賢者となって逆行したら「稀代のたらし」だと言われるようになりました。

かるぼん

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後悔の過去、そして願い

弟との再会(中編)

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「僕はずっと自由を奪われて生きてきた。
それなのに、お前はのうのうと何にも縛られず生きている。
許せなかった。
お前は僕が苦しんでいるのを知っていたくせに、一度も救いの手を伸ばしてはくれなかった。
何度も、何度も、助けを求めたのに…。」
そう言って、ルイは唇を噛みしめ俯いた。
「……だから、お前の自由も奪ってやったのさ。
お前はこれからの一生をずっとこの檻の中で過ごすがいい。」
そう言い捨てると、ルイは椅子から立ち上がり、黒々しい憎しみの籠った瞳で私を一瞥した。
そして、ふい、と顔を逸らして私の前から立ち去ったのだった。
それから二度と私の前に姿を現すことはなかった。
 
今思うと、ルイは寂しかったのだろう。
誰からも愛されず、つらい目にばかり遭う。
従兄に毎晩襲われていたこと、私は確かに知っていた。
 
既に成人していた従兄が代理で領主の座に就いてしばらく経った頃のことだった。
私は10歳、3つ離れたルイが7歳の頃だったと思う。
ルイの部屋の前を通った時、少しだけ扉が開いていて、中の様子が見えてしまった。
ベッドの上で肥えた従兄の豚のようなその身体が、四つん這いになった華奢な弟に乗りかかっていた。
見てしまったその瞬間は、確かに驚き、思わず歩を止めてしまった。
弟は母に似て、とても美しく魅力的な容姿をしていた。
母も男女問わず魅了していたと聞いたことがあるから、ルイもその素質を受け継いでしまったのだろう。
でもまさか、まだ幼くこんなに歳の離れた、しかも同性に欲情するなんて…。
しばらく動けず、ただ呆然とその様子を見ていると、ぱち、と涙で濡れた紫の瞳と目が合った。
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