135 / 217
2部、2章
藍華を助けに行こう
しおりを挟む
救護テントの中で、エルリックさんは笑顔だ。確かに眠らせる魔法ならセレストを傷つけずに止めることが出来ただろう。
「すみません。疑ってしまって。セレストをいじめて楽しんでいるなんて、あり得ませんよね」
「いや、普通に弄んでいるよ。悠大の世界でも、子供に酸っぱい食べ物を与えて表情を面白がると聞いた」
「前言撤回します。やっぱり悪い奴ですね……」
「ふふ、良識の範囲内ならやっていいって悠大も言ってた」
「魔法で眠らせるのは常識的なのでしょうか……?」
「いいわけ、あるかー!」
セレストの声がした。俺がそちらを見るとエルリックさんに銃口を向けてすでに引き金を引いた。
銃声が鳴り響き、テントの外から大慌てで自衛隊の人や凛音とリュセラ、二号たちが覗いている。
「くそ! ガードが早すぎる!」
弾丸はエルリックさんの目の前で止まっている。魔法なのだろうか。
「その程度じゃ、鳥を仕留めるのも難しいかもね。ナイフを投げた方がいい」
重ねて弾丸が放たれるも、エルリックさんの手前で止まっている。
「無駄に頑丈な魔力装甲使いやがって!」
「落ち着け、セレスト。このエルリックさんはコピーらしいから」
「的にはちょうどいい!!」
「えっ、僕は当たったこと無いけど?」
「火に油ー!!」
セレストがロケランを取り出したので、俺は慌てて押さえた。抵抗するセレストだが、ゴッドミノタウロスなので押さえることができた。今日一番腕力を使ったけど。
「とにかく、セレストが無事で良かった」
「ごめんなさい。藍華ちゃんを追いかけたんだけど、このくそ親父が妨害してきたから」
「そんなことになっていたのか、これは僕の責任だな」
「そうだ、あんたのせいだ! 責任とれ!」
「セレストは落ち着いて」
「助けに行こうか」
「エルリックさんって、敵じゃないんですか?」
「敵対した覚えはないよ、攻撃してきたのはセレストだし」
セレストを足止めするために、エルリックさんのコピーを作ったのはカインの罠だ。掛かるのは相手が巧妙だったから。俺はセレストを責められない。
「この野郎ー!」
「まさかセレスト。救える自信無いの?」
「あんたより早く救出するっての!」
「それはありがたいけど、もう夜だ。今から行くのは危険すぎる」
「いや、今から行こう」
テントの入り口から歩いてきたのはエリカ大尉だ。
「エリカ大尉、俺たちは戦闘して疲弊してますよ?」
「藍華君を連れ去られたのは自衛隊の責任だ。それに行き先も分かっている。大穴のダンジョンだ」
「ああ、その通り。そして、カインの事だから罠を仕掛けるね。僕なら急いで追いかける」
「ありがとうございます!」
「「私たちも行くよ!」」
凛音たちも意気揚々だ。
「「家族を連れ去られたなら、僕も力を貸そう」」
リュセラも同意してくれた。
こうして、急ぎ大穴に向かうことが決まった。だが、疑問もある。カインが罠を仕掛ける?
今までの態度は演技だったのかも知れない。けれど、カインと藍華の優しく親しい関係は偽物には思えなかった。
「すみません。疑ってしまって。セレストをいじめて楽しんでいるなんて、あり得ませんよね」
「いや、普通に弄んでいるよ。悠大の世界でも、子供に酸っぱい食べ物を与えて表情を面白がると聞いた」
「前言撤回します。やっぱり悪い奴ですね……」
「ふふ、良識の範囲内ならやっていいって悠大も言ってた」
「魔法で眠らせるのは常識的なのでしょうか……?」
「いいわけ、あるかー!」
セレストの声がした。俺がそちらを見るとエルリックさんに銃口を向けてすでに引き金を引いた。
銃声が鳴り響き、テントの外から大慌てで自衛隊の人や凛音とリュセラ、二号たちが覗いている。
「くそ! ガードが早すぎる!」
弾丸はエルリックさんの目の前で止まっている。魔法なのだろうか。
「その程度じゃ、鳥を仕留めるのも難しいかもね。ナイフを投げた方がいい」
重ねて弾丸が放たれるも、エルリックさんの手前で止まっている。
「無駄に頑丈な魔力装甲使いやがって!」
「落ち着け、セレスト。このエルリックさんはコピーらしいから」
「的にはちょうどいい!!」
「えっ、僕は当たったこと無いけど?」
「火に油ー!!」
セレストがロケランを取り出したので、俺は慌てて押さえた。抵抗するセレストだが、ゴッドミノタウロスなので押さえることができた。今日一番腕力を使ったけど。
「とにかく、セレストが無事で良かった」
「ごめんなさい。藍華ちゃんを追いかけたんだけど、このくそ親父が妨害してきたから」
「そんなことになっていたのか、これは僕の責任だな」
「そうだ、あんたのせいだ! 責任とれ!」
「セレストは落ち着いて」
「助けに行こうか」
「エルリックさんって、敵じゃないんですか?」
「敵対した覚えはないよ、攻撃してきたのはセレストだし」
セレストを足止めするために、エルリックさんのコピーを作ったのはカインの罠だ。掛かるのは相手が巧妙だったから。俺はセレストを責められない。
「この野郎ー!」
「まさかセレスト。救える自信無いの?」
「あんたより早く救出するっての!」
「それはありがたいけど、もう夜だ。今から行くのは危険すぎる」
「いや、今から行こう」
テントの入り口から歩いてきたのはエリカ大尉だ。
「エリカ大尉、俺たちは戦闘して疲弊してますよ?」
「藍華君を連れ去られたのは自衛隊の責任だ。それに行き先も分かっている。大穴のダンジョンだ」
「ああ、その通り。そして、カインの事だから罠を仕掛けるね。僕なら急いで追いかける」
「ありがとうございます!」
「「私たちも行くよ!」」
凛音たちも意気揚々だ。
「「家族を連れ去られたなら、僕も力を貸そう」」
リュセラも同意してくれた。
こうして、急ぎ大穴に向かうことが決まった。だが、疑問もある。カインが罠を仕掛ける?
今までの態度は演技だったのかも知れない。けれど、カインと藍華の優しく親しい関係は偽物には思えなかった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
その断罪、三ヶ月後じゃダメですか?
荒瀬ヤヒロ
恋愛
ダメですか。
突然覚えのない罪をなすりつけられたアレクサンドルは兄と弟ともに深い溜め息を吐く。
「あと、三ヶ月だったのに…」
*「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる