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3章

城へ行こう3

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 城での戦いに勝利した俺。城は切断された床や穴が空いていたりとボロボロだ。城の外から騎士たちが入ってきて片付け作業を行っていた。

「私も戦う。今後のために、強くならないと」

「それは分かるけど、ここで戦わなくても……」

「今じゃなくてはダメだろ。俺はヒーラーだ、なるべく怪我なく戦える」

「やった! じゃあ始めよっか」

 凛音は杖を剣道の竹刀みたいに柄長に構えた。そして、一歩踏み込み次の瞬間にはドラクの眼前まで来て杖を振った。ドラクは斧で受け鋭い音が響く。

「武術を習ってるな。それも並みの努力ではねえ」

「そう、私はトライした武術を極めないと次に行かない」

 杖を少しだけ振るい、凛音は呪文を唱える。

「身体強化、アーツによる機能拡張、固さアップ」

 凛音は杖を振るい、刀のようにドラクを切りつけていく。左右上下に振った杖の残像が見える。

「やるなあ。そんならこうだ!」

 ドラクはガードに使っていた斧の隙間から凛音に蹴りを加える。凛音は蹴りを杖ていなした。

 攻撃をしながら凛音は更に呪文を唱える。

「火の剣」

 呪文と同時に凛音は杖を片手に燃える火の剣を作り出して振るった。ドラクは火の剣を受けず、回避して距離を取った。

「火の剣。自動追尾、浮遊、増殖」

 凛音の手から放たれた火の剣はその数を十、百と増えた。

「凛音。いくらなんでもやりすぎだ……ぞ?」

 返事をしない凛音。俺の言葉が届いていない。彼女の目が据わっているのに気がつく。

「火の温度を千五百度、濃縮、接触時に破裂及び拡散」

 それらが全てドラクの方へと射出された。彼は回避したが、地面に当たった火の剣は爆散し、火の粉が飛び散る。火の粉ですら当たった場所が熔けていく。

「なんだありゃ、当たったら死んでるぞ!」

「そうだ、凛音はな。僕の知らないバフを掛けまくって強化してくるんだ」

「現代知識チートか!」

 まだ浮いている剣がドラク目掛けて飛来した。

「逃げるぞ、死んだら治せねえ!」

「さっきまでの威勢はどうした?」

「命は大事!」

 リュセラもドラクも逃げの姿勢に入ったが、俺はセレストを見た。彼女も強い魔法使いだから打開してくれるかも。

 セレストは手を振った。そして姿を消す。

「セレストも逃げやがった!」

 俺たちは三人で走った。飛来する火の剣は続々と地面に当たり、床を溶かし壁を燃やしていく。

「リュセラ! 何とかならねえのか?」

「無理だ。水を使っても蒸発するし、金属の盾では貫通するんだ!」

 ドラクが回避し損ねた火の剣が、彼の腹に迫る。俺は考えなしに手を付き出して助けたが、手に痛みが走った。焼けて熔けるような。爆散して広がった火が俺の体を焼いたが、多少の傷ですんだ。

「そうか、悠人はドラゴンだからダメージが少ないんだ」

「ありがとよ! そんじゃあついでに」

 ドラクは俺の腕を掴んだ。そのまま俺を振り回し、火の剣と衝突させる。

「グァァッ! 何すんだ!」

「盾だ、火耐性が役に立ったな」

「人を盾にすんな!!」

「ヒーラーが生きてりゃ戦線維持できんだよ!」

 ドラクは手をかざす。俺の傷が癒えた。同時に次の火の剣が飛んでくる。

「ありがと……やっぱ有りがたくねえ!」

 その後も俺を盾にしまくった。ようやく凛音から隠れることができた。

「誰だ、あの女をあんなに鍛えやがったのは!」

「そっちこそ、バカみたいに勝負するな。戦う必要無かったぞ!」

「俺はバカじゃ……。有るけどよ。無謀は嫌なだけだ。何とか打開しないと」

「確かにこのままじゃあ、城を壊しかねないな。止める方法を考えよう。俺が盾になる以外のな」

 俺は鞄から袋に入ったあのお菓子を取り出した。

「ドラク。このエンチャントクラッカーを食ってくれ、きっと役に立つ」

「なんだか知らねえが、戦えるなら貰うぜ!」

 袋からクラッカーをつかみ取り豪快に食べたドラクの頭から角が生える。

「これは何の魔法なんだ?」

 俺はドラクの腕を掴んだ。

「鬼になる魔法だ。多少火耐性がある」

 ドラクを掴んだまま引きずって、隠れ場所から凛音めがけて投げた。投げた先には火の剣が一杯。

「盾交換じゃおら!」

「やりやがったなー!」

 火の剣とドラクが衝突し、大爆発を起こす。城が揺れるほどの大音にリュセラと俺は様子を見ている。

「やったか?」

「やられるもんかよ!」

 ドラクは立っていた、体は多少傷が有ったが一瞬で癒して見せた。

「これでやっと戦えるってもんだな、サンキュー悠人!」

「無敵か、あの王さま?」

「ただのバカだ。ノリで生きてるし、いい奴だから仲間に慕われる」

 ドラクは斧を振るった。凛音の放った火の剣を弾きながら、前進していく。振るう度に大きくなる斧。

 斧が凛音の杖と衝突し、凛音は弾かれた。

「あれがドラクのアーツ。世界樹の素材は変形自在、柔軟で強固。壊れても自己再生する。切れ味はないがな」

「今度は凛音が心配になってきた……」

「大丈夫だ、あいつはそこまで横暴ではない。怪我ない加減は知っている」

 大振りの攻撃を放ったドラク。その攻撃を受けた凛音は地面に足が食い込む。

「加減してるか?」

「それだけ凛音が強いんだ。彼女の魔力による身体強化は並みの人間の比ではない」

 凛音とドラクの攻防は続いた。互いを攻撃しては、ドラクが回復をかけて。二人とも笑顔だ。だが、周囲の施設はボロボロになっていく。

「楽しいねえ!」

「そうだね! じゃあもう一度」

 凛音はまた火の剣を出して攻撃する。背後にはまだ綺麗な建物。その時ドラクは笑顔を止めて、立ちふさがった。全ての火の剣がドラクに当たり爆発をする。

「ドラク!」

 駆け寄った俺たちは、ボロボロのドラクを見た。膝をついて、斧で体を支えている。

「ここはダメだ、騎士たちの寮だから」

「やりすぎた。ごめんね」

 凛音は魔法を消した。杖を縮小し鞄へと仕舞うとドラクに手を差し伸べた。

「ありがとう。楽しかった」

「俺もだ。二人とも回復の杖を探すことを許可する」

「良かった。これで俺たちは進める」

「あー。その事なんだが。実は盗まれた」

「地図と鍵、どれをだ?」

「両方だ」

「噂通りだったか。悲劇教団の仕業だろう」

 回復の杖を探す資格を得た俺たち。だが、地図と鍵は盗まれていた。

「それなのに、なぜ戦った?」

「楽しいから」

「「「バカ!」」」

 見えてきた回復の杖への道は、また遠退いた。いったいどうすればいい? 
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