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4章

ハンネとの戦い

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 遺跡を進み大きな部屋に出た俺たちは、待ち構えていたハンネと対峙していた。鍵は縦ロールごと俺のスライムとなった体に拘束している。便利な体だな。

 他の強化も考えれば、俺もかなり強くなっている。リュセラたちに並ぶのは無理だが。

「ふふっ。リュセラとセレスト様さえ居なければ私に勝てるものは居ないでしょう」

 ハンネの台詞に、ドラクは不敵に笑う。斧を持って構えた。

「余程の自信だな。俺は王の中でも脳筋で通っている」

「それはむしろ蔑称なのでは……」

「じゃあ、やろうぜ!」

 ドラクはハンネへと斧を投げた。ちゃんと相手を捉え確実に当たる位置だったが、斧は反れて地面に突き刺さる。

「やっぱり、私に勝てるものは居ない」

「攻撃を反らした?」

「そう、風見鶏は方角を示す。風見鶏が向いた方角に攻撃を反らすのが、私のアーツの能力」

「リュセラみたいに全体攻撃しないと当たらないってことか」

「ならこれでどうよ!」

 ドラクは首に吊るしてあるストラップを斧に変形し、斧を四つ投擲した。それは回転しながらハンネへと飛び、四方向からの攻撃。

「方角は四つではない。私はさらに機能拡張により全方向上下、斜めを網羅している」

 俺は手持ちを確認した。鬼、猫、水牛。鹿。火の精霊、ドライアド、スライム。ゴールドボーイとスカーフ。

「悠人、火の精霊の火で相手を囲えない?」

「中の人が蒸し焼きになっちゃうから危険だ」

 相手が悲劇教団でも、大怪我をするような攻撃は出来ない。ゴールドボーイで金貨の波を作れば何とかなるが、ドラクの手前で使うと捕まってしまうかもしれない。

「大丈夫だ、俺に任せな!」

 ドラクは斧を幾つも投げた、投げた端から拾い、次を投げ続ける。

「ドラク、なにを?」

「足止めしてやる。コイツに攻撃が当たらねえならよ、全体から攻撃すればコイツ動けねえよな! 受け流す時に動かないのか、動けねえのかねえ」

「冴えてるな、ドラク!」

 現にハンネは動かない。ならば相手は受け流す際は動けないんだ。いける! だが、俺の体を何かが掠めた。それは斧。

 外れた斧が全方向から飛んでくるのか。

「危なすぎ!」

「火の盾!」

 凛音が魔法で盾を作ると、斧が弾かれた。

「ありがとう」

「悠人、体!」

「再生するから平気だぞ」

「違う、鍵」

 俺のスライム体から縦ロールが抜け出していた。鍵は相手が持っている。

「ふふっん。人間では私に追い付けないわー!」

「人間をナメるなよ!」

 俺は縦ロールを追いかけた。魔物の体により筋力が上がっていたのに、相手は魔法で風を使い俺たちは引き離された仕舞った。

「逃げちゃった」

「大丈夫、俺の体の一部を付着させた。何となく居場所がわかる」

「悠人、人間離れしてきたね……」

 鍵を奪われた。追いかけて捕まえないと、回復の杖が悲劇教団の手に渡ってしまう。彼らの目的は分からないが、止めないと。
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