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二章 復讐のその後
48 問いと答え
しおりを挟むやっとテストが終わった。これで心置きなく春夜君と会える!
晴れやかな気持ちで彼が来るのを待っていた。
晴菜ちゃんや岸谷君も先に帰り、教室に残っている生徒も次第に減っていった。
あれ? 春夜君が来るの遅いな。今日ちゃんと約束してたよね? 不安になりバッグからスマホを取り出した。やりとりしたメッセージを確認しようとしていた。
「明」
呼ばれて顔を上げた。教室の出入り口側に彼はいた。
もう十分に見慣れた眼鏡、ツンツンした黒髪、私より少し高い背、強気なところも弱気なところも、強かで狡いところも、意外とおっちょこちょいなところも、美男子でエグいところも、優しいところも意地悪なところも。
言い表せない。
「大好き」じゃ重みが足りないなと思考して微笑んだ。
「遅くなりました……行きましょう」
春夜君の声に元気がないと感じた。目も合わないし。テスト勉強で疲れているのかな?
沈んだ表情で言われた。
「ちょっと行きたい所があるんですけど、いいですか?」
「う、うん」
戸惑いながらも了承した。
左手を引かれバス停までの道を歩いた。春夜君は何か考え事をしているようで言葉数が少なかった。
バスに乗った。一体どこへ行くんだろう。右隣に座っている春夜君の様子を盗み見る。俯いて顔色も悪い。心配になって声を掛けようと口を開いた。
「次のバス停で降ります」
私が言葉を発するより早く、告げられた。
バスを降りた後、何も言わずに歩き出した彼の後を追った。ここは一昨日も来た。ファミレスを出て繁華街の方へ晴菜ちゃんたちを追跡していた時に通った道だ。
何だろう? 薄く嫌な予感がするんですけど。
繁華街の裏通りを進んだ。一昨日入ったカラオケ店が見える。今日も同じ道を辿るなんて。この辺りには普段、滅多に来る機会がないのに。カラオケ店の前を歩いていた時、急に春夜君の足が止まった。
「明。ここに来たかったんです。カラオケ。……いいですよね?」
先程までの暗い表情を塗り替えたような不自然に明るい笑顔を向けられた。彼の瞳に有無を言わせない光が宿っている気配を感じ取る。気圧され頷いた。
嫌な予感は的中間近だった。
部屋に入った。ソファに腰掛ける。春夜君が私の前に立った。昏い視線を感じる。壁ドンされた。相手を見上げる。目線が合う。何度か唇を吸われた。その後、少し強引に口を貪られた。
「何で分からないんですか?」
春夜君が話し始めた。薄く目を開けて耳を傾ける。
「明はオレのものだって言いましたよね?」
彼は微笑んでいるのに凄くつらそうに眉を寄せた。
「一昨日、ここで何をしていたんですか?」
やはり。彼は知っていたんだ。予想はしていたけど真っ直ぐに問われ言葉に詰まった。
一昨日の件は後悔していない。岸谷君も気持ちに整理をつけられたようだし、私も言いたい事を伝えられた。
だけど春夜君に連絡していなかったのはまずかったと思う。勉強に集中するという約束も破ってしまった。
「ごめんね。私、春夜君に酷い事した」
素直に言葉にした。彼の肩がピクッと揺れた。大きく見開かれた目に罪を問われている気がした。いたたまれなくて瞳を逸らす。
やっぱり気分悪いよね。恋人が連絡もせず、ほかの異性と二人きりでカラオケに行ったら。私なら怒るよ。
その時、不意に思い出した。そうだ。対策をしていたんだった!
「春夜君、これ……」
彼の不快感が少しでも緩和される事を願って手渡した。小さなカード型の記憶媒体に準備していたファイルを入れてある。
「何これ」
春夜君が聞いてくる。安心してもらいたくて微笑んで答えた。
「一昨日の詳細を入れておいたよ。お家に帰ったら見て」
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