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第一章
少女の依頼
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次の日も、朝からセイトの店の前には行列ができていた。
朝から占いをして、何人目とも数えきれぬ頃、いつも通り「次の方、どうぞ。」と中へ通した客は、明らかに他の客とは違う、深刻な表情をしていた。
「こんにちは。
本日は何を占いましょ…」
「あ、あの!!」
セイトが言い終わる前に、食いぎみに話し出した客は、見た目はセイトとさほど変わらぬ歳の少女だった。
三つ編みを2つ結って、頭には三角巾、ワンピースにエプロンを着けている、普通の町娘だ。
「人を探してほしいんです!」
必死な顔で、そう切り出した少女に、セイトは一度、目をぱちくりとさせてから、
「まずは、詳しく話を聞かせてください。」
と言った。
そう言われて、少し冷静になった少女は、客用に用意された椅子に座り、ゆっくりと口を開いた。
「えっと、あの、何から話せば…。
えっと、私、この町の北にある森の近くで、両親と弟の四人で暮らしてるんですけど…
この間、弟と、森に木の実を採りに出掛けたんです。
その時、辺り一面に霧が出てきたので、危ないと思い家に引き返そうとしたら、弟がいないことに気づいて…
直前まで一緒にいたんです。
あの子は引っ込み思案な子で、一人で勝手に歩き回るような子じゃないんです。
すぐに霧は晴れたので、一生懸命、弟の名を呼んで探したんですが、全然見つからなくて…
家に帰っているかと思ったけれど、家に戻っても弟はいなくて…
私、もう、どうしたら…っ。」
ここで、少女はついに両手で顔を覆って泣き出してしまった。
セイトは、人差し指の腹を唇に押し当てて、少し考え込んだ。
そして、唇から指を離すと、丸いテーブルを挟んで正面に座る少女の手を掴んだ。
「とりあえず、占ってみる。
この占いには、君の血液が必要なんだけど、少し傷をつけてもいいかな。」
突然手を掴まれて、驚きのあまり泣き止んだ少女は、セイトの言葉を理解するのに、少々時間を要したようだった。
しかし、理解すると、
「は、はい!
全然問題ないです!
よろしくお願いします!」
と、勢いよく承諾したのだった。
朝から占いをして、何人目とも数えきれぬ頃、いつも通り「次の方、どうぞ。」と中へ通した客は、明らかに他の客とは違う、深刻な表情をしていた。
「こんにちは。
本日は何を占いましょ…」
「あ、あの!!」
セイトが言い終わる前に、食いぎみに話し出した客は、見た目はセイトとさほど変わらぬ歳の少女だった。
三つ編みを2つ結って、頭には三角巾、ワンピースにエプロンを着けている、普通の町娘だ。
「人を探してほしいんです!」
必死な顔で、そう切り出した少女に、セイトは一度、目をぱちくりとさせてから、
「まずは、詳しく話を聞かせてください。」
と言った。
そう言われて、少し冷静になった少女は、客用に用意された椅子に座り、ゆっくりと口を開いた。
「えっと、あの、何から話せば…。
えっと、私、この町の北にある森の近くで、両親と弟の四人で暮らしてるんですけど…
この間、弟と、森に木の実を採りに出掛けたんです。
その時、辺り一面に霧が出てきたので、危ないと思い家に引き返そうとしたら、弟がいないことに気づいて…
直前まで一緒にいたんです。
あの子は引っ込み思案な子で、一人で勝手に歩き回るような子じゃないんです。
すぐに霧は晴れたので、一生懸命、弟の名を呼んで探したんですが、全然見つからなくて…
家に帰っているかと思ったけれど、家に戻っても弟はいなくて…
私、もう、どうしたら…っ。」
ここで、少女はついに両手で顔を覆って泣き出してしまった。
セイトは、人差し指の腹を唇に押し当てて、少し考え込んだ。
そして、唇から指を離すと、丸いテーブルを挟んで正面に座る少女の手を掴んだ。
「とりあえず、占ってみる。
この占いには、君の血液が必要なんだけど、少し傷をつけてもいいかな。」
突然手を掴まれて、驚きのあまり泣き止んだ少女は、セイトの言葉を理解するのに、少々時間を要したようだった。
しかし、理解すると、
「は、はい!
全然問題ないです!
よろしくお願いします!」
と、勢いよく承諾したのだった。
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