【完結・エピソード追加中】幼馴染に裏切られたので協力者を得て復讐(イチャイチャ)しています。

猫都299

文字の大きさ
上 下
54 / 57
二章 復讐のその後

54 望みと同意

しおりを挟む
 春夜君に手を引かれて大通りを歩いている。街のあちらこちらがイルミネーションで彩られてクリスマスムードだ。

 私たちは駅に併設されているショッピングモールを目指していた。隣接している広場に毎年巨大なツリーのモニュメントが飾られるから二人で見に行く流れになった。

 バスに乗って向かった方が早いし楽だけど春夜君に「歩いて行きませんか?」と提案された。その際「話したい事もあるし」とも言われた。何の話だろうとドキドキした。最近会っていなかったから「別れ話だったらどうしよう」と不安に思った。だけど私も言いたい事があったので頷いた。

「少し遠回りしていいですか?」

 春夜君がこちらを窺うように聞いてきた。

「うん」

 返事をして気付いた。吐いた息が白い。カラオケ店の中が暖かかった分外は寒く感じるな。

 春夜君に見られていた。呆れているような細めた目付きで言及される。

「その格好寒くないですか?」

「あっ、と……。寒いかも」

「ちゃんと上着のボタンを留めてください」

 そう言って私のコートのボタンを留めてくれる。

「あ、ありがとう……」

 お礼を口にしてハッとする。コートは膝くらいまでの長さがある。春夜君が閉めてくれるまでボタンも留めず羽織っていただけだった。つまり中に着ている赤色のサンタコスチュームが前方からだと見えたままだった。スカートも、いつも自分が好んで穿くものより短かった。タイツを穿いているとは言え、見苦しいと思われたかもしれない。

「変……だよね。やっぱり。私にはこの服、可愛過ぎて似合ってないよね」

 春夜君は下のボタンから留め、最後に一番上のボタンに手を付けていたところだった。上目遣いな彼と目が合う。

「何言ってるんですか?」

 少しむっとした表情で言い聞かせてくる。

「そろそろ自覚してくださいよ。こんな格好で無防備に街中を歩かないでください。スカートも短いです。見せるならオレだけに見せてください」

「は、はい」

 春夜君の剣幕に戸惑いながら首を縦に振った。お母さんみたいな事を言ってくるなぁ。

 髪を撫でられた。真剣な瞳で告げられた。

「明は可愛いです」

 彼はしていたマフラーを外し私の首に巻いてくれた。温かい。少しだけ春夜君の匂いがする。

 再び歩き出した。しっかりと繋いでいる手が心地いい。幸せってきっとこんな一瞬一瞬の事を言うんだと、掴み所のない思いがふっと意識に浮かび流れた。




 大通りから逸れた海側の歩道を進んでいた。左手に建つビルよりも先へ行くと視界が開けた。

 歩道のすぐ側から海が広がっていて対岸の山や近くに架かる大きな橋も見渡せた。水面に無数の彩りが反射しキラキラ輝いている。宝石箱をひっくり返して散りばめたような夜景に圧倒された。

 春夜君が立ち止まった。道の途中で振り向いた彼は何か言いたそうに口を開いた。だけどためらっているような、どこかつらそうな表情で見つめてくる。

 少し笑った。もしかしたら振られるのかもしれないと薄く察した。だめだよ春夜君。絶対に手放してあげないから。


「ねぇ春夜君。先に私から言ってもいいかな?」

 手に持っていた紙袋の中をゴソゴソと探った。彼は何も言わず眼差しだけ向けてくる。大した事じゃない風を装い明るく提案する。

「前、罰ゲームするって言ってたよね。今からしようか」

「今からですか?」

 彼は都合が悪いと言いたげな渋い顔をした。そんな嫌そうにしなくても。「ははっ」と小さく笑って紙袋から取り出したマフラーを目の前にいる大好きな人の首に回した。

 色々とプレゼントを迷って昨日やっと買った。紺のチェック柄でふわふわした手触りのものにした。見た時、何となく春夜君っぽいイメージが過ったのが決め手だった。

 マフラーを巻いている間、彼が背を屈めてくれる。

「私の要求全部に同意して」

 罰ゲームの主旨を伝えた頃、巻き終わった。


「目も」

 彼の肩に手を置いたまま瞼にキスした。

「口も」

 唇へキスする。

「声も」

 喉に指を這わせ胸の中央に触れた。

「心も」



「春夜君の全部は私のものだから」



 本音を聞かせる。



「ほかの子を見ないで。私だけを見ていて。……一生」



 見開かれていた彼の目がゆっくりと伏せられた。次に視線が合った時、余裕がありそうなニヤリとした表情で言われた。


「いいんですか? 明も誓わないといけなくなりますよ? 一生オレに束縛されて……後悔しますよ」


 とびきり微笑んで答える。

「望むところだよ」





「オレたちこれから色々あると思うんです。進路もそうだし、まだ思い描けていないだけで何らかの問題に直面する事もあるだろうし……」

 彼は言葉を紡ぎながらポケットに手を入れた。

「オレはそういうの、明と乗り越えたい」

 左手に何かされた。見ると薬指に綺麗な石の付いた指輪が光っていた。

「いい時も悪い時も明と一緒に経験したい。いいですか?」

 胸が苦しくて涙が零れた。繋がれた両手をぎゅっと結んだ。

「はい。私も同じ気持ちです」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

処理中です...