3 / 11
第一章
#2 運命の邂逅
しおりを挟む
村を出てどれだけ時間が経っただろう。
数時間前、思い立ったように十年育った村を飛び出てきた少女ミユは、現在鬱蒼と木々が生い茂る森をさ迷っていた。
休むことなく歩き続けているため足はヘトヘトであるが、気が張りつめているため眠気は一切ない。
(ずっと歩いてみたけど……)
未だに街に出る気配がない。
村から出た後の分かれ道でナイフを持つ方の手、すなわち右を選んで進んできた。首都に行くには西へ向かわなければいけなかったのだが……。
(西じゃなかったか~……)
地図を持っていても読めなければ意味がない。ミユは自らの学の無さを呪った。
育った村に学校はなかったが村の子供たちを集めて教えを説く小さな学習塾のようなものはあった。幼い頃ミユとセンリもそこへ通っていた(伯母に通わされていた)のだが、身についたのは簡単な読み書き程度である。
とりあえず始めの分かれ道まで戻ろうとミユは元来た道を戻り始める。
(それにしてもこれだけ広い森なのに動物が一匹もいないなんて……)
ミユは当たりをキョロキョロと見渡す。
狼が出たらどうしようかと心配して森を出るまで歩き続けようと思ったのだが、ここに至るまで狼どころか兎やリス、ネズミ一匹とも遭遇しなかった。
そして夜の森はただただ寒い。ミユは先の見えない旅にしてはかなり軽装なノースリーブのワンピースから出た細い腕を摩る。
頭上を見上げると木々の隙間からは星の光が差し込んでいた。人里と違い一切明かりがないせいか、村にいた時よりも星の光が明るく感じる。おかげでランタンも付けずに済みそうだ。…もっともそんな物持ってきていないのだが。
ミユは少し休憩するために近くにあった木の根元に腰を下ろした。肩に背負っていた鞄を傍に置き、中をゴソゴソと漁る。
(あった、あった)
鞄の中からとっておいたおやつのクッキーを取り出す。無惨なことに他の荷物の下敷きになりボロボロになっていたが大事な食料に変わりはない。
「いただきます」
ミユは手を合わせるとボロボロになったクッキーの欠片を摘んでは口へと運ぶ。
(なんかいろいろあったな…)
突然やってきた軍人、父の携わっていた研究、エトワールシリーズ……。全てが数時間前の出来事だと思えない程情報量が多すぎて未だに頭が追いついていない。なんだか夢の中にいるような気分だった。
(センリたちどうしてるかな)
歩き続けていたとはいえ未だに追ってくる気配がないということは既に私はどうでもいい存在になったんだろうか。それとも西へ探しに行ったか……。
そんなことを考えながらひとしきりクッキーを食べた後、ミユは重大な事に気がつく。
(口の中パサパサする……水…)
なけなしではあるがありったけの食料もとい菓子類は持ってきた。しかし肝心の水は持ってきていない。
街に出られれば所持金で水くらいは買えるだろうと思っていたが……。
たった十四歳の少女の旅。やはり準備は不完全であった。
(私このままここで干からびて死ぬの……?)
ミユは自分が干物になった姿を想像してゾッとする。
とりあえず川を探さなければ。
ミユは広げた荷物をまとめると川の流れる音を探しながら再び森を歩き始める。
川のせせらぎを聞き逃さぬよう耳をすましながら歩いていると、突然パァァァァンという耳を劈くような音が森に響く。
「何!?」
ミユはびっくりして思わず尻餅をついてしまった。木の幹に手をかけながらよろよろと立ち上がると周りを見渡す。
パァァァァン
再びの耳を劈くような音にミユは母の形見である刀をぎゅっと握りしめる。
実際の音を聞くのは初めてだがこれは銃声である。
(狩り?でも動物なんかいなかったよね…)
そう考えていると、ミユはセンリとの会話を思い出す。
『戦争って終わったんじゃなかったっけ?』
『大規模なのはな。今でもうちの国境付近では争いが続いてる』
生まれ育った村はアルカディオの北寄りの東に位置する。それをずっと東へ向かって歩いてきたのだ。
「もしかして国境に近い…!?」
先程の銃声は狩りのためのものなどではなく、人の命を奪うためのもの。道理で動物一匹いないわけだ。この森は戦場なのである。
ミユは早歩きで森を抜けようとするが、東西南北どこまで行っても木しかない森の中、恐怖も相まって最早方向感覚すらなくなっていた。
遠くで人の怒声と悲鳴が聞こえてくる。
平穏な日常とはかけ離れた戦場。
「何の考えもなしに勝手におばさんたちの家を飛び出したからバチが当たったんだ…」
ミユは泣きながら震える足を進めようとする。
「パパ…ママ…」
とうとうその場にしゃがみこんでしまったミユに追い討ちをかけるように何かが肩を掴む。
「やっ……!」
パッと振り向くと、そこには深緑の軍服を着た身体の大きな男が立っていた。こんな森の中だとまるで熊のようだ。
しかし重要なのはそこではない。男の着ている軍服だ。あのツルなし眼鏡の軍人は黒色の軍服を着ていた。つまりこの熊のような男は敵国の軍人なのである。
「おい」
「ひゃいっっ!」
反射的に返事してしまったが思わず声が裏返ってしまい顔に熱がともっていくのが分かった。
「君はアルカディオの者か。子供がこんな所で何をしている」
男は怪訝そうな顔でミユを覗き込む。
ミユはまるで魚のように口をパクパクさせながらその場から逃げ出そうとするが足が動かない。
男の大きな手が自身に向かって伸ばされるのを見てミユは思わず目を瞑る。きっと捕まってアルカディオ軍を誘き寄せるための道具にされるか売り飛ばされるか……。
そんな予想とは裏腹に男の大きな手はミユの頭を優しく撫でた。
「…?」
状況が分からないといった表情で見つめるミユに気づいた男は「ああ、すまない」と慌てて手をどかす。
「俺にも君ぐらいの歳の娘がいるからつい、な」
男はハハハッと頭を掻きながら笑うと少し寂しそうな表情を見せた。
この人は敵国の人だ。自国の人間をいっぱい殺してきたはずだ。なのに—————
(全然悪い人に見えない……)
ミユは男の寂しそうな表情を見つめながら考える。
この人は一体なんのために戦っているのだろう。
そんな考えを巡らせていたらぐぅぅ~~というなんとも緊張感のない音が響く。
「あ……」
ミユは自身の腹を押さえて再び顔を赤くする。
やはりまともに夕飯を摂ってない上、歩き続けた身体にはクッキーだけじゃ足りなかったらしい。
「よかったらこれ食べるか?」
男はミユの腹の音を聞いて笑うと上着のポケットから紙に包まれた何かを差し出す。
ミユが受け取って紙をめくってみると中にあったのは両掌ぐらいのパンだった。
「一応言っておくが毒とかは入ってないぞ」
別にミユは疑ってなかったのだが、仮にも敵国である軍人が敵対する国の子どもに食料を渡すなんて裏があるとしか考えられない。信じてもらえなくても仕方がないのだろうが男は念を押した。
「でもこれおじさんの分…」
「目の前で腹が減ってる子どもがいて俺はパンを持ってた。それだけの事だ」
男はにっと笑って再びミユの頭を撫でた。
遠くでまた銃声が響く。
「いいか?あっちへ向かって真っ直ぐ進めば森を抜けられる」
男はミユの目線にしゃがんで一点を指差す。
「家出か何だか知らないがきっと家族が心配してる。早く帰りなさい」
自分はどこかで勘違いをしていた。
この男は敵国の兵士である以前に誰かの父親なのだ。
ミユはパンを半分にちぎると片方を男に渡す。
「ありがとうおじさん」
男に一礼するとミユは先程指差された方向に向かって歩き出す。
「優しい子だな…」
ミユの姿が森の彼方に消えた頃、男は半分にちぎられたパンを見つめてぽつりと呟いた。
☆ ★ ☆
男と別れたミユはパンを食べながら小走りに走っていた。
遠くの方に黒い軍服を着た兵士が数人立っているのが見える。その兵士たちが臨戦態勢ではないということは敵陣からは無事脱出できたのだろう。
ミユは兵士たちに見つからないようコソコソと木々の間に隠れるようにして道を急ぐが、途中何かに躓き顔面から盛大に転んでしまう。
「いててて……」
ミユは顔面を押さえながら起き上がると躓いたのが何なのかを見る。
「木の根っこ?」
所々地面を突き破るように四方八方生えている根っこの先に目を向けると、そこには巨大な木が生えていた。恐らく樹齢数百年といったところだろうか。
ミユは自分の背より遥かに高い木に近づいてみると、人が何十人も入れそうな幹の割目の隙間から何か赤い光が見えたような気がした。
「今なにか光ったような…」
もう一度確認しようと覗き込もうとした時話し声が聞こえてきたので慌てて木の反対側へと隠れる。
「へえ~ここに噂のエトワールシリーズがねえ」
「まさか本当に実在するとはな」
ミユがそっと顔を覗かせるとそこには黒い軍服を着た男が二人いた。
「…にしても総司令官も無茶言うよな~。いきなり戦争で勝つためにエトワールシリーズ使うとか言い出して」
男のうちの一人が総司令官の真似、と言って眉間に皺を寄せ、それを見たともう一人の男はげらげらと笑っていた。
眉間に皺を寄せるのが特徴的な軍人—————
村を訪れたあの軍人が総司令官であり現在のアルカディオ家当主なのだろうか。だとしたらたしかに噂に違わぬ厳格っぷりである。
「でもまあこの兵器さえあれば俺たち楽勝なんだろ?」
「おうよ。なんてったってあの星の制裁を起こしたエトワールシリーズなんだからよ。敵軍なんか一掃だ」
「お前それって敵味方関係なしに攻撃するって事だろ」
「お?そうか?」
二人はそんな会話をしながら先程ミユが赤い光を見たと思われる幹の隙間を覗き込む。
「これがエトワールシリーズか~。こんな大木の幹の中に隠れてちゃ見つからないわな」
「で、これどうやったら動くんだ?」
「さあ?とりあえず見つけるだけ見つけたし伝達でも送るか。総司令官殿ご愛好の伝承鳩で!」
そう言うと二人は伝達を送るためかその場を去った。
ミユはそろりと木の反対側から出ると幹の隙間を覗き込む。暗くてよく見えないが何か大きなものがあるのは確かだ。
よく見ようと身を乗り出してみたら奥の方で薄らと赤い光が見えた。
(あ…やっぱり光った)
そう思った矢先、薄らと見えた赤い光は鈍い赤黒い光へと変わり、突然地面が唸るような地響きが鳴り響く。
地響きでバランスを崩し地面に手をついたミユは顔を上げるとハッと息を飲んだ。
「これって……」
大樹の隙間から大きな亀裂が走ったかと思うと、目の前に現れたのは通常よりも数倍大きい戦車のような大きな機械だった。そして赤黒く不気味に光っている"13"という数字に目が行く。
「エトワールシリーズ…!?」
所々蔦が生えていたり苔が生えていたりしたが、あの研究資料に貼ってあった写真と同じだ。
(ど、どうしよう…どうすれば…)
エトワールシリーズを壊すと啖呵切ったはいいものの、実際兵器と呼ばれるものを目の前にすると足が竦む。
「たしか核になる部分を壊せばいいんだよね…?」
ミユは意を決して刀が包まれている布を外す。
父の手記に書かれていたエトワールシリーズの壊し方を思い出す、が—————
「核ってどれー!?」
全身鋼鉄のボディーで包まれたエトワールシリーズ(No.13と呼ぶべきだろうか)はどう見たって刀なんかじゃ壊せそうにない。
ミユが慌てふためいていると先程伝達に行っていた二人の兵士が戻ってきた。
「!?何だこれは!!?」
信じられない光景を前に二人ともミユの存在に気づいていなかった。
「何だか知らないが動いてるぞ!これをどうにかして敵陣営近くまで…」
二人の兵士が近づこうとすると、No.13はギギギ…と錆びたような音を立てながら大きな筒が付いた半球体の鉄の塊のような首を回し、動きを止める。もしこれを戦車と呼ぶならば、今照準を向けられているのは二人の兵士だ。
(危ないっ…!!)
ミユがそう思うのと同時にNo.13は大砲を放った。
大きな音と共に爆風が生じ、近くにいたミユも吹き飛ばされる威力だった。二人の兵士は衝撃波に巻き込まれたことが幸をそうし命中を免れ無事だったが、薄暗かった森が瞬く間に炎の光に包まれる。
「なんだよこれ!!このままじゃ味方陣営が火の海になるぞ!!総司令官からの伝達はまだか!?」
木が密集しているこの森で火が広がるのは時間の問題だろう。炎で行く手を阻まれて最早森を抜けるどころではなくなってしまった。
流石に異変に気づいたのか、遠くにいたアルカディオ軍の兵士たちも近づいてくるのが見えた。駆け寄ってきた一人の兵士が何か書かれている小さな紙を二人の兵士に渡す。
「起動はさせるな?そのまま本部に持ち帰るか無理なら核だけを外して持ってこい?早く言えよ!!」
総司令官からの伝達だったのであろう。伝達を読んだ兵士は半ばキレ気味にその紙を丸めて炎の中へ投げ捨てた。
「総司令官もこの近くに来ていたらしく、今こちらに向かって……」
伝達を持ってきた兵士がそこまで言った途端「あ!」っと声を上げる。ミユもつられて声を上げそうになった。そこに現れたのは、ツルなし眼鏡が特徴的で白髪が目立つ髪を結んだ六十代ほどの軍人。ミユの予想は的中である。
(やっぱりこの人がアルカディオ軍総司令官……)
キレていた兵士も後ろを振り向き一瞬青ざめた後すぐに敬礼する。
「お疲れ様です!ドーヴェ総司令官!」
ドーヴェと呼ばれた軍人はやはり癖なのだろうか、眉間に皺を寄せながらNo.13を見ると、眼鏡をクイッと上げ兵士たちに指示を出す。
「ご苦労であった。この場は任せてお前たちは国境を死守しろ。この森を越えられると一般国民の生活も脅かされる。こちらの混乱を悟られぬようくれぐれも注意しろ。私は各隊に指示を出した後この兵器を止める」
そう言ってドーヴェと三人の兵士たちは森の向こうへ姿を消した。
誰もいなくなった事でミユも自由に行動できるようになったが火は以前広がるばかりだ。No.13はというと、一度弾を発射して以来動く気配はない。
「もしかして壊れちゃった?」
ミユはそ~っと近づいてみるがやはり動く気配はなかった。
それにしても軍はこの兵器をこの戦場で使うんじゃなかったのだろうか。まあこの現状を見て人間が扱える代物ではないということはよく分かったが。
(よかった…こんな大きな兵器使われたらあの熊のおじさんだって無事じゃないよ)
ミユはふう…と胸を撫で下ろした。
「おじさん大丈夫かな?」
そんな心配をしながらミユも炎を避けて先を急ごうとしたその時—————
ギギギ……ギギ……
背後から響くその錆びた歯車が回るような音にミユは全身の毛穴から冷や汗が出るのを感じた。
おそるおそる振り向くとNo.13は大きな銃口を今度はミユに向けていた。
「や…こんばんは…?」
パニックで兵器相手に謎の挨拶をしてしまったミユは我に返ると青ざめる。
(バカバカ!何やってんの私!!)
自身がバカなのは自覚があったが今日程自覚した日はない。
大砲のような大きな銃口から弾が発射されるのを見た。
「ああああ~!!ごめんなさい!!おばさんおじさんセンリ!!パパ!!ママ!!」
人は死を前にすると時間の流れが遅く感じるというのは本当らしい。
本来なら一瞬のはずなのに弾がやたらゆっくりに見える。だからといって避けることもできず、ミユはただ刀を握りしめながら固く目を瞑るしかなかった。
「っ………………」
どれ程経ったのだろう。いくらゆっくりに感じたって流石に焦らしすぎではないだろうか。
瞬間、微かに頬に風を感じてミユは閉じていた目をそっと開ける。
「え…」
ミユはまたもや信じられない光景に目を丸くする。
星空が、見える。
一瞬天と地がひっくり返ったのかと思ったが自分は今、誰かに抱えられているのだ。
「ええ~~~!?」
腕の中にいる少女の声に気づき、抱えている人物はミユを見つめる。
目と目が合ったその瞬間、ミユは思わず息を飲んだ。
長い睫毛に縁どられたその瞳は深い青緑色をしており、光の反射でチカチカと瞳の奥が瞬いているように不思議で、まるで満天の星空をそのまま映したかのようだった。
星空の瞳をした人物はミユが無傷であることを確認するとそっと下ろす。地面に立ったミユは改めて自身を抱えていた人物を見る。
夜風に吹かれふわりと髪が靡く。ミユの髪を星明かりが照らす夜空のような黒髪と例えるならば、この人物の髪はあの空に輝く星々の光を全て吸い込んだかのような美しい白髪だった。
背格好的に男なのだろうが、中性的な顔立ちをしているせいか青年と呼ぶにはまだ幼さが残る。まるで空から星が降りてきたようなこの少年、ここが炎の中だと忘れてしまうぐらい美しかった。
「星みたい……」
無意識にぽつりと出てしまった言葉に少年は何故か一瞬だけ反応したように見えたが、ミユにはその意味が分からなかった。
(あれ、何か変なこと言ったかな…)
ミユは少し首を傾げ考えてみるが、その意味を知るのはまだ始まったばかりの旅の先。
この出会いは運命であったのか、それともただの偶然であったのか—————
星空の下、二人の少年少女は出会ったのだった。
数時間前、思い立ったように十年育った村を飛び出てきた少女ミユは、現在鬱蒼と木々が生い茂る森をさ迷っていた。
休むことなく歩き続けているため足はヘトヘトであるが、気が張りつめているため眠気は一切ない。
(ずっと歩いてみたけど……)
未だに街に出る気配がない。
村から出た後の分かれ道でナイフを持つ方の手、すなわち右を選んで進んできた。首都に行くには西へ向かわなければいけなかったのだが……。
(西じゃなかったか~……)
地図を持っていても読めなければ意味がない。ミユは自らの学の無さを呪った。
育った村に学校はなかったが村の子供たちを集めて教えを説く小さな学習塾のようなものはあった。幼い頃ミユとセンリもそこへ通っていた(伯母に通わされていた)のだが、身についたのは簡単な読み書き程度である。
とりあえず始めの分かれ道まで戻ろうとミユは元来た道を戻り始める。
(それにしてもこれだけ広い森なのに動物が一匹もいないなんて……)
ミユは当たりをキョロキョロと見渡す。
狼が出たらどうしようかと心配して森を出るまで歩き続けようと思ったのだが、ここに至るまで狼どころか兎やリス、ネズミ一匹とも遭遇しなかった。
そして夜の森はただただ寒い。ミユは先の見えない旅にしてはかなり軽装なノースリーブのワンピースから出た細い腕を摩る。
頭上を見上げると木々の隙間からは星の光が差し込んでいた。人里と違い一切明かりがないせいか、村にいた時よりも星の光が明るく感じる。おかげでランタンも付けずに済みそうだ。…もっともそんな物持ってきていないのだが。
ミユは少し休憩するために近くにあった木の根元に腰を下ろした。肩に背負っていた鞄を傍に置き、中をゴソゴソと漁る。
(あった、あった)
鞄の中からとっておいたおやつのクッキーを取り出す。無惨なことに他の荷物の下敷きになりボロボロになっていたが大事な食料に変わりはない。
「いただきます」
ミユは手を合わせるとボロボロになったクッキーの欠片を摘んでは口へと運ぶ。
(なんかいろいろあったな…)
突然やってきた軍人、父の携わっていた研究、エトワールシリーズ……。全てが数時間前の出来事だと思えない程情報量が多すぎて未だに頭が追いついていない。なんだか夢の中にいるような気分だった。
(センリたちどうしてるかな)
歩き続けていたとはいえ未だに追ってくる気配がないということは既に私はどうでもいい存在になったんだろうか。それとも西へ探しに行ったか……。
そんなことを考えながらひとしきりクッキーを食べた後、ミユは重大な事に気がつく。
(口の中パサパサする……水…)
なけなしではあるがありったけの食料もとい菓子類は持ってきた。しかし肝心の水は持ってきていない。
街に出られれば所持金で水くらいは買えるだろうと思っていたが……。
たった十四歳の少女の旅。やはり準備は不完全であった。
(私このままここで干からびて死ぬの……?)
ミユは自分が干物になった姿を想像してゾッとする。
とりあえず川を探さなければ。
ミユは広げた荷物をまとめると川の流れる音を探しながら再び森を歩き始める。
川のせせらぎを聞き逃さぬよう耳をすましながら歩いていると、突然パァァァァンという耳を劈くような音が森に響く。
「何!?」
ミユはびっくりして思わず尻餅をついてしまった。木の幹に手をかけながらよろよろと立ち上がると周りを見渡す。
パァァァァン
再びの耳を劈くような音にミユは母の形見である刀をぎゅっと握りしめる。
実際の音を聞くのは初めてだがこれは銃声である。
(狩り?でも動物なんかいなかったよね…)
そう考えていると、ミユはセンリとの会話を思い出す。
『戦争って終わったんじゃなかったっけ?』
『大規模なのはな。今でもうちの国境付近では争いが続いてる』
生まれ育った村はアルカディオの北寄りの東に位置する。それをずっと東へ向かって歩いてきたのだ。
「もしかして国境に近い…!?」
先程の銃声は狩りのためのものなどではなく、人の命を奪うためのもの。道理で動物一匹いないわけだ。この森は戦場なのである。
ミユは早歩きで森を抜けようとするが、東西南北どこまで行っても木しかない森の中、恐怖も相まって最早方向感覚すらなくなっていた。
遠くで人の怒声と悲鳴が聞こえてくる。
平穏な日常とはかけ離れた戦場。
「何の考えもなしに勝手におばさんたちの家を飛び出したからバチが当たったんだ…」
ミユは泣きながら震える足を進めようとする。
「パパ…ママ…」
とうとうその場にしゃがみこんでしまったミユに追い討ちをかけるように何かが肩を掴む。
「やっ……!」
パッと振り向くと、そこには深緑の軍服を着た身体の大きな男が立っていた。こんな森の中だとまるで熊のようだ。
しかし重要なのはそこではない。男の着ている軍服だ。あのツルなし眼鏡の軍人は黒色の軍服を着ていた。つまりこの熊のような男は敵国の軍人なのである。
「おい」
「ひゃいっっ!」
反射的に返事してしまったが思わず声が裏返ってしまい顔に熱がともっていくのが分かった。
「君はアルカディオの者か。子供がこんな所で何をしている」
男は怪訝そうな顔でミユを覗き込む。
ミユはまるで魚のように口をパクパクさせながらその場から逃げ出そうとするが足が動かない。
男の大きな手が自身に向かって伸ばされるのを見てミユは思わず目を瞑る。きっと捕まってアルカディオ軍を誘き寄せるための道具にされるか売り飛ばされるか……。
そんな予想とは裏腹に男の大きな手はミユの頭を優しく撫でた。
「…?」
状況が分からないといった表情で見つめるミユに気づいた男は「ああ、すまない」と慌てて手をどかす。
「俺にも君ぐらいの歳の娘がいるからつい、な」
男はハハハッと頭を掻きながら笑うと少し寂しそうな表情を見せた。
この人は敵国の人だ。自国の人間をいっぱい殺してきたはずだ。なのに—————
(全然悪い人に見えない……)
ミユは男の寂しそうな表情を見つめながら考える。
この人は一体なんのために戦っているのだろう。
そんな考えを巡らせていたらぐぅぅ~~というなんとも緊張感のない音が響く。
「あ……」
ミユは自身の腹を押さえて再び顔を赤くする。
やはりまともに夕飯を摂ってない上、歩き続けた身体にはクッキーだけじゃ足りなかったらしい。
「よかったらこれ食べるか?」
男はミユの腹の音を聞いて笑うと上着のポケットから紙に包まれた何かを差し出す。
ミユが受け取って紙をめくってみると中にあったのは両掌ぐらいのパンだった。
「一応言っておくが毒とかは入ってないぞ」
別にミユは疑ってなかったのだが、仮にも敵国である軍人が敵対する国の子どもに食料を渡すなんて裏があるとしか考えられない。信じてもらえなくても仕方がないのだろうが男は念を押した。
「でもこれおじさんの分…」
「目の前で腹が減ってる子どもがいて俺はパンを持ってた。それだけの事だ」
男はにっと笑って再びミユの頭を撫でた。
遠くでまた銃声が響く。
「いいか?あっちへ向かって真っ直ぐ進めば森を抜けられる」
男はミユの目線にしゃがんで一点を指差す。
「家出か何だか知らないがきっと家族が心配してる。早く帰りなさい」
自分はどこかで勘違いをしていた。
この男は敵国の兵士である以前に誰かの父親なのだ。
ミユはパンを半分にちぎると片方を男に渡す。
「ありがとうおじさん」
男に一礼するとミユは先程指差された方向に向かって歩き出す。
「優しい子だな…」
ミユの姿が森の彼方に消えた頃、男は半分にちぎられたパンを見つめてぽつりと呟いた。
☆ ★ ☆
男と別れたミユはパンを食べながら小走りに走っていた。
遠くの方に黒い軍服を着た兵士が数人立っているのが見える。その兵士たちが臨戦態勢ではないということは敵陣からは無事脱出できたのだろう。
ミユは兵士たちに見つからないようコソコソと木々の間に隠れるようにして道を急ぐが、途中何かに躓き顔面から盛大に転んでしまう。
「いててて……」
ミユは顔面を押さえながら起き上がると躓いたのが何なのかを見る。
「木の根っこ?」
所々地面を突き破るように四方八方生えている根っこの先に目を向けると、そこには巨大な木が生えていた。恐らく樹齢数百年といったところだろうか。
ミユは自分の背より遥かに高い木に近づいてみると、人が何十人も入れそうな幹の割目の隙間から何か赤い光が見えたような気がした。
「今なにか光ったような…」
もう一度確認しようと覗き込もうとした時話し声が聞こえてきたので慌てて木の反対側へと隠れる。
「へえ~ここに噂のエトワールシリーズがねえ」
「まさか本当に実在するとはな」
ミユがそっと顔を覗かせるとそこには黒い軍服を着た男が二人いた。
「…にしても総司令官も無茶言うよな~。いきなり戦争で勝つためにエトワールシリーズ使うとか言い出して」
男のうちの一人が総司令官の真似、と言って眉間に皺を寄せ、それを見たともう一人の男はげらげらと笑っていた。
眉間に皺を寄せるのが特徴的な軍人—————
村を訪れたあの軍人が総司令官であり現在のアルカディオ家当主なのだろうか。だとしたらたしかに噂に違わぬ厳格っぷりである。
「でもまあこの兵器さえあれば俺たち楽勝なんだろ?」
「おうよ。なんてったってあの星の制裁を起こしたエトワールシリーズなんだからよ。敵軍なんか一掃だ」
「お前それって敵味方関係なしに攻撃するって事だろ」
「お?そうか?」
二人はそんな会話をしながら先程ミユが赤い光を見たと思われる幹の隙間を覗き込む。
「これがエトワールシリーズか~。こんな大木の幹の中に隠れてちゃ見つからないわな」
「で、これどうやったら動くんだ?」
「さあ?とりあえず見つけるだけ見つけたし伝達でも送るか。総司令官殿ご愛好の伝承鳩で!」
そう言うと二人は伝達を送るためかその場を去った。
ミユはそろりと木の反対側から出ると幹の隙間を覗き込む。暗くてよく見えないが何か大きなものがあるのは確かだ。
よく見ようと身を乗り出してみたら奥の方で薄らと赤い光が見えた。
(あ…やっぱり光った)
そう思った矢先、薄らと見えた赤い光は鈍い赤黒い光へと変わり、突然地面が唸るような地響きが鳴り響く。
地響きでバランスを崩し地面に手をついたミユは顔を上げるとハッと息を飲んだ。
「これって……」
大樹の隙間から大きな亀裂が走ったかと思うと、目の前に現れたのは通常よりも数倍大きい戦車のような大きな機械だった。そして赤黒く不気味に光っている"13"という数字に目が行く。
「エトワールシリーズ…!?」
所々蔦が生えていたり苔が生えていたりしたが、あの研究資料に貼ってあった写真と同じだ。
(ど、どうしよう…どうすれば…)
エトワールシリーズを壊すと啖呵切ったはいいものの、実際兵器と呼ばれるものを目の前にすると足が竦む。
「たしか核になる部分を壊せばいいんだよね…?」
ミユは意を決して刀が包まれている布を外す。
父の手記に書かれていたエトワールシリーズの壊し方を思い出す、が—————
「核ってどれー!?」
全身鋼鉄のボディーで包まれたエトワールシリーズ(No.13と呼ぶべきだろうか)はどう見たって刀なんかじゃ壊せそうにない。
ミユが慌てふためいていると先程伝達に行っていた二人の兵士が戻ってきた。
「!?何だこれは!!?」
信じられない光景を前に二人ともミユの存在に気づいていなかった。
「何だか知らないが動いてるぞ!これをどうにかして敵陣営近くまで…」
二人の兵士が近づこうとすると、No.13はギギギ…と錆びたような音を立てながら大きな筒が付いた半球体の鉄の塊のような首を回し、動きを止める。もしこれを戦車と呼ぶならば、今照準を向けられているのは二人の兵士だ。
(危ないっ…!!)
ミユがそう思うのと同時にNo.13は大砲を放った。
大きな音と共に爆風が生じ、近くにいたミユも吹き飛ばされる威力だった。二人の兵士は衝撃波に巻き込まれたことが幸をそうし命中を免れ無事だったが、薄暗かった森が瞬く間に炎の光に包まれる。
「なんだよこれ!!このままじゃ味方陣営が火の海になるぞ!!総司令官からの伝達はまだか!?」
木が密集しているこの森で火が広がるのは時間の問題だろう。炎で行く手を阻まれて最早森を抜けるどころではなくなってしまった。
流石に異変に気づいたのか、遠くにいたアルカディオ軍の兵士たちも近づいてくるのが見えた。駆け寄ってきた一人の兵士が何か書かれている小さな紙を二人の兵士に渡す。
「起動はさせるな?そのまま本部に持ち帰るか無理なら核だけを外して持ってこい?早く言えよ!!」
総司令官からの伝達だったのであろう。伝達を読んだ兵士は半ばキレ気味にその紙を丸めて炎の中へ投げ捨てた。
「総司令官もこの近くに来ていたらしく、今こちらに向かって……」
伝達を持ってきた兵士がそこまで言った途端「あ!」っと声を上げる。ミユもつられて声を上げそうになった。そこに現れたのは、ツルなし眼鏡が特徴的で白髪が目立つ髪を結んだ六十代ほどの軍人。ミユの予想は的中である。
(やっぱりこの人がアルカディオ軍総司令官……)
キレていた兵士も後ろを振り向き一瞬青ざめた後すぐに敬礼する。
「お疲れ様です!ドーヴェ総司令官!」
ドーヴェと呼ばれた軍人はやはり癖なのだろうか、眉間に皺を寄せながらNo.13を見ると、眼鏡をクイッと上げ兵士たちに指示を出す。
「ご苦労であった。この場は任せてお前たちは国境を死守しろ。この森を越えられると一般国民の生活も脅かされる。こちらの混乱を悟られぬようくれぐれも注意しろ。私は各隊に指示を出した後この兵器を止める」
そう言ってドーヴェと三人の兵士たちは森の向こうへ姿を消した。
誰もいなくなった事でミユも自由に行動できるようになったが火は以前広がるばかりだ。No.13はというと、一度弾を発射して以来動く気配はない。
「もしかして壊れちゃった?」
ミユはそ~っと近づいてみるがやはり動く気配はなかった。
それにしても軍はこの兵器をこの戦場で使うんじゃなかったのだろうか。まあこの現状を見て人間が扱える代物ではないということはよく分かったが。
(よかった…こんな大きな兵器使われたらあの熊のおじさんだって無事じゃないよ)
ミユはふう…と胸を撫で下ろした。
「おじさん大丈夫かな?」
そんな心配をしながらミユも炎を避けて先を急ごうとしたその時—————
ギギギ……ギギ……
背後から響くその錆びた歯車が回るような音にミユは全身の毛穴から冷や汗が出るのを感じた。
おそるおそる振り向くとNo.13は大きな銃口を今度はミユに向けていた。
「や…こんばんは…?」
パニックで兵器相手に謎の挨拶をしてしまったミユは我に返ると青ざめる。
(バカバカ!何やってんの私!!)
自身がバカなのは自覚があったが今日程自覚した日はない。
大砲のような大きな銃口から弾が発射されるのを見た。
「ああああ~!!ごめんなさい!!おばさんおじさんセンリ!!パパ!!ママ!!」
人は死を前にすると時間の流れが遅く感じるというのは本当らしい。
本来なら一瞬のはずなのに弾がやたらゆっくりに見える。だからといって避けることもできず、ミユはただ刀を握りしめながら固く目を瞑るしかなかった。
「っ………………」
どれ程経ったのだろう。いくらゆっくりに感じたって流石に焦らしすぎではないだろうか。
瞬間、微かに頬に風を感じてミユは閉じていた目をそっと開ける。
「え…」
ミユはまたもや信じられない光景に目を丸くする。
星空が、見える。
一瞬天と地がひっくり返ったのかと思ったが自分は今、誰かに抱えられているのだ。
「ええ~~~!?」
腕の中にいる少女の声に気づき、抱えている人物はミユを見つめる。
目と目が合ったその瞬間、ミユは思わず息を飲んだ。
長い睫毛に縁どられたその瞳は深い青緑色をしており、光の反射でチカチカと瞳の奥が瞬いているように不思議で、まるで満天の星空をそのまま映したかのようだった。
星空の瞳をした人物はミユが無傷であることを確認するとそっと下ろす。地面に立ったミユは改めて自身を抱えていた人物を見る。
夜風に吹かれふわりと髪が靡く。ミユの髪を星明かりが照らす夜空のような黒髪と例えるならば、この人物の髪はあの空に輝く星々の光を全て吸い込んだかのような美しい白髪だった。
背格好的に男なのだろうが、中性的な顔立ちをしているせいか青年と呼ぶにはまだ幼さが残る。まるで空から星が降りてきたようなこの少年、ここが炎の中だと忘れてしまうぐらい美しかった。
「星みたい……」
無意識にぽつりと出てしまった言葉に少年は何故か一瞬だけ反応したように見えたが、ミユにはその意味が分からなかった。
(あれ、何か変なこと言ったかな…)
ミユは少し首を傾げ考えてみるが、その意味を知るのはまだ始まったばかりの旅の先。
この出会いは運命であったのか、それともただの偶然であったのか—————
星空の下、二人の少年少女は出会ったのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サクリファイス・オブ・ファンタズム 〜忘却の羊飼いと緋色の約束〜
たけのこ
ファンタジー
───────魔法使いは人ではない、魔物である。
この世界で唯一『魔力』を扱うことができる少数民族ガナン人。
彼らは自身の『価値あるもの』を対価に『魔法』を行使する。しかし魔に近い彼らは、只の人よりも容易くその身を魔物へと堕としやすいという負の面を持っていた。
人はそんな彼らを『魔法使い』と呼び、そしてその性質から迫害した。
四千年前の大戦に敗北し、帝国に完全に支配された魔法使い達。
そんな帝国の辺境にて、ガナン人の少年、クレル・シェパードはひっそりと生きていた。
身寄りのないクレルは、領主の娘であるアリシア・スカーレットと出逢う。
領主の屋敷の下働きとして過ごすクレルと、そんな彼の魔法を綺麗なものとして受け入れるアリシア……共に語らい、遊び、学びながら友情を育む二人であったが、ある日二人を引き裂く『魔物災害』が起こり――
アリシアはクレルを助けるために片腕を犠牲にし、クレルもアリシアを助けるために『アリシアとの思い出』を対価に捧げた。
――スカーレット家は没落。そして、事件の騒動が冷めやらぬうちにクレルは魔法使いの地下組織『奈落の底《アバドン》』に、アリシアは魔法使いを狩る皇帝直轄組織『特別対魔機関・バルバトス』に引きとられる。
記憶を失い、しかし想いだけが残ったクレル。
左腕を失い、再会の誓いを胸に抱くアリシア。
敵対し合う組織に身を置く事になった二人は、再び出逢い、笑い合う事が許されるのか……それはまだ誰にもわからない。
==========
この小説はダブル主人公であり序章では二人の幼少期を、それから一章ごとに視点を切り替えて話を進めます。
==========
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる