【完結・エピソード追加中】幼馴染に裏切られたので協力者を得て復讐(イチャイチャ)しています。

猫都299

文字の大きさ
上 下
47 / 57
二章 復讐のその後

47 確認

しおりを挟む
 ここは……!
 テスト期間中に何と大胆な。

 分かった! 彼女の魂胆が。



「ここでも勉強する気なんだ。きっとそうだ……。私も早く帰って勉強しなきゃいけないのに!」

 焦りから思考を口に出していた。ギリギリと歯軋りして私の横に立っている岸谷君を睨む。岸谷君から呆れられている雰囲気の一瞥を寄越された。彼は冷静な面持ちで言う。

「ここに来て普通、勉強なんてするか? するわけねーだろ。それに勉強ならさっきファミレスでしてただろ?」

 ……岸谷君が何をいいたいのか薄ら伝わってくる。

「岸谷君、帰るよ」

 言い聞かせる。もうこれ以上はさすがに付き合いきれない。それなのに。
 岸谷君にじっと見つめられた。

「いやいや。待って。まさか? ここに入るの?」

 聞いたけど岸谷君は黙っている。まさかだよね? 私は相当怖じ気付いていた。戸惑っている内に右手首を掴まれてしまった。

「行こう」

 抵抗する間もないまま手を引かれ、岸谷君に続いて店の中へ入った。






「ここまでする必要ある? 岸谷君は晴菜ちゃんの事が好きなの?」

 カラオケ店の個室でソファに膝立ちし壁に耳を当てている、かつて好きだった人の現在の姿を残念な気持ちで眺めていた。彼は私の質問には答えず「あ、やっぱり歌い出したぞ。勉強なんてする筈ねーよな」とフッとほくそ笑んだ。言ってやる。

「あ~そっち? 私はてっきりイチャイチャするのかなって思ってたよ?」

 岸谷君がぎょっとした顔でこっちを見た。彼の表情から生気がなくなっていく。

「………………やっぱりそうだよな。付き合ってるなら……きっとそうなんだろうな」

 岸谷君はソファに座り直し、深く項垂れてしまった。……ああ。やっぱり晴菜ちゃんの事が好きなんじゃん。

 ちょっと意地悪を言い過ぎたかなと考えた。「彼が下を向いているのは泣いているからなのでは?」と思い至って慌てた。

「岸谷君ごめん! そんなに晴菜ちゃんの事が好きだった?」

 岸谷君の隣に腰掛け謝った。上半身を傾けて彼の表情を知ろうとした。肩を押され視界が天井を向いた。天井を遮るように岸谷君の顔がある。

 彼は聞いてくる。

「ねぇ。本当に俺の事、好きじゃなくなった?」

 「もしかして今日の彼の狙いはこれだった?」と頭の隅で思考している傍ら返事をする。

「うん」

 一拍置いて確認される。

「そんなにアイツがいいの?」

 見下ろしてくる双眸がどこかつらそうに笑う。重く答えを返す。

「うん」

「そうか……」

 彼は私の右肩辺りに項垂れ、暫く動かなかった。

「ごめんね岸谷君。私、あなたとは一緒にいれない」

 天井を見つめて伝えた。

 バカだなぁ、私。何で今まで気付かなかったんだろう。もっと早く……岸谷君が不安になる前に気付いてあげられていたら、きっと違う「今」があったのかもしれない。もう戻れないけれど。

 岸谷君は本当に、私の事が好きだったんだなぁ。

「ありがとう。ハッキリ言ってくれて。やっと諦めが付くよ」

 すぐ近くで低めの声が伝えてくる。右肩から重みが退いた。少しぎこちなく笑って離れていく彼を見ていた。

 私も身を起こし掛けたところで部屋のドアが勢いよく開け放たれた。

「聡!」

 部屋に嵐の如く入って来たのは姫莉ちゃんだった。

「おまっ! 何でここが分かった?」

 岸谷君が目を剥いて疑問を口にした。姫莉ちゃんは得意げに胸を張って言った。

「秘密!」

 彼女と目が合った。笑い掛けると露骨にむっとしたような顔で睨まれた。

「聡は姫莉のだから!」

 彼女は岸谷君の腕をぎゅっと抱きしめ言い放った。小柄な体躯が小刻みに震えている様子に思い出す。以前岸谷君が言っていた。姫莉ちゃんは情緒不安定なところがあり泣いていたって。

 岸谷君はきっと姫莉ちゃんの心の支えなんだろうな。仔猫が怯えて威嚇している姿に似ていると微笑ましく思いながら彼女に近付いた。

「姫莉ちゃん。岸谷君の事をよろしくね。岸谷君がフラフラしているのも、きっと寂しいからだと思うんだ。私はもう彼とは一緒にいられないから。姫莉ちゃんが守ってあげて」

 岸谷君へも言っておく。

「岸谷君。私の頼みを何でも聞いてくれるって言ってたよね? 姫莉ちゃんを幸せにしてあげて。彼女だけを好きでいてあげて。……これからは寂しいからってほかの人で埋めようとしないで」

 最後にもう一度、彼の顔を見た。明るく笑顔で言えた。

「今までありがとう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...