上 下
110 / 217
2部、2章

もう一人のリュセラ

しおりを挟む
 攻撃を受けて装甲車から出た先にはリュセラがいた。隣にいるリュセラと完全に同じ姿。しかし、隣のリュセラの顔は険しくなる。

「魔法による再現だな。完全に僕だ。魔力も武装も」

「さっきの攻撃はなんだった?」

「恐らく僕が殴ったんだな」

「ゴリラかよ! 本当に魔法使いか?」

「勇者パーティーならみんなこれくらい出来る」

「父さんも出来るのかよ!」

「ああ、思出話もしたいが今は無理だな!」

 二人目のリュセラが俺たちに杖を向けた。

「召喚魔法、星の海」

「いきなりか!」 

 俺は水筒を取り出して飲もうとしたが、既に世界は暗転し、星の数の聖霊が俺たちに襲いかかる。

「送還魔法!」

 俺の隣のリュセラがそう唱えると、全ての暗闇がかき消された。

 その隙に俺は水筒からコーヒーを注ぎシナモンを入れて飲み干した。自分の頭に金色の角が生えている。そして、身長が伸びたのか、かなりの高さからリュセラを見下ろしていた。

「俺、何に成ったんだ? 巨人?」

「バカな! ほぼ神域の獣だ。ゴッドミノタウロスになってる!」

「何が出来る、簡潔に教えてくれ?」

 敵のリュセラの方を見ながら、俺は仲間のリュセラに聞いた。

「ああ、試してみるか……」

 敵のリュセラが杖を振る瞬間、味方のリュセラは俺の襟を掴んだ。まるで柔道?

「ぶっとばしてこい!」

 リュセラは俺をぶん投げた。敵のリュセラが呪文を唱える。

「召喚魔法、魔竜鉱床」

 杖から何処までも広がる黒い水晶、空も地面も水晶に満ち、中から這い出てきた巨大なドラゴンの頭、口を開けて襲いかかってきた。

「死んじゃう!」

「大丈夫、多分」

「そこは自信を持ってくれぇー!!」

 飛翔した俺はそのまま黒い水晶のドラゴンの口の中。かしし、俺が触れた瞬間に水晶が全て砕けて消えた。ドラゴンもおらず。俺は空中、なので落下した。地面に叩きつけられたが、特に痛みはない。

「魔法の無効化?」

「そうだな。でなければ魔竜鉱床で水晶になって死んでる」

「危なすぎー!」

「賭けに出て正解だな」

「人の命を賭けんじゃねえ!」

「偽物の僕の姿がない!」

「装甲車だ、行くぞ!」

 俺たちが装甲車に再び入ると、中では……。

「凛音、君を守りに来た」

「ずっと一緒だったのに、今言う?」

「僕は、そうだなリュセラ二号と呼んでくれ」

 装甲車に入ったリュセラ二号は誰も傷付けてはいない。俺たちが入ってきても杖を構えない。こっちのリュセラは構えているがな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

その断罪、三ヶ月後じゃダメですか?

荒瀬ヤヒロ
恋愛
ダメですか。 突然覚えのない罪をなすりつけられたアレクサンドルは兄と弟ともに深い溜め息を吐く。 「あと、三ヶ月だったのに…」 *「小説家になろう」にも掲載しています。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!

リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。 聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。 「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」 裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。 「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」 あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった! 、、、ただし責任は取っていただきますわよ? ◆◇◆◇◆◇ 誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。 100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。 更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。 また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。 更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

処理中です...