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18話ー『出撃・魔導戦機ネオ』
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「ふーん。これが魔導戦機ネオのコックピットの中かぁ~」
初めて入った操縦席の光景を眺めて、俺は感動して深い吐息を吐き出す。
中は予想していたよりも随分と暗い。
分度器のような丸い空間、その中に電気コードのような配線が5本分転がっている。
「後部座席は二つあるようだが、見たところ操縦席は見当たらないな?」
中心地点からちょうど後方、壁際には二つ分の後部座席が備え付けてある。
予想していた操縦席とは、随分と異なる。
「ガンダムとかに出てくるような操縦席は、ペダルやレバーに、あとパソコンのキーボードみたいなヤツが幾つもあるのに」
それらの類は一切ない。
中央にあるのはボタンの付いた台座が一つ。
思えば起動の仕方も分からない。
初心者丸出しで、ひとまず頭にナーブギアをすっぽりと被る。
両手足にはリストバンドを巻き付け、準備が出来たので台座のボタンを押してみた。
すると台座は床下に格納され、代わりに左右から二本のレバーが這い上がる。
頭上からは照明用のライトが点灯される。
180°球体のモニターが半透明に移り変わり、前方ではグレゴリオが乗り込んだ剣型の魔導戦機が見えていた。
「多分この機体は、ナーブギアとリストバンドから、脳波と生体電気を読み取って動くシステムなんだ」
体感運動、それもいわゆる3Dモデリングを用いた日本の撮影技術を思い出す。
アクション映画なんかでは、よくワイヤーアクションを撮影する際に、これらの3Dモデリングの技術が使われていると聞く。
つまり魔導戦機とは、自分の身体を自由自在に動かして闘う機体と言うことだ。
「リュックサック型のコックピットの中が、180°球体のドーム状でモニター式だったのはその為か」
確かにそれならば理に適っている。
細かなハンドル操作の一切を取り除き、操縦席の構造を、国家王国騎士や冒険者の肉体の動きに連動させて作り上げて来ている。
それにより行なえるようになるのは、ほとんどノンフレームの誤差で実現される肉弾戦闘だ。
首を回せばメインカメラが動くし、腕を振るえば、機体もそれと同時に合わせて腕を振るうことが出来る。
電気信号の技術体系と、魔石の力を用いた魔導回路が融合している機体だ。
『N.ave I.nternet, L.etro V.alue - A.ctive S.lash&Magic, H.andling Adventureシステム起動』
電源を入れた直後、ナーブギアの両耳部分からAI音声が響き渡る。
前方のメインモニターに映し出されているのは、どうやらシステム起動時に作動するエンジンプログラムのようだ
「ニルヴァーシュ……か?」
プログラムの頭文字を繋ぎ合わせて発音すると、ニルヴァーシュと言うエンジンシステム名になる。
「おい庶民、準備はできたか?」
「あぁ、何とかな」
目の前の剣型の機体から声が届く。
それに合わせてこちらも返事を返すと、コックピットのマイク兼スピーカーから音が拾われ、そのまま外部へと音声が流れる。
「内側と外側がリンクしたのが、魔導戦機と言う機体の特徴だ。
中々に面白いだろう庶民?」
「あぁ、庶民と言う言葉を軽く受け流せるぐらいには、だいぶ気に入ってるところだよ」
「ふん、減らず口を」
そう言ってグレゴリオの駆る剣型の魔導戦機がズシンと音を立てて歩み始める。
大きく揺れる格納庫の中、無数の照明が揺れ動く。
「ではナズナ殿、アイズ殿、この機体少しばかりお借りするぞ」
そう告げたグレゴリオの剣型の魔導戦機が、格納庫のシャッターまで歩くと脚部からキャタピラーのような物を設置させる。
「闘技場に向かうまでのほんの余興だ。
ドッグファイトと行こうじゃないか?」
瞬間、キャタピラー式のホイールが高速回転して火花を散らす。
物凄い勢いで加速し始めた剣型の魔導戦機ネオが、ヴィーンと音を走らせながら格納庫の外へと駆け抜けて行く。
「面白いッ!! 望むところだッ!!」
俺も追って脚を動かし、上がりきったシャッターの前に直立する。
(コックピットの中の床は、まるでエアロバイクみたいだな)
中央の立ち位置から歩いて移動する。
その動きに連動して、コックピットの中の床は逆に動く仕組みとなっている。
(パイロットの立ち位置が、中央からズレないようにする為の工夫と言う訳か)
少しずつ身体で覚えて、魔導戦機と言う機体について知っていく。
その過程がとても楽しい。
「極めつけは、このコックピットの内装か……」
全体が魔石仕様になっているのが伺える。
魔力伝導率にして100%を誇る、魔導回路のみで作られた内装と装甲だ。
コックピットに立ったパイロットが魔法やスキルを用いれば、魔力伝導装甲がそれらの魔力を吸収して、外部へと放出して同様の技を放ってくれる。
それも恐らくは、この魔導戦機と言う全長16mを超える機体に合わせて、サイズ感や威力も格段に跳ね上がるに違いない。
「アンチスに使われている塗装の色とも若干違うな?」
両腕を適当に眺めてみれば、魔導戦機ネオのフレームカラーは緑色だと分かる。
「この鉱石の色合いからして、使われているのはヴァルナゴンの素材か」
鈍色鉄鉱石を使ったグレーカラーのアンチスだが、魔導戦機ネオはヴァルナゴンと呼ばれるモンスターの素材が使われている。
ワイバーンの中でも特質して硬いと言われる甲殻竜種の一頭であり、その特性には遅延再生(小)が付いている筈だ。
「なるほどな」
つまり魔導戦機のフレームとは、用いた素材によってその特性を変えられると言う訳だ。
ヴァルナゴンはモンスター図鑑でも、確か守備力S+はある防御型のモンスターだ。
このモンスターの素材にこの特性、装甲の強度はアンチスよりも更に硬く。
加えて遅延再生(小)によって整備の手間がすこしは省けると言う訳だ。
「考えれば考えるほど、よく作られた機体だ」
「おーいチャレンジャー!!
機体開発班や整備班のことを褒めてくれるんは、嬉しいんやけど。
はよう行かんと、グレゴリオに置いて行かれてまうでー!!」
ナズナの一言にハッとした俺は、慌てて我に返って前方を眺める。
「すまん、つい感動してしまった!!
新型の訓練用にするには、持って来いの素材を使った機体だと思って感心していた!!」
「そら、おおきに!!
はよキャタピラー出して追っかけや!!」
「さっきのグレゴリオがやったホバークラフト走行なんだが、あれは一体どうやれば良いんだ!?」
「おいおい、そっからかいなぁ」
呆れたように額に手を当てたナズナの隣から、アイズが口元に手を添えながら発声する。
「キャタピラーは、ステイタス画面を出す時の要領と同じよ!! 頑張って!!」
「ついでに右のレバーがアクセルレバーで、左のレバーがブレーキレバーや!!」
「なるほど……ステイタス画面か。
それと右がアクセルに、左がブレーキ……」
キャタピラーの出し方さえ分かれば、あの走行自体は難なくこなせる筈だ。
(ーーなにせあの走り方は、冒険者トレイン・スーパー・ダッシュアタックと、そっくりよく似た走り方だったからな……)
「ーーステイタス・オープンッ!!」
カッと脚部からキャタピラーが開かれ、ガシンと音を立てて格納庫のコンクリートに設置する。
(最初からフルブーストで行くぞ)
右側のアクセルレバーを前へと倒し、左側のブレーキレバーを引いて車輪を回転させる。
ヴィーンと高速で回り始めたキャタピラーに、回転音がけたたましく響き渡る。
脚部の背面から火花がバチバチと粉を散らす中、俺はブレーキレバーをニュートラルに戻す。
「こちらターニャ・クライリスッ!!
ーー初陣だな?
魔導戦機ネオーー出るぞッ!!」
初めて入った操縦席の光景を眺めて、俺は感動して深い吐息を吐き出す。
中は予想していたよりも随分と暗い。
分度器のような丸い空間、その中に電気コードのような配線が5本分転がっている。
「後部座席は二つあるようだが、見たところ操縦席は見当たらないな?」
中心地点からちょうど後方、壁際には二つ分の後部座席が備え付けてある。
予想していた操縦席とは、随分と異なる。
「ガンダムとかに出てくるような操縦席は、ペダルやレバーに、あとパソコンのキーボードみたいなヤツが幾つもあるのに」
それらの類は一切ない。
中央にあるのはボタンの付いた台座が一つ。
思えば起動の仕方も分からない。
初心者丸出しで、ひとまず頭にナーブギアをすっぽりと被る。
両手足にはリストバンドを巻き付け、準備が出来たので台座のボタンを押してみた。
すると台座は床下に格納され、代わりに左右から二本のレバーが這い上がる。
頭上からは照明用のライトが点灯される。
180°球体のモニターが半透明に移り変わり、前方ではグレゴリオが乗り込んだ剣型の魔導戦機が見えていた。
「多分この機体は、ナーブギアとリストバンドから、脳波と生体電気を読み取って動くシステムなんだ」
体感運動、それもいわゆる3Dモデリングを用いた日本の撮影技術を思い出す。
アクション映画なんかでは、よくワイヤーアクションを撮影する際に、これらの3Dモデリングの技術が使われていると聞く。
つまり魔導戦機とは、自分の身体を自由自在に動かして闘う機体と言うことだ。
「リュックサック型のコックピットの中が、180°球体のドーム状でモニター式だったのはその為か」
確かにそれならば理に適っている。
細かなハンドル操作の一切を取り除き、操縦席の構造を、国家王国騎士や冒険者の肉体の動きに連動させて作り上げて来ている。
それにより行なえるようになるのは、ほとんどノンフレームの誤差で実現される肉弾戦闘だ。
首を回せばメインカメラが動くし、腕を振るえば、機体もそれと同時に合わせて腕を振るうことが出来る。
電気信号の技術体系と、魔石の力を用いた魔導回路が融合している機体だ。
『N.ave I.nternet, L.etro V.alue - A.ctive S.lash&Magic, H.andling Adventureシステム起動』
電源を入れた直後、ナーブギアの両耳部分からAI音声が響き渡る。
前方のメインモニターに映し出されているのは、どうやらシステム起動時に作動するエンジンプログラムのようだ
「ニルヴァーシュ……か?」
プログラムの頭文字を繋ぎ合わせて発音すると、ニルヴァーシュと言うエンジンシステム名になる。
「おい庶民、準備はできたか?」
「あぁ、何とかな」
目の前の剣型の機体から声が届く。
それに合わせてこちらも返事を返すと、コックピットのマイク兼スピーカーから音が拾われ、そのまま外部へと音声が流れる。
「内側と外側がリンクしたのが、魔導戦機と言う機体の特徴だ。
中々に面白いだろう庶民?」
「あぁ、庶民と言う言葉を軽く受け流せるぐらいには、だいぶ気に入ってるところだよ」
「ふん、減らず口を」
そう言ってグレゴリオの駆る剣型の魔導戦機がズシンと音を立てて歩み始める。
大きく揺れる格納庫の中、無数の照明が揺れ動く。
「ではナズナ殿、アイズ殿、この機体少しばかりお借りするぞ」
そう告げたグレゴリオの剣型の魔導戦機が、格納庫のシャッターまで歩くと脚部からキャタピラーのような物を設置させる。
「闘技場に向かうまでのほんの余興だ。
ドッグファイトと行こうじゃないか?」
瞬間、キャタピラー式のホイールが高速回転して火花を散らす。
物凄い勢いで加速し始めた剣型の魔導戦機ネオが、ヴィーンと音を走らせながら格納庫の外へと駆け抜けて行く。
「面白いッ!! 望むところだッ!!」
俺も追って脚を動かし、上がりきったシャッターの前に直立する。
(コックピットの中の床は、まるでエアロバイクみたいだな)
中央の立ち位置から歩いて移動する。
その動きに連動して、コックピットの中の床は逆に動く仕組みとなっている。
(パイロットの立ち位置が、中央からズレないようにする為の工夫と言う訳か)
少しずつ身体で覚えて、魔導戦機と言う機体について知っていく。
その過程がとても楽しい。
「極めつけは、このコックピットの内装か……」
全体が魔石仕様になっているのが伺える。
魔力伝導率にして100%を誇る、魔導回路のみで作られた内装と装甲だ。
コックピットに立ったパイロットが魔法やスキルを用いれば、魔力伝導装甲がそれらの魔力を吸収して、外部へと放出して同様の技を放ってくれる。
それも恐らくは、この魔導戦機と言う全長16mを超える機体に合わせて、サイズ感や威力も格段に跳ね上がるに違いない。
「アンチスに使われている塗装の色とも若干違うな?」
両腕を適当に眺めてみれば、魔導戦機ネオのフレームカラーは緑色だと分かる。
「この鉱石の色合いからして、使われているのはヴァルナゴンの素材か」
鈍色鉄鉱石を使ったグレーカラーのアンチスだが、魔導戦機ネオはヴァルナゴンと呼ばれるモンスターの素材が使われている。
ワイバーンの中でも特質して硬いと言われる甲殻竜種の一頭であり、その特性には遅延再生(小)が付いている筈だ。
「なるほどな」
つまり魔導戦機のフレームとは、用いた素材によってその特性を変えられると言う訳だ。
ヴァルナゴンはモンスター図鑑でも、確か守備力S+はある防御型のモンスターだ。
このモンスターの素材にこの特性、装甲の強度はアンチスよりも更に硬く。
加えて遅延再生(小)によって整備の手間がすこしは省けると言う訳だ。
「考えれば考えるほど、よく作られた機体だ」
「おーいチャレンジャー!!
機体開発班や整備班のことを褒めてくれるんは、嬉しいんやけど。
はよう行かんと、グレゴリオに置いて行かれてまうでー!!」
ナズナの一言にハッとした俺は、慌てて我に返って前方を眺める。
「すまん、つい感動してしまった!!
新型の訓練用にするには、持って来いの素材を使った機体だと思って感心していた!!」
「そら、おおきに!!
はよキャタピラー出して追っかけや!!」
「さっきのグレゴリオがやったホバークラフト走行なんだが、あれは一体どうやれば良いんだ!?」
「おいおい、そっからかいなぁ」
呆れたように額に手を当てたナズナの隣から、アイズが口元に手を添えながら発声する。
「キャタピラーは、ステイタス画面を出す時の要領と同じよ!! 頑張って!!」
「ついでに右のレバーがアクセルレバーで、左のレバーがブレーキレバーや!!」
「なるほど……ステイタス画面か。
それと右がアクセルに、左がブレーキ……」
キャタピラーの出し方さえ分かれば、あの走行自体は難なくこなせる筈だ。
(ーーなにせあの走り方は、冒険者トレイン・スーパー・ダッシュアタックと、そっくりよく似た走り方だったからな……)
「ーーステイタス・オープンッ!!」
カッと脚部からキャタピラーが開かれ、ガシンと音を立てて格納庫のコンクリートに設置する。
(最初からフルブーストで行くぞ)
右側のアクセルレバーを前へと倒し、左側のブレーキレバーを引いて車輪を回転させる。
ヴィーンと高速で回り始めたキャタピラーに、回転音がけたたましく響き渡る。
脚部の背面から火花がバチバチと粉を散らす中、俺はブレーキレバーをニュートラルに戻す。
「こちらターニャ・クライリスッ!!
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