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3話ー『カイキ山道 〜ゴルド山脈までの道のり〜』
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王都マナガルムから、北西50kmに位置するカイキ山道。
雑木林に囲まれたゴルド山脈までの登山道だが、そこはお目当てのブラックゴブリンに辿り着くまでの山道のザレ場になっている。
道なき斜面をひたすらに歩み続ける。
昼食を取り終えた俺たち三人は、早速だが準備を整え狩り場へと足を運んでいた。
「にしても、凄い氷霧だな」
標高3500メートルを誇る大氷山の一角だ。
そこに至るまでの道のりは、既に氷点下にして気温は-30℃を下回っている。
登山するだけでも困難だ。
防寒対策にアーシャの防衛魔法がかけられる。
氷衣結界 《アイス・プロテクション》と呼ばれる氷属性に対する守護の魔法だ。
「アーシャの魔法があって助かったよ」
素直にそのことを今は感謝する。
「やっぱりボクたちの天才魔法使い様は、ここぞと言う時にも頼りになるねえッ!!」
先陣を切るカイトの言葉に、俺もコクリと頷いて同意を示した。
「もしアーシャの魔法が無ければ、この時点で俺たちは氷漬けだったな」
凍傷による状態異常ダメージは、バカにならない。
火傷の類もそうだが、ジワジワと体力を削るデバフは、後々になって地味に効いて来る。
特にこの三人のパーティーには、回復役と呼ばれる回復術士が不足している。
ダメージを貰ったら回復できる手段がない以上。
討伐目標を倒す前に、下手なダメージを貰うのは、避けなくてはならない。
「それに加えてこの霧も厄介だ」
氷霧と呼ばれる白い霧が蔓延している。
おかげで入山者全員に《暗黙耐性》の持ち物検査をかけて来ている状態だ。
対策は事前に取って来ているが、それが無ければ今ごろ視界の全てがホワイトアウトされていたに違いない。
どうやらこのゴルド山脈までの道のりであるカイキ山道。
やはりダンジョンフィールドになっている。
しかも常時デバフ付きの嫌がらせフィールドだ。
守護騎士であるカイトのパッシブスキルと。
魔法使いであるアーシャのアクティブスキルで対応するしかない。
「まっ、アタシにかかれば、このぐらいなら余裕ね!!
と言うかそれを言うなら、カイトだって天才守護騎士の一人じゃない?」
素直に褒められることに慣れていないアーシャは、いわゆるツンデレと言う気質を持ち合わせた少女である。
そのことがたまらなく愛おしいのだが、明るい性格のアーシャが居るとパーティーの雰囲気がまず和む。
冒険者にとって重要なのは、何もそのステイタスの高さやクラスジョブのレアリティだけとは限らない。
性格だって、勿論その一つだ。
どうせ冒険するなら、明るく楽しいほうが絶対に良い。
「まぁ、これしきのホワイトアウトなら流石にね?
ボクはこう見えても、世界最硬を自負する守護騎士だよ?」
お調子者のカイトが力強く自分の存在価値を力説する。
実際、カイトの防御力と呼ばれるステイタスはかなり高い。
守護騎士であるカイトは、パーティーを前線から守護する前衛職だ。
数ある盾職の中でも上位職の部類に入る守護騎士は、高い防御力と最大HPが特徴的なクラスジョブになる。
基本ステイタスの高さに加えて、守護すべき対象への全体パッシブ効果が発動する。
得られるユニークパッシブスキルの恩恵は、
《沈黙耐性》《暗闇耐性》
《燃焼耐性》《毒耐性》《マヒ属性耐性》
それぞれ最低から50%アップの恩恵から、毒や麻痺になると最大で95%の恩恵が得られる。
これにより俺たち三人の視界は、氷霧に対して瞳半分ほどの視野は確保している。
「ちょっとやそっとの悪天候なら、このボクにドーンと任せておけよなぁ!!
ボクの鉄壁スキルは、この程度の気候の変化になんか負けやしねえからッ!!」
赤いほっぺを緩ませてドヤ顔を浮かべたカイトは、我先にと山道のザレ場をハイテンションで駆け上がって行く。
体重80kgの重量級であるカイトは、三人の中でも一番足取りが重そうに見える。
だが、実際のところはその真逆だ。
一番前線に立つ守護騎士である以上、有事の際には誰よりも逸早く動ける必要性がある。
敏捷性は高く、そのトップスピードはパーティー随一。
加えでそのスピードを維持する為の高いスタミナも必要だ。
この世界に生きるすべての者たちに用意されたステイタス。
その中でもレベルの上昇に応じて得られる、自由ポイントと呼ばれるレベルアップボーナスが存在している。
これによりすべての冒険者は、自分だけのクラスジョブを成長させた後、それに合わせたステイタス構築を施せる。
カイトはそのポイントをすべてスピードステイタスに振り込んだ、所謂スピード特化型のディフェンダーだ。
だからカイトは、このパーティーの中でも一番足が速くて体力がある。
続く俺とアーシャは、その後方からお互いにアタッカーと補助の役割をこなす。
俺が物理アタッカーを担当する。
物理無効対策に、アーシャが魔法アタッカー兼サポーターと言う役割をこなす。
二人とも主に火力重視。
三人パーティーのバランスは、かなり良い。
さっきアーシャが使った守護魔法からして分かる通り。
カイトのパッシブスキルで手の届かない痒い部分には、アーシャのアクティブスキルを使ってカバーする。
さらに極めつけは、俺の前衛火力。
魔法拳士と言う手数重視のクラスジョブに、基本的にはSTR特化の一発打撃を得意とする。
ピーキーな戦闘スタイルではあるが、当たればどんな相手でも一撃で葬れる黄金パンチが最大の自信。
ゲームで例えるなら、この俺の右腕は溜め技系統の必殺技だ。
溜め具合によっては、この拳一つで王都を壊滅させるだけの威力が備わっている。
これが俺たちの基本的なフォーメーション。
そして打撃役の俺は、いつでもカイトの背後にピタリと張り付いておく必要性があることから、速度ステイタスはパーティー2番手。
割り振れる自由ポイントは、すべてSTRと速度に振り切ったロマン砲としての構築を施してある。
通常、レイド級と呼ばれる大型モンスターになればなる程、展開させることのできる魔法障壁の厚みは増して行く傾向にある。
魔法障壁とは、魔法を使うモンスターが自動で取得している目に見えない結界のことであり。
この壁を突破する為には、より強い魔法を撃ち続けて壊して破壊するか。
あるいは、拳や斬撃などを使った物理系のスキルでマジックキャンセルを行うかだ。
ブラックゴブリンは、恐らくこの魔法障壁を使ってくる。
例えばワイバーンが居たとしよう。
等級にしておよそB級に数えられるワイバーン一頭は、飛行魔法と呼ばれる神域の魔法を得意とする珍しいモンスターだ。
人類で飛行魔法を使えるのは、現時点ではたったの5人。
つまり、ほとんどの場合。
モンスターは、人間よりも魔法が得意な傾向にあるのが分かる。
ワイバーンに展開されている魔法障壁の数は、およそ15枚。
そして魔法VS魔法の対決では、どちらが先に相手の魔法障壁を剥がして殴れるかと言う闘いになる場合が多い。
しかし物理職の場合は、魔法障壁を貫通して一撃でその壁を突破できる。
ーー何故なら、物理だからだ。
つまりこの世界において拳士とは、ピーキーだが世界最強クラスとしての可能性が秘められた一発屋だ。
ずばり俺は、そこが気に入った。
(ーーまずッ!! 負ける訳がないッ!!)
そんな不確かな確信と共に。
ついに俺たちはカイキ山道のザレ場を超え、中腹に位置するゴルド山頂へと到達する。
雑木林に囲まれたゴルド山脈までの登山道だが、そこはお目当てのブラックゴブリンに辿り着くまでの山道のザレ場になっている。
道なき斜面をひたすらに歩み続ける。
昼食を取り終えた俺たち三人は、早速だが準備を整え狩り場へと足を運んでいた。
「にしても、凄い氷霧だな」
標高3500メートルを誇る大氷山の一角だ。
そこに至るまでの道のりは、既に氷点下にして気温は-30℃を下回っている。
登山するだけでも困難だ。
防寒対策にアーシャの防衛魔法がかけられる。
氷衣結界 《アイス・プロテクション》と呼ばれる氷属性に対する守護の魔法だ。
「アーシャの魔法があって助かったよ」
素直にそのことを今は感謝する。
「やっぱりボクたちの天才魔法使い様は、ここぞと言う時にも頼りになるねえッ!!」
先陣を切るカイトの言葉に、俺もコクリと頷いて同意を示した。
「もしアーシャの魔法が無ければ、この時点で俺たちは氷漬けだったな」
凍傷による状態異常ダメージは、バカにならない。
火傷の類もそうだが、ジワジワと体力を削るデバフは、後々になって地味に効いて来る。
特にこの三人のパーティーには、回復役と呼ばれる回復術士が不足している。
ダメージを貰ったら回復できる手段がない以上。
討伐目標を倒す前に、下手なダメージを貰うのは、避けなくてはならない。
「それに加えてこの霧も厄介だ」
氷霧と呼ばれる白い霧が蔓延している。
おかげで入山者全員に《暗黙耐性》の持ち物検査をかけて来ている状態だ。
対策は事前に取って来ているが、それが無ければ今ごろ視界の全てがホワイトアウトされていたに違いない。
どうやらこのゴルド山脈までの道のりであるカイキ山道。
やはりダンジョンフィールドになっている。
しかも常時デバフ付きの嫌がらせフィールドだ。
守護騎士であるカイトのパッシブスキルと。
魔法使いであるアーシャのアクティブスキルで対応するしかない。
「まっ、アタシにかかれば、このぐらいなら余裕ね!!
と言うかそれを言うなら、カイトだって天才守護騎士の一人じゃない?」
素直に褒められることに慣れていないアーシャは、いわゆるツンデレと言う気質を持ち合わせた少女である。
そのことがたまらなく愛おしいのだが、明るい性格のアーシャが居るとパーティーの雰囲気がまず和む。
冒険者にとって重要なのは、何もそのステイタスの高さやクラスジョブのレアリティだけとは限らない。
性格だって、勿論その一つだ。
どうせ冒険するなら、明るく楽しいほうが絶対に良い。
「まぁ、これしきのホワイトアウトなら流石にね?
ボクはこう見えても、世界最硬を自負する守護騎士だよ?」
お調子者のカイトが力強く自分の存在価値を力説する。
実際、カイトの防御力と呼ばれるステイタスはかなり高い。
守護騎士であるカイトは、パーティーを前線から守護する前衛職だ。
数ある盾職の中でも上位職の部類に入る守護騎士は、高い防御力と最大HPが特徴的なクラスジョブになる。
基本ステイタスの高さに加えて、守護すべき対象への全体パッシブ効果が発動する。
得られるユニークパッシブスキルの恩恵は、
《沈黙耐性》《暗闇耐性》
《燃焼耐性》《毒耐性》《マヒ属性耐性》
それぞれ最低から50%アップの恩恵から、毒や麻痺になると最大で95%の恩恵が得られる。
これにより俺たち三人の視界は、氷霧に対して瞳半分ほどの視野は確保している。
「ちょっとやそっとの悪天候なら、このボクにドーンと任せておけよなぁ!!
ボクの鉄壁スキルは、この程度の気候の変化になんか負けやしねえからッ!!」
赤いほっぺを緩ませてドヤ顔を浮かべたカイトは、我先にと山道のザレ場をハイテンションで駆け上がって行く。
体重80kgの重量級であるカイトは、三人の中でも一番足取りが重そうに見える。
だが、実際のところはその真逆だ。
一番前線に立つ守護騎士である以上、有事の際には誰よりも逸早く動ける必要性がある。
敏捷性は高く、そのトップスピードはパーティー随一。
加えでそのスピードを維持する為の高いスタミナも必要だ。
この世界に生きるすべての者たちに用意されたステイタス。
その中でもレベルの上昇に応じて得られる、自由ポイントと呼ばれるレベルアップボーナスが存在している。
これによりすべての冒険者は、自分だけのクラスジョブを成長させた後、それに合わせたステイタス構築を施せる。
カイトはそのポイントをすべてスピードステイタスに振り込んだ、所謂スピード特化型のディフェンダーだ。
だからカイトは、このパーティーの中でも一番足が速くて体力がある。
続く俺とアーシャは、その後方からお互いにアタッカーと補助の役割をこなす。
俺が物理アタッカーを担当する。
物理無効対策に、アーシャが魔法アタッカー兼サポーターと言う役割をこなす。
二人とも主に火力重視。
三人パーティーのバランスは、かなり良い。
さっきアーシャが使った守護魔法からして分かる通り。
カイトのパッシブスキルで手の届かない痒い部分には、アーシャのアクティブスキルを使ってカバーする。
さらに極めつけは、俺の前衛火力。
魔法拳士と言う手数重視のクラスジョブに、基本的にはSTR特化の一発打撃を得意とする。
ピーキーな戦闘スタイルではあるが、当たればどんな相手でも一撃で葬れる黄金パンチが最大の自信。
ゲームで例えるなら、この俺の右腕は溜め技系統の必殺技だ。
溜め具合によっては、この拳一つで王都を壊滅させるだけの威力が備わっている。
これが俺たちの基本的なフォーメーション。
そして打撃役の俺は、いつでもカイトの背後にピタリと張り付いておく必要性があることから、速度ステイタスはパーティー2番手。
割り振れる自由ポイントは、すべてSTRと速度に振り切ったロマン砲としての構築を施してある。
通常、レイド級と呼ばれる大型モンスターになればなる程、展開させることのできる魔法障壁の厚みは増して行く傾向にある。
魔法障壁とは、魔法を使うモンスターが自動で取得している目に見えない結界のことであり。
この壁を突破する為には、より強い魔法を撃ち続けて壊して破壊するか。
あるいは、拳や斬撃などを使った物理系のスキルでマジックキャンセルを行うかだ。
ブラックゴブリンは、恐らくこの魔法障壁を使ってくる。
例えばワイバーンが居たとしよう。
等級にしておよそB級に数えられるワイバーン一頭は、飛行魔法と呼ばれる神域の魔法を得意とする珍しいモンスターだ。
人類で飛行魔法を使えるのは、現時点ではたったの5人。
つまり、ほとんどの場合。
モンスターは、人間よりも魔法が得意な傾向にあるのが分かる。
ワイバーンに展開されている魔法障壁の数は、およそ15枚。
そして魔法VS魔法の対決では、どちらが先に相手の魔法障壁を剥がして殴れるかと言う闘いになる場合が多い。
しかし物理職の場合は、魔法障壁を貫通して一撃でその壁を突破できる。
ーー何故なら、物理だからだ。
つまりこの世界において拳士とは、ピーキーだが世界最強クラスとしての可能性が秘められた一発屋だ。
ずばり俺は、そこが気に入った。
(ーーまずッ!! 負ける訳がないッ!!)
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ついに俺たちはカイキ山道のザレ場を超え、中腹に位置するゴルド山頂へと到達する。
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