僕の職業は王妃です!

かるぼん

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本章~バレるまで~

対面

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「はじめまして。
アマノ国第二王女・・、ルーノと申します。
どうぞ、よろしくお願い致します、国王陛下。」

僕は今、マリグナル国の城内、大広間にいる。
僕の今の格好はというと、露出は少なめの正装用のドレスを身に纏っている。
あまり華美ではないが、所々に装飾が施されていた。
数人の兵士が大広間の壁際に整列し、真ん中の通路で膝をつく僕にちらちらと視線を向けてくる。
…うっとうしい。だが我慢だ。
女装だとはバレてないはずだ。
堂々としろ、僕。
僕が膝をつく数歩先の正面の少し高くなった所で、例の国王は座っていた。
僕が想像していたよりも随分と若く見えた。
いや、実際若い。
その若さで大国の国王を務めるのだから、余程の人物なのだろう。
彼は口元には小さく笑みを称えて、こちらを見下ろしていた。
「第二王女か。
第一王女ではないんだなぁ?」
ぞくり。
真実を覗き込んでくるような瞳に、僕は少し顔をひきつらせた。
「…第一王女は、身体が弱いので。
国王陛下のご奉仕を務めるには少々力不足かと。
陛下は『姫を寄越せ』と仰せになりましたので、順番など気になさらないと思いましたが。
私ではご不満ですか?」
(ふん、どーだ。
こっちだって言うときは言うんだからな。
まぁ、適当な設定込みだけど。)
内心で毒づき、僕は陛下に微笑んで(不敵に笑って)見せた。
「ほぉ、なかなかおもしろい姫が嫁いできたものだ。
私の名はリューベルト。
よろしく、ルーノ。」
そう言ってリューベルトもまた、にやりと笑って返してきたのだった。

こうして無事(?)に入籍の儀は終わった。

国王との対面後、僕はとある部屋に通された。
「えと、ここは?」
連れてきてくれた侍女に説明を求める。
「ここは、陛下の自室の隣にあります、陛下がお帰りになるまで待機する、いわば、王妃様の自室にございます。
私たち侍女も控えさせていただきますので、お召し替えなどは我々にお申し付けください。」
あー、なるほど…。
ん!?
「あ、いや、大丈夫!!
自分のことは自分でやるから!
気にしないで!ほんと!」
着替えとか手伝われたら、一瞬で男だとバレる!
「え、いえ、しかし、王妃様のお手を煩わせるわけには…」
「いやいや、大丈夫。
ぼく…私の国では、自分のことは自分でやりなさいっていう教えだったんだ。
だから、この国に嫁いできた今、その教えだけは守らせてくれないかな?」
ね?と両手を合わせてお願いポーズをとる。
侍女は少し戸惑った様子だったが、僕の勢いに圧されたのか、なんとか了承してくれた。
「ありがとう。
陛下には私から言っておくから。
君たちもあまり私に気を使わなくていいからね。
困ったときはちゃんと君たちのこと呼ぶから。
これからよろしくね。」
にこり、と微笑むと、侍女は顔を赤らめて、深々とお辞儀をして走り去ってしまった。
(あ、行っちゃった…。
僕、なんか変なこと言ったかな?
というか、僕はこれから何をすれば良いんだろう。
もう今日はずっと部屋に居ていいのかな?)
僕は部屋の扉を閉めて、部屋の内を見渡した。
そこそこ広い。
一応ベッドもあるから、陛下と一緒に寝なくても良さそうだ。
窓に近寄って外を見て、僕は、わぁと小さく声を漏らした。
そこには綺麗な景色が広がっていた。
高い所に城が建っているおかげで、国中を見渡すことができた。
ちょうど遠くに見える山に、太陽が隠れるところだった。
出発したのは朝だった。
それでも、大陸の端に領地を構えるアマノ国から、大陸中心部のマリグナル国まで移動するのに結構な時間を要した。
(もう、日が沈む…。
なんか少し寂しくなってきたな…。)
僕が心細くなり始めていた時、
コンコンッ
扉がノックされた。
「は、はい!」
僕が返事をすると、扉の外から先程の侍女の声が聞こえた。
「夕食の準備が整いました。
食堂へお越し下さい。」
了承した旨を伝えて、僕は急いで部屋の中にあった鏡の前に向かった。
己の身だしなみを確認する。
ドレスはしっかりと着こなせている。
髪は短いままだが、髪飾りを着けているので、ショートヘアの女の子、として見えているはずだ。
よし、抜かりなし!行くか!
僕は気合いを入れ直して、扉の外で待つ侍女のもとへ向かった。
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