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3章

魔法の戦い方

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 壊れかけの城の中で、俺は逃げ回っていた。凛音の放った魔法は火の剣。当たると爆発する。もしかして、命の危険とか考えたことないのか凛音!

「ゆーうーとー! その体で何が出来るか見てみたい!」

「後で見せてやるから!」

 俺は振り向いた。その時にはすでに火の剣が放たれている。スカーフで自動回避は出来るものの、当たるとヤバすぎる。

「どうすれば……」

「凛音は強すぎる。今の悠人では勝てないだろう」

 俺に話しかけてきたのはスカーフ。今の俺はアーツの力で伸びたスカーフを纏っている。スカーフのお陰で今戦えている。逃げるしかないとしても。

「凛音は魔法が使えるが、俺は魔力が足りないから使えない」

「だが、悠人にはエンチャントお菓子がある」

 今あるエンチャントお菓子は。水牛、鹿、猫、鬼、スライム、ドライアド、火の精霊。

「どれも強いけど、爆発までは防げないよな」

「治してくれるらしいから食らってみるか?」

「攻撃を進んで受けるのはリスクか有りすぎる」

「悲劇教団との戦いを任せてみては?」

「いや、凛音を無事に帰すには俺が戦うべきだ。今の俺が無事でないかもだが」

 俺は走りながら考える。体の動きはスカーフに任せてあるので、回避は問題ない。楽し過ぎて申し訳なくなるが。

 鞄からコーヒーとシナモン、ハチミツを取り出した。俺の手が足りないと思ったがスカーフが変形して全部持ってくれた。後は小匙で計って入れるだけ。

「走りながら計るのは無理じゃん!」

「どうせ魔法を得るのだから、いっぱい入れていいのでは?」

「それだ! 入れ放題とか最高だな!」

「加減はしろよ……」

 ハチミツとシナモンを入れたコーヒーを飲んだ。発現した魔法は。

「体には出てないな、魔法を使うイメージをしろ」
 
「なんか出ろ!」

 俺は前に手をかざした。手から火が出てきたので火の魔法かと思ったが、火は人形に変形した。

「分身か。便利だな」

「早速、けしかけてみる!」

 分身は俺の意思を受け取り、凛音に向けて走った。その数を十、百と増えていく。

 視界いっぱいの俺が凛音に突撃した。その瞬間に大爆発が起こった。

「やり過ぎた! 大丈夫か凛音?」

「大丈夫じゃないよー」

 爆発による煙が晴れると、そこには凛音が立っていた。無傷で。

「魔法たのしー! もっと、もっと新しい魔法見せて!」

 凛音が更に火の剣を増やした。城の廊下にいっぱいの赤色。

「悪化してる!」

「いったん隠れる。少し耐えろ、悠人!」

 スカーフはジャンプして、天井に到達すると硬化したスカーフを鍵づめとして突き刺すとぶら下がった。下を通りすぎた火の剣が一斉に爆発し、廊下は煙で満たされる。

「魔法を使うとヤバイ。凛音のテンションが上がるほど暴走していく」

「どうする、悠人?」

「凛音は強いが、弱点が分かった。彼女の新しいものへの過剰な興味を利用するんだ」

 俺はエンチャントお菓子を取り出した。ある仕掛けをするために。

 煙が晴れた廊下で一人で凛音は立っている。だが、彼女は周りに何かが有るのに気がついた。

 それは液状の起立した物体。中では何かが揺らめいている。

「何あれー!」

 近づいた凛音は鞄から虫眼鏡を取り出す。杖をいったん置いてよく観察した。そして、触ろうとしたが手を止める。

「でも、城のものだし。触っちゃダメか」

 だが、それで十分だった。俺は手を伸ばして凛音の手を掴む。もう片方も掴んで動けなくした。

「なに、何なの?」

「凛音、変なものには近づかないようにな」

「悠人! さっきまでと姿が違う」

「そうだ。これは俺のエンチャントお菓子で変身したスライム」

「騙されたー! でも、新感覚、ちょっと抱き締めても良い?」

「ダメ!」

「けちー!」

 強くなった凛音に俺は勝利した。これなら俺が戦う事を許してくれる。凛音と別行動するのは危険だと分かった。戦わせない方がいい気もする。相手のために。
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