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12 異変

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「見て見て音ちゃん! この女子会パックのクーポン! お料理のコースにデザート……! このボリュームを食べれて普段のカラオケする料金とあまり変わらないお値段なの!」

 私の机の横でスマホをスクロールしていたあややんが画面を見せてくれた。私たちは早くも夏休みの計画を立てていた。友達と過ごす夏休み……!

 いつも夏休みは家で本を読んでいる時間が多く友達と遊んだ記憶がない。なので夏休みに友達と出掛ける予定があるのは新鮮でわくわくする。

 ふっと銀河君の顔が脳裏に浮かぶ。昨日は蒼君と銀河君の家に行って話をした。銀河君が距離を詰めてきたところまでは覚えている。その後……その後どうなったんだっけ?

 己花さんと入れ替わっていた際の記憶は当然ながら持ち合わせていない。我に返ったのは自分の家で歯を磨いている時だった。

 己花さんにどうだったか聞くけど反応が薄い。どこか疲れているような心配事を抱えているような元気のない雰囲気の声だった。

 昨日、己花さんは銀河君と話をした筈。二人の間に何かあったのかな?


「のぉぉぉう!」

 低い唸りが聞こえ視線を戻した。私の机の横にしゃがんでいたあややんが血走った目でスマホ画面を見ている。

「なんっで『ご予約人数三人以上~』なのぉ……! こうなったら銀河君に女装してもらって……!」

「あややんっ、お、落ち着いてっ!」

 机を叩いて立ち上がった友達を宥めた。



 放課後、学校を出てあややんと帰っていた。この通りにはバイトをしている喫茶店もある。

 歩いているうちに十字路に着いた。横断歩道を渡って右の道へ曲がり真っ直ぐ進むと大通りに出る。あややんの普段利用しているバス停はその辺りにあるので、いつもの如く彼女に手を振った。

「じゃあ、また明日ね!」

「明日も夏休みの計画を立てましょう!」

「うん、そうだねっ」

 まだ結構先の話なのに夏休みが凄く楽しみだ。

 あややんと過ごす夏休みを想像しながら緩やかな坂を行く。もう少し上ると左手に桜公園がある。

 何気なく顔を上げて道の先を見やった。今日は桜公園の側の道路に白い普通車が駐車してある。そう考えていた時、視界の端に不吉なものが映ったのに気付いた。

「えっ」

 思わず小さく声を漏らしてしまう。口を手で押さえた。ビルの陰に身を隠しつつ様子を窺う。今、桜公園から出てきたのは……あの人だ!

 忘れもしないピンクと白のファッション。センター分けの髪型。濃い顔の造作。

 彼はキョロキョロ周囲を見回した後、駐車してある白い車に乗り込んだ。

 何でこんな所にいるんだろう。血の気が引くのを感じる。もしかしてまだあの時の事を恨んでいて、私を待ち伏せしてた……?
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