逆転機ニルヴァーシュ -朝斬りの夜明け-【バンダナコミック01】

ボス子ちゃま

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5話ー『犯人はアラン』

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 戦闘開始から約30秒が経過した。

「ーーッ!! 見ろノボルッ!!」

 その時ブラックゴブリンの身体に明らかなる異変が起きた。

「やっぱりアイツ再生持ちだぜッ!!」

「まさかとは思っていたけど、やっぱりそうかッ!!」

 ーー再生。
 それは身体、自動修復能力のことを言う。
 高位のモンスターに備わっているパッシブスキルの一つだ。

(やはり、あの時の違和感はそれだったか……)

 振り抜いた拳には、確かな感触があった。
 だけど気になったのは、その時に感じた手応えだ。

「ハッキリ言って弱すぎた」

 殴った感触だけで言うなら、その辺のスライムを倒したみたいなぐらい弱い。
 ここまで悲惨な光景を作り上げている相手が、そんな簡単にやられる玉とは思えない。

「何か隠し玉を持ってそうね?」

 眉根を寄せながら訝しんだアーシャは、その赤い籠の目の瞳を光らせながら冷静に現状を分析する。
 俺たち三人は友情の冒険者トレインを紡ぎながら、その自動再生能力をまじまじと観察していた。
 胴体のみとなったブラックゴブリンを起点に、周囲で赤く滲んだ血液が宿主へと還って行く。
 それもかなりのスピード。
 数ある再生能力の中でも「高速再生」の部類に入るのは間違いない。
 警戒心を最大限に釣り上げる。
 敵対しておいて言うのもなんだが、舌を巻くほどに恐ろしい再生能力だ。

「とんでもない再生能力だな」

 まるで宇宙から飛来したエイリアンのようだ。
 赤い血液の繊維がゆらゆらと空中を揺らめく。
 マフラーを編み込む糸のように、本体であるブラックゴブリンの頭部が見る見る内に修復して行く。
 俺たち三人の織り成す冒険者トレイン・スーパー・ダッシュアタックは、次の攻撃までに少なからずの時間を有するところが弱点だ。

(基本的には俺の溜め技に頼った、ヒット&アウェイが主流だからな……)

 回復されるのが目に見えているのに。
 こっは黙って次に備えることしか、今の俺たちにはやれることがない。
 それは一言で言うなら苦痛の時間だった。
 攻撃したら陣形を整える為に一度後退する。
 それは例えるならば、地下鉄の環状線のようなものだと俺は思う。
 グルリと周回して再び同じ場所へと辿り着く。
 その為には、もう一度円を描いて一周しなくては、二度と同じ場所に辿り着くことさえ出来ないのだ。

「ーーなるほど。確かにこれは最強種だ」

 竜種にも劣らない頑丈なタフネス。
 その上で回復能力だけなら、明らかにワイバーンの比ではない。

「アタシたち三人とじゃ、ちょっと相性が悪い相手よね」

「ちょっとどころじゃないでしょアーシャ。
 だいぶ悪い。
 持久戦になると完全にボクたちが不利になる。
 分かってるだろ?」

「まぁ、そりゃそうだけど……。
 で、どうするのよノボル?」

「ーー色違いは、やはり伊達ではないと言うことか……」

 黄金ゴールデンパンチを一発食らわせたことで。
 俺はどうやら、自分たちの力量に慢心していたみたいだ。
 次の一撃。
 いや、二撃を当てれば確実に仕留めることが出来るだなんて。
 ーーそんな淡い宛がハズレた瞬間でもある。

「ちょっと!! 聞いてるのノボル!?
 感心している場合じゃないでしょ!!
 消耗戦でマジックアイテムが尽きれば、5%の壁を超えられる可能性が出てくるッ!!
 長期戦になればなるほど、アタシたちのトレインは不利になるのよッ!?
 決めるなら短期決戦以外にあり得ないんだからッ!!」

 激昂しているアーシャが俺の背後から叫ぶ。
 指示に迷いのある俺に苛立っているのだ。

「分かっているさッ!! だがーーッ!!
 なんだか妙なんだ、この雰囲気ッ!!」

 まるで今のは、ほんのチュートリアルのような薄ら寒さを感じる。
 それは言葉に出来ない感覚。
 得体の知れない直勘の類の産物だ。
 一言で言うならば「不気味」なのだ。

「あいつ、多分まだ何か隠してるぞ」

 それが何かは分からない。
 だからこそ、より怖いと感じる。

「どうするノボル? もう一回アレやるか?」

 決断を決めあぐねて俺が顔を伏せていたところ。
 カイトが振り向いて視線を寄越して来た。

「ノボルが悩む気持ちもよく分かるよ。
 ボクもさっきのやり取りで違和感を覚えた」

「カイトも気が付いたか?」

「あぁ、ボクもさっき感じた。
 まるでデモンストレーションみたいな手応えの無さだ。
 直接ブラックゴブリンに触れた訳じゃない。
 けど、あの鍔迫り合いは、かなり楽勝だったように思える」

「それじゃあ、やっぱりさっきの一撃は、ほんの肩慣らしだったってことで良いの?」

「うん……多分ね。
 魔法でしか対峙してないアーシャが、そのことを感じ取れなかったのは、無理もないさ。
 魔法と物理じゃ、なにせ直接相手に触れられる手応えが違うから……」

「なるほど……そういうこと……。
 けど、じゃあアレはまだ第一形態ってことなの?」

「そう、だろうね。恐らくは……。
 第二形態……いや、もっとある可能性まで考えられる。
 ひとまず、ここはノボルに決断を任せよう。
 この暁の旅団のリーダーは、なんと言ってもノボルなんだ。
 ボクはノボルの決断を一番に信じる」

 そう言ってカイトは、視線を真っ直ぐに前方へと戻した。
 俺のことを信じてくれている。
 その期待に応えなくては、友ではない。

「そうだな……。一度、距離を取って様子を見よう。
 フォーメーションをA→遊撃形態のBに変更する。
 俺とカイトの感じた得体の知れない感覚が確かなら。
 恐らくブラックゴブリンには、まだ第二形態が残されているに違いない」

「本当に第二までだと良いけどね?」

 そう言ってカイトは緩やかにスピードを落とす。
 合わせて解除された冒険者トレイン。
 俺たち三人は、並列に並んだ遊撃形態のフォーメーションBへと移行しようとする。
 ーーだが、その直後だったッ!!
 いつもは徐々にスピードを落として止まる筈のカイトが、急にピタリと停止したのはーーッ!!
 「がッ!?」と言う呆気ない声が、続く俺とアーシャの口から溢れる。
 途端に止まったカイトの背中に激突したのだ。
 身体が宙を浮いて、遠心力によって前方へと投げ出される。
 ふわり、そんな擬音が耳に張り付く。

「痛~ッ!! ちょっとッ!! 急に止まらないでよノボルッ!!」

「俺じゃないッ!! 止まったのはカイトだッ!!」

 空中で悲鳴のような声をあげながら、俺とアーシャの身体が綺麗に三日月の弧を描いて、雪原の地面に叩きつけられる。
 辛うじて受け身を取り、俺とアーシャはゴロゴロとその場に転がる。

(ーーあっ、足元が雪道であったことが救われた……ッ!!)

 もしも、この急スピードで足元がアスファルトだった場合を想像したら。
 そこには、想像にかたくない出来事がが起こっていたに違いない。
 それでもーー、

(ーークソッ!! 身体はかなりのダメージだッ!!)

 立ち上がるのもやっとの打撃系ダメージ。
 脳震盪を起こしたようにグラつく視界で、まるで大地震の後みたいな地震酔いを思い出す。
 目まぐるしく回る視界は、まるで回転性の目眩でも起こしたみたいで気持ちが悪い。
 全回状態だった俺のHPバーが、気が付けば緑からイエローゾーンへと減少して行く。
 冒険者は、このHPバーを失った時に初めて死ぬ。
 これがレッドゾーンを超えて0になれば、それで俺たちの命は尽きることになる。

「たった一撃でこのトチかッ!!」

 衝突後の後遺症は、かなりの物だ。
 激痛の走る身体に歯噛みして堪えながら、辛抱強くその場から立ち上がろうとしたーーその時だッ!!
 四つん這いになって顔を上げた瞬間、そこから立ち上がろうとする直後。
 眼の前で硬直していた筈のカイトの身体に向かい、黄色い閃光がまるで落雷のように駆け抜けるのが見えた。
 ぶしゃり、と音を立ててカイトの首が刹那的に宙を舞う。
 雷のようなジグザグの軌道がカイトの首筋を断ち切る。
 ふわりと宙に待った青髪の青年の首が、ぽとりと音を立てて雪原の斜面にすっぽりと収まる。
 埋もれた箇所から一気に赤い染みが広がる。
 稲光のように残った光線がまるで雷鳴のように遅れて光る。
 形容しがたい呆気ない終わりだ。
 友が死んだ。カイトが死んだ。
 目を瞑りたくなるような現実が、俺の心を掻き毟るように襲う。
 見たくもない光景を見てしまう。
 それは紛れもない友の死。
 カイト・スヴェンソンの殉職だった。

「カイトぉおおッ!! うぁあああああああッ!!」

 ーーマンマ・ミーアッ!!
 嗚咽混じりの俺の絶叫が、山彦となって雪原に響き渡った瞬間でもある。



 首と胴体を切り離されたカイトの身体が、ドサリと音を立てて雪原に倒れ込む。
 それが人間とモンスターの違い。
 普通の人間は、首を切断されただけでこうも簡単に死んでしまう。

「ーー友が死んだ。カイトが死んだ」

 カイト・スヴェンソンが死んだ。
 受け入れ難い現実を前に、俺はブツブツと呪詛のように言葉を吐き捨てる。
 恨めしい。憎い。友を殺したアイツが許せない。
 そんな憎悪の連鎖が、まるで沸騰したヤカンのように心の奥底で警笛を鳴らす。
 網膜の裏に鮮明と焼き付いた友の死が離れない。
 それは決して揺るぎようのない、歴史と言う名の鎮魂歌だ。
 彼はさっきあの瞬間。
 朽ちてこの世界の歴史にその名を遺した。
 ーーカイト・スヴェンソン(死亡)
 世界の歯車に一度でも刻んでしまったその名前は、もはや決して癒えることはないのだろう。

「クソがッ!! クソッタレッ!!」

 雪道の斜面を拳で叩きつけ、何度も何度も繰り返し叫んだ。
 立ち上がるのが辛い。
 それなのに俺は、まだここから立ち上がらない訳にはいかない理由がある。
 そのことに心がポッキリと折れかけている。
 グルグルと回る心の渦中が、憎悪と言う名の憎しみを連鎖させていたのだ。
 怒りと憎しみで気が狂いそうだ。
 今すぐに立ち上がって敵を取れ。
 そう思っているのに、足は竦んで思うようには動き出せない。
 一番硬くて、一番速い男が死んだのだ。
 それよりも速く動けて、硬さを超えてくる相手に、俺だけだでどうこう出来る訳もない。

「最早、バカ正直に真正面から闘って勝てる相手だとは、到底思わんッ!!」

 クッ、と歯噛みして、それでも俺は立ち上がる。
 この時点で俺たちの敗北は、確定してしまったも同然だ。
 だからと言ってこの身を投げ出す訳には、いかない理由が存在した。
 友が死んだショックは、確かにかなり大きい。
 俺だけが生きているなんて、罪悪感で押し潰されて今にも自死を選びたくなる。
 誰かに殺されるのならば、せめて自分で
 だけどそれでも俺は、今を生きることを諦めきれない。
 ーー諦めてはいけないッ!!

「諦めたらそこで何もかもが終わりだッ!!」

 ーー生きている限りは、人間は何だって出来る!!

「せめてアーシャだけでも、この場から逃さなくてはッ!!」

 背後にはまだ、俺の大事な婚約者のアーシャが残っている。
 それだけが、今の俺に残された大事な宝物なんだ。
 それを護り抜く為に!!

(今できる最善の方法を考えろ!!)

 思考をフル加速させるんだ。
 脳内のコマンドを「たたかう」→「にげる」に変更する。
 クラウチングスタートのような要領で、勢いよく足を踏み出そうとしたーーその時だ。
 自分の足を力いっぱい動かそうとしても、動き出さないことに気が付いたのは。

「なッ、何でだッ!?」

 ーーバカな!! おかしいッ!!
 立ち上がろうとしたのに、動き出せないなんて。
 恐怖心に劣った訳ではない。
 痛みに我慢ができず耐えかねたのとも異なる。

(ーーどうして俺の身体に麻痺がッ!?)

 動けなかったのは、身体が状態異常の麻痺を起こしていたからだ。
 目に見えるほどの帯電した電流。
 それらが俺の身体に纏わりついて、ビリビリと黄色い電気を流し続けている。

(ーーバカなッ!? あり得ないッ!!)

 アーシャのかけたバフの持続時間は、まだ残っている筈だ。
 守護魔法のクールタイムは15秒。
 その間は、アーシャのアクティブスキルがクールダウンに入る。
 だが、俺たちはいつもその弱点に対策を施してある。
 クールダウンカットアイテム。
 ーー「クソふざけたたくあん」。
 これがあると、魔法及び物理スキルのクールタイムを15秒軽減できる。
 このマジックアイテム自体のクールタイムは、ジャスト30秒。
 戦闘中にアクティブスキルをかけ直すタイミングで使えば、擬似的な無限ループが発動できる。
 アーシャには、産まれながらにある絶妙なリズム感と、絶対音感のスキルが備わっている。
 例え戦闘中であっても、アーシャがこのタイミングを逃す訳がない。
 視界の右端に映るステイタスアイコン。
 そこには、28秒と言うアーシャのバフの持続時間が刻まれている。
 つまり、この時点でアーシャのアクティブスキルは、ちゃんとかかっている状態だ。
 それにさっき、話をしている最中にアーシャがアイテムを使うところもこの目で見ていた。
 だけどカイトが急に止まった理由は、間違いなく麻痺だ。

(ーー完全耐性を超えられたのか?)

 そうとしか考えられない。
 状態異常対策を100%にしていたところで、状態異常にかかってしまうシチュエーションは、この世に一つだけ存在する。
 それは相手の状態異常をかける数値が、こちらの守護耐性100%以上を超えて来てしまった時だ。

(ーー世界仕様ワールドシステムに不具合はないッ!!)

 だったらどうして麻痺になるッ!?
 ブラックゴブリンの吐いた毒霧とマヒ霧が周囲には蔓延している。
 だけど俺にかかっているのは、マヒ霧だけだ。

(片方だけ、耐性を超えて来たと言うのか?)

 異変が起きて、ブラックゴブリンが復活し始めたあの時から。

(あるいは、何だ?)

 モヤモヤと霧がかった状態で俺は思考を続ける。
 答えは、いつまでも出ない。

(守護騎士におけるパッシブスキルは、本人の死後にもその恩恵が与えられることの出来る永続スキルだ……)

 今ある状況でこの謎を推理するなら、ブラックゴブリンのマヒ霧だけが100%の防御耐性を超えて来たとしか考えられない。

(ーーあるいは、アーシャがしくじったかだ。
 ーーだが、どうしてカイトだけが麻痺になる?)

 あの時、あの瞬間、真っ先に止まったのはカイト一人だ。
 そこに俺とアーシャが後ろからぶつかった。

(どう考えてもこの状況は、おかしい……)

 ブラックゴブリンの吐いたマヒ霧が、本当に第二形態に再生したことで、その片方だけが100%を超えて来たとする。
 それならば、

(麻痺にかかるのは三人同時でなくてはならない筈だ……)

 アーシャがしくじったケースにしても同じことが言えるだろう。

「ノボル!! カイトがッ!! カイトがッ!!」

 アーシャの悲痛の叫び背後から聞こえた。
 咄嗟に振り向いて彼女の姿を確認したいと思った。
 だが、今の俺にはそれさえも出来ない。
 辛うじて出来るのは、言葉を発することだけだ。

「クソッ!! 動け俺の身体ッ!!」

 歯噛みして悪態をついた時。
 俺の視界の端では、アーシャが駆け抜ける姿が目に飛び込む。

「なッ!? アーシャはまだ動けるって事かッ!?」

 理由は分からない。
 だが、アーシャは麻痺にはかかっていないみたいだ。
 一体どうして?
 そんな疑問が俺の脳裏を掠めた時、それよりも俺はアーシャの身の危険を感じた。

「ーー待てッ!! アーシャッ!!
 お前一人じゃそいつには勝てないッ!!」

 手を伸ばして俺は叫ぶ。
 いくら暁の旅団の中で一番足が遅いと言っても、彼女も立派に手練れの冒険者だ。
 本気で走れば遅い訳がなく。
 その初速は、実に60km/hを上回る。
 ーーだが、逆にそのことが意味する事とはーーッ!!

「頼むから止まってくれッ!!
 今のお前じゃそいつには勝てないんだッ!!」

 ここでアーシャまで失えば、俺にとってこの戦闘は最悪の結末を迎えることになる。
 友まで失い。
 その上で婚約者まで失ったとあっては、俺はこの先どうやって生きればいい?
 考える余地なんて無かった。
 縋り付くように必死に伸ばした右腕に、バチバチと電流が迸る。
 身体に激痛が走るのを堪えて、その場から全身全霊で立ち上がろうとする。

「動けぇええええッ!!
 俺の身体ぁあああああッ!!」

 叫んで力んで、懸命に自分の身体に鞭を入れる。
 全身の筋肉がはち切れそうになりながら、ようやくの想いで俺の身体を一歩と足を踏み出そうとしたーーその時だった。

「グプッ……?」

 途端に自分の右腕から力が抜け落ちる。
 再び四つん這いになり、頭だけを上げてアーシャの走りゆく背中を遠巻きに見つめていた。

「何だ……? これ……?」

 自分の唇から、真っ赤な血液がポタリと滴る。
 それは言うまでもなく、自分の内蔵器官から込み上げた血塊だろう。
 次の瞬間には、ドバドバと吐瀉物を吐き出すように俺は血の塊を吐き出す。
 目下の雪原に赤い染みがじわりと広がるのが見える。
 ーー誰かが、俺の背中を刺したのだ。
 そしてその誰かは、きっと刃物のような鋭利なものを使ったんだろう。

(背中にナイフのような小刀が、突き刺さっている感触……。
 これはーーマズいな……)

 内臓機能を深くやられているのが分かる。
 込み上げる吐気に、たまらず二度目の嗚咽を繰り返す。
 吐き出された血塊が、バケツをひっくり返したように再び広がりを見せる。

(誰かは知らないが、このままでは俺も長くは持ちそうにないな……)

 自分の死期を悟るには、充分な一撃だった。

(まだ、瞳を閉じる訳にはいかない……)

 クラクラと酩酊する意識の中、俺は必死で瞬きを繰り返す。
 意識が落ちるその瞬間、俺の生命の鼓動が途切れる時だ。

「ーー誰だッ!! お前はーーッ!?」

 後ろに誰かが居るのだ。
 そして、その誰かが俺の背中を刺した。
 限りある命の時間を用いて、せめてそいつの顔だけでも拝んでやろうと思った。
 その時、

「ーーお前がいけないんだぜ?」

 ふいに俺の耳に、聞き覚えのある声が届いた。
 自分の肩に手をつかれて、そこに目をやる。
 そこに立っていたのは、あの冒険者ギルドの受付係員アラン・モルドだった。
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