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第二十五話 身柄確保
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〈第一祭事場〉
ハチ公前の交差点で暴走車に轢かれた信者達があちこちに散らばって倒れている。
皆、重症と思われ、中にはうつぶせになったままピクリとも動かない者もいる。
「よっしゃあ、見たか。マー坊! 皆やっつけだぞ! いいもんになった口裂け女さんが悪の陰謀を阻止ってやつだ!」
と、理沙は車から降りるなり、興奮して両拳を何度も縦にぶんぶんと振った。
「いやー、危なかった、正に間一髪ってやつだ。よくぞギリギリで防いだぞ、自分!」
須藤も続いて車から降りると、一瞬で大量発生した血まみれの重傷者を言葉もなしにただ唖然と見つめる。
「…………」
「おい、何してるマー坊、テロを阻止した口裂け女さんを褒めずに何をドン引きして……」
と、理沙はその血の気の失せた須藤の顔を見てハッと冷静を取り戻す。
「あ……しまったあああああああ! そうだったあああああああ!」」
理沙は両手で頭を抱え、腹の底からそう叫んだ。
「誰一人殺さない約束だった! いか~ん! こりゃいかんぞ! マー坊に街に遊びに連れてってもらう約束が~~!」
理沙は慌てて目の前で口から血を吐きながら虫の息になっている女の信者を膝に抱え上げた。
「おい、大丈夫か? しっかりしろ! 怪我はしてないか?」
その女の信者は返事をするかわりにうつろな目でグボっと口から大量の血を吐いた。
「心配すんな、傷は浅いぞ! 気をしっかり持て!」
焦りながら言うと今度は周りに倒れている信者達に聞こえるよう大声で語り掛ける。
「皆、車で轢いた本人が言うのもなんだけど、大丈夫? 怪我はない?」
「ううううううう!!!!!……」と信者達全員が苦痛と怨念の込もった呻き声を上げた。
「よし! いいぞ、とりあえずまだ誰も死んでない!」
確認がとれると理沙は胸を大きくなでおろしながら大きく吐息をついた。
「いやあ、ほんとよかった~、誰も殺さなかったら沖縄旅行に連れて行ってくれるってマー坊との約束がパアになっちゃうところだったあ~」
「いや、勝手に約束を変えないでください」
須藤の抗議に答えず、緊張感から解放さるまま、理沙はぐったりと道路に大の字になる。
「いや~、しかししかしほんと冷や汗かいた! マジでギリギリだったけどこれで一件落着。口裂け女さんは無事、カルト教団のテロを未然に防ぎました……」
理沙はそう満足そうな顔で言い終えると、次の瞬間、表情を凍ったものに豹変させて身を起こした。
「いや、ちょっと待てよ、マー坊! ここにいる信者、全部で何人くらいいる?」
ざっと周辺を見回す須藤。
「そうですね……20人前後ってところですかね……」
「え、だって教団の信者数は160人だぞ……村に残ってたのを合わせても40人ほど」
そこえ須藤が深刻な表情で呟く。
「……それじゃあ、他の信者の連中はどこに?」
「ええええ……一気に嫌な予感しかしなくなったんですけど……」
と、その時、パトカーの軍団がけたたましくサイレンを流しながら急襲してきた。
「お……伊瑠沙ちゃんに頼んだ騎兵隊がやっと到着か?」
猛進してきたパトカーの群れは交差点の前で列を作るように急停止すると、その中から大勢の警官が勢いよく飛び出しくる。
「はい、お巡さんの皆様方、ご苦労さん。ひとまず信者の方々は重症だからやさしく取り扱って……」
そう声をかけるも、複数の警官達は地面でもだえる信者達をスルーし、逃げ道を塞ぐように理沙と須藤の周辺を囲んで警棒や警杖の先を向けた。
「お前ら二人とも動くな! 神妙にしろ!」
そのリーダー格と思われる警官が“逮捕するモード”で声を上げた。
「はあああああああ!?」と驚愕の顔で悲鳴を上げる理沙と須藤。
「いいから大人しくしたまま、その場から動くな! 逃げられると思うなよ」その後ろの警官が怒号混じりに言った。
「いやいや、ちょいちょいちょい! 悪もんは地面で転がっている信者の連中だってば! 目どこについてんの? よく状況を見なってば」
と、理沙がクレームの声を上げると、須藤が暗然とした表情で言う。
「いやあ……そのう、たぶん、今の現場をよく見れば見るほど、僕らは大量の人を轢いた暴走車の運転手にしか見えないかと……」
「え?……あ、マジで?」
「いいから、そこから動くな! おとなしくお縄につけ!」
そう改めて怒声を上げた警官は地面に散らばった機関銃に気づいた。
「こ、これは!」
悲鳴の混ざった声を上げると、震える手で拳銃を抜き構えだす。
「お、お前ら、これらの機関銃は何だ? それもこんなにいっぱい! ふ、ふ、ふ、二人とも、そそそそ、その場から動くな、他に持っている武器も捨てろ!」
他の警官達も地面の機関銃を見ると緊迫した顔になり、それぞれが手に持っている武器を警棒から拳銃に替え、その先を理沙と須藤に向けた。
「あー……たった今、僕らは暴走車の運転手から機関銃を持った危険人物に昇格したようです」須藤が両掌で顔を覆い、首を大きく横に振った。
「ええ~、マジか?~~……」と理沙が呻くように言った。
「う、動くな、早く隠し持っている武器を捨てろ! おとなしく言う通りにするんだ!」
と自分らを囲んで威嚇する警官の大群をげんなりとした顔で見ながら理沙が尋ねる。
「いやいや……マー坊、警察バッジは?」
「あ、しまった! 村で倒れた女子高生を覆ってやった上着の中だ! 警部は?」
「そんなもん、あんた、村であんだけドタバタはしゃぎまくったんだ。とっくにどっかの彼方へ飛んでいっちまってるってのよ……」
「…………」
理沙と須藤はしばし無言のまま互いの顔を見合わせ、大きく溜息をついた。
「やれやれ……」
二人そろってそうぼやきの声を漏らし、両手を上に挙げた瞬間、大勢の警官達がアメリカンフットボールの選手のように猛然と頭を突き出しながら二人の体目掛けて飛びかかってきた。
「午後六時十分、被疑者、身柄確保! 午後六時十分、被疑者、身柄確保!」
警官達がそう声を張り上げ、悪人達を逮捕した事を周辺で唖然としている渋谷の人々に主張した。
警官の山の下敷きになりながら理沙が苦悶の声を上げる。
「マジか!~~~」
ハチ公前の交差点で暴走車に轢かれた信者達があちこちに散らばって倒れている。
皆、重症と思われ、中にはうつぶせになったままピクリとも動かない者もいる。
「よっしゃあ、見たか。マー坊! 皆やっつけだぞ! いいもんになった口裂け女さんが悪の陰謀を阻止ってやつだ!」
と、理沙は車から降りるなり、興奮して両拳を何度も縦にぶんぶんと振った。
「いやー、危なかった、正に間一髪ってやつだ。よくぞギリギリで防いだぞ、自分!」
須藤も続いて車から降りると、一瞬で大量発生した血まみれの重傷者を言葉もなしにただ唖然と見つめる。
「…………」
「おい、何してるマー坊、テロを阻止した口裂け女さんを褒めずに何をドン引きして……」
と、理沙はその血の気の失せた須藤の顔を見てハッと冷静を取り戻す。
「あ……しまったあああああああ! そうだったあああああああ!」」
理沙は両手で頭を抱え、腹の底からそう叫んだ。
「誰一人殺さない約束だった! いか~ん! こりゃいかんぞ! マー坊に街に遊びに連れてってもらう約束が~~!」
理沙は慌てて目の前で口から血を吐きながら虫の息になっている女の信者を膝に抱え上げた。
「おい、大丈夫か? しっかりしろ! 怪我はしてないか?」
その女の信者は返事をするかわりにうつろな目でグボっと口から大量の血を吐いた。
「心配すんな、傷は浅いぞ! 気をしっかり持て!」
焦りながら言うと今度は周りに倒れている信者達に聞こえるよう大声で語り掛ける。
「皆、車で轢いた本人が言うのもなんだけど、大丈夫? 怪我はない?」
「ううううううう!!!!!……」と信者達全員が苦痛と怨念の込もった呻き声を上げた。
「よし! いいぞ、とりあえずまだ誰も死んでない!」
確認がとれると理沙は胸を大きくなでおろしながら大きく吐息をついた。
「いやあ、ほんとよかった~、誰も殺さなかったら沖縄旅行に連れて行ってくれるってマー坊との約束がパアになっちゃうところだったあ~」
「いや、勝手に約束を変えないでください」
須藤の抗議に答えず、緊張感から解放さるまま、理沙はぐったりと道路に大の字になる。
「いや~、しかししかしほんと冷や汗かいた! マジでギリギリだったけどこれで一件落着。口裂け女さんは無事、カルト教団のテロを未然に防ぎました……」
理沙はそう満足そうな顔で言い終えると、次の瞬間、表情を凍ったものに豹変させて身を起こした。
「いや、ちょっと待てよ、マー坊! ここにいる信者、全部で何人くらいいる?」
ざっと周辺を見回す須藤。
「そうですね……20人前後ってところですかね……」
「え、だって教団の信者数は160人だぞ……村に残ってたのを合わせても40人ほど」
そこえ須藤が深刻な表情で呟く。
「……それじゃあ、他の信者の連中はどこに?」
「ええええ……一気に嫌な予感しかしなくなったんですけど……」
と、その時、パトカーの軍団がけたたましくサイレンを流しながら急襲してきた。
「お……伊瑠沙ちゃんに頼んだ騎兵隊がやっと到着か?」
猛進してきたパトカーの群れは交差点の前で列を作るように急停止すると、その中から大勢の警官が勢いよく飛び出しくる。
「はい、お巡さんの皆様方、ご苦労さん。ひとまず信者の方々は重症だからやさしく取り扱って……」
そう声をかけるも、複数の警官達は地面でもだえる信者達をスルーし、逃げ道を塞ぐように理沙と須藤の周辺を囲んで警棒や警杖の先を向けた。
「お前ら二人とも動くな! 神妙にしろ!」
そのリーダー格と思われる警官が“逮捕するモード”で声を上げた。
「はあああああああ!?」と驚愕の顔で悲鳴を上げる理沙と須藤。
「いいから大人しくしたまま、その場から動くな! 逃げられると思うなよ」その後ろの警官が怒号混じりに言った。
「いやいや、ちょいちょいちょい! 悪もんは地面で転がっている信者の連中だってば! 目どこについてんの? よく状況を見なってば」
と、理沙がクレームの声を上げると、須藤が暗然とした表情で言う。
「いやあ……そのう、たぶん、今の現場をよく見れば見るほど、僕らは大量の人を轢いた暴走車の運転手にしか見えないかと……」
「え?……あ、マジで?」
「いいから、そこから動くな! おとなしくお縄につけ!」
そう改めて怒声を上げた警官は地面に散らばった機関銃に気づいた。
「こ、これは!」
悲鳴の混ざった声を上げると、震える手で拳銃を抜き構えだす。
「お、お前ら、これらの機関銃は何だ? それもこんなにいっぱい! ふ、ふ、ふ、二人とも、そそそそ、その場から動くな、他に持っている武器も捨てろ!」
他の警官達も地面の機関銃を見ると緊迫した顔になり、それぞれが手に持っている武器を警棒から拳銃に替え、その先を理沙と須藤に向けた。
「あー……たった今、僕らは暴走車の運転手から機関銃を持った危険人物に昇格したようです」須藤が両掌で顔を覆い、首を大きく横に振った。
「ええ~、マジか?~~……」と理沙が呻くように言った。
「う、動くな、早く隠し持っている武器を捨てろ! おとなしく言う通りにするんだ!」
と自分らを囲んで威嚇する警官の大群をげんなりとした顔で見ながら理沙が尋ねる。
「いやいや……マー坊、警察バッジは?」
「あ、しまった! 村で倒れた女子高生を覆ってやった上着の中だ! 警部は?」
「そんなもん、あんた、村であんだけドタバタはしゃぎまくったんだ。とっくにどっかの彼方へ飛んでいっちまってるってのよ……」
「…………」
理沙と須藤はしばし無言のまま互いの顔を見合わせ、大きく溜息をついた。
「やれやれ……」
二人そろってそうぼやきの声を漏らし、両手を上に挙げた瞬間、大勢の警官達がアメリカンフットボールの選手のように猛然と頭を突き出しながら二人の体目掛けて飛びかかってきた。
「午後六時十分、被疑者、身柄確保! 午後六時十分、被疑者、身柄確保!」
警官達がそう声を張り上げ、悪人達を逮捕した事を周辺で唖然としている渋谷の人々に主張した。
警官の山の下敷きになりながら理沙が苦悶の声を上げる。
「マジか!~~~」
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