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26話ー『ニシジマ・ノボル・クラリオン』
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カチャカチャと食器が音を立てている。
スプーンとフォークがまるで小太鼓を叩くようにリズミカルな音色を響かせる中、俺とミントは腹ごしらえの為に食卓を囲む。
「んぐっ、ミント。もっとたくさん食べろよお前、体力つかねえぞ?」
そう言って俺は、紳士服のウエイターが届けに来た料理の数々をミントの手前へと差し出す。
「うわぁ~!! 美味しそ~!!
こんなに食べるの久しぶりなんですけど!!」
普段は痩せ我慢をしていたのか、テーブルクロスに詰まれた丸皿の料理に素手を使ってかぶりつく。
手に取ったのは、イースターチキンのレッグ焼き。
その他にも様々な料理の数々が、俺とミントの間には並べられている。
「ウエスタンポークの野菜サラダもかなり美味いな」
もぐもぐと咀嚼を繰り返して、俺も食事を味わう。
とろけるチーズをまぶしたガジューゴリラ肉の入ったスパイシーソースピザ。
酸味と甘味の融合したアップルトマトがほどよく香り、スパイシーライオンの血液から採れる刺激的なソースが濃厚な辛味を口に運ぶ。
ところ狭しと埋め尽くされていくテーブル席には、今や次々と料理が運ばれて来ている。
冒険者にとって、食事はかなり重要だ。
食べるだけでステイタスポイントに影響が出る料理など、この世界には様々な特殊調理食材が存在している。
酒瓶のボトルを親指でキュポッと引き抜き、グラスにロックで注いで一気に煽る。
チャーハンをスプーンでかきこみ、ラーメンを箸ですすり、中華饅頭を手で掴んでは、口に放り投げて、また酒瓶をグラスに注いでロックで嗜む。
繰り返される食事の余韻、口の中に広がる飯と酒の旨味。
ガツガツと食い散らかす俺たちの姿は、まるで獰猛な肉食獣のような姿を呈していた。
オーロラ海老を使ったアチアチのレタス炒飯を、スプーンではふはふと息をこぼしながらかきこむ。
「うっ、美味えッ!!」
ゴブリンレモンのソーダ割りコーラが入ったグラスに手をかけ、ガツガツと飯物をかきこんだ後は、グビリグビリと喉に爽やかな爽快感をもたらす。
すると喉に張り付いていたチャーハンの油の甘味が一気に溶ける。
炭酸の清涼感に油分が押し流され、喉の奥へとゴクゴクと流れ込んで行く。
口についた米粒のことなど、美味すぎて気にしていられる余裕はない。
そんな事を気にしないからこそ、冒険者は一人前になれる。
「たくましい肉体を作りあげる為には、少しでも栄養価の高い食事を摂らなくてはならないからな」
この世界で生きる冒険者と呼ばれる者たちが、現代日本人よりもタフな肉体を持つ理由の一つ。
それはこの世界が、グルメで溢ふれていることが挙げられる。
日本で食べられるような質素な食事風景とは、随分と異なる。
いつ何時でも美味い物が食える。
それがこの世界で生きる者に与えられた、利点と至福の一つ。
大きく、美味く、より栄養価が高い異世界産のメニューが数多と存在する。
「ぷはーっ!! うんまっ、マジでっ!!」
チェリーパイを片手にたこ焼きを頬張ったミントは、強めのジンを煽ると、顔を真っ赤に染めて吐息を吐き出す。
「久しぶりにって言ってたけど、あんまり飯は食ってなかったのか?」
飯を食うのにも金がかかる。要
彼女が一人で経営していたあの魔導具店の様子からして、きっとミントは普段からろくなもんを食べちゃいない。
それはあまりにも不憫でならない。
「えぇ、基本的にはあんまり……」
ナプキンで口を拭きつつ、ミントは同意を示して眉根を下げる。
その優しげな瞳がほっこりと可愛らしい笑みを浮かべ、男としてかなりの保護欲が生まれてしまいそうになる。
「あのお店の状況ですから、昼間は素材の調達も兼ねて、自分でダンジョンフィールドに潜るんですよ。
けど、いかんせん私の冒険者レベルが低いので、取れる素材はたかが知れてます……。
それで、夜はお店の営業をしつつ、客入りがほとんどないのでひたすら魔導具の制作をしてましたね……」
「逆に今までなに食べてたんだよ?」
「あっ、えーっと……王都からすこし出た森の中に邪数教って言う方々の教会があるんですけど、そこの人たちがよくご飯を配ってくれてたりしたんです……」
「なるほど……いわゆる炊き出しってヤツか」
「えぇ、それでなんとか空腹は誤魔化せてましたね」
「ふーん、邪数教かぁ~。全く知らない教会だけど、世の中には親切なヤツらも居るもんだなぁ~」
俺がそう言って腕を組むと、ミントはゴブリンレモンのソーダ割りコーラに口をつける。
シュワシュワとはじけるソーダ割りコーラの炭酸に、ゴブリンレモンと呼ばれるレモン味の氷が入った夏にピッタリのドリンクだ。
氷自体にレモネードの味付けがされているからひんやり冷たく、かつ氷が溶けても味が落ちることはないので、甘党の冒険者たちからはかなり評判が高い炭酸ジュースだ。
「うーん!! このスライムロブスターもたまらないですね~!!」
水のように半透明な色合いのロブスターを丸ごと素手でかじりながら、ミントはご満悦そうに顔を赤らめる。
「あっ、でもこんなに食べちゃって、大丈夫なんでしょうか?」
「お金のことなら気にするなよ。
アイズから貰った革袋に銀貨20枚ぐらい入ってたから、祝砲も兼ねてパーッとやろうぜ?
そんなの気にして飯なんか食ったら、せっかくのご飯が喉を通らなくなっちまうだろ?」
「それもそうですね!!」
そう言ってミントは、躊躇しかけた食指を戻して食事に戻る。
(ーーなんて微笑ましい光景だろうな……)
俺はその光景を眺めて、ふと自分の生前のことを思い返していた。
(ーー生前、俺はいつもお金のことばかりを考えて生きて来た……)
隣国のヴィントヘルム帝国にある魔法学校を卒業して以降、カイトとアーシャを含めた三人で暁の旅団をして王都マナガルムへとやって来た。
(ーー今は、たしか竜宮王国ウェブレディオだったか……?)
ーーともかく。
俺は別に子供の頃から、貧乏だったと言う訳じゃない。
どちらかと言えば家柄は裕福な産まれの方だし、とある男爵貴族の家系に産まれた。
ーーその時の家系の名前は、クラリオン。
ーーニシジマ・ノボル・クラリオン。
ーーそれが、俺の本来のフルネームになる。
「ーーこの家を出て冒険者を目指すと言うなら、まずはこの家系の名を捨てよ」
それが子どもの頃に父から言われた言葉になる。
男爵貴族クラリオン家はパペットマスターの家系だった。
常に精巧な人形を創り上げる父の姿を見て、俺はその背中にいつだって憧れを抱いていた。
だが、父はいつだって、俺を見れば蔑むような視線ばかり向けて来ていた。
きっと俺が、父の期待に応えられていなかったからだろう。
「父さん、どうして父さんは、俺に冷たく当たるんだい?」
「知れたことを聞く。お前が欠陥品の贋作に過ぎないからだ
お前のような人間など、この世に作り出したのが間違いだったんだ……」
その言葉の意味は、今でも分からない。
ただ、俺から見える父の姿は、いつだって常軌を逸脱していた。
常人の俺からすれば考えられない。
職人と呼ばれる世界に生きる父の人形技士としてのこだわりは、異常なまでに強かった。
「ダメだ、こんな贋作では……」
人間と同じ、あるいはそれ以上の人形を作り上げる。
それが父が、人形技士として抱いていた野望だった。
「どうして……人形を壊すんです?
それだって、俺からすれば、出来栄えはかなり良いように思えますけど……」
「所詮、お前はマジカルモンクよ。パペットマスターの気持ちなど分かりはしまい。
人形技士の家系に産まれた、不才の落ちこぼれではな?」
そう言って父は、決まって屋敷の外を眺めるとため息をついた。
白い雲の上に見える青空の景色が、どこまでも澄んでいたから、きっとリフレッシュの為だろう。
「すみません、俺が不甲斐ないばかりに……」
確かにマジカルモンクの俺では、どう足掻いてもパペットマスターとしての結果は残せない。
新しいクラスを取得すればジョブチェンジは出来るが、持って産まれた元々のクラスジョブだけは話は別だ。
バースデージョブと呼ばれる、その人だけの持ち得るオリジナルのクラスジョブ。
ジョブチェンジして得られるクラスジョブとは、また別格の性能を有している。
だから、
(俺がパペットマスターのクラスを取っても、父の背中にはいつまで経っても追いつけない……)
きっとそれが理由で、父は俺に辛く当たっているのだろう。
人形技士としての家督を継ぐことを望まれ、されど人形技士ではなかった俺に……。
「お前は、人形技士の家系に産まれ落ちた、ただの化け物に過ぎん失格者だ。
こんな化け物を産み出したと知れたら、俺たちクラリオン家は終わりなんだ。
お前さえ居なければ、本当に良かったのにな」
記憶の断片を辿る限り、俺は決してこの異世界で、軟な少年期を過ごして来たと言う訳ではない。
ーー寧ろ、一般的にはその逆だろう。
どちらかと言えば家は厳しく、毎日毎日、父からは「失格者」としての烙印を植え付けられて生きて来た。
ーー「欠陥品」
ーー「化け物」
ーー「失格者」
その名の通り俺には、圧倒的に人形技士としての才能が欠落していた。
そして、そう言われ続けるのに心が慣れ始めた頃、俺はある日、嫌気が指して自分から家を飛び出したことがある。
辺境の地である山岳に建てられた屋敷の側には、山を降りてすぐの場所に田舎の村落が存在した。
小さな小さな、それでいてのどかな村落だ。
辺りは田んぼにはまみれ、水車の滑車がコロコロと回り、主に農業と牧場で成り立つような大自然に囲まれた村だった。
ーーそこで俺は、二人と出会った。
カイト・スヴェンソンとアーシャ・リクライン。
始めは友だちになるのにも苦労したが、徐々に関係性は和らいで、すぐに打ち解けることにも成功した。
二人と過ごした時間は、まるで子どもの頃みたいに楽しかった。
前世の記憶がある俺には、精神年齢だけで言えば子どもとは言い難い。
家に居た時は窮屈な時間を強いられていたし、あんなにも苦痛だと感じていたことが、一気に解放されたような気持ちになった。
ーーだから俺は、その気持ちを守る為に。
ーーそれ以来、誓っているんだ。
(確かに俺には、父さんのような生き方は、出来ないのかも知れない……)
どれほど足掻こうと、どんなに手を伸ばそう、歯を食い縛って努力したところで世の中には超えられない壁と言う物が存在する。
異世界だからと例外ではない。
それが齢10歳にして知った、この世界で生きる者たちの現実だった。
(なりたいと思った存在に、初めからなれないことが決まっていた……)
ーーだから俺は、選ぶことにした。
ならば俺は、父とは違う生き方を極めてみせる。
そしていつか俺のやり方で、あの背中を超えてみようと……。
それから1年がかりかけて山籠りの修行に入った俺は、俺だけのバースデージョブを極める道を目指した。
(自分だけの“技”が欲しい)
求めていたのは、自分だけが使える必殺技。
誰にも負けない究極の一撃。
たったそれだけの願いを叶える為に。
一つの樹海が、この世界の地図から消えるまでの間ーー。
★
「現在の王都では、魔道具士たちがお店を経営するのも一筋縄ではいかないことについては、理解しているつもりだ」
魔道具店の経営者になると言うことは、それだけ大変な苦労を要すると言うことでもある。
特にこのスタートアップの段階にもなれば、競合相手として名を上げるお店も出てくるだろう。
魔道具店の経営すると言うことは、店を守れるだけの確かな力が必要になる。
その為には、魔道具に冠する深い知識と技術のみならず、素材集めや経営学、それに自分自身の身を守れるだけの強さも必要だ。
ーー時には、帝王学のようなカリスマ性だって必要になるかも知れない。
そんな世界にミントは一人で挑もうとしている。
それがどれだけの苦労を要するかは、想像すれば容易である。
覚えるべきことなど山のようにあるし、腐って立ち止まっている暇など経営者にはない。
圧倒的なまでの決断力や、やると決めたらやりきる実行力、辛い時にもめげずに頑張れるだけの精神力。
そんな諸々のすべてが、ミントの華奢な身体の一つに重圧となって伸し掛かることだろう。
(それに魔道具士は、冒険者よりもクラスジョブの適正から言って、戦闘向きではないからなぁ……)
魔道具を作ると言うことは、必然的に必要になるのは、魔道具を作る為の材料集めだ。
お金のないミントでは、冒険者を雇って素材を集めさせることもできない。
自分で動いて取りに行くしかないが、魔道具士と言うクラスジョブは、例えるならばヒーラーのような職業だ。
ーー基本ステイタスがかなり低い。
製造系のクラスジョブは、作ると言うことに特化している分、他の冒険者が持つような戦闘系クラスジョブとは違い、その戦闘力が格段に低い。
ーー魔道具士は、冒険者が居ることで初めて成り立つ職業だ。
対して冒険者は、その日暮らしの日雇い労働。
最終的に出せる成果の出力は、確かに魔道具士に軍配が上がる。
なにせ俺たちに魔道具は作れない。
だけどその分、冒険者はその日働けば、すぐにでも結果を出せて、成果を金に変えられることが利点なのだ。
例えば時給で働くバイトは、1時間ぐらい働ければ、日本だと大体1,000円は貰える。
しかしながら、魔道具士は魔道具店を開いて経営するまでの間、誰も給金など支払ってはくれないのが現状だ。
稼げるようになるまでは、無一文。
だからと言って冒険者パーティーを組んで素材集めや金策をするにも、ヒーラーと言う回復役をこなせるクラスジョブではない分、魔道具士は即戦力になりづらくパーティーには参加しづらいと言うのが欠点だ。
必然ーー何をするにもソロ攻略になりやすい。
(でも、だからと言って、バースデージョブだけは変えられないからな……)
バースデージョブは、その人だけが持ち得るオリジナルのクラスジョブ。
名前が同じサブクラスのジョブはあっても、同一の性能は有してなんかいない。
(他のサブクラスを取得するにしても、モンスターとの戦闘をこなすか、料理を食べまくってレベルアップするしかない)
そうして行くことでしか強くなる為の恩恵が得られないのに、先に述べた欠点が邪魔してパーティーに加入が出来ない。
それではいつまで経っても、ミントは一人で強くはなれないネズミ返し状態だ。
「ひとまず今回は、俺が新しい素材集めをタダで請け負う。
ちなみに聞きたいんだが、もし仮に今よりハイレベルな素材が手元にあったとしたら、今よりも良い魔道具を作れる自信はあるのか?」
俺がそう言うと、ミントはハッキリと首を縦に頷かせた。
「それは勿論!! 魔道具作りのことに関しては、私に任せてください!!」
「よし、じゃあ必要になるのは、新しい素材だな。
ミントは俺が採ってくる素材を使って、新しい魔道具を開発してくれ。
さっき言った通り、見た目を意識して、王都の人々に伝わりやすく。
かつ、俺が使って宣伝することを想定した魔道具だ。
ただし、一つだけ注意点がある」
「注意点ですか?」
一体なんでしょう?
小さな黒縁の丸メガネを指先で押し上げると、ミントはコクリと首を傾げる。
「俺が使って宣伝することを想定した魔道具であっても、その魔道具は皆が使える物で無くてはならない」
「と言うと……拳型の魔道具とか、そういうのは、無しってことでしょうか?」
「あぁ、結局それだと俺と同じような拳職の者にしか使えない魔道具になってしまう。
販促できる範囲は、当然だが広いほうが良い。
誰もに馴染みのある魔道具を作り出すことで、誰もが使いこなせるような簡単な魔道具で無くてはならない。
一部の人しか使えない魔道具では、そこに興味を抱くのは、そのごく限られた一部の少数派になってしまうからな?
物を売る際に最も必要なのは、実は多数派なんだよ」
「なるほど……確かに勉強になりますね……」
「まぁ、今すぐに考案すると言うのは大変だろうから、俺が素材を採ってくる間に、できる限りの魔道具の考案を進めておいて欲しい。
そこに関しては、ミントはできそうか?」
「ん~~、そうですねぇ。
まぁ……ざっと4日ぐらいあれば、考案自体は出来るかと思います。
ただ、制作に大体、追加で1週間ぐらいは欲しいところでしょうか?」
「じゃあ、俺ができた魔道具を宣伝するのに3日ぐらい必要だとして、これでちょうど大体二週間ぐらいか……。
そのスケジュールで進めてみよう」
転入までの2週間、これでみっちりとスケジュールが詰め込めまれたことになる。
「ミントが考案している間、俺は別行動で素材集めをすることになると思う。
問題なのはーー」
「どこのダンジョンフィールドに向かうんです?」
「それなんだよなぁ……」
そう言って頭を悩ませていたところ、横からはウエイターがアルミのトレイを持って来た。
「締めのスライム葉巻になります。ごゆっくりどうぞ」
俺とミントの手前にアルミのトレイを二つ分置くと、紳士服を着たウエイターは一礼と共に去って行く。
「うん、ひとまずタバコでも吸おうか……」
スプーンとフォークがまるで小太鼓を叩くようにリズミカルな音色を響かせる中、俺とミントは腹ごしらえの為に食卓を囲む。
「んぐっ、ミント。もっとたくさん食べろよお前、体力つかねえぞ?」
そう言って俺は、紳士服のウエイターが届けに来た料理の数々をミントの手前へと差し出す。
「うわぁ~!! 美味しそ~!!
こんなに食べるの久しぶりなんですけど!!」
普段は痩せ我慢をしていたのか、テーブルクロスに詰まれた丸皿の料理に素手を使ってかぶりつく。
手に取ったのは、イースターチキンのレッグ焼き。
その他にも様々な料理の数々が、俺とミントの間には並べられている。
「ウエスタンポークの野菜サラダもかなり美味いな」
もぐもぐと咀嚼を繰り返して、俺も食事を味わう。
とろけるチーズをまぶしたガジューゴリラ肉の入ったスパイシーソースピザ。
酸味と甘味の融合したアップルトマトがほどよく香り、スパイシーライオンの血液から採れる刺激的なソースが濃厚な辛味を口に運ぶ。
ところ狭しと埋め尽くされていくテーブル席には、今や次々と料理が運ばれて来ている。
冒険者にとって、食事はかなり重要だ。
食べるだけでステイタスポイントに影響が出る料理など、この世界には様々な特殊調理食材が存在している。
酒瓶のボトルを親指でキュポッと引き抜き、グラスにロックで注いで一気に煽る。
チャーハンをスプーンでかきこみ、ラーメンを箸ですすり、中華饅頭を手で掴んでは、口に放り投げて、また酒瓶をグラスに注いでロックで嗜む。
繰り返される食事の余韻、口の中に広がる飯と酒の旨味。
ガツガツと食い散らかす俺たちの姿は、まるで獰猛な肉食獣のような姿を呈していた。
オーロラ海老を使ったアチアチのレタス炒飯を、スプーンではふはふと息をこぼしながらかきこむ。
「うっ、美味えッ!!」
ゴブリンレモンのソーダ割りコーラが入ったグラスに手をかけ、ガツガツと飯物をかきこんだ後は、グビリグビリと喉に爽やかな爽快感をもたらす。
すると喉に張り付いていたチャーハンの油の甘味が一気に溶ける。
炭酸の清涼感に油分が押し流され、喉の奥へとゴクゴクと流れ込んで行く。
口についた米粒のことなど、美味すぎて気にしていられる余裕はない。
そんな事を気にしないからこそ、冒険者は一人前になれる。
「たくましい肉体を作りあげる為には、少しでも栄養価の高い食事を摂らなくてはならないからな」
この世界で生きる冒険者と呼ばれる者たちが、現代日本人よりもタフな肉体を持つ理由の一つ。
それはこの世界が、グルメで溢ふれていることが挙げられる。
日本で食べられるような質素な食事風景とは、随分と異なる。
いつ何時でも美味い物が食える。
それがこの世界で生きる者に与えられた、利点と至福の一つ。
大きく、美味く、より栄養価が高い異世界産のメニューが数多と存在する。
「ぷはーっ!! うんまっ、マジでっ!!」
チェリーパイを片手にたこ焼きを頬張ったミントは、強めのジンを煽ると、顔を真っ赤に染めて吐息を吐き出す。
「久しぶりにって言ってたけど、あんまり飯は食ってなかったのか?」
飯を食うのにも金がかかる。要
彼女が一人で経営していたあの魔導具店の様子からして、きっとミントは普段からろくなもんを食べちゃいない。
それはあまりにも不憫でならない。
「えぇ、基本的にはあんまり……」
ナプキンで口を拭きつつ、ミントは同意を示して眉根を下げる。
その優しげな瞳がほっこりと可愛らしい笑みを浮かべ、男としてかなりの保護欲が生まれてしまいそうになる。
「あのお店の状況ですから、昼間は素材の調達も兼ねて、自分でダンジョンフィールドに潜るんですよ。
けど、いかんせん私の冒険者レベルが低いので、取れる素材はたかが知れてます……。
それで、夜はお店の営業をしつつ、客入りがほとんどないのでひたすら魔導具の制作をしてましたね……」
「逆に今までなに食べてたんだよ?」
「あっ、えーっと……王都からすこし出た森の中に邪数教って言う方々の教会があるんですけど、そこの人たちがよくご飯を配ってくれてたりしたんです……」
「なるほど……いわゆる炊き出しってヤツか」
「えぇ、それでなんとか空腹は誤魔化せてましたね」
「ふーん、邪数教かぁ~。全く知らない教会だけど、世の中には親切なヤツらも居るもんだなぁ~」
俺がそう言って腕を組むと、ミントはゴブリンレモンのソーダ割りコーラに口をつける。
シュワシュワとはじけるソーダ割りコーラの炭酸に、ゴブリンレモンと呼ばれるレモン味の氷が入った夏にピッタリのドリンクだ。
氷自体にレモネードの味付けがされているからひんやり冷たく、かつ氷が溶けても味が落ちることはないので、甘党の冒険者たちからはかなり評判が高い炭酸ジュースだ。
「うーん!! このスライムロブスターもたまらないですね~!!」
水のように半透明な色合いのロブスターを丸ごと素手でかじりながら、ミントはご満悦そうに顔を赤らめる。
「あっ、でもこんなに食べちゃって、大丈夫なんでしょうか?」
「お金のことなら気にするなよ。
アイズから貰った革袋に銀貨20枚ぐらい入ってたから、祝砲も兼ねてパーッとやろうぜ?
そんなの気にして飯なんか食ったら、せっかくのご飯が喉を通らなくなっちまうだろ?」
「それもそうですね!!」
そう言ってミントは、躊躇しかけた食指を戻して食事に戻る。
(ーーなんて微笑ましい光景だろうな……)
俺はその光景を眺めて、ふと自分の生前のことを思い返していた。
(ーー生前、俺はいつもお金のことばかりを考えて生きて来た……)
隣国のヴィントヘルム帝国にある魔法学校を卒業して以降、カイトとアーシャを含めた三人で暁の旅団をして王都マナガルムへとやって来た。
(ーー今は、たしか竜宮王国ウェブレディオだったか……?)
ーーともかく。
俺は別に子供の頃から、貧乏だったと言う訳じゃない。
どちらかと言えば家柄は裕福な産まれの方だし、とある男爵貴族の家系に産まれた。
ーーその時の家系の名前は、クラリオン。
ーーニシジマ・ノボル・クラリオン。
ーーそれが、俺の本来のフルネームになる。
「ーーこの家を出て冒険者を目指すと言うなら、まずはこの家系の名を捨てよ」
それが子どもの頃に父から言われた言葉になる。
男爵貴族クラリオン家はパペットマスターの家系だった。
常に精巧な人形を創り上げる父の姿を見て、俺はその背中にいつだって憧れを抱いていた。
だが、父はいつだって、俺を見れば蔑むような視線ばかり向けて来ていた。
きっと俺が、父の期待に応えられていなかったからだろう。
「父さん、どうして父さんは、俺に冷たく当たるんだい?」
「知れたことを聞く。お前が欠陥品の贋作に過ぎないからだ
お前のような人間など、この世に作り出したのが間違いだったんだ……」
その言葉の意味は、今でも分からない。
ただ、俺から見える父の姿は、いつだって常軌を逸脱していた。
常人の俺からすれば考えられない。
職人と呼ばれる世界に生きる父の人形技士としてのこだわりは、異常なまでに強かった。
「ダメだ、こんな贋作では……」
人間と同じ、あるいはそれ以上の人形を作り上げる。
それが父が、人形技士として抱いていた野望だった。
「どうして……人形を壊すんです?
それだって、俺からすれば、出来栄えはかなり良いように思えますけど……」
「所詮、お前はマジカルモンクよ。パペットマスターの気持ちなど分かりはしまい。
人形技士の家系に産まれた、不才の落ちこぼれではな?」
そう言って父は、決まって屋敷の外を眺めるとため息をついた。
白い雲の上に見える青空の景色が、どこまでも澄んでいたから、きっとリフレッシュの為だろう。
「すみません、俺が不甲斐ないばかりに……」
確かにマジカルモンクの俺では、どう足掻いてもパペットマスターとしての結果は残せない。
新しいクラスを取得すればジョブチェンジは出来るが、持って産まれた元々のクラスジョブだけは話は別だ。
バースデージョブと呼ばれる、その人だけの持ち得るオリジナルのクラスジョブ。
ジョブチェンジして得られるクラスジョブとは、また別格の性能を有している。
だから、
(俺がパペットマスターのクラスを取っても、父の背中にはいつまで経っても追いつけない……)
きっとそれが理由で、父は俺に辛く当たっているのだろう。
人形技士としての家督を継ぐことを望まれ、されど人形技士ではなかった俺に……。
「お前は、人形技士の家系に産まれ落ちた、ただの化け物に過ぎん失格者だ。
こんな化け物を産み出したと知れたら、俺たちクラリオン家は終わりなんだ。
お前さえ居なければ、本当に良かったのにな」
記憶の断片を辿る限り、俺は決してこの異世界で、軟な少年期を過ごして来たと言う訳ではない。
ーー寧ろ、一般的にはその逆だろう。
どちらかと言えば家は厳しく、毎日毎日、父からは「失格者」としての烙印を植え付けられて生きて来た。
ーー「欠陥品」
ーー「化け物」
ーー「失格者」
その名の通り俺には、圧倒的に人形技士としての才能が欠落していた。
そして、そう言われ続けるのに心が慣れ始めた頃、俺はある日、嫌気が指して自分から家を飛び出したことがある。
辺境の地である山岳に建てられた屋敷の側には、山を降りてすぐの場所に田舎の村落が存在した。
小さな小さな、それでいてのどかな村落だ。
辺りは田んぼにはまみれ、水車の滑車がコロコロと回り、主に農業と牧場で成り立つような大自然に囲まれた村だった。
ーーそこで俺は、二人と出会った。
カイト・スヴェンソンとアーシャ・リクライン。
始めは友だちになるのにも苦労したが、徐々に関係性は和らいで、すぐに打ち解けることにも成功した。
二人と過ごした時間は、まるで子どもの頃みたいに楽しかった。
前世の記憶がある俺には、精神年齢だけで言えば子どもとは言い難い。
家に居た時は窮屈な時間を強いられていたし、あんなにも苦痛だと感じていたことが、一気に解放されたような気持ちになった。
ーーだから俺は、その気持ちを守る為に。
ーーそれ以来、誓っているんだ。
(確かに俺には、父さんのような生き方は、出来ないのかも知れない……)
どれほど足掻こうと、どんなに手を伸ばそう、歯を食い縛って努力したところで世の中には超えられない壁と言う物が存在する。
異世界だからと例外ではない。
それが齢10歳にして知った、この世界で生きる者たちの現実だった。
(なりたいと思った存在に、初めからなれないことが決まっていた……)
ーーだから俺は、選ぶことにした。
ならば俺は、父とは違う生き方を極めてみせる。
そしていつか俺のやり方で、あの背中を超えてみようと……。
それから1年がかりかけて山籠りの修行に入った俺は、俺だけのバースデージョブを極める道を目指した。
(自分だけの“技”が欲しい)
求めていたのは、自分だけが使える必殺技。
誰にも負けない究極の一撃。
たったそれだけの願いを叶える為に。
一つの樹海が、この世界の地図から消えるまでの間ーー。
★
「現在の王都では、魔道具士たちがお店を経営するのも一筋縄ではいかないことについては、理解しているつもりだ」
魔道具店の経営者になると言うことは、それだけ大変な苦労を要すると言うことでもある。
特にこのスタートアップの段階にもなれば、競合相手として名を上げるお店も出てくるだろう。
魔道具店の経営すると言うことは、店を守れるだけの確かな力が必要になる。
その為には、魔道具に冠する深い知識と技術のみならず、素材集めや経営学、それに自分自身の身を守れるだけの強さも必要だ。
ーー時には、帝王学のようなカリスマ性だって必要になるかも知れない。
そんな世界にミントは一人で挑もうとしている。
それがどれだけの苦労を要するかは、想像すれば容易である。
覚えるべきことなど山のようにあるし、腐って立ち止まっている暇など経営者にはない。
圧倒的なまでの決断力や、やると決めたらやりきる実行力、辛い時にもめげずに頑張れるだけの精神力。
そんな諸々のすべてが、ミントの華奢な身体の一つに重圧となって伸し掛かることだろう。
(それに魔道具士は、冒険者よりもクラスジョブの適正から言って、戦闘向きではないからなぁ……)
魔道具を作ると言うことは、必然的に必要になるのは、魔道具を作る為の材料集めだ。
お金のないミントでは、冒険者を雇って素材を集めさせることもできない。
自分で動いて取りに行くしかないが、魔道具士と言うクラスジョブは、例えるならばヒーラーのような職業だ。
ーー基本ステイタスがかなり低い。
製造系のクラスジョブは、作ると言うことに特化している分、他の冒険者が持つような戦闘系クラスジョブとは違い、その戦闘力が格段に低い。
ーー魔道具士は、冒険者が居ることで初めて成り立つ職業だ。
対して冒険者は、その日暮らしの日雇い労働。
最終的に出せる成果の出力は、確かに魔道具士に軍配が上がる。
なにせ俺たちに魔道具は作れない。
だけどその分、冒険者はその日働けば、すぐにでも結果を出せて、成果を金に変えられることが利点なのだ。
例えば時給で働くバイトは、1時間ぐらい働ければ、日本だと大体1,000円は貰える。
しかしながら、魔道具士は魔道具店を開いて経営するまでの間、誰も給金など支払ってはくれないのが現状だ。
稼げるようになるまでは、無一文。
だからと言って冒険者パーティーを組んで素材集めや金策をするにも、ヒーラーと言う回復役をこなせるクラスジョブではない分、魔道具士は即戦力になりづらくパーティーには参加しづらいと言うのが欠点だ。
必然ーー何をするにもソロ攻略になりやすい。
(でも、だからと言って、バースデージョブだけは変えられないからな……)
バースデージョブは、その人だけが持ち得るオリジナルのクラスジョブ。
名前が同じサブクラスのジョブはあっても、同一の性能は有してなんかいない。
(他のサブクラスを取得するにしても、モンスターとの戦闘をこなすか、料理を食べまくってレベルアップするしかない)
そうして行くことでしか強くなる為の恩恵が得られないのに、先に述べた欠点が邪魔してパーティーに加入が出来ない。
それではいつまで経っても、ミントは一人で強くはなれないネズミ返し状態だ。
「ひとまず今回は、俺が新しい素材集めをタダで請け負う。
ちなみに聞きたいんだが、もし仮に今よりハイレベルな素材が手元にあったとしたら、今よりも良い魔道具を作れる自信はあるのか?」
俺がそう言うと、ミントはハッキリと首を縦に頷かせた。
「それは勿論!! 魔道具作りのことに関しては、私に任せてください!!」
「よし、じゃあ必要になるのは、新しい素材だな。
ミントは俺が採ってくる素材を使って、新しい魔道具を開発してくれ。
さっき言った通り、見た目を意識して、王都の人々に伝わりやすく。
かつ、俺が使って宣伝することを想定した魔道具だ。
ただし、一つだけ注意点がある」
「注意点ですか?」
一体なんでしょう?
小さな黒縁の丸メガネを指先で押し上げると、ミントはコクリと首を傾げる。
「俺が使って宣伝することを想定した魔道具であっても、その魔道具は皆が使える物で無くてはならない」
「と言うと……拳型の魔道具とか、そういうのは、無しってことでしょうか?」
「あぁ、結局それだと俺と同じような拳職の者にしか使えない魔道具になってしまう。
販促できる範囲は、当然だが広いほうが良い。
誰もに馴染みのある魔道具を作り出すことで、誰もが使いこなせるような簡単な魔道具で無くてはならない。
一部の人しか使えない魔道具では、そこに興味を抱くのは、そのごく限られた一部の少数派になってしまうからな?
物を売る際に最も必要なのは、実は多数派なんだよ」
「なるほど……確かに勉強になりますね……」
「まぁ、今すぐに考案すると言うのは大変だろうから、俺が素材を採ってくる間に、できる限りの魔道具の考案を進めておいて欲しい。
そこに関しては、ミントはできそうか?」
「ん~~、そうですねぇ。
まぁ……ざっと4日ぐらいあれば、考案自体は出来るかと思います。
ただ、制作に大体、追加で1週間ぐらいは欲しいところでしょうか?」
「じゃあ、俺ができた魔道具を宣伝するのに3日ぐらい必要だとして、これでちょうど大体二週間ぐらいか……。
そのスケジュールで進めてみよう」
転入までの2週間、これでみっちりとスケジュールが詰め込めまれたことになる。
「ミントが考案している間、俺は別行動で素材集めをすることになると思う。
問題なのはーー」
「どこのダンジョンフィールドに向かうんです?」
「それなんだよなぁ……」
そう言って頭を悩ませていたところ、横からはウエイターがアルミのトレイを持って来た。
「締めのスライム葉巻になります。ごゆっくりどうぞ」
俺とミントの手前にアルミのトレイを二つ分置くと、紳士服を着たウエイターは一礼と共に去って行く。
「うん、ひとまずタバコでも吸おうか……」
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