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2部3章
手加減
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簡易キャンプからやや離れた所、エルドラスと出会った川原まで来てエリカ大尉とユウキさんは立ち止まった。彼女らは武器を持っていない。冒険時にはフル装備していた銃器やナイフ、最低限の道具が入っている鞄も持っていない。
「ここまで来れば安心です」
「あの、武器を使わないんですか?」
「協力者に銃は向けないっすよ」
「川のスライムの時……」
「あれはゴッドミノタウロスに効かないと確信が持てたので」
「魔力が見えていたから。でしょう?」
「そうです。セレスト君の言う通り僅かながら魔力を見ることができます」
「そう。見えていても、私に挑むの?」
俺には魔力が見えないが、セレストはリュセラに認められる程の実力者だ。膨大な魔力を持っている。
「確かに。麗音大臣やリュセラ君に次ぐ恐ろしい魔力量です」
「武器の使用をしてもいいんですよ? 私は魔力装甲で、悠人は体が水なので効きませんから」
異議を申し立てようとした俺より先に、エリカ大尉は口を開いた。
「そうですね。では、水に変身するのは無しでお願いします。変身したらそこで勝負ありと言うことで。そちらの武器の使用を許可しますよ」
「じゃあ、加減しましょうかね!」
セレストはレッグポーチを叩いた。彼女が叩くと無数のナイフが現れる。それも俺たちの周りを埋め尽くすほどの。
「止まらずの加護、あれはあらずの加護」
「加減はー!?」
全てのナイフがエリカ大尉に向けて飛んでいく。エリカ大尉の前に立ったのはユウキさんだ。
「失中魔法!」
「そうか、ユウキさんの魔法なら当たらない!」
だが、セレストは余裕の笑みを浮かべている。
接近するナイフを観察していたエリカ大尉はユウキさんの襟を掴んだ。
「ロール!(転がれ!)」
エリカ大尉たちは川原を転がり、二人は濡れてしまう。
「な、なぜっす?」
「肩を見ろユウキ」
肩には赤い線ができていた。細長いもので強く叩かれた跡だ。
「失中魔法が効かない?」
「恐らく相手の魔法はルールを強いる魔法。ユウキの魔力では魔法が押し負けたんだ」
「俺、さっそく役立たずに……!」
俺はセレストの前に立ち塞がった。
「やりすぎだ! 怪我じゃすまないだろ!」
「そう? 刃はゴム製の偽物ナイフ。速度も変えてないから当たっても痛いだけよ?」
「あの量の攻撃は危険だから無しで!」
「私はあの人たちに合った加減をしただけよ」
俺は背後に人の気配を感じて振り返ろうとした、その瞬間に腕を殴られ吹っ飛ばされる。
「悠人君。俺たちを舐めてもらっちゃ困るっす。一応戦闘員なんすから」
俺は立ち上がりユウキさんと向き合う。彼の気配がなかった。俺は冒険の心得として、獣や人の気配に気を配っていたのに。リヴァイアサンのお陰で更に強化された感覚ですらも察知できなかったのだ。
「ここまで来れば安心です」
「あの、武器を使わないんですか?」
「協力者に銃は向けないっすよ」
「川のスライムの時……」
「あれはゴッドミノタウロスに効かないと確信が持てたので」
「魔力が見えていたから。でしょう?」
「そうです。セレスト君の言う通り僅かながら魔力を見ることができます」
「そう。見えていても、私に挑むの?」
俺には魔力が見えないが、セレストはリュセラに認められる程の実力者だ。膨大な魔力を持っている。
「確かに。麗音大臣やリュセラ君に次ぐ恐ろしい魔力量です」
「武器の使用をしてもいいんですよ? 私は魔力装甲で、悠人は体が水なので効きませんから」
異議を申し立てようとした俺より先に、エリカ大尉は口を開いた。
「そうですね。では、水に変身するのは無しでお願いします。変身したらそこで勝負ありと言うことで。そちらの武器の使用を許可しますよ」
「じゃあ、加減しましょうかね!」
セレストはレッグポーチを叩いた。彼女が叩くと無数のナイフが現れる。それも俺たちの周りを埋め尽くすほどの。
「止まらずの加護、あれはあらずの加護」
「加減はー!?」
全てのナイフがエリカ大尉に向けて飛んでいく。エリカ大尉の前に立ったのはユウキさんだ。
「失中魔法!」
「そうか、ユウキさんの魔法なら当たらない!」
だが、セレストは余裕の笑みを浮かべている。
接近するナイフを観察していたエリカ大尉はユウキさんの襟を掴んだ。
「ロール!(転がれ!)」
エリカ大尉たちは川原を転がり、二人は濡れてしまう。
「な、なぜっす?」
「肩を見ろユウキ」
肩には赤い線ができていた。細長いもので強く叩かれた跡だ。
「失中魔法が効かない?」
「恐らく相手の魔法はルールを強いる魔法。ユウキの魔力では魔法が押し負けたんだ」
「俺、さっそく役立たずに……!」
俺はセレストの前に立ち塞がった。
「やりすぎだ! 怪我じゃすまないだろ!」
「そう? 刃はゴム製の偽物ナイフ。速度も変えてないから当たっても痛いだけよ?」
「あの量の攻撃は危険だから無しで!」
「私はあの人たちに合った加減をしただけよ」
俺は背後に人の気配を感じて振り返ろうとした、その瞬間に腕を殴られ吹っ飛ばされる。
「悠人君。俺たちを舐めてもらっちゃ困るっす。一応戦闘員なんすから」
俺は立ち上がりユウキさんと向き合う。彼の気配がなかった。俺は冒険の心得として、獣や人の気配に気を配っていたのに。リヴァイアサンのお陰で更に強化された感覚ですらも察知できなかったのだ。
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