25 / 31
本章~恋に落ちるまで~
発熱の理由
しおりを挟む
「どうした。」
部屋の入り口付近から声がかかり、リナは手を止めてそちらを振り返った。
僕も少し遅れて目をやる。
そこには、陛下が立っていた。
(ああ…また陛下に助けられた…。)
リナは身体の正面を陛下に向けると深々とお辞儀をした。
「王妃様の体調が悪く、お着替えを手伝わせていただくところでした。」
サーラと違って、リナは陛下に対して、凛とした様子で答えた。
(……自分より高位の人と話すのに慣れてるのかな…。)
ボーッとした頭で、そんなどうでもいい感想じみたことを考えていると、陛下が口を開いた。
「そうか。
ならば、その役目は私に任せてくれ。
君はもう下がってよいぞ。」
バッサリと言い切った陛下に、侍女が食い下がれるはずもなく、リナは陛下と僕に頭を下げると部屋を後にした。
リナが出ていって、陛下はすぐに僕のもとへ駆け寄ってきた。
「ルーノ、大丈夫かい?
顔が真っ赤だね。随分な高熱のようだ。」
僕の顔を覗く陛下の顔つきは厳しかった。
そして、少し考え込む様子を見せた。
「……へーか…?」
僕は軽く首を傾けて、陛下をボーッと眺めていた。
「ああ、すまない。
まずは先に身体を拭いて、着替えてしまおうか。」
そう言って、手際よく僕の世話をしてくれた。
その間、陛下は全く話さなかった。
着替えが済み、僕をベッドに横たわらせると、陛下はベッドの横に椅子をおいて腰を下ろした。
そして、おもむろに口を開いた。
「ねぇ、ルーノ。
今日、昼頃に私と会ったよね。
そのあと、何か口にした?」
真剣な眼差しで問われた。
僕は朦朧としながらも必死に記憶を辿った。
…あ。
「…散歩のあと、部屋に戻ったらお水が置いてあった…ので、それを飲んだくらいです…。
あとは何も口にしてません…。」
少したどたどしい話し方になってしまったが、僕の言葉をきいた陛下は立ち上がって、部屋の端のテーブルに近寄った。
そして、水差しと、僕が使ったまま置きっぱなしにしていたグラスを手にとってそれらをしばし見つめていた。
それから、陛下は水差しからグラスに水を注ぎ、自身でそれを飲んだ。
(あ…へーかと、間接ちゅー、だ…。)
熱のせいか、さっきからどうでもいいことを考えてしまう。
水を飲んだ陛下は、しばし動きを止めて考えている様子だった。
「…へーか?」
おずおずと声をかける。
すると、陛下はきびすを返して、ベッド横の椅子に戻ってきた。
そして。
「あの水、何か薬が混ざってる。」
そう、僕に告げたのだ。
部屋の入り口付近から声がかかり、リナは手を止めてそちらを振り返った。
僕も少し遅れて目をやる。
そこには、陛下が立っていた。
(ああ…また陛下に助けられた…。)
リナは身体の正面を陛下に向けると深々とお辞儀をした。
「王妃様の体調が悪く、お着替えを手伝わせていただくところでした。」
サーラと違って、リナは陛下に対して、凛とした様子で答えた。
(……自分より高位の人と話すのに慣れてるのかな…。)
ボーッとした頭で、そんなどうでもいい感想じみたことを考えていると、陛下が口を開いた。
「そうか。
ならば、その役目は私に任せてくれ。
君はもう下がってよいぞ。」
バッサリと言い切った陛下に、侍女が食い下がれるはずもなく、リナは陛下と僕に頭を下げると部屋を後にした。
リナが出ていって、陛下はすぐに僕のもとへ駆け寄ってきた。
「ルーノ、大丈夫かい?
顔が真っ赤だね。随分な高熱のようだ。」
僕の顔を覗く陛下の顔つきは厳しかった。
そして、少し考え込む様子を見せた。
「……へーか…?」
僕は軽く首を傾けて、陛下をボーッと眺めていた。
「ああ、すまない。
まずは先に身体を拭いて、着替えてしまおうか。」
そう言って、手際よく僕の世話をしてくれた。
その間、陛下は全く話さなかった。
着替えが済み、僕をベッドに横たわらせると、陛下はベッドの横に椅子をおいて腰を下ろした。
そして、おもむろに口を開いた。
「ねぇ、ルーノ。
今日、昼頃に私と会ったよね。
そのあと、何か口にした?」
真剣な眼差しで問われた。
僕は朦朧としながらも必死に記憶を辿った。
…あ。
「…散歩のあと、部屋に戻ったらお水が置いてあった…ので、それを飲んだくらいです…。
あとは何も口にしてません…。」
少したどたどしい話し方になってしまったが、僕の言葉をきいた陛下は立ち上がって、部屋の端のテーブルに近寄った。
そして、水差しと、僕が使ったまま置きっぱなしにしていたグラスを手にとってそれらをしばし見つめていた。
それから、陛下は水差しからグラスに水を注ぎ、自身でそれを飲んだ。
(あ…へーかと、間接ちゅー、だ…。)
熱のせいか、さっきからどうでもいいことを考えてしまう。
水を飲んだ陛下は、しばし動きを止めて考えている様子だった。
「…へーか?」
おずおずと声をかける。
すると、陛下はきびすを返して、ベッド横の椅子に戻ってきた。
そして。
「あの水、何か薬が混ざってる。」
そう、僕に告げたのだ。
0
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説
兄が届けてくれたのは
くすのき伶
BL
海の見える宿にやってきたハル(29)。そこでタカ(31)という男と出会います。タカは、ある目的があってこの地にやってきました。
話が進むにつれ分かってくるハルとタカの意外な共通点、そしてハルの兄が届けてくれたもの。それは、決して良いものだけではありませんでした。
ハルの過去や兄の過去、複雑な人間関係や感情が良くも悪くも絡み合います。
ハルのいまの苦しみに影響を与えていること、そしてハルの兄が遺したものとタカに見せたもの。
ハルは知らなかった真実を次々と知り、そしてハルとタカは互いに苦しみもがきます。己の複雑な感情に押しつぶされそうにもなります。
でも、そこには確かな愛がちゃんと存在しています。
-----------
シリアスで重めの人間ドラマですが、霊能など不思議な要素も含まれます。メインの2人はともに社会人です。
BLとしていますが、前半はラブ要素ゼロです。この先も現時点ではキスや抱擁はあっても過激な描写を描く予定はありません。家族や女性(元カノ)も登場します。
人間の複雑な関係や心情を書きたいと思ってます。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
王様は知らない
イケのタコ
BL
他のサイトに載せていた、2018年の作品となります
性格悪な男子高生が俺様先輩に振り回される。
裏庭で昼ご飯を食べようとしていた弟切(主人公)は、ベンチで誰かが寝ているのを発見し、気まぐれで近づいてみると学校の有名人、王様に出会ってしまう。
その偶然の出会いが波乱を巻き起こす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる