僕の職業は王妃です!

かるぼん

文字の大きさ
上 下
15 / 31
本章~恋に落ちるまで~

熱①

しおりを挟む
このままでは身がもたん。

僕は自室のベッドに横になりながらそう思った。
実を言うと、身体が熱かったのは、発熱していたからだった。
微熱程度ではあったのだが、陛下から、大事をとって今日一日休むようにと言われてしまい、今に至るのだ。

(でも、ゆっくりこれからの事を考えられる良い機会かも。)
僕は静かに瞼を閉じた。

途端、陛下の顔が瞼の裏に映し出された。

パチッ

反射的に両目を開けた。

ドキンッ ドキンッ

まただ。

陛下のことを考えると、心臓がうるさくなる。

胸が苦しい。

熱のせいだろうか。

(僕、おかしくなっちゃったのかな…。)

僕は胸に手を当てて、抱え込むようにして身体を横に向けた。

瞼が重くなって、身体がベッドに沈み込んでいくように、僕の意識も奥深くに沈み込んでいった。




コンコンッ

「ん…ん。」

コンコンッ

「ぁ…、は、はいっ!」

眠ってしまっていた。
ノックの音で、現実に引き戻された僕は、ガバッと上体を起こして扉の外の誰かに返事をした。

「失礼致します。」

いつもの侍女だ。

「起こしてしまって申し訳ありません。」
侍女は僕の寝起き顔を見て、顔を青くして深々と頭を下げた。
「いや、大丈夫だよ。」
僕がそう答えると、彼女は安堵したような表情で微笑んだ。
「昼食をご用意したのですが、食べられますか?」
もうそんな時間か。
あまりお腹空いてないな…。
でも作ってくれたのに、いらない、って言うのも気が引けるし。
「汗、かいちゃったから、シャワー浴びてから食べるよ。
だから、置いていってくれて大丈夫。」
そう言うと侍女は目を輝かせて、彼女が持ってきたワゴンの下段から、水桶とタオルを取り出した。
「私に王妃様のお身体を拭かせてください!」

……ん?

「えっ、いや!?大丈夫だよ!?」
「駄目です!
熱があるときはシャワーじゃなくて、タオルでお身体を拭くものなのです!
そしてそれは私の仕事です!
やらせてください!」
「いやいや、いいって!
自分のことは自分でやるから!」
「王妃様!
王妃様は私がお嫌いなのですか。
だから頼ってくださらないのですか。
私、王妃様の侍女なのです!
でも、王妃様は自分で自分のことをなさってしまうから、私、全然王妃様のお役に立てていません!
ですので、熱があり弱っておられる今日こそは…っ!
必ず、私が信用に足る人間であると示してみせますから!」

彼女は全く引く気がない。
そして、僕は彼女に酷いことをしていたのだと気付かされた。
彼女は、僕が彼女を信頼せず拒絶している、と思っている。

僕が本当に女の子だったら、きっと彼女にしっかり頼っていただろう。
しかし違うのだ。
僕は男。
身体を拭くために服を脱がされてしまったら、僕が彼女を騙していることがバレてしまう。
駄目だ。
どうしよう。
今回ばかりは逃げ道が見つからない。
どうしよう、どうしよう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

a pair of fate

みか
BL
『運命の番』そんなのおとぎ話の中にしか存在しないと思っていた。 ・オメガバース ・893若頭×高校生 ・特殊設定有

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

愉快な生活

白鳩 唯斗
BL
王道学園で風紀副委員長を務める主人公のお話。

転生先の第三王子はただいま出張中につき各位ご確認ねがいます!

梅村香子
BL
※本作はシリーズ作品の続編です※ 「僕が……ラオネスに、ですか?」 ロベルティア王国の歩く災厄といえば、第三王子テオドール……そう、僕のこと。 前世の記憶がよみがえる前は、本当に最悪な王子だった。愚行を重ねて、父上から謹慎を命じられるほどに。 僕の中に現れた日本人男性の記憶と人格のおかげで、どうにか人生を軌道修正することができたんだけど、まだ自分への課題は山積み。 専属騎士で大好きな恋人のフレデリクと一緒に、王子として勉強の毎日なんだ。 そんなある日、長かった謹慎がとうとう終わったと思ったら、父上から湾岸都市のラオネスに行くようにって命じられたんだ。 王都から遠く離れた商業と海運の街。 クロード兄上が治める大都市ラオネス。 仲違いしてる兄上と会うのは少し不安だけど……初めて見る広い海や美味しい魚介類を楽しみにして、ラオネスに向かったんだ。 だけど、到着早々なんだか怪しい陰謀の影が見えはじめて……。 どうしようっ! 僕、また恐ろしい騒動に巻き込まれちゃうの!? でも、僕には頼れる白銀の騎士がいるからね! どんなことが起こっても、きっと二人なら乗り越えていける――! 元ぽっちゃり王子テオドールの第二弾! ラオネス出張編ですっ。どうぞよろしくお願いします! ※表紙や挿絵にAIイラストを使用しています。

処理中です...