逆転機ニルヴァーシュ -朝斬りの夜明け-【バンダナコミック01】

ボス子ちゃま

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43話ー『次回 城之内死す』

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「ふぅー!! 食った食った!!
 やっぱ海の幸を使った料理は最高ねー!!」

 8番潜水艦の2階にあるレストランのテーブル席。
 俺の隣の席に腰を落ち着けたパティが、そのだらしなく丸くなった腹をペチペチと叩いている。
 その隣では、スコルも同様に天井のシャンデリアを見上げて、ふぅーと相撲取りのような深い吐息を吐き出している。
 昼食に食べたのは、魚介類を使ったパエリヤに天ぷら、それとカニのほぐし身などを頂いた。

「二人は、これからフライボードで遊ぶんだろ?」

「えぇ!! もちろんよ!! よく食べて、よく遊ぶのが、アタシたち姉妹のモットーなんだからね!!」

「「ねー?」」

 そう言って顔を見合わせる二人の姉妹は、プール遊びに向かう気満々だ。

「さて、じゃあ俺も食事を済ませたことだし、そろそろゾルガに乗って探索にでも向かうとするか」

 そう言って席から立ち上がった、その時だった。

「ッ!?」

 俺の腹部に電流が走る。ビビッと来た。

(ーー不味いッ!! これは下痢だッ!!)

 目を真っ赤に充血させて、俺は目を見開く。

(こんな大事な時に下痢だとッ!?)

 俺はすかさずトイレを目指して猛ダッシュを開始する。
 すると何故か、その両隣では同じように目を血走らせた二人の姉妹の姿がある。

「おい!! まさかお前らッ!?」

「あら奇遇ね? ターニャ?」

「私たちも産める身体になりました」

 そう言って目を血走らせた二人の姉妹が、猛スピードでトイレへと直行する。

「やろう!! させるか!!」

 この潜水艦のトイレは、ちょうどレストランを出て廊下の反対側にあるが、確かその個室は4つしかない。
 つまり、この時点で、もし二人以上の利用者が先に居れば、必然的にトイレ争奪戦争が勃発してしまうのだ。

「うぉおおおおッ!! ファイトぉおおおッ!!」

 いっぱぁああああつッ!!
 そう言って俺は誰よりも速くトイレへと駆け込む。
 渡り廊下を突っ切り、対面に設けられた男女兼用トイレへーーしかしッ!!

「バカな!? 一つしか空いていないだとッ!?」

 見たところトイレの空き室は、一つしかない。
 入口を入ってすぐ右手側の洗面台、その反対に見える個室は4つのみ。
 だが、その4つの内、奇しくも扉は既に3つ締め切られている。

「助かった!! まだ俺だけ何とかなるーーグアッ!?」

 俺の足にピタリと張り付く二人の姉妹。

「そうはさせねえですよ!! ターニャ!!」

「裏切るんじゃねえ!! アタシたちを置いてけぼりにする気かぁ!!」

「ぎってねえ!! ただクソをかまそうとしてるだけだ!! ぎってねえ!!」

 俺はそう言ってトイレへと進もうと重たい足を動かす。
 二人の姉妹が、俺の両足に全体重をかけてしがみついて来ている。
 そのせいで俺の足は、動かそうにしてもちょっとしか進めない。

「クソ!! おのれ!! トイレの悪魔どもめ!!」

 グゥっと歯を食い縛って、力強く鼻息荒げて足を動かした瞬間、パティとスコルは一斉に立ち上がる。
 すかさず両脇から手を伸ばし、俺と共に残された一番手前の個室に手をかける。
 ほとんど同時に取っ手に手をかけ、揉み合いになってガタガタと扉が前後する。

「ちょっとやめてよッ!! このトイレは、アタシが一番最初に手をつけたんですけど!?」

「いいえお姉ちゃんッ!! 私が、先に手をつけましたよ!!
 嘘をついちゃいけまけんって、お母さんに習わなかったんですか!?」

「ふざけるなぁッ!! このトイレは、俺のだァーッ!!」

 空き室の取っ手を三人で掴み、誰が入るかで揉めに揉めまくる。
 
(おのれぇ!! このままではキリがない!!)

「良いのか、お前ら!? 俺はこう見えてもお前らと違って、心は大人なんだ!!
 当然、出そうと思えば、それはもうお前たちより遥かにクソデカい物が飛び出るに違いない!!
 今この場で俺が取り残されたら、一体この場がどうなるのかをよく考えるんだ!! 未曾有の危機だッ!!」

 起ころうとしているぞ……大災害がッ!!

「ーー竜が来るッ!!」

 ブリッ、と限界に近づきつつあるケツからスカしっぺをこき、俺はパティとスコルに精一杯の注意喚起を告げる。
 一瞬にしてゾッと青ざめたパティとスコルの険しい表情が、俺のクソ一発予告に恐れ慄く。

「れ、レディーファーストって言葉を知らない訳え!?
 それに小さいほうが、時間も短くて済むわよねッ!?
 だったらターニャが我慢するのは、当たり前じゃない?
 オ・ト・ナ・なんだから!!」

 ふっと勝ち誇った笑みを見せるパティの反論の言葉に、ここぞとばかりに同意を示したのはスコルである。

「そうですよ、ターニャ!!
 ここはスコルもお姉ちゃんに同意します!!
 トイレは、レディとキッズファーストなんですよ!!
 男で大人のお前は、先にトイレに入っちゃ行けねえんですぅッ!!」

 目が血走ってガンギマリの姉妹の表情。
 口調もかなりキレ気味でまるでヤンキーみたいだ。

「あーーそうだ忘れてたわ。俺って今は、子どもの見た目なんだよな。だから俺もやっぱり子どもだ!!
 心だけが大人なの忘れてたわ!!
 トイレは心に合わせて作られてるんじゃなくって、身体に合わせて作られてんだもんな?
 だから俺は、一番真っ先にこのトイレを使える!!
 何故なら俺もーー子どもだからだ!!」

「都合の良い時だけ、子どもになってんじゃねえよ!!
 漏らすぞテメエコラッ!! 良いのかオイッ!?」

「そうよッ!! もっと言ってあげなさいスコルッ!!
 トイレは心から子どもの物なんだよォッ!!」

 ガンギマリの視線で、パティとスコルから鼻息荒くまくし立てられてしまう俺。
 その騒ぎを聞きつけたのか、通りすがりの男が俺たちの元へと駆け寄って来る。

「あの御三方、何かあったんですか?」

 振り返ってみれば、そこには白い和服に袖を通した侍らしき男が立っている。
 頭には、笠地蔵の被りそうな菅笠を被っており、腰には日本刀らしき装備をぶら下げている。
 見たところクルーと言う訳では、無さそうだ。

(ーーだが、俺には分かる……)

 ーー彼はデュエリストだッ!!
 左腕に嵌めているデュエルディスクが、俺たち三人の視線を引き付けてやまない。

「あっ、分かった!! ひょっとして三人でトイレに駆け込んだは良いけど、空き室が一つしかなくって、それで三人で奪い合ってるとか?」

 まるでここまでの流れを、最初から見ていたように察しの良い侍だ。

「そういうことなら、この俺に任せてくださいよ」

 そう言って侍あらためーーデュエリスト風の男はこほんと咳払いを一つ払い、真っ直ぐにその右手を天高々と挙手する。

「ただいまより、武藤遊戯風のターニャVS!! 城之内克也風の姉パティ!! そして、城之内静香風の妹スコルを交えた、サドンデスマッチ・ウンコクソ・デスデュエルを執り行います!!
 試合形式は、何でもアリのバーリートゥード!!
 互いのライフポイントを0にし、先にウンコを漏らさせたほうが勝者となります!!」

 急にデュエリスト風の男から告げられたルール説明に、俺たちの着ていた衣装が、それに合わせて瞬時に切り替わる。

「遊戯、覚えているか? あのバトルシティで、俺たちが交わした、あの時の約束を……」

「城之内くん!! すまねえ忘れちまった!!」

 ーー3000年前。



「城之内くん、これは君のカードだ……」

「へんっ、遊戯……今、そのレッドアイズを受け取ることは出来ない……。
 俺は、自分の理想とする真のデュエリストになりたい。
 ーーいや、このバトルシティで、必ずなってみせる。
 遊戯……俺が大会を勝ち進んで、自分を真のデュエリストと認められる時が来たら……。
 その時は……もう一度、俺と闘ってくれ」

「ーーッ、わかった。また、その時は闘おう、城之内くん」



「城之内くん、君は、俺が一人ぼっちじゃないってことを教えてくれた、大切な親友だ……」

「ーーッ、遊戯……」

「ーーッ、城之内くん……大好きだ!! だから俺の為に、先にウンコを漏らして死んでくれ!!」

「ゆ、遊戯……?」

「お兄ちゃん……もう遊戯さんは、別の人格に身体を乗っ取られて……」

 そう言って城之内静香風の妹スコルは、虚しそうに首を振って瞳を伏せる。

「ーーッ、なら俺が遊戯の目を覚ませてやる!!」

「フハハッ!! 出来るかな? 凡骨デュエリストの城之内くんに!!」

 三者揃って、左腕に突如として出現したデュエルディスクを構える。

「「「ーーデュエルッ!!」」」
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