僕の職業は王妃です!

かるぼん

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本章~恋に落ちるまで~

初めての朝

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「ルーノ。」
名を呼ばれて、僕の意識は浮上した。
「……ん…。」
もう朝…?
いつも通り兄上が起こしに来たのかな。
でも、なんか今日はすごく寝心地が良くて気持ちいいんだ…。
だからもう少しだけ寝かせてよ、兄上…。

「お寝坊さんだね、ルーノ。」

パチッ

耳元で囁かれた甘く低い声に、僕はパチリと目を開けた。
目の前には、兄上とは似ても似つかぬ、色気を垂れ流す男前。
兄上、いつの間にそんなに男前に?
「あ…に、うえ…。」
あれ、いやちょっと待って、えーと。
「…………………。」
現状把握中。

「っっっっっっ!?」

昨日までの記憶を鮮明に思い出した僕は、ガバッと起き上がった。

そうだ!そうだった!
僕は昨日嫁入りしたんだった!
この男は兄上じゃなくて、マリグナル国の国王だ!!
寝ぼけてたからって、陛下を兄上と間違えるなんて…!!
しかも僕、今へーかのこと『兄上』って呼んじゃった!?
いや、もしかしたら寝ぼけてて声になってなかったかも…。

淡い期待を込めて、陛下の方へ視線を向ける。
すると。
陛下は床に両膝をついて、ベッドの上で両腕に顔を埋めるようにして小刻みに震えていた。

「…………………。」
こいつ、笑ってやがる。

「…おはようございます、陛下。」
何もなかったかのように挨拶。
すると、陛下も顔を上げてそれに応えた。
「おはよう、ルーノ。……ふっ…くくく…。」
平静を装ったようだったが、思い出したのか、吹き出して再びバイブレーション。

恥ずかしくて顔を熱くしていた僕は、ふと、周りを見て、あることに気づいてしまった。

ーここは、僕の部屋じゃない。

え、ここ、陛下の部屋だ。
ってことは、このベッドは陛下のベッド!?
あれっ、僕、昨日自分の部屋に戻らなかったっけ!?

「ああ、その顔、気づいたね。」
陛下が目に笑いの涙を溜めて、僕の顔を覗き込んできた。
おい、顔がまだ笑ってるぞ。
「昨晩のルーノったら、『じゃあ僕寝ます。おやすみなさい。』って言って、自分の部屋に帰るんだもの。
夫婦になったのに、一緒のベッドで眠らないなんておかしいだろう?
だから私が、君のベッドで眠りについた君を、私のベッドまで運んだってわけさ。
もちろん、お姫様抱っこで。」
片目を瞑りウインクを飛ばす陛下。

いやまて、どこからつっこめばいいか分からないんですけど。
いやでもとりあえず。
「腕は痛めてないですか!?
僕、一応男ですから、それなりに重かったと思うんですけど!」
真剣に陛下の目を見つめて問いただす。
そんな僕を、陛下は目をぱちくりとして見つめ返した。
そして。
「ぷっ…、あはははっ!
心配するとこ、そこなのー?
あははは!
ルーノ、君ったら本当に面白いねぇ!」

…へ?
他に心配することなんて…。

そこまで考えて、はっ、とある考えに思い至った。
陛下をジト目で睨む。
「………な、何か、しました…?」
「あはははっ、指摘されて初めて気づくなんて…っ、あははは!」
そうして、陛下はしばらく腹を抱えて笑い転げていた。
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