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後悔の過去、そして願い
もう一度、やり直せたなら
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しかし、檻の中で他にすることもなく、気まぐれで本を読んでいると、今まで知らなかったたくさんの知識に心が震えた。
一つを知れば、また次が知りたくなり、そうして、どれくらいの時が過ぎたのだろうか。
檻の中は書物で溢れ、私の頭の中は多くの知識で埋め尽くされていた。
驚いた。
書を読み、一つ、また一つと知識を得るたびに、己の性格も変わっていた。
今までは自分のことしか考えず利己的で、感情的だったヴィンセントは、客観的に、論理的に思考を巡らせる術を身につけていた。
人生を思い返し、自分の愚かな行動や誤った選択、思い起こされる様々な後悔に身を震わせた。
そして世界はこんなにも広く、美しく、知識で溢れていることも知った。
この小さな檻に囚われ、自由を失って初めてそのことに気付くとは、なんて皮肉なものなのだろう、と思った。
もう一度、やり直せたなら…。
そう思うようになっていた。
あの時こうすれば、ああすれば、己の人生はもう少しマシなものになっていたかもしれない。
何も知らなかったあの頃は成す術なく、ただただ失われるものを黙って見ていた。
もう一度、やり直せたなら…。
…弟を救えたかもしれない。
申し訳ないことをしたと、初めて思った。
ごめん、ルイ。
実の弟だと分かっても、幼かった私の心は、ルイを受け入れられなかった。
私も両親からの愛はほとんど受けられず寂しいと感じていたのだから、ルイは両親だけでなく兄からの愛も得られずもっと寂しかったことだろう。
もう一度、やり直せたなら、きっと…。
げほっ…
後悔に苛まれるようになってしばらく経つと、咳が出るようになった。
そして気が付けば、食欲もなくなり、壁に寄りかからなければ座っていられなくなっていた。
私を監禁していた貴族はどうしようと狼狽えていたが、私は何もしなくていい、と治療を拒んだ。
これは己の過ちに対する罰なのだから、と。
視界が霞んできた。
いよいよだろうか。
もし、生まれ変わることがあったら、この小さき檻の中で得た知識を役立てることはできるだろうか。
いや。
生まれ変わらなくていい。
できることなら、時が戻ってくれたらいいのに。
もう一度、…やり直せた…なら…
…きっと、上手くやるから………。
そうして、誰にも知られず、小さき檻の中で生まれた賢者は、その生を終えたのだった。
一つを知れば、また次が知りたくなり、そうして、どれくらいの時が過ぎたのだろうか。
檻の中は書物で溢れ、私の頭の中は多くの知識で埋め尽くされていた。
驚いた。
書を読み、一つ、また一つと知識を得るたびに、己の性格も変わっていた。
今までは自分のことしか考えず利己的で、感情的だったヴィンセントは、客観的に、論理的に思考を巡らせる術を身につけていた。
人生を思い返し、自分の愚かな行動や誤った選択、思い起こされる様々な後悔に身を震わせた。
そして世界はこんなにも広く、美しく、知識で溢れていることも知った。
この小さな檻に囚われ、自由を失って初めてそのことに気付くとは、なんて皮肉なものなのだろう、と思った。
もう一度、やり直せたなら…。
そう思うようになっていた。
あの時こうすれば、ああすれば、己の人生はもう少しマシなものになっていたかもしれない。
何も知らなかったあの頃は成す術なく、ただただ失われるものを黙って見ていた。
もう一度、やり直せたなら…。
…弟を救えたかもしれない。
申し訳ないことをしたと、初めて思った。
ごめん、ルイ。
実の弟だと分かっても、幼かった私の心は、ルイを受け入れられなかった。
私も両親からの愛はほとんど受けられず寂しいと感じていたのだから、ルイは両親だけでなく兄からの愛も得られずもっと寂しかったことだろう。
もう一度、やり直せたなら、きっと…。
げほっ…
後悔に苛まれるようになってしばらく経つと、咳が出るようになった。
そして気が付けば、食欲もなくなり、壁に寄りかからなければ座っていられなくなっていた。
私を監禁していた貴族はどうしようと狼狽えていたが、私は何もしなくていい、と治療を拒んだ。
これは己の過ちに対する罰なのだから、と。
視界が霞んできた。
いよいよだろうか。
もし、生まれ変わることがあったら、この小さき檻の中で得た知識を役立てることはできるだろうか。
いや。
生まれ変わらなくていい。
できることなら、時が戻ってくれたらいいのに。
もう一度、…やり直せた…なら…
…きっと、上手くやるから………。
そうして、誰にも知られず、小さき檻の中で生まれた賢者は、その生を終えたのだった。
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