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本章~恋に落ちるまで~
熱の名残り
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翌朝。
目が覚めてすぐに、具合が良くなっていることに気がついた。
ゆっくりと身体を起こし、部屋内を見渡す。
窓から朝日が射し込んでいた。
僕はベッドから足を下ろして内履きに足を引っ掻ける。
そのまま、窓を開けてバルコニーに出た。
爽やかな風が僕の髪をなびかせる。
僕は大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
熱がこもっていた身体を、冷たくて新鮮な空気が洗い流してくれる。
「気持ちいい…。」
僕はもう一度、今度は目を閉じ、両手を広げて空気を吸い込んだ。
「おはよう。」
「ぶっ…げほっ、がほっ…っ!」
突然後ろから声をかけられ、一人だと思って油断していた僕は、驚いて咳き込んでしまった。
「ああ、すまない、驚かせてしまったかな。」
振り向くと、陛下が穏やかな笑みをこちらに向けていた。
朝日を正面から浴びた陛下は、きらきらしていて眩しかった。
「……………陛下、おはようございます。」
そんな陛下をかっこいいと思ってしまった自分が悔しくて。
僕は、あたかも驚かされたことに対する不満であるかのように半目で睨みつけた。
「病み上がりなんだからちゃんと羽織らないとだめじゃないか。
熱がぶり返してしまうよ。」
そんな僕を全く意に介さず、陛下は自分の羽織りを僕の肩に掛けた。
ふわり、と陛下の香りが鼻をくすぐる。
暖かい。
また、心臓がドキドキと高鳴り始めた。
「ルーノ?」
黙り込んだ僕を不審に思ったのか、陛下が僕の顔を覗き込む。
「あれ、まだ熱があるのかな。
顔が赤いけれど…。」
そう言って、陛下は僕の頬を両手で包み込んで、僕の額に陛下の額をこつん、と当てた。
僕は一言も発さなかった。
静かに、されるがままに、陛下に身を委ねていた。
「熱は…、ないみたい。
良かった、もう安心だね。
ただ、まだ安静にしていた方が良い。
ルーノ、一緒に部屋に戻ろうか。」
そう言って、陛下は僕から顔を離した。
「………。」
僕は、じっ、と陛下の瞳を見つめていた。
「ルーノ?」
陛下は、僕のいつもの騒がしい様子からはかけ離れた大人しさに、戸惑ったように僕の名を呼んだ。
僕は静かに目を閉じた。
陛下を見上げたまま。
陛下が驚いたのが、目を閉じていても分かった。
これは、今、そんな気分なだけだ。
熱が下がって、病み上がりで、家族のもとを離れていて、なんだか心細いから、そんな気分になっているだけ。
陛下の温もりが、今はちょうど良いだけ。
陛下は、僕の頬を優しく撫でて、静かに顔を近づけた。
そして。
優しいキスを落としたのだった。
目が覚めてすぐに、具合が良くなっていることに気がついた。
ゆっくりと身体を起こし、部屋内を見渡す。
窓から朝日が射し込んでいた。
僕はベッドから足を下ろして内履きに足を引っ掻ける。
そのまま、窓を開けてバルコニーに出た。
爽やかな風が僕の髪をなびかせる。
僕は大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
熱がこもっていた身体を、冷たくて新鮮な空気が洗い流してくれる。
「気持ちいい…。」
僕はもう一度、今度は目を閉じ、両手を広げて空気を吸い込んだ。
「おはよう。」
「ぶっ…げほっ、がほっ…っ!」
突然後ろから声をかけられ、一人だと思って油断していた僕は、驚いて咳き込んでしまった。
「ああ、すまない、驚かせてしまったかな。」
振り向くと、陛下が穏やかな笑みをこちらに向けていた。
朝日を正面から浴びた陛下は、きらきらしていて眩しかった。
「……………陛下、おはようございます。」
そんな陛下をかっこいいと思ってしまった自分が悔しくて。
僕は、あたかも驚かされたことに対する不満であるかのように半目で睨みつけた。
「病み上がりなんだからちゃんと羽織らないとだめじゃないか。
熱がぶり返してしまうよ。」
そんな僕を全く意に介さず、陛下は自分の羽織りを僕の肩に掛けた。
ふわり、と陛下の香りが鼻をくすぐる。
暖かい。
また、心臓がドキドキと高鳴り始めた。
「ルーノ?」
黙り込んだ僕を不審に思ったのか、陛下が僕の顔を覗き込む。
「あれ、まだ熱があるのかな。
顔が赤いけれど…。」
そう言って、陛下は僕の頬を両手で包み込んで、僕の額に陛下の額をこつん、と当てた。
僕は一言も発さなかった。
静かに、されるがままに、陛下に身を委ねていた。
「熱は…、ないみたい。
良かった、もう安心だね。
ただ、まだ安静にしていた方が良い。
ルーノ、一緒に部屋に戻ろうか。」
そう言って、陛下は僕から顔を離した。
「………。」
僕は、じっ、と陛下の瞳を見つめていた。
「ルーノ?」
陛下は、僕のいつもの騒がしい様子からはかけ離れた大人しさに、戸惑ったように僕の名を呼んだ。
僕は静かに目を閉じた。
陛下を見上げたまま。
陛下が驚いたのが、目を閉じていても分かった。
これは、今、そんな気分なだけだ。
熱が下がって、病み上がりで、家族のもとを離れていて、なんだか心細いから、そんな気分になっているだけ。
陛下の温もりが、今はちょうど良いだけ。
陛下は、僕の頬を優しく撫でて、静かに顔を近づけた。
そして。
優しいキスを落としたのだった。
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