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60 メンバー再集結、特級悪魔の策略

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「いつまで抱き合ってるつもり?」

私はフィリップとレイモンドを冷やかすように言った。

「も、申し訳ありませんフィリップ様!」

レイモンドはあたふたとフィリップから身を離すと、恥ずかしそうに背を向けた。

「ねえレイモンド、お願いがあるんだけど…」

フィリップはモジモジと指をもてあそんでいる。

「何でしょう、フィリップ様」

「僕の事、フィリップって呼び捨てにしてよ」

「そんな、滅相もない!」

何だか聞いてるこっちが恥ずかしくなってきた。

「もう、とっとと先に進むわよ!」

私はガイドブックを取り出した。

「…勇気を示せば、先に進む道が見つかる。って書いてあるけど…」

神殿を見回しても、入って来た扉以外に出入口は無い。

「ウザッ、また謎解きしろっての…」

「パティ、こっちこっち!」

フィリップは神殿の奥で青白い炎を上げる聖火台の前に駆けていくと、私を手招きした。

「聖火台がどうしたのよ?」

「見てて!」

そう言うとフィリップは聖火に飛び込んだ。

「フィリップ様!」
「何考えてるのよ!」

レイモンドと私は同時に叫んだ。
が、フィリップは燃える事もなく聖火台の中へと消えた。

「大丈夫だから、おいでよー」

レイモンドは恐る恐る炎に手をかざした。

「熱くない…どういう事だ?」

「ハハーン、立体映像ね、ここまでリアルなのは初めて見たけど。そうと分れば…行けえ!」

私はレイモンドの背中を押した。

「うわ…」

レイモンドが頭から聖火台の中に転げ落ちたのを確認してから、私もその後を追って飛び込んだ。

聖火台の底はチューブ状の通路になっており、飛び込んだ私たちは神殿の外のどこかに転がり出た。

「危ないだろう!」

レイモンドが文句を言う。

「パテックさーん…やっと見つけた!」

通路の向こうから黒い甲冑を着たモーザーが走り寄って来た。

「モーザー?…どうやってディスティニーランドに入ったの?」

「ひどいなあ…パテックさんが送って来たメッセージに従ってここまで来たのに」

「私、メッセージなんて送ってないわよ。大体にしてここは圏外だしね」

「だって、現にこうしてメッセージが…」

モーザーは魔法石板をいじって、それから表情が曇った。

「あれ…メッセージが消えてる…」

「やはりそういう事でしたか」

遅れてやって来たエベルがつぶやいた。

「なんの事よ?」

「モーザーは悪魔の指示で行動させられていたのです」

エベルの背後に現れたエポスが答えた。

「ま、まじですか…」

モーザーは唖然とした。

「目的は何なの?」

「事故に見せかけて魔獣を暴れさせ、そのどさくさでお前たちの命を奪おうとしたのでしょう。
そして、特級天使の私の妨害が入らないように、別行動になるような発言をフィリップがするように誘導した…そうではないですか、ゾディアック?」

「ヘッヘッヘ、とんだ濡れ衣だ。俺には二十歳までフィリップの命を守らなきゃならない契約があるんだぜ」

「確かに今回の件、お前は直接手を下さないサポート役で、黒幕はおそらく特級悪魔でしょう。でなければ特級天使の私が出し抜かれるはずがありません」

エポスの執拗な特級アピールは少々鼻に付くが、何となく特級悪魔の存在には私も感づいていた。

「特級悪魔が関係してるとして、そいつはどこにいるのよ?」

「悪魔がこの世界に干渉するには、必ず人間の契約者が必要です。故に、ディスティニーランドのどこかに特級悪魔の契約者がいるはずです」

「OK!じゃあ、そいつを捕まえりゃあいいじゃない」

「どうやって捕まえる気だ?」

レイモンドが訊いてきた。未だにはだけた胸を手で隠している、人目を考えたらこれも何とかしたい所だ。

「モーザー、魔法石板でレイモンドの服を直して!」

「え、まあ、できなくはないですけど…」

モーザーは残念そうに(まったく男ってやつは…)返事をすると、慣れた手つきで魔法石板を操作し、レイモンドの服を再生した。

「ついでにサイズも直しときました」

相変わらず細かいところに気の回るやつではある。

「敵のねらいが私たちの命なら、また何か仕掛けてくるはずよ。とにかくこのゲーム、最後までクリアしてやりましょ!」
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