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本章~恋に落ちるまで~
熱①
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このままでは身がもたん。
僕は自室のベッドに横になりながらそう思った。
実を言うと、身体が熱かったのは、発熱していたからだった。
微熱程度ではあったのだが、陛下から、大事をとって今日一日休むようにと言われてしまい、今に至るのだ。
(でも、ゆっくりこれからの事を考えられる良い機会かも。)
僕は静かに瞼を閉じた。
途端、陛下の顔が瞼の裏に映し出された。
パチッ
反射的に両目を開けた。
ドキンッ ドキンッ
まただ。
陛下のことを考えると、心臓がうるさくなる。
胸が苦しい。
熱のせいだろうか。
(僕、おかしくなっちゃったのかな…。)
僕は胸に手を当てて、抱え込むようにして身体を横に向けた。
瞼が重くなって、身体がベッドに沈み込んでいくように、僕の意識も奥深くに沈み込んでいった。
コンコンッ
「ん…ん。」
コンコンッ
「ぁ…、は、はいっ!」
眠ってしまっていた。
ノックの音で、現実に引き戻された僕は、ガバッと上体を起こして扉の外の誰かに返事をした。
「失礼致します。」
いつもの侍女だ。
「起こしてしまって申し訳ありません。」
侍女は僕の寝起き顔を見て、顔を青くして深々と頭を下げた。
「いや、大丈夫だよ。」
僕がそう答えると、彼女は安堵したような表情で微笑んだ。
「昼食をご用意したのですが、食べられますか?」
もうそんな時間か。
あまりお腹空いてないな…。
でも作ってくれたのに、いらない、って言うのも気が引けるし。
「汗、かいちゃったから、シャワー浴びてから食べるよ。
だから、置いていってくれて大丈夫。」
そう言うと侍女は目を輝かせて、彼女が持ってきたワゴンの下段から、水桶とタオルを取り出した。
「私に王妃様のお身体を拭かせてください!」
……ん?
「えっ、いや!?大丈夫だよ!?」
「駄目です!
熱があるときはシャワーじゃなくて、タオルでお身体を拭くものなのです!
そしてそれは私の仕事です!
やらせてください!」
「いやいや、いいって!
自分のことは自分でやるから!」
「王妃様!
王妃様は私がお嫌いなのですか。
だから頼ってくださらないのですか。
私、王妃様の侍女なのです!
でも、王妃様は自分で自分のことをなさってしまうから、私、全然王妃様のお役に立てていません!
ですので、熱があり弱っておられる今日こそは…っ!
必ず、私が信用に足る人間であると示してみせますから!」
彼女は全く引く気がない。
そして、僕は彼女に酷いことをしていたのだと気付かされた。
彼女は、僕が彼女を信頼せず拒絶している、と思っている。
僕が本当に女の子だったら、きっと彼女にしっかり頼っていただろう。
しかし違うのだ。
僕は男。
身体を拭くために服を脱がされてしまったら、僕が彼女を騙していることがバレてしまう。
駄目だ。
どうしよう。
今回ばかりは逃げ道が見つからない。
どうしよう、どうしよう。
僕は自室のベッドに横になりながらそう思った。
実を言うと、身体が熱かったのは、発熱していたからだった。
微熱程度ではあったのだが、陛下から、大事をとって今日一日休むようにと言われてしまい、今に至るのだ。
(でも、ゆっくりこれからの事を考えられる良い機会かも。)
僕は静かに瞼を閉じた。
途端、陛下の顔が瞼の裏に映し出された。
パチッ
反射的に両目を開けた。
ドキンッ ドキンッ
まただ。
陛下のことを考えると、心臓がうるさくなる。
胸が苦しい。
熱のせいだろうか。
(僕、おかしくなっちゃったのかな…。)
僕は胸に手を当てて、抱え込むようにして身体を横に向けた。
瞼が重くなって、身体がベッドに沈み込んでいくように、僕の意識も奥深くに沈み込んでいった。
コンコンッ
「ん…ん。」
コンコンッ
「ぁ…、は、はいっ!」
眠ってしまっていた。
ノックの音で、現実に引き戻された僕は、ガバッと上体を起こして扉の外の誰かに返事をした。
「失礼致します。」
いつもの侍女だ。
「起こしてしまって申し訳ありません。」
侍女は僕の寝起き顔を見て、顔を青くして深々と頭を下げた。
「いや、大丈夫だよ。」
僕がそう答えると、彼女は安堵したような表情で微笑んだ。
「昼食をご用意したのですが、食べられますか?」
もうそんな時間か。
あまりお腹空いてないな…。
でも作ってくれたのに、いらない、って言うのも気が引けるし。
「汗、かいちゃったから、シャワー浴びてから食べるよ。
だから、置いていってくれて大丈夫。」
そう言うと侍女は目を輝かせて、彼女が持ってきたワゴンの下段から、水桶とタオルを取り出した。
「私に王妃様のお身体を拭かせてください!」
……ん?
「えっ、いや!?大丈夫だよ!?」
「駄目です!
熱があるときはシャワーじゃなくて、タオルでお身体を拭くものなのです!
そしてそれは私の仕事です!
やらせてください!」
「いやいや、いいって!
自分のことは自分でやるから!」
「王妃様!
王妃様は私がお嫌いなのですか。
だから頼ってくださらないのですか。
私、王妃様の侍女なのです!
でも、王妃様は自分で自分のことをなさってしまうから、私、全然王妃様のお役に立てていません!
ですので、熱があり弱っておられる今日こそは…っ!
必ず、私が信用に足る人間であると示してみせますから!」
彼女は全く引く気がない。
そして、僕は彼女に酷いことをしていたのだと気付かされた。
彼女は、僕が彼女を信頼せず拒絶している、と思っている。
僕が本当に女の子だったら、きっと彼女にしっかり頼っていただろう。
しかし違うのだ。
僕は男。
身体を拭くために服を脱がされてしまったら、僕が彼女を騙していることがバレてしまう。
駄目だ。
どうしよう。
今回ばかりは逃げ道が見つからない。
どうしよう、どうしよう。
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