【完結・エピソード追加中】幼馴染に裏切られたので協力者を得て復讐(イチャイチャ)しています。

猫都299

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一章

16 予定

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 聞くと、ほとりちゃんが作っている衣装はあと少しで完成するらしい。

「困った……」

 腕組みした朔菜ちゃんが暗い声でポツリと言った。

 商店街にある美容室の待合スペース。私たちの話はまだ続いていた。しかしある問題に行き当たって沈黙が訪れた。

 もう今日明日にも完成予定のユララ衣装。だが。

「うーん。困った……。せっかくユララのコスチュームが着れても写真を撮れる場所って案外ないもんだね」

 朔菜ちゃんは呟いて親指の爪を噛みながら歯軋りしている。この美容室だったら人目を気にせず好きなだけ写真を撮れるけど、割と狭いし写真の背景がアニメの内容と関係のない場所っていうのも朔菜ちゃん的には許容できないみたいだった。

「あまり人目に付かない景色のいい場所……すぐに着替えられる……」

 ほとりちゃんも頬に人差し指を当て頻りに首をひねりつつ撮影場所に求められる条件を繰り返し口にしていた。

「できれば海の近く!」

 朔菜ちゃんが条件を追加した。

「それは難しいよぉ~! ユララが海辺の町育ちで朔菜ちゃんにこだわりがあるのは分かるけど。ここからバスに乗って行くとしても何時間もかかるし、ちゃんとトイレとか着替えられる場所があるかどうかも事前に確認しないとだし」

 ほとりちゃんの意見に朔菜ちゃんは項垂れて、もう考えるのに疲れたと言いたげな声を出す。

「だよねー」

 どこか妥協するしかないのかと諦めかけの雰囲気が漂っていた。そんな中、とびきりいい方法を提案してくれる救世主のような存在がすぐ側にいた。

「あの……。取り敢えず海辺にトイレがあればいいんですよね? 知り合いが車を持ってて、もしかしたら乗せてくれるかも」

 それまで無言で私たちの話を聞くだけだった沢西君が発言した。びっくりして左隣の彼を見る。

「えっ! お願いします!」

「ぜひぜひお願いします!」

 朔菜ちゃんとほとりちゃんが透かさず沢西君の提案に乗った。今まであった淀んだ空気が一気に吹き飛んだように二人の目が希望に輝いている。

「まだ頼んでみないと分からないですけど。今日頼んでみます」

 沢西君が控えめな口調で言う。その後はあっという間に日時や待ち合わせ場所等が決まった。

 話が一通り終わった。私と沢西君は美容室を出る。
 ほとりちゃんは「朔菜ちゃんに衣装の試着をしてもらうから」とまだ少し残るようだ。

 去り際、美容室の扉の前で朔菜ちゃんに呼び止められた。「何だろう?」と振り返った私に耳打ちしてくる。

「アンタの彼氏、イイ奴だね」

 彼女は私へ、ニッと笑って見せた。



 暖かい陽の光に照らされた商店街を最寄りのバス停方面へ進んでいる。

「沢西君、朔菜ちゃんたち喜んでたね」

 横を歩く沢西君に話しかける。

「自然な流れで私も当日のメンバーに入ってて嬉しかった。朔菜ちゃんがユララになったところ見てみたかったから。沢西君のおかげだね。ありがとう!」

「まだ車の事、頼んでないので何とも……。万一その人に断られたら申し訳ないですねー。あの朔菜って人、内巻先輩と繋がりがあるじゃないですか。恩を売っておくのもいいかと考えたんです。それに……。坂上先輩も興味ありそうだったし。オレも休みの日に先輩と会えて嬉しいですし」

 思いがけない沢西君の言葉に胸中、激しく動揺する。胸の真ん中を押さえて落ち着けようとした。

「嬉しいの?」

 尋ねると彼は苦笑した。

「嬉しくない訳ないじゃないですか」

 返答を受け内心、大いに混乱していた。沢西君とはキスまでした。だけど彼は私じゃない別の人が好きで。でも嬉しいと言う。

 ……分かった!

 私は一つの可能性を導き出した。社交辞令だ。

 復讐を為そうとする同志とは良好な人間関係を保っていた方がいい。きっとそう考えて言ってくれてるんだ。

 「沢西君は私の事が好きなのでは?」という思考は切り捨てる。もう岸谷君の時のようなつらい恋はしたくなかった。

 私はどうしたいんだろう。このまま想い続けて沢西君が振り向いてくれると思っているのかな? 何て甘いんだろう。

 俯いた。悲しくなった。

 告白したら復讐で繋がったこの関係も失ってしまうかもしれないと恐れていた。

 「私が復讐できたと納得できたその時には、沢西君に打ち明けよう」

 密かに決めて顔を上げた。それまで彼の「恋人」なのは私だ。誰にも譲らないし、目一杯楽しんでおこう。後悔しないように。

「先輩? 今何を考えてました? 何か企んでる顔でしたよ?」

 沢西君が訝しげに目を細くした。笑って答えた。

「沢西君の事を考えていたよ。会えるの嬉しいって言われて私も嬉しいなって」

 決定的な告白はまだしないけど薄く好意を匂わせておく。相手の反応で私の事をどう思っているのかある程度は窺い知れるかもしれないと踏んで。

 沢西君の目が大きく見開かれた。彼は神妙な面持ちで私と向き合った。

「先輩この後……時間大丈夫ですか? 一緒に来てほしい所があるんですけど」

「うん分かった。どこに行くの?」

 真っ直ぐ帰ってしまわず沢西君とまだ一緒にいられるんだ! ……と心の内でとても喜んでいた。

 沢西君は一呼吸置いてから誘ってきた。

「オレの住んでるマンション。一緒に来て」
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