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二章 復讐のその後
41 熱
しおりを挟む「何だと思います? 当ててくださいよ」
にっこり笑い意地悪な事を言ってくる。
「またそれ? 狡いよー!」
前もこういうパターンあったよね? 不満を訴えた。彼は面白がるように目を細くした。
「当たったら教えてあげます。分かるまで」
何それ。まるで私が当たりを答えられたとしても分かってないみたいな口振り。むむむ……。絶対に当ててやる。
そうは考えても難しいなぁ。春夜君が家に私を住まわせたい理由……?
私だったら……。もし私の家に春夜君が引っ越してきてくれたらすっごく楽しいんだろうなぁ毎日。帰りだけじゃなくて朝も一緒に登校できるし。
そしたら不安なんてなくなるかもしれない。
「明?」
俯いて考えていた時、春夜君に声を掛けられてハッとした。
「考えるの長いです。そろそろ答えてください」
少しぶっきらぼうな声で促される。彼を見つめた。
まさか。彼も私と同じ理由を持っているなんて有り得ないよね。こんなのきっと私だけだ。だから悟られないように隠しておかないと。
……まさかだよね。
苦笑した。違うと分かっているけど尋ねる。
「ほかの人に取られるのが嫌だから一緒に住んで周囲を出し抜きたいとか? あとは……仲を深めたい……とか。なんてね。あはは……」
言ってて恥ずかしくなり笑って誤魔化した。これ全部私の理由だ。自分の中にある感情を柔らかく軽くして言葉に落とした。
春夜君は私の事が好きなんだって分かっていてもまだ不安が残っている。晴菜ちゃんみたいに可愛くて明るくて優しい子から好意を向けられたらきっと春夜君だって気が変わってしまうだろう。だから一緒に住んで彼の傍にいたい。好きになってほしい。私だけを見てほしい。彼を幸せにできるのは私でありたい。
春夜君は驚いた時にするように目を見開いた。
「全部正解です」
「えっ?」
有り得ない答えを返され耳を疑った。大きめの声で聞き返した。
「え……? 春夜君。ほかの人に取られるのが嫌とかもっと仲良くなりたいとか考えてくれてたの? ありがとう」
嬉し過ぎて目頭がジーンとしてしまう。
「当たり前じゃないですか」
何故か彼は不機嫌そうな視線を送ってきた。柱ドンとは反対の手で頬を撫でられた。
「明が悪い。いつも無防備だし、ぼやっとしてるし。明の何もかもオレのものです。その目も、口も、声も、心も……全部。ほかの奴に向けようとも思わないくらいオレしか考えられなくさせたい。本当は明にも同じくらい想ってもらいたいんです…………ごめん。今のなし! 何言ってるんだろうオレ……」
彼の台詞をポカンと口を開けて聞いていた。……え?
「やっぱり重いですよね?」
少し元気のない声で微笑み掛けてくる。手を引かれて夜道を歩く。バス停へのいつもの歩道を進んでいる。
心臓がドクドク音を立てる。凄く顔が熱い。
えっと……?
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