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65 伝説の秘宝、遂に現る

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魔王の間の床はどこまでも下がっていく…

「このまま地獄行きとかじゃないわよね?」

私の体感で二、三十メートルも地下に降りた頃、突然、前方の壁が途切れてその先の様子が見えた。

そこは広い空間で、中心に二本の塔が立っていた。

ズズン…と音を立てて床の降下が止まった。

「目的地に着いたみたいね」

「地獄ではないようだな」

レイモンドが茶々を入れた。

「うっさいわね…」


地下空間に歩を進めると、二本の塔の正体が分かった。

「な、何なのこれ!?」

私はそれを見上げて驚きの声を上げた。それは、高さ二十メートルほどの巨大な人物像だった。

「伝説の巨神『エクシード』です」

何者かが答える。声の主を探すと、どこから現れたのか、摂政のコルムが立っていた。

「皆さん、ダンジョン完全制覇おめでとうございます。設備にトラブルがあり、慌てて伺ったのですが…ご無事のようで何よりです」

「あんまりご無事ではないけど、おかげで全身ずぶ濡れよ」

「それは申し訳ありませんでした…」

「ヌーシャテルで伝説の巨神が発掘されたという噂は本当だったんですね!」

モーザーはキラキラした目で巨神エクシードを見ていた。

「ディスティニーランドの建設中、地下水脈で巨神エクシードが発見された時、まさに運命だと思いました」

コルムは遠い目をした。

「これが伝説の秘宝なの?」

「その昔、魔王が大型魔人の軍団で大陸をじゅうりんした時、勇者と一体化して魔人を一掃したのが巨神エクシードです。
人類にとっては、まさに伝説の秘宝といえます」

「だったら、秘密にしてないで『伝説の巨神あります』って大々的に宣伝すればいいじゃない?」

「伝説の巨神は二の矢なのですよ、魔獣だけでは集客できなくなった時に備えての…伝説の巨神があるかもしれないという噂と、ダンジョン攻略者のみへの限定公開は、その時の為のティザーキャンペーンなのです」

「そんなあやふやな噂で、話題作りになるもんなの?」

「パテックさん、分かってないなあ。秘密になってるからこその『男のロマン』じゃないですか」

モーザーが訳知り顔で言った。

「男のロマンなんて私にはどーでもいいけど、ダンジョンをクリアしたら貰える賞品ってこれなの?」

私は顎で巨神エクシードを指した。

「まさか、お客様にさしあげるのは巨神エクシードの限定フィギュアになります」

「そんなの思ってたのと違う!私は宝飾品のたぐいだとばかり…」

「巨神のフィギュア!最高です、家宝にします」

モーザーが歓喜のガッツポーズをした。

「モーザー、あんた商品を換金するんじゃなかったの?」

「いやー、金銭をチラつかせれば、パテックさんが話に乗って来るんじゃないかと思って…」

「あんた、私を何だと思ってんのよ!」

とは言ったものの、金に目がくらんでいたのは事実だが…

「ちなみに、換金ってできます?」
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