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プロローグ 果ての地
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嶺二が本部に到着すると、既に帰っていたソールが本部の前で地面に手を着いている。
嶺二は彼の横に立って。
「ソール、また魔石探査してるのか? 俺の身を案じて、少しは手を抜いてくれてもいいんだぜ?」
魔石を多く持つことに越したことはないが、それは嶺二の苦労の現れでもある。ソールが魔石を見つければ、また嶺二はマリアに駆り出されることとなるのだ。
「……嶺二、分かるか」
「分かんねぇよ」
嶺二は、彼がまた訳の分からないことを言い出したと、気だるげに頭をかく。
「……西。俺の探知能力が及ぶ範囲の百キロメートルに魔石の反応がある」
「お前どんだけ見えてんだよ! 百キロメートルとかありえねぇだろ!? 最強か!? お前は最強なのか!? ああそうか最強魔術師だったなオイ!」
ソールは立ち上がると、嶺二をじっと見つめた。
「な、なんだよ」
「……百キロメートルに、魔石だ」
「わぁってるよ! たった今聞きましたっての! 俺にそれを採取しに行けってか? 既にお空では夕日と呼べるくらいに太陽が沈んでますっつの! 百キロとか絶対行かないからな俺は!」
依然と、見つめられる。
「……西には、少なくとも百キロメートルはこの世界が広がっている」
「お……そういうことか」
本部から南には約三十キロメートル地点で鏡の壁が行く手を阻んでいたが、西には少なくとも百キロメートルは進行できるということだ。
嶺二は「んで?」と短く聞き返す。
「……マリアに報告してくれ」
「あ? なんで俺が報告すんだよ。こんな無知の俺なんかよりも、お前の方がよっぽど詳しく説明できるだろ」
ソールは真剣な眼差しで嶺二を見つめた。
「……俺は、マリアが苦手だ」
予想外の返答に、嶺二は口をあんぐりあけたまま。
「…………ハ?」
その時、農作エリアの木々の中からマリアの声が聞こえてくる。レラに指示を出しているようだ。
我に返った嶺二は苦笑いで言う。
「おいおいソールさんよ。俺がマリアを苦手とするならまだしも、お前は何一つ問題なくあいつの指示をこなしてるじゃねぇか。怒られたりしないし、どこが苦手なんだ」
「……目が、怖い」
寡黙で男前のソールの口から放たれたその言葉に、嶺二は込み上げる笑いを苦笑いで濁す。
「お、おほほぉ。そうか、確かにあいつの目つきは殺人的だが、お前も中々だと思うぞ……」
ソールは嶺二の肩に手を置いた。
「……重要な報告だ。頼む」
拍子抜けしたままの嶺二は短く返す。
「お、おけ……」
確かにソールからマリアに話しかけた所は見たことが無かったと、嶺二はそんなことを思いながら農作エリアの中に入っていく。
木々が生え並ぶ農作エリアの真っ只中で、マリアとレラ、そしてターシャの三人の姿を見つけた嶺二は手を挙げた。
「おーい、マリ……――っアアアアアア!」
響く鈍痛に、嶺二は頭を抱える。傍らに転がったのは大きなアルミ製のタライ。
「誰だコラァ!? いい度胸してんじゃねぇかオイ! 出て来いや!」
空に向けて下品な叫び声を上げていると、またもや頭を鈍痛が襲った。
「だぁいでっ!? この……って、マリアっ……」
本の角を向けたマリアが相変わらずの鋭い目付きで嶺二を睨みつけている。
「お前も手伝え」
「あ?」
マリアが指さした先では、レラとターシャが大きなタライに果物を積んでいた。恐らく降ってきたタライはレラが生成したものだろう。
嶺二は傍らのタライを睨んで、それを掴み上げる。
「それはいいけどよ……お前にちょっと話がある」
「私にか? いいぞ、話してみろ」
嶺二は先ほどまでに見たもの、それについてソールが言っていたことを断片的ではあるがマリアに伝えた。
「ふむ……それは興味深いな」
マリアは顎に手をあてて思案している。彼女の推察力があれば新たな発見があるかもしれない。
「俺は特に気にしてねぇんだが、ソールが重要なことだっていうからお前に話しておくことにしたんだ」
「何? ソールが? なるほど、そうなると一層説得力があるな。どれ、彼に直接話を聞いてこよう」
「だぁ待て待て!」
嶺二は歩き出すマリアの肩を掴んで制止する。
「何だ。まだ言いたいことがあるのか? だがこの先はソールから直接聞いた方が正確だ。お前は果物の採取を……」
「い、いやそういうことじゃなくてな? もちろん果物は採ってくるが……ソールは今忙しいみたいだぜ? 邪魔になると悪いし……な?」
「ふむ、そうか。さすがソールは働き者だな。お前は彼を見習え」
嶺二のこめかみにピキっと血管が浮くが、彼はこっそり後頭部を掻きむしってその感情を濁した。
「おお……おーけーおーけー。さすがソール先輩っすねぇ。なははァ……!」
誰よりも走って飛んで、光る石ころを運んでいるのは誰だと思っているんだと嶺二は心の中で叫ぶ。
「嶺二さ~ん!」
嶺二は聞き覚えのある甲高い声に、その名前を呼んだ。
「ようターシャ」
手を振って走ってくるのはターシャ。彼女の頭にはドロビィが立っていた。
「びゅりぃ~!」
ターシャが嶺二の前で足を止めると、ドロビィは彼の肩に飛び移る。
「おっすドロビィ。ただいま」
「びゅりぃ!」
十数メートルほど走ってきたターシャは膝に手を着いて息切れしている。
嶺二は彼女の姿を見て唖然とした。
「お、お前……胸が」
「ほぇ?」
背筋を伸ばしたターシャの胸は、丸く膨らんでいる。
「だってお前……ぺったん娘のはずじゃ」
「誰がぺったん娘ですかぁ! ……んもう、これは」
ターシャが胸から取り出したのは二つの果物。艶やかな緑色の丸い形状のものだ。
嶺二は小さな手に乗せられたふくよかな果物を凝視すると、唾液を飲み下す。
「美味そうだな……食っていいのか?」
果物はその小さな背中に隠された。
そっぽを向いたターシャを不思議に思った嶺二は、マリアに視線を向けるが彼女も身体を背ける。
「はっ……!」
身体を背けた際に揺れたマリアの乳を見て、勘づいた嶺二はターシャに視線を戻した。
「ターシャ! お前って、乳デケェよな!」
「はぅ……! 嶺二さんのばか!」
「うおっ」
ターシャの逃げ様に放られた果物をキャッチした嶺二は、幸せそうな笑顔でそれをかじる。
「おお! うめえ! なぁマリア、この果物はなんて名前だ?」
「やれやれ……それはナケソルンだ。多くの栄養素を含んでいて、非常食として心強い果物だぞ」
嶺二はいつの間にか芯まで食い尽くしており、今はそれをカリカリ削り回している。
「なるほどな。体に良くて美味いなんて、確かに心強い」
向こうで、木の下にいるレラとターシャがこちらをじーっと見つめていた。
「ん?」
嶺二が視線を向けると、レラは豊満なバストを手で覆う。
何やらヒソヒソと話しているようだが嶺二には聞こえない。
「嶺二、そろそろ日が暮れる。下に落ちた実を拾って本部に帰るぞ」
「お? おう」
嶺二はマリアと共にレラ達の元へ歩み寄ると。
「何だよレラ。隠そうとしたってお前乳デケェんだから丸見えだぞ」
「せ、セクハラですわ!」
嶺二はポカーンとして。
「はぁ? 見られたくないならそんな格好してんなよ。その服だと隠れてない部分の方が多いじゃねぇか。大丈夫かお前?」
ゴツンと、本の角が嶺二の後頭部を突く。
「さっさと果物を拾え」
頭を押さえながらも、嶺二は落ちているナケソルンを拾い上げる。
「んだよお前ら……」
◇
すっかり日は落ち、静かな空にいくつもの星が輝き始めた頃、本部では。
テーブルが叩かれると同時に震える皿の音。
「何だと!」
食事中のこと、マリアがソールから聞いた言葉に目を見開いてテーブルを叩いた。
テーブルに乗りかかるマリアの眼光が、ソールの目前に迫る。
「鏡の壁……この世界の果て……実に興味深いぞソール」
「……ぬっ」
気圧されているソールを見た嶺二は、やれやれと立ち上がってマリアの肩を掴んで引かせた。
「落ち着きなさいマリアくん。俺がさっき話したことだろ?」
ギロっとその目が嶺二に向くと。
「お前はただ『すげえの見つけた』と言っていただけだろう?」
「断片的に話したんだよ断片的に」
「端折り過ぎだバカが」
マリアが座ると、果物を片手に持つターシャが疑問を投げかける。
「その……全てを写しているっていうのはどういうことでしょう?」
待ってましたと言わんばかりに、嶺二は腕を組んでどっしりと座り直した。
「やれやれ、これだからお子様はよ? いいかターシャ。ソールが言う全てを写すってのはな? つまり――」
「つまりは今お前たちが見ているもの、そしてここに来る以前に見たもの全てがこの世界に存在しているということだ」
嶺二はマリアに言葉を遮られ、拗ねたように細かく果物をかじった。
「うーん。でも、どうして鏡の壁を見ただけでソールはそれが分かったのですか?」
答えたのはレラ。胸を張ってふふんと鼻を鳴らしてから。
「それはねターシャ。私がいた世界では、鏡というのは過去を写す神器と呼ばれていますの。つまり、この世界にある鏡の壁は全ての過去を写しているということなのよ!」
嶺二はソールに向けて。
「そうなのか?」
「……恐らく、違う」
勢いよく立ち上がって、赤面するレラを指さしたのは嶺二。
「だぁーはっはっはァ! お前何カッコつけて知ったかコイてんだよ? お前の世界での言い伝えとか知らねえし聞いてねぇっつのぉん!」
「な、生意気ですわ……! じゃあ嶺二、あなたからも何か話してみては?」
嶺二は腰に手を当てて言った。
「つまりだな。この世界には過去とか未来とか、時間的なものではなく、概念そのものが全て存在しているってこった!」
レラの視線がソールに向く。
「……俺は、そう考えている」
「そんな……!」
「マジかよ……!」
むっと、不機嫌そうな表情が嶺二に向いた。
「どうしてあなたまで驚いていますの……嶺二」
「いや、テキトーに言っただけだし……そら驚くわいな」
ターシャはパチパチ拍手して笑っている。
「嶺二さんはすごいですね!」
「まあな?」
そこでマリアが、しかしと続けた。
「ソールの推測が全て正しいとは限らない。まだまだ研究の余地はあるだろう。何せこの世界の真理を掴むことが出来るかもしれんのだからな。そう簡単に判明しては面白くもない」
マリアの口角は上がっていて、何だかご機嫌な様子だ。
嶺二は頭の後ろで手を組んで。
「そうだな、ゆっくりでいいじゃねぇか。……まあ世界の真理がどうこうなったところで、俺は魔石掘りから逃れられそうにねぇからどうでもいいけどな」
活気溢れる表情のマリアは、嶺二の頭を押さえ込んで立ち上がる。
「とにかく我々が今優先するべきは、神様からの試練に耐えうる世界力を身につけることだ。しかしいつまでも本部ひとつでは世界を語るに乏しいはず。いずれは国と呼べるほどに拡大していくつもりだ」
嶺二はマリアの手を払い除けて鼻を鳴らした。
「へっ。俺たち五人だけの世界に、国なんて必要ねぇだろうに」
「人口はこれから増やす予定だ」
「増やす? ひょっとしてレラのゴーレムが国民の大半になっちまうのか?」
緘黙な土のゴーレムに囲まれる生活とはどんなものか。
マリアはきょとんとした顔で返す。
「何を言っている。お前は子作りの仕方も知らない子どもではないだろう」
「な……に」
マリアの一言で、食卓の空気が凍った。
ターシャは頬を染めてポカーンとして、レラは口を押えている。しかしソールは相変わらずのようだ。
誰も発しない中、嶺二が先手を切る。
「子作りって……お前こそ分かって言ってんのかよ」
む? とマリアの顔が向く。鋭い目付きで。
「受精をすればいいのだろう」
「がっ……」
レラがやっと口を開けた。
「は、ハレンチですわ! そんなの、私は絶対にしませんからね!?」
マリアは不思議そうにレラを見つめる。
「いや……それは困るぞ」
「なぅっ! な、なら……この男とヤれと!?」
嶺二は指をさされ、眉をしかめた。
「何だその顔。お前ちょっと失礼な」
「お黙りなさい! 冗談じゃありませんわこんな男となんて!」
男ならソールもいるのだが……とツッコミはしない嶺二は、さすがに同情したか静かに果物をかじった。
「マリア! 断固として私は反対でしてよ」
「いやしかし……」
「いやったらいやですわ!」
マリアは本を開いて、レラに見せた。
「私が描いた設計図通りに作ってもらえば、受精が可能となる装置を作れるのだが……そうか、嫌なのか……」
「へ? 装置?」
さて。と静かに立ち上がった満面の笑みを浮かべる嶺二は、レラを指さす。
「ギャーハッハッハ! お前何考えてたんだよこのハレンチ女がァ!?」
「なっ……嶺二! あなただって!」
「お前と一緒にすんじゃねぇよこの露出狂女!」
「誰が露出狂女ですってぇ!? こちらへ来なさい嶺二!」
嶺二は椅子に座って、唖然とした顔で口を押えた。
「な、何をしていますの?」
「さっきのお前の顔真似」
「ぐぬっ!」
レラの怒りが爆発する寸前かというところで、マリアが入る。
「それでレラ。どうなんだ? この装置を作ってくれるのか?」
「あ……はい。もちろんですわ」
「助かる。……そして、最初の段階ではここにいる種族の中で一番成熟が早いものを子孫として繁栄させることにする」
大して変わるものでもないと思うが、少しでも早い方が皆にとっては楽だろう。
「恐らく、魔族が最も早いと思われる。そして都合のいいことに、ここには既に男女の魔族が揃っているときた」
ソールとターシャのことだ。ターシャは真っ白な顔で笑っている。
「あはは……私ですか」
「心配するな。少しだけ体液をいただくだけだ。ソールもいいな?」
「………………分かった」
遅いソールの返答から、後ろめたさが読んで取れる。
嶺二は嬉しそうにターシャとソールを忙しく交互に見やって。
「おお! ターシャとソールの子どもか! すげえ強いのが生まれてきそうだな!」
ソールはいつも通りか、ターシャも喋らない。口を開いたのはマリア。
「魔族の場合、受精してから成熟するまでの期間は三日間。それまでの間はゴーレムに労働をまかせるとしよう」
「おい三日間って言ったか?」
「ああ。人間は約二十年かかるらしいが、不便なものだな。私のようなケミル族でも数ヶ月で成熟するというのに」
「はいはい出た出た。何でもアリなんだからよお前らは」
とはいえ、三日間でソールやターシャのように成長する光景とはいかがなものか。
嶺二があることに気づいた。
「ちょっと待て……ってことはターシャ、お前」
「ほぇ?」
震えた指で、ターシャをさした。
「それ以上……成長しないってのか」
ターシャは笑って拳をかかげる。
「殴ってもいいですか?」
マリアの補足からするに、初期段階では三十人の魔族を生む計画なのだとか。三日という短期間で戦力になる魔族は、この状況においては助けとなることだろう。
話し合いは終わり、食事と風呂も済ませた一行は各々、自室へとおさまる。
「おやすみドロビィ」
「びゅ~……」
やっと迎えた初日の夜、皆はそれぞれの部屋でぐっすりと眠った。
嶺二は彼の横に立って。
「ソール、また魔石探査してるのか? 俺の身を案じて、少しは手を抜いてくれてもいいんだぜ?」
魔石を多く持つことに越したことはないが、それは嶺二の苦労の現れでもある。ソールが魔石を見つければ、また嶺二はマリアに駆り出されることとなるのだ。
「……嶺二、分かるか」
「分かんねぇよ」
嶺二は、彼がまた訳の分からないことを言い出したと、気だるげに頭をかく。
「……西。俺の探知能力が及ぶ範囲の百キロメートルに魔石の反応がある」
「お前どんだけ見えてんだよ! 百キロメートルとかありえねぇだろ!? 最強か!? お前は最強なのか!? ああそうか最強魔術師だったなオイ!」
ソールは立ち上がると、嶺二をじっと見つめた。
「な、なんだよ」
「……百キロメートルに、魔石だ」
「わぁってるよ! たった今聞きましたっての! 俺にそれを採取しに行けってか? 既にお空では夕日と呼べるくらいに太陽が沈んでますっつの! 百キロとか絶対行かないからな俺は!」
依然と、見つめられる。
「……西には、少なくとも百キロメートルはこの世界が広がっている」
「お……そういうことか」
本部から南には約三十キロメートル地点で鏡の壁が行く手を阻んでいたが、西には少なくとも百キロメートルは進行できるということだ。
嶺二は「んで?」と短く聞き返す。
「……マリアに報告してくれ」
「あ? なんで俺が報告すんだよ。こんな無知の俺なんかよりも、お前の方がよっぽど詳しく説明できるだろ」
ソールは真剣な眼差しで嶺二を見つめた。
「……俺は、マリアが苦手だ」
予想外の返答に、嶺二は口をあんぐりあけたまま。
「…………ハ?」
その時、農作エリアの木々の中からマリアの声が聞こえてくる。レラに指示を出しているようだ。
我に返った嶺二は苦笑いで言う。
「おいおいソールさんよ。俺がマリアを苦手とするならまだしも、お前は何一つ問題なくあいつの指示をこなしてるじゃねぇか。怒られたりしないし、どこが苦手なんだ」
「……目が、怖い」
寡黙で男前のソールの口から放たれたその言葉に、嶺二は込み上げる笑いを苦笑いで濁す。
「お、おほほぉ。そうか、確かにあいつの目つきは殺人的だが、お前も中々だと思うぞ……」
ソールは嶺二の肩に手を置いた。
「……重要な報告だ。頼む」
拍子抜けしたままの嶺二は短く返す。
「お、おけ……」
確かにソールからマリアに話しかけた所は見たことが無かったと、嶺二はそんなことを思いながら農作エリアの中に入っていく。
木々が生え並ぶ農作エリアの真っ只中で、マリアとレラ、そしてターシャの三人の姿を見つけた嶺二は手を挙げた。
「おーい、マリ……――っアアアアアア!」
響く鈍痛に、嶺二は頭を抱える。傍らに転がったのは大きなアルミ製のタライ。
「誰だコラァ!? いい度胸してんじゃねぇかオイ! 出て来いや!」
空に向けて下品な叫び声を上げていると、またもや頭を鈍痛が襲った。
「だぁいでっ!? この……って、マリアっ……」
本の角を向けたマリアが相変わらずの鋭い目付きで嶺二を睨みつけている。
「お前も手伝え」
「あ?」
マリアが指さした先では、レラとターシャが大きなタライに果物を積んでいた。恐らく降ってきたタライはレラが生成したものだろう。
嶺二は傍らのタライを睨んで、それを掴み上げる。
「それはいいけどよ……お前にちょっと話がある」
「私にか? いいぞ、話してみろ」
嶺二は先ほどまでに見たもの、それについてソールが言っていたことを断片的ではあるがマリアに伝えた。
「ふむ……それは興味深いな」
マリアは顎に手をあてて思案している。彼女の推察力があれば新たな発見があるかもしれない。
「俺は特に気にしてねぇんだが、ソールが重要なことだっていうからお前に話しておくことにしたんだ」
「何? ソールが? なるほど、そうなると一層説得力があるな。どれ、彼に直接話を聞いてこよう」
「だぁ待て待て!」
嶺二は歩き出すマリアの肩を掴んで制止する。
「何だ。まだ言いたいことがあるのか? だがこの先はソールから直接聞いた方が正確だ。お前は果物の採取を……」
「い、いやそういうことじゃなくてな? もちろん果物は採ってくるが……ソールは今忙しいみたいだぜ? 邪魔になると悪いし……な?」
「ふむ、そうか。さすがソールは働き者だな。お前は彼を見習え」
嶺二のこめかみにピキっと血管が浮くが、彼はこっそり後頭部を掻きむしってその感情を濁した。
「おお……おーけーおーけー。さすがソール先輩っすねぇ。なははァ……!」
誰よりも走って飛んで、光る石ころを運んでいるのは誰だと思っているんだと嶺二は心の中で叫ぶ。
「嶺二さ~ん!」
嶺二は聞き覚えのある甲高い声に、その名前を呼んだ。
「ようターシャ」
手を振って走ってくるのはターシャ。彼女の頭にはドロビィが立っていた。
「びゅりぃ~!」
ターシャが嶺二の前で足を止めると、ドロビィは彼の肩に飛び移る。
「おっすドロビィ。ただいま」
「びゅりぃ!」
十数メートルほど走ってきたターシャは膝に手を着いて息切れしている。
嶺二は彼女の姿を見て唖然とした。
「お、お前……胸が」
「ほぇ?」
背筋を伸ばしたターシャの胸は、丸く膨らんでいる。
「だってお前……ぺったん娘のはずじゃ」
「誰がぺったん娘ですかぁ! ……んもう、これは」
ターシャが胸から取り出したのは二つの果物。艶やかな緑色の丸い形状のものだ。
嶺二は小さな手に乗せられたふくよかな果物を凝視すると、唾液を飲み下す。
「美味そうだな……食っていいのか?」
果物はその小さな背中に隠された。
そっぽを向いたターシャを不思議に思った嶺二は、マリアに視線を向けるが彼女も身体を背ける。
「はっ……!」
身体を背けた際に揺れたマリアの乳を見て、勘づいた嶺二はターシャに視線を戻した。
「ターシャ! お前って、乳デケェよな!」
「はぅ……! 嶺二さんのばか!」
「うおっ」
ターシャの逃げ様に放られた果物をキャッチした嶺二は、幸せそうな笑顔でそれをかじる。
「おお! うめえ! なぁマリア、この果物はなんて名前だ?」
「やれやれ……それはナケソルンだ。多くの栄養素を含んでいて、非常食として心強い果物だぞ」
嶺二はいつの間にか芯まで食い尽くしており、今はそれをカリカリ削り回している。
「なるほどな。体に良くて美味いなんて、確かに心強い」
向こうで、木の下にいるレラとターシャがこちらをじーっと見つめていた。
「ん?」
嶺二が視線を向けると、レラは豊満なバストを手で覆う。
何やらヒソヒソと話しているようだが嶺二には聞こえない。
「嶺二、そろそろ日が暮れる。下に落ちた実を拾って本部に帰るぞ」
「お? おう」
嶺二はマリアと共にレラ達の元へ歩み寄ると。
「何だよレラ。隠そうとしたってお前乳デケェんだから丸見えだぞ」
「せ、セクハラですわ!」
嶺二はポカーンとして。
「はぁ? 見られたくないならそんな格好してんなよ。その服だと隠れてない部分の方が多いじゃねぇか。大丈夫かお前?」
ゴツンと、本の角が嶺二の後頭部を突く。
「さっさと果物を拾え」
頭を押さえながらも、嶺二は落ちているナケソルンを拾い上げる。
「んだよお前ら……」
◇
すっかり日は落ち、静かな空にいくつもの星が輝き始めた頃、本部では。
テーブルが叩かれると同時に震える皿の音。
「何だと!」
食事中のこと、マリアがソールから聞いた言葉に目を見開いてテーブルを叩いた。
テーブルに乗りかかるマリアの眼光が、ソールの目前に迫る。
「鏡の壁……この世界の果て……実に興味深いぞソール」
「……ぬっ」
気圧されているソールを見た嶺二は、やれやれと立ち上がってマリアの肩を掴んで引かせた。
「落ち着きなさいマリアくん。俺がさっき話したことだろ?」
ギロっとその目が嶺二に向くと。
「お前はただ『すげえの見つけた』と言っていただけだろう?」
「断片的に話したんだよ断片的に」
「端折り過ぎだバカが」
マリアが座ると、果物を片手に持つターシャが疑問を投げかける。
「その……全てを写しているっていうのはどういうことでしょう?」
待ってましたと言わんばかりに、嶺二は腕を組んでどっしりと座り直した。
「やれやれ、これだからお子様はよ? いいかターシャ。ソールが言う全てを写すってのはな? つまり――」
「つまりは今お前たちが見ているもの、そしてここに来る以前に見たもの全てがこの世界に存在しているということだ」
嶺二はマリアに言葉を遮られ、拗ねたように細かく果物をかじった。
「うーん。でも、どうして鏡の壁を見ただけでソールはそれが分かったのですか?」
答えたのはレラ。胸を張ってふふんと鼻を鳴らしてから。
「それはねターシャ。私がいた世界では、鏡というのは過去を写す神器と呼ばれていますの。つまり、この世界にある鏡の壁は全ての過去を写しているということなのよ!」
嶺二はソールに向けて。
「そうなのか?」
「……恐らく、違う」
勢いよく立ち上がって、赤面するレラを指さしたのは嶺二。
「だぁーはっはっはァ! お前何カッコつけて知ったかコイてんだよ? お前の世界での言い伝えとか知らねえし聞いてねぇっつのぉん!」
「な、生意気ですわ……! じゃあ嶺二、あなたからも何か話してみては?」
嶺二は腰に手を当てて言った。
「つまりだな。この世界には過去とか未来とか、時間的なものではなく、概念そのものが全て存在しているってこった!」
レラの視線がソールに向く。
「……俺は、そう考えている」
「そんな……!」
「マジかよ……!」
むっと、不機嫌そうな表情が嶺二に向いた。
「どうしてあなたまで驚いていますの……嶺二」
「いや、テキトーに言っただけだし……そら驚くわいな」
ターシャはパチパチ拍手して笑っている。
「嶺二さんはすごいですね!」
「まあな?」
そこでマリアが、しかしと続けた。
「ソールの推測が全て正しいとは限らない。まだまだ研究の余地はあるだろう。何せこの世界の真理を掴むことが出来るかもしれんのだからな。そう簡単に判明しては面白くもない」
マリアの口角は上がっていて、何だかご機嫌な様子だ。
嶺二は頭の後ろで手を組んで。
「そうだな、ゆっくりでいいじゃねぇか。……まあ世界の真理がどうこうなったところで、俺は魔石掘りから逃れられそうにねぇからどうでもいいけどな」
活気溢れる表情のマリアは、嶺二の頭を押さえ込んで立ち上がる。
「とにかく我々が今優先するべきは、神様からの試練に耐えうる世界力を身につけることだ。しかしいつまでも本部ひとつでは世界を語るに乏しいはず。いずれは国と呼べるほどに拡大していくつもりだ」
嶺二はマリアの手を払い除けて鼻を鳴らした。
「へっ。俺たち五人だけの世界に、国なんて必要ねぇだろうに」
「人口はこれから増やす予定だ」
「増やす? ひょっとしてレラのゴーレムが国民の大半になっちまうのか?」
緘黙な土のゴーレムに囲まれる生活とはどんなものか。
マリアはきょとんとした顔で返す。
「何を言っている。お前は子作りの仕方も知らない子どもではないだろう」
「な……に」
マリアの一言で、食卓の空気が凍った。
ターシャは頬を染めてポカーンとして、レラは口を押えている。しかしソールは相変わらずのようだ。
誰も発しない中、嶺二が先手を切る。
「子作りって……お前こそ分かって言ってんのかよ」
む? とマリアの顔が向く。鋭い目付きで。
「受精をすればいいのだろう」
「がっ……」
レラがやっと口を開けた。
「は、ハレンチですわ! そんなの、私は絶対にしませんからね!?」
マリアは不思議そうにレラを見つめる。
「いや……それは困るぞ」
「なぅっ! な、なら……この男とヤれと!?」
嶺二は指をさされ、眉をしかめた。
「何だその顔。お前ちょっと失礼な」
「お黙りなさい! 冗談じゃありませんわこんな男となんて!」
男ならソールもいるのだが……とツッコミはしない嶺二は、さすがに同情したか静かに果物をかじった。
「マリア! 断固として私は反対でしてよ」
「いやしかし……」
「いやったらいやですわ!」
マリアは本を開いて、レラに見せた。
「私が描いた設計図通りに作ってもらえば、受精が可能となる装置を作れるのだが……そうか、嫌なのか……」
「へ? 装置?」
さて。と静かに立ち上がった満面の笑みを浮かべる嶺二は、レラを指さす。
「ギャーハッハッハ! お前何考えてたんだよこのハレンチ女がァ!?」
「なっ……嶺二! あなただって!」
「お前と一緒にすんじゃねぇよこの露出狂女!」
「誰が露出狂女ですってぇ!? こちらへ来なさい嶺二!」
嶺二は椅子に座って、唖然とした顔で口を押えた。
「な、何をしていますの?」
「さっきのお前の顔真似」
「ぐぬっ!」
レラの怒りが爆発する寸前かというところで、マリアが入る。
「それでレラ。どうなんだ? この装置を作ってくれるのか?」
「あ……はい。もちろんですわ」
「助かる。……そして、最初の段階ではここにいる種族の中で一番成熟が早いものを子孫として繁栄させることにする」
大して変わるものでもないと思うが、少しでも早い方が皆にとっては楽だろう。
「恐らく、魔族が最も早いと思われる。そして都合のいいことに、ここには既に男女の魔族が揃っているときた」
ソールとターシャのことだ。ターシャは真っ白な顔で笑っている。
「あはは……私ですか」
「心配するな。少しだけ体液をいただくだけだ。ソールもいいな?」
「………………分かった」
遅いソールの返答から、後ろめたさが読んで取れる。
嶺二は嬉しそうにターシャとソールを忙しく交互に見やって。
「おお! ターシャとソールの子どもか! すげえ強いのが生まれてきそうだな!」
ソールはいつも通りか、ターシャも喋らない。口を開いたのはマリア。
「魔族の場合、受精してから成熟するまでの期間は三日間。それまでの間はゴーレムに労働をまかせるとしよう」
「おい三日間って言ったか?」
「ああ。人間は約二十年かかるらしいが、不便なものだな。私のようなケミル族でも数ヶ月で成熟するというのに」
「はいはい出た出た。何でもアリなんだからよお前らは」
とはいえ、三日間でソールやターシャのように成長する光景とはいかがなものか。
嶺二があることに気づいた。
「ちょっと待て……ってことはターシャ、お前」
「ほぇ?」
震えた指で、ターシャをさした。
「それ以上……成長しないってのか」
ターシャは笑って拳をかかげる。
「殴ってもいいですか?」
マリアの補足からするに、初期段階では三十人の魔族を生む計画なのだとか。三日という短期間で戦力になる魔族は、この状況においては助けとなることだろう。
話し合いは終わり、食事と風呂も済ませた一行は各々、自室へとおさまる。
「おやすみドロビィ」
「びゅ~……」
やっと迎えた初日の夜、皆はそれぞれの部屋でぐっすりと眠った。
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