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2部3章

天理火

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 天理火は俺めがけて走ってくる。相手の姿は近づくほどに強まる光で見えない。黙視できないから魔眼は使えない。

「いかが致します魔王様?!」

「俺は魔王にならないからな! 今の俺は水だ身体は再生できる」

 天理火の前に立ち塞がった俺。相手との距離が縮み多少の熱は感じるが耐えられている。このまま掴もうと手を伸ばした俺にリュセラが叫んだ。

「避けろ、悠人!」

「えっ?」

 ジュッッ! 

 俺は自分の手が一瞬で蒸発したのを見た。

 慌てて体を水にして、俺は高速移動した。ついでにアザレアを回収した。

「待ってください、まだ皆が……。って居ない!?」
 
「天理火が出た瞬間に魔法で逃げたよ」

 俺は向き合っていたから丸見えだった。アザレアも逃げてくれたら良かったんだが。俺と会話中だったし。

「薄情! デーモンだから仕方ないですが!」

「アザレアは、なぜ逃げなかった?」

「魔王様を置いて逃げるわけには参りません!」

「俺は狙われてないからな!」

 水を召喚した俺は、手を即時に再生した。天理火は遠くで余裕そうに座りこちらを見ている。相変わらず狐っぽい輪郭しか見えないが、尻尾を振りまくっている。

「リュセラ。アザレアを説得するから、天理火を引っ込めてくれないか?」

「それは出来ない。仕留めなければ厄介なんだ、その魔王軍秘書アザレアは。そして、無理なんだ」

「なぜだ? リュセラの魔法だよな?」

「天理火は神様だ。神様は本人が満足するまで帰らない」

「どうしろと!?」

「遊べ。天理火はそう言ってる」

「助けとか有ります?」

「アザレアを庇ったのは悠人だし、責任を持って相手してくれ」

「そんな!」

「僕も少し反省しよう。アザレアは対話をした。精神操作の魔法なんて五万と有る。でも、悠人を操らなかった。だから、今回は見逃してやる」

「なら助けて欲しいんだが?」

「ふふっ。僕が言うのもあれだが。いい試練だろ?」

「このエルリック!」

「それは嫌!」

 会話していた俺のそばに、天理火が現れ噛みつかれた。体は抉れ大ダメージを受けた。結構痛いが、水を召喚して再生。

「アザレア。滅茶苦茶ピンチだ、お前だけでも逃げろ!」

「出来ません。ですが! 手はあります」

「なに?」

「魔王の魔法を使えばいい!」

「だから、俺は魔王には……」

「成らずとも使えますよ?」

「マジか! リスクとか無い?」

「有りません。私が寝首をかける状態なだけです」

「それがリスクじゃん!」

「ふふっ。最上級デーモンですから。そんなことしたこと有りませんが」

「リスクでないな!」

 アザレアの提案。魔王に成らずに魔王の魔法を使う。彼女が俺に嘘を付いていなければ、天理火を満足させる遊びが出来るかもしれない。彼女も油断なら無いけど。
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