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第五十七話 拳の一撃
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画面の中で静止し続ける東京都本庁舎向かって、吉城が祈るように呟く。
「頼む、コクピットだけでいい……都庁全てを破壊するわけじゃない。コクピットのあるフロアにだけミサイルが命中すればすべてが終わる……頼む、命中してくれ……」
とその時、東京都本庁舎の左右にある部屋の数々が無造作に火花を吹き始めた。
「ミ、ミサイルが発射されたのか?」友川が驚嘆の声を上げる。
「今度はいったい何なんだ……」吉城の声が掠れた。
その小さな爆発の連続は、都庁の両サイドにあるいくつもの部屋の外壁とガラス、その中の床や天井を木っ端微塵にしていく。
「違う、あれはミサイルじゃない……都庁が自ら余計な部分を破壊しているんだ」
状況を察知した牧田が画面の都庁を睨んでそう言った。
「我々の負けだ……都庁はこれで完全変形を終える……もうこの国最大の破壊兵器に真正面から立ち向かえるものなどない……」
***********************************
「え、なになに、何の音、これ?」
葉咲の後につき理沙と須藤が25階にたどりついたと同時に、都庁内のあちこちから爆音が鳴り始めた。
「……もしかして、この建物、あちこちで爆発が発生してます?」須藤がパニックになって言った。
「え、マジか?」
炎の炸裂音の数はさらに増加していき、焦った理沙は葉咲に尋ねる。
「ちょっと、おいおいおい、これ何が起きてんだ、お局の人……」
その瞬間、激しい衝撃と熱風が25階のフロアを襲い、理沙、須藤、葉咲は勢いよく後方へ吹っ飛ばされた。
「うおおおおおおっ!」
と三人揃って絶叫の声を上げながら。
***********************************
野次馬だけにとどまらず、マスコミ、機動隊員、警官全ての人間が吃驚したまま顔を上に上げていた。
都庁の爆発が続発し、その両端にあった各部屋が鉄骨むき出しの状態になったかと思うと、鉄と鉄が擦りあわされる不快な異音と共に、鉄骨のそれぞれが移動して重りだし、建物の左右で大きな柱になっていった。
「……腕か?……あれは腕なのか?……」
多くの鉄鋼が合体し、都庁の両腕となった様を驚愕の表情で見ながら警官の一人が言った。
そして、下の階層の床面の中に横にして隠されていたと思われる鉄の板が、柱の先で五本の指を大きく開いた。
***********************************
「さあ、こちらも準備が整った。いくぞ、巨大魔神!」
レーダーが取らえている2機の戦闘機のドットに鋭い眼光をやりながら言うと、祐華は一機の左右の操作レバーを引き上げた。
***********************************
東京都本庁舎という大巨人のその両腕がゆっくりと上にあげられていく。
機動隊員や警官達は避難作業を、そしてマスコミのスタッフは報道という己らの使命を忘れたかのように、その脅威の光景に取りつかれたように見入り続ける。
「…………」
都庁の両腕が肩の位置まで両腕が上がると、その開いていた掌が拳を握るように閉じられた。
***********************************
「ではこちらから挨拶をさせてもらう」
祐華がパネルの中央にある発射ボタンを押した。
「派手に散るがいい!」
***********************************
都庁の手首から閃光が溢れ出す。
そして、左右の巨大な拳が手首から切断されると、その両拳は轟然と炎を噴きながら一直線に空中を走行し始めた。
都庁の周辺で事態を見守る人々がこれまで以上にどよめきの声を上げる。
***********************************
「都庁からミサイルか何かが発射されました!」
画面を見て友川が絶叫した。
「……今、飛んで行ったあれはパンチか?……」
信じられないものを見るように大きく目を開いて吉城が言った。
「都庁からの攻撃がついに始まってしまった……」牧田が絶望的な表情で囁いた。
***********************************
レーダーに映し出されている戦闘機のドットに向かって、新たな二つのドットが凄まじい勢いで接近していく。
「無理に抗おうとするな。鉄拳を受ける前に戦闘機から脱出してくれ」
祐華がその場にいないパイロット達向かって言うと、レーダーから戦闘機のドットが消えた。
***********************************
火と鉄の残骸になって墜落していく戦闘機2機に構うことなく、巨大な鉄の拳は元からいた場所に戻るべく空中で大きく方向転換をする。スピードを変えることなく、手首との接続部から凄まじい炎を吐き出しながら。
***********************************
「いったい何が……どうなっている……」
液晶の画面から手首が消えて以降の現場の情報が送られてこない状態が続くと、吉城は不安を表情から隠さずにそう言った。
「戦闘機が返り討ちにあって攻撃に失敗した……それ以外に何が?」
牧田が静かに事実を受け入れるようにそう答えた。
友川は言葉もでないとばかりにその場に立ち尽くしている。
「…………」
***********************************
「うおおおお、マー坊……大丈夫か?」
真正面から爆風を受け、通路のタイルに叩きつかれた理沙が呻いた。
そのフロア全体が炎の直撃を食らったわけではないが、通路には熱と塵が充満している。
「ええ、普通なら確実に死んでいるシチュエーションを今日だけでもう十回は迎えていますがね!」
溜まっていたストレスを爆発させるように須藤が強く言った。
「おお、無事か。よかった、よかった、それは何よりだ……」
理沙は起き上がり、げんなりしながらも怪我無く体の埃を払っている須藤の姿を確認するとライフルを握り、葉咲のいる方に銃身を向ける。
「おい、お局の人、私達はこんな事でめげちゃいられん。とっととこの狂ったやつを操縦している奴んところへ案内してもらうよ」
理沙への憎悪と仲間に見捨てられた怨念が混ざり合い、葉咲が自暴自棄になったように怒声を上げる。
「クソが、42階にいるよ! しかし、そのフロアのコクピットのあるブロックにはこの25階からの直通エレベーターを使ってでないと行けないようになっている!」
「うわっ、面倒くさ!」理沙が素直にコメントした。
「私の知っている事はこれだけだ、後は勝手にするがいい、この下品で小汚いギャルの異教徒が! ついでに大神様にたっぷり弄ばれて無様な死体になっちまいな!」
「頼む、コクピットだけでいい……都庁全てを破壊するわけじゃない。コクピットのあるフロアにだけミサイルが命中すればすべてが終わる……頼む、命中してくれ……」
とその時、東京都本庁舎の左右にある部屋の数々が無造作に火花を吹き始めた。
「ミ、ミサイルが発射されたのか?」友川が驚嘆の声を上げる。
「今度はいったい何なんだ……」吉城の声が掠れた。
その小さな爆発の連続は、都庁の両サイドにあるいくつもの部屋の外壁とガラス、その中の床や天井を木っ端微塵にしていく。
「違う、あれはミサイルじゃない……都庁が自ら余計な部分を破壊しているんだ」
状況を察知した牧田が画面の都庁を睨んでそう言った。
「我々の負けだ……都庁はこれで完全変形を終える……もうこの国最大の破壊兵器に真正面から立ち向かえるものなどない……」
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「え、なになに、何の音、これ?」
葉咲の後につき理沙と須藤が25階にたどりついたと同時に、都庁内のあちこちから爆音が鳴り始めた。
「……もしかして、この建物、あちこちで爆発が発生してます?」須藤がパニックになって言った。
「え、マジか?」
炎の炸裂音の数はさらに増加していき、焦った理沙は葉咲に尋ねる。
「ちょっと、おいおいおい、これ何が起きてんだ、お局の人……」
その瞬間、激しい衝撃と熱風が25階のフロアを襲い、理沙、須藤、葉咲は勢いよく後方へ吹っ飛ばされた。
「うおおおおおおっ!」
と三人揃って絶叫の声を上げながら。
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野次馬だけにとどまらず、マスコミ、機動隊員、警官全ての人間が吃驚したまま顔を上に上げていた。
都庁の爆発が続発し、その両端にあった各部屋が鉄骨むき出しの状態になったかと思うと、鉄と鉄が擦りあわされる不快な異音と共に、鉄骨のそれぞれが移動して重りだし、建物の左右で大きな柱になっていった。
「……腕か?……あれは腕なのか?……」
多くの鉄鋼が合体し、都庁の両腕となった様を驚愕の表情で見ながら警官の一人が言った。
そして、下の階層の床面の中に横にして隠されていたと思われる鉄の板が、柱の先で五本の指を大きく開いた。
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「さあ、こちらも準備が整った。いくぞ、巨大魔神!」
レーダーが取らえている2機の戦闘機のドットに鋭い眼光をやりながら言うと、祐華は一機の左右の操作レバーを引き上げた。
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東京都本庁舎という大巨人のその両腕がゆっくりと上にあげられていく。
機動隊員や警官達は避難作業を、そしてマスコミのスタッフは報道という己らの使命を忘れたかのように、その脅威の光景に取りつかれたように見入り続ける。
「…………」
都庁の両腕が肩の位置まで両腕が上がると、その開いていた掌が拳を握るように閉じられた。
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「ではこちらから挨拶をさせてもらう」
祐華がパネルの中央にある発射ボタンを押した。
「派手に散るがいい!」
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都庁の手首から閃光が溢れ出す。
そして、左右の巨大な拳が手首から切断されると、その両拳は轟然と炎を噴きながら一直線に空中を走行し始めた。
都庁の周辺で事態を見守る人々がこれまで以上にどよめきの声を上げる。
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「都庁からミサイルか何かが発射されました!」
画面を見て友川が絶叫した。
「……今、飛んで行ったあれはパンチか?……」
信じられないものを見るように大きく目を開いて吉城が言った。
「都庁からの攻撃がついに始まってしまった……」牧田が絶望的な表情で囁いた。
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レーダーに映し出されている戦闘機のドットに向かって、新たな二つのドットが凄まじい勢いで接近していく。
「無理に抗おうとするな。鉄拳を受ける前に戦闘機から脱出してくれ」
祐華がその場にいないパイロット達向かって言うと、レーダーから戦闘機のドットが消えた。
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火と鉄の残骸になって墜落していく戦闘機2機に構うことなく、巨大な鉄の拳は元からいた場所に戻るべく空中で大きく方向転換をする。スピードを変えることなく、手首との接続部から凄まじい炎を吐き出しながら。
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「いったい何が……どうなっている……」
液晶の画面から手首が消えて以降の現場の情報が送られてこない状態が続くと、吉城は不安を表情から隠さずにそう言った。
「戦闘機が返り討ちにあって攻撃に失敗した……それ以外に何が?」
牧田が静かに事実を受け入れるようにそう答えた。
友川は言葉もでないとばかりにその場に立ち尽くしている。
「…………」
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「うおおおお、マー坊……大丈夫か?」
真正面から爆風を受け、通路のタイルに叩きつかれた理沙が呻いた。
そのフロア全体が炎の直撃を食らったわけではないが、通路には熱と塵が充満している。
「ええ、普通なら確実に死んでいるシチュエーションを今日だけでもう十回は迎えていますがね!」
溜まっていたストレスを爆発させるように須藤が強く言った。
「おお、無事か。よかった、よかった、それは何よりだ……」
理沙は起き上がり、げんなりしながらも怪我無く体の埃を払っている須藤の姿を確認するとライフルを握り、葉咲のいる方に銃身を向ける。
「おい、お局の人、私達はこんな事でめげちゃいられん。とっととこの狂ったやつを操縦している奴んところへ案内してもらうよ」
理沙への憎悪と仲間に見捨てられた怨念が混ざり合い、葉咲が自暴自棄になったように怒声を上げる。
「クソが、42階にいるよ! しかし、そのフロアのコクピットのあるブロックにはこの25階からの直通エレベーターを使ってでないと行けないようになっている!」
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