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3章

洋館の罠

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 城で休憩をした俺たちは、町の外れの洋館へとやってきた。

 建物の外観は、まるで巨大な機械のような、銀色の屋根と鮮やかなブルーグラスで覆われた壁が特徴的だ。壁には光る鉱石が散りばめてあり、めちゃくちゃにカラフルな光が足元まで照らしている。

 玄関はガラス張りで、高い天井が目立つ。中は明け透けなので何もないフロアが見えた。人はおらず静かで気味な廃洋館だった。

「変わった形の洋館だな」

「アートへのトライを感じるね!」

「悪目立ちしているけど」

「俺ら人の事言えるのかよ」

 先ほど食べたエンチャントクラッカーにより、俺たちは魔法まみれになっていた。主に頭に水牛の角、鹿の角、猫の耳、鬼の角。俺だけ更にドラゴンの角と鱗。

 頭の重さに耐えかねて、手で角を支える時も有ったな。町を歩けば店の看板に当たり、人が多いところは避けながらここへ到着。すでに疲れが出ている。

「ここからは罠がある。慎重に行こう。先頭は悠人に頼もう」

 先頭はドラゴンの力がある俺だ。頑丈なのは分かっているが、また盾役とは。

 洋館のガラス張りのドアに手を触れた。その瞬間、爆発が起きた。全てのガラスが割れて、飛散し轟音の中で玄関が粉微塵になる。

「引っ掛かった、あなたたちはお仕舞いよ。このガラスは魔法のガラス。破片が当たったら細切れになるように魔法がかかっている」

 洋館の奥の方から声がする。幼い少女の声だ。奥から風に乗って金色の帯が飛んできた。

「それは恐ろしい仕掛けだな」

「嘘、生きてるー!」

 俺は玄関に立ち尽くしていた。ドラゴンの鱗と、鬼の耐久力で耐えたのだ。

「悠人、無事でよかった」

 振り返った俺は、リュセラたちの前に透明な壁があるのに気がついた。

「魔法の防壁だ。ドラゴンのブレスくらいなら防げる」

「なんで俺を守ってくれない?」

「必要ないだろ。ドラゴンは聖剣でも傷つかない。魔力で強化してようやく攻撃が当たるんだ」

「魔力の強化、入っているんですけど!」

 浮かんでいる金色の帯が少女の姿に変化する。

「並みの強化では無理だ、勇者位のでないと」

「この縦ロールに、そんなん出来るか!」

 俺は縦ロールに近寄って捕まえようとしたが、すんでのところで金色の帯に変身して飛んでしまう。

「フーンだ。あなたたちなんて、ここから先の罠で始末してやるわ、覚悟なさ……」

 俺は軽くジャンプをした。猫で強化されたジャンプ力に、鬼とドラゴン、水牛の脚力は空を飛んでいる縦ロールの前まで届いた。

 なので掴んだ。

「ふぎゅうっ!」

 掴まえた縦ロールは暴れたが、ドラゴンの体には効かない。例え風を操る魔法でも。めちゃくちゃ暴風が吹き荒れてるけど、無事に着地した。今の俺は風では飛ばない。重いからな、頭が。

「これで解決か?」

「いや、こいつ見るからに身軽だ、地図も鍵も持っていないぞ」

「ふふんっ。なにも考えずに敵に姿は晒さないわ。ちゃんと協力者が持っている」

「でも、武器も持たずに挑発に来たよね」

「そ、それは。私は魔法で戦うから……」

「捕まった時点で負けだろうが」

「い、いいえ。待ち受ける凶悪な罠があなたたちなんて、こてんぱんにするんだから!」

「見果てぬ罠を求めて!」

 凛音が玄関の壊れたガラス跨いで洋館に侵入した。洋館の中は長い廊下に幅の広い階段、様々な部屋に繋がる扉があり、どれも豪華に飾られている。ホコリ被っているけど。

 俺たちも続いて中へと入る。

「凛音、危ないから悠人を先頭にな」

「俺はいいのか……」

「王である俺の攻撃に耐えたんだ、自信もてって」

「誰か俺の心配もしてくれ」

 先頭になってしまった俺は、取り敢えず階段を上ることを選んだ。一段目を踏んだ瞬間、段がへこんだので壊したのかと思ったが、ゴロゴロと音がなり、階段の上から大きな岩石が転がってきた。
 俺は慌てて手を付き出した。こんな危険な罠に無駄な抵抗だろう。俺がドラゴンでなければ。

 付き出した俺の手に、転がってきた岩は跳ね返され、粉微塵に粉砕された。

「すごーい。私もやりたい!」

「俺の身にもなってくれよ……」

「それ、私の前で言う? 人間がやってくるから嘲笑おうと思って降りてきたら、化物ばっかりで」

「成りたくて成った訳じゃないんだけど」

「役に立ったから良いだろ悠人。この調子で全員ぶん殴って勝ちだぜ」

「それはどうかしら! この先があなたたちの最後……。かもしれない」

「お前も自信を持てよ、俺から地図と鍵を盗んだんだからよ」

「あれは警備もろくにしていない部屋に、転がしてあったからなんとかなったのよ!」

 俺たちはドラクを見た。

「お前のせいだったのか。元々見上げたことはないが、見損なったぞ!」

「宝物だから、大切にした方がいいよ?」

「し、仕方ねえだろ。俺が探すのは親父に止められてたし。盗みに来るような命知らずも居ねえしで、つまらなかったんだ」

「戦う口実にすんな!」

「悪かったよ。だから、責任として付いてきた」

 言い合いながらも俺たちは階段を進んでいった。長い廊下を抜けた先に大きなフロアがあった。パーティーが開けそうな場所だが、テーブル等は置いていない。それどころか、周りに扉がない。前に廊下が繋がっているだけだ。

「広いね、飾りも豪華だし。でも何でなにも置いてないの?」

「すでに人が住んでいないからな。歴史では夜逃げをしたんだったな。家具までは持っていけないが」

「フッフッフッ。掛かったな!」

 前の廊下から女性の声がした。彼女は壁に触れて押した。それはスイッチだ。突如としてフロアの床が抜けて下には真っ暗な闇、遠くに赤い光が見える。
 落下する中で見たのは廊下の女性の不敵な笑みだった。
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