだ」
機械人形達は考え続けた末、ひとつの結論に辿り着いた。
「人間が個別の『思想』を持っているから争うのだ」
機械人形はひとの思想を統一するため、彼らを整備することにした。
まず宗教にルールを設けた。信仰対象は機械人形が定めたひとつの神しか許されなくなった。
次に啓蒙活動と創作活動を禁止した。各地に残った教典、啓発書、創作物、人間の思想を記したありとあらゆる物、個別の思想へと導く物は回収され、巨大な金庫で厳重に保管された。
しかし人間が何らかの手段で個別の思想を維持していることを機械人形達は察知していた。怪しい動きをしている者は捕らえられ、脳の外科手術を伴う『教育』を施された。『教育』を受けた者は元の人格を失うと噂されている。
彼らは自分達が生まれた研究所のある都市――現在の中央都市である――を拠点とし、人間と大地の整備を今も続けている。
――ノア。人間の思想を統一しようなんておかしな考えなんだよ。
パラノイアを育てた老女は、パラノイアが初めて美煙壺の作り方を教えて貰った日にそう言った。
――みんな同じ考えなんて、そんなもの人間じゃない。ひとがひとであるためにあたし達は妄想を売るんだよ。
「わかったよ、婆さん」
彼女の教えは、彼女が死んだ後もパラノイアの深いところに染みついていた。
パラノイアが育ての老女の墓参りから店に戻ると、店の前に少女が立っていた。年の頃は十代半ばから後半くらいで、色白で、小さな顔に不釣り合いに大きな黒い目をしている。小動物を思わせる可愛らしい顔立ちだ。
龍の模様が描かれた山吹色の鮮やかな旗袍を身につけ、黒髪を二つのシニヨンにしていた。ほつれのない左右のシニヨンは、それぞれ黄金の龍の髪飾りで彩られている。
彼女は人形のように微動だにしない。瞬きすらしていないのではないかと疑う。
「あんた、うちの客かい?」
パラノイアが尋ねると、少女は首だけそちらに動かした。
「貴方が妄想屋の主様でしょうか」
「そうだよ」
「ではわたしに妄想を売って下さい」
無表情に彼女は口を開いた。廊下にある鈍い電灯に照らされ、黒い瞳は冷たく光っている。
「わかった。すぐに店の準備をするから中で座って待っててくれ」
「はい……」
パラノイアは少女を促し、自らも店内に入った。
「それで、どんな妄想が欲しいんだい?」
支那鞄から取り出した美煙壺を棚に並べながら、パラノイアはソファに腰かける少女に問いかけた。
「ある……死んだ男の妄想です」
「オーダーメイドの妄想を作るには媒体が必要だよ」
「媒体とはなんでしょうか」
「ひとの想いがこもった物だよ。そいつが無いと妄想は作れない。媒体として使えるかどうかは……」パラノイアはリビドーを指差した。「こいつが判断する。こいつは目がいいんだ」
【顔と頭と性格もナ!】
リビドーは得意満面に言う。パラノイアはそれを無視して続けた。
「その男の家に案内してくれりゃ媒体を探してやるよ。その場で妄想も作れる」
「……男のことも、住んでいる家のことも、秘密にしていただけますか」
「客のプライバシーは守るさ」
「わかりました。家の者に許可を取る必要がありますので、また明日こちらに伺います」
少女は一礼した。無駄がなく、機械がセットされた動きを再現しているようだった。
「申し遅れましたが、わたくしは黄と申します。どうぞよろしくお願いします」
黄が店を出た後で、リビドーは【変わった奴だったナァ】と、呟いた。
【全然表情が変わらねぇし、機械みたいダ】
パラノイアは先日見た夢を思い出した。俊熙の絵の女の顔が溶け、中から機械人形が出て来た夢を。
「あの女、機械人形だったりしてね」
【機械人形が妄想を欲しがるカァ?】
リビドーは訝し気な声を上げ、パラノイアの肩に止まった。
「そんなことあり得るわけないか」
次の日、黄は朝一番に現れた。
「許可が下りました。我が家までどうぞおいで下さいませ」
黄の案内でパラノイアは彼女の家を目指した。
【最近出張が多いナァ】
まったくだ。と、額の汗を拭いながら心の中でパラノイアは答える。無整備地区は基本的に道が整備されておらず、歩くのは一苦労だ。
道中、不意に視界に入ったものの姿にパラノイアは思わず声を上げた。
「どうされました?」
黄は静かに振り向いた。
パラノイアが見つけたのは機械人形だ。白いボディの胸には穴が開いておりぴくりとも動かない。
「その機械人形なら機能停止しているので気にしないで下さい」
特に驚いた様子もなく、黄は言う。
「なんで壊れた機械人形がこんなところに」
「人形殺しの働きによるものです」
黄は淡々と答えた。
「何だいそりゃ」
「すべての機械人形を殺し、世界をひとの手に取り戻そうとしている者達です」
「そんなやつらがいるとはね」
【けどよー、機械人形を殺すってどうやってるんだろうナァ】
鈍器で殴られようと、銃器で打ち抜かれようと、機械人形を壊すことはできなかった。『奴ら』は元々災害救援用のロボットとして作られたらしく、かなり丈夫だ。
「この辺りは人形殺しのおかげで安全に住めますよ。貴方もいかがです」
「今の場所に住めなくなったら考えておくよ」
しばらく歩くと黄の家に到着した。
黄の家は高い壁に四方を囲われていた。入り口は真っ赤な門だ。門の前には短い石の階段がついている。黄は門を開き、進んで行く。パラノイア達は後に続いた。
狭い通路を左折すると小さな庭に出た。庭の奥にある門を越えると広い庭があり、建物達がぐるりと庭を囲っていた。四合院だ。
一番大きな建物の内部に入る。中はお香の匂いが充満していた。火薬の匂いも混じっている。
歩き続けると長い廊下に出た。前方から若い男女四人が歩いて来る。彼らはパラノイア達を見ると深々と頭を下げた。黄と同じく動きに無駄がなく、やはり機械のように見えた。
「兄弟達です」
黄はパラノイア達に顔を向け説明した。
「血は繋がっていませんが、共に父の教えを受けて育ったので、家族みたいなものです」
確かに彼らの目つきや雰囲気は黄と似ていたし、全員が無表情で統率された動きをしていた。
「父は、人類の思想を統一することは間違っていると常々言っておりました」
「同感だね」
「わたし達は父の理想を実現させるために働きました。――しかし」黄は一瞬、言葉を途切れさせた。「ある日、父は何も教えてくれなくなりました」
「死んだ男ってのは、あんたの父親かい?」
「そうです。……生き返らせる方法はどんなに探しても見つかりませんでした。せめてより深く父の考えを知るために、貴方にお願い致しました」
長い廊下の突き当りには鉄製の大きな引き戸があった。引き戸の先には派手な色と装飾品で飾られた、他の部屋より広い空間が広がっていた。
真っ赤な太い柱がいつくも並び、壁にはそれぞれ四聖獣の絵が描かかれている。天井には吊り飾りのついた無数の提灯がぶら下がっていた。
【ここは……寺カァ?】
「なんとも立派な内装だね」
「わたしと兄弟達で寺に改装しました」
現代において神社仏閣を造るのは大罪だった。
部屋の中心には、数体の像に囲われるようにしてひと際威厳を感じるいかめしい顔つきの男の像が鎮座していた。頭に金の冠を乗せ、長い髭をたくわえている。新鮮な花と貴重な菓子、ひびの入った宝珠が供されていた。
「父です」
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