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二章 復讐のその後
45 テスト
しおりを挟む「明、ごめん」
薄く目を開けた。
「オレが悪かったです」
春夜君が謝ってくる。直前までしていたキスに夢見心地だったのにぎゅっと抱きしめられて不安が過る。
「春夜君?」
「オレたち、暫くイチャイチャするのやめましょう」
言い渡されて息を呑んだ。
「何で?」
尋ねる声が震えてしまう。春夜君は私を抱きしめたまま苦々しい響きで返答した。
「オレ、このまま何時間も明とイチャイチャすると思うんです。明の貴重な時間をオレの欲の為に使わせたくない」
彼の肩に手を置く。体を少し離して見つめた。
「私もイチャイチャしたいよ?」
彼は何故か右手で両目を覆い顔を上に向けた。暫くの沈黙ののち、絞り出すような嗄れ声が聞こえた。
「だ、め、で、す……ッ! オレが今どんな気持ちで言ってると思ってるんですかっ! テストが終わったら幾らでもしていいですから! テストが終わるまで我慢してくださいっ!」
「フフッ」
つい笑ってしまった。私の為に気にしてくれてるんだ。嬉しいな。でもイチャイチャし足りなくて残念。名残惜しく思いながらも了承した。
「分かった。私も勉強に集中する。でも言った事は忘れないでね。……あと、さっきの罰ゲームもあるから」
「……はい?」
春夜君はよく分かっていないみたいで首を傾げていたけど、詳しくは教えないで勉強する為の準備をした。
休みの日やテスト期間中も私たちはなるべく会うのを控えた。会ったらイチャイチャしたくなるって分かっていたから。
「へぇ~~。最近見掛けないなと思ってたら、そんな事約束してたんだ。はぁ~、二人とも偉いねぇ」
二日目の試験科目が終了した。帰り際に晴菜ちゃんに呼び止められ「あのいつも明ちゃんの周囲をうろちょろして目障りな男はどうしたの?」と聞かれたので経緯を話した。口では褒めてくれているのに、こちらへ向けられた目からは呆れられている気配を感じる。
晴菜ちゃんが机に頬杖をついていた姿勢から身を起こした。
「じゃあ、私は帰るから。また明日ね!」
「うん。また明日!」
晴菜ちゃんに手を振り返した。教室を出て行く背中を見送る。独り言ちた。
「いいなぁ」
彼女は今日も彼氏さんと会う約束をしているらしい。「テスト勉強は?」と言いたくなるけど、要点を押さえて取り組みいつも成績のいい部類の人なのだ。彼女の心配をするより自分の心配をした方が得策だ。
「さ、私も帰ろう」
机に置いていた鞄を持ち、立ち上がった。
「坂上」
思い掛けず呼び止められた。振り返る。尋ねた。
「何? 岸谷君」
彼と話すのは久しぶりだなと軽く考えていた。まさかあんな事態に発展するとは、この時は予想もしていなかった。
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