悪の教団とイケメン女子幹部と精霊計画……そして解放された都市伝説の女

時東 則巣

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第五話 狂気の中心部

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4.狂気の中心部

 全ての家族を失った十五歳の頃に出家し、人生を捧げてきた教団の主が今や年老い、ベッドの上で雑音まみれの呼吸をしている姿を見て、祐華は思わず嗚咽を漏らした。

「嘆くな、祐華よ……私も歳だ……それに現世での私の命よりも重要なのは祝祭の成功だ。巨大魔神の準備は進んでいるのだろうな?」

「心配はいりません、真師よ! 教団の祝祭の準備は滞りなく進んでおり、巨大魔神を操る手段も全て把握できております。この祐華、当日、真師が想像するよりもはるかに多くの人間を精霊にするとお約束します!」

「……祝祭の当日、最後まで私とお供をしてくれる女子達は調達できたか?」

「はい、真師のお供のために純潔なままの女子高生を四人ほど街から拉致してきました。今はまだ世の悪しき価値観に汚されておりますが、祝祭の日、皆、死を恐れず心の底からの喜びをもって真師のお供をするでしょう!」

「うむ、楽しみだ。祝祭の日、我が教団は世の人々から強い反感を買うことになるだろう。巨大魔神を駆使して街に大火を放ち、見も知らぬ大勢の人から命を頂戴するのだからな。だが救いのない人生を送っている大勢の人々を我々が精霊へと昇華させたという真実を知れば、のちにこの地球の全ての人間が我が教団に感謝の涙を流す事になる。それは間違いない!」

 力強くそう語ると、教団の長は体を揺らすほど激しく咳き込みだした。

「し、真師! だ、大丈夫ですか?」

 真師は弱弱しいものながらほほ笑んだ。

「……うろたえるな、今に始まったことではない。そんな事よりも小娘だったお前が教団の幹部としてここまで成長してくれて感慨深いぞ、祐華」

「ありがとうございます、真師。そのような素晴らしい評価。感謝の言葉がありません!」

「実際、私はこんな体だ、大神と復活するまで信者皆の指揮をとれない。だから祝祭の指揮はお前に託す。多くの哀れな人々の魂の解放をするのだ。期待をしてい……」
 
そこで教団の長の言葉を途切らせ、そのまま眠りについた。もう長く会話する体力も残っていないようだ。

 祐華は思いを込めるように両手の拳を力強く握った。

「あと一日……祝祭の日までもう時間はそれだけ……やっと我々の切願を叶える時がくるのです。巨大魔神も我々を待っています。その時は思う存分、巨大魔神と共にこの世の人間達の魂を浄化しましょう……」

*************************************

「……お父さん、お母さん、早く助けに来て……」
 
 地下の密室に閉じ込められた女子高生四人の中の一人、井森安奈が涙を流しながら天井に向か弱った声をあげた。

 坂口真澄、井森安奈、吉野公子、池谷淳四人の女子高生は三日前、下校中に突如現れたカルト教団のメンバーと思わしき男達に車の中に押し込まれ、泣き叫ぶ声も無視されながらこの山奥にある洋館の密室に無理やり連れて来られた。

 そして、全員、得体のしれない赤い色の液体を体に注射されると、目の瞳孔が開ききった巨体の信者から、四人とも黄泉の国まで教祖と運命を共にすると告げられた。

「よかったね、これで君らは真師様のお供をする良き精霊になれるんだよ」と祝福の言葉を添えて。

 無理やり体に注入された液体の正体は分からず、これまで計三回打ち込まれたが、現状ではまだ体に異変は起きていない。

「私達が何をしたっていうの! 家に帰して! ここから出して! お父さん、お母さん! 誰でもいいから助けに来て!」

 井森安奈が叫んだ後、池谷淳が解放を諦めきったような疲弊した顔で呟いた。

「……あの変態の教団、私達を使っていったい何をするつもりなんだろ?」
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