やり直しの人生では我が子を抱きしめたい!後悔していた過去を変えていったら片想いしていた人たちと両想いになりそうな気配だけど夫の事が気がかり

猫都299

文字の大きさ
上 下
31 / 83
一章 本編

31 席替え

しおりを挟む


「雪絵ちゃん、その紙何に使うの?」

 私はどうしても気になっていた事を聞いてみた。


「うふふ。教える訳ないでしょう? あなた他人事に関心持ち過ぎなんじゃないかしら? あまり詮索されたくないわ」

「その言葉、そのままお返ししますが」

「あら。心外ね。この紙の内容は私の頭の中を整理したものなの。あなたに教えてもらった事ではないから。気にしないでね」


 ニコッと微笑まれましても。バッチリ私の名前が書かれた紙を気にするなと言われても、とても気になって困るよ。


 雪絵ちゃんは件の紙を畳み、薄緑色の封筒に入れてサッと手提げ袋へと片付けてしまった。

 私は諦めて肩を落とし自分の席へと戻った。



 ……封筒に入れてた?



 もしかして誰かへ渡すって事だろうか。すごく怪しい。


 私が目を細めて雪絵ちゃんの後ろ姿を凝視していた時、斜め後ろの席に咲月ちゃんが戻って来た。

「あっ……」

 咲月ちゃんに昨日の事を聞こうとしたけど言い出せなかった。
 さっきの雪絵ちゃんの言葉が胸に浮かんだからだ。



『あなた他人事に関心持ち過ぎなんじゃないかしら? あまり詮索されたくないわ』



 咲月ちゃんも聞いてほしくないのかもしれない。さっきも話題を躱された気がするし。自分でも知らないうちに咲月ちゃんが嫌がる事をしていたのかな、私。

 そう思うと、注意してくれた雪絵ちゃんに感謝したい気持ちになった。

 誰にでも人に話せない事、あるものだと思う。きっと話せるようになったら咲月ちゃんから話してくれるだろう。



 椅子に座ったまま咲月ちゃんの方に体を向けていたけど、何も言葉にしないで前に向き直った。











 この時に咲月ちゃんの様子に気付いていれば、あんなに拗れる事はなかったのかな……?

 咲月ちゃんが小さく呟いた言葉を、私は拾う事ができなかった。






















 六月になった。私たちはくじ引きで席替えをして新たな場所に席を移動していた。

 五月にも席は替わっていた。仲良し組は皆ばらけた位置だった。それはそれでいいんだけど、やっぱりすごく仲のいい子たちと席が離れるのは少し寂しかった。


 だが。

 今月は皆、割と近い。

 私の席は教室のちょうど中央の辺り。右隣が沢野君。前が陽介君。後ろが望君。陽介君の前……私の席の列の一番前の席が咲月ちゃん。その右隣が志崎君。望君の後ろが雪絵ちゃんで、その右隣が龍君。沢野君の後ろ……望君の右隣が川北さんという配置だ。


 今回私は三班の括りだ。
 咲月ちゃん、志崎君、陽介君、沢野君、そして陽介君の隣……私の右斜め前の席の棚村(たなむら)沙由来(さゆき)ちゃんという子と同じ班だ。


 棚村さんは背が高めで細くてシュッとした印象の子だ。しっかりした性格らしく掃除の時間に少し話した事があるけど、隅の埃の一粒まできっちり取り除きたい……そんな願望を持つ背筋もシャキッとしたお姉さんタイプだ。自分に厳しく他人にも厳しいというのが周囲の評判だ。


 初めてこの席に着いた時、目が合ったので「よろしく、棚村さん」と笑いかけてみた。

「……よろしく」

 彼女は表情を変えずに小さく一言だけ返した。少しだけだけど、何か睨まれたような気がした。


 何だろう……。私、何かしたかな?

 ……いや、多分彼女は性格的にツンツンしているだけなのかもしれない。


 同じ班の子に嫌われているなんて思いたくなかったので考えをそうシフトした。

 まぁ誰からも好かれるなんて事、夢物語でもなければありえないって分かっている。でも辛い思考で生きるより、二度目の人生ではもっと明るい気分で生きたいと思っていた。


 それに棚村さんもまだ十二歳くらいじゃないかな。私なんて精神年齢アラフィフなんだから、ここは大人の余裕で見守るぐらいじゃないと。

 勝手に温かい目で彼女の後ろ姿を見つめていた。


 ちょうどその時、隣に席を移動して来た沢野君に声をかけられた。


「あの。笹木さんよろしく……」

 いつもみたいに遠慮がちな口調だ。沢野君らしいなぁと思って微笑んだ。

「よろしく、沢野君」


 沢野君は目を見開いた後、唇を噛んだような顔で着席した。そしてそのまま机に突っ伏した。


 ええええ。何で?


 私、彼を泣かせるような事……何かした?













 沢野君の後ろの席で私たちの様子を見ていた川北さんが目頭を押さえて呟いた。

「よかったね、明良君」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺と代われ!!Re青春

相間 暖人
青春
2025年、日本では国家主導で秘密裏に実験が行われる事になった。 昨今の少子化は国として存亡の危機にあると判断した政府は特別なバディ制度を実施する事により高校生の恋愛を活発にしようと計ったのだ。 今回はその一組の話をしよう。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

未冠の大器のやり直し

Jaja
青春
 中学2年の時に受けた死球のせいで、左手の繊細な感覚がなくなってしまった、主人公。  三振を奪った時のゾクゾクする様な征服感が好きで野球をやっていただけに、未練を残しつつも野球を辞めてダラダラと過ごし30代も後半になった頃に交通事故で死んでしまう。  そして死後の世界で出会ったのは…  これは将来を期待されながらも、怪我で選手生命を絶たれてしまった男のやり直し野球道。  ※この作品はカクヨム様にも更新しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

浦島子(うらしまこ)

wawabubu
青春
大阪の淀川べりで、女の人が暴漢に襲われそうになっていることを助けたことから、いい関係に。

処理中です...