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58 第三の試練、パテックたちの戦い
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第三の試練の神殿、私とレイモンドは飛び交うコウモリの輪の中に閉じ込められていた。
その鋭い翼に触れればただでは済まない。
私は案内人の杖、レイモンドは魔法のステッキででコウモリをぶっ叩くが、武器ではないので威力は弱く、敵の数は中々減らない。
「もう、これじゃキリがないじゃない!」
私は舌打ちした。
「この中にコウモリを操っている吸血鬼の化身が紛れているはずだ。それさえ倒せば残りはザコなんだが」
レイモンドは破けた上着を左手で押さえながら、右手一本で応戦していた。
「もう、フィリップは何してんのよ!」
祭壇の方をみると、聖剣の前でフィリップがボンヤリしていた。相変わらず使えないヤツだ。
「そうだ!レイモンド、魔法石板があるじゃない!」
「どうするんだ、ここは圏外だぞ?」
「魔法石板の機能は通信だけじゃないでしょ?攻撃魔法に使うのよ」
「お嬢ちゃん、使い方が分かるのか?」
「任せてよ、モーザーが使うとこ何度も見てるから(何となく)分かる(気がする)わ!」
「そうか、お嬢ちゃんの能力を見くびっていたようだ、すまなかった」
「分りゃあいいのよ」
私は魔法石板を受け取った、が、考えてみれば白魔導士のモーザーは攻撃魔法を使わない。ここは持てる推理力を総動員するしかなかった。
「コール!…攻撃魔法…雷系のなんか…周りの敵全部…実行!」
私が宣言すると、無情にも魔法石板には『そのような魔法は登録されていません』と表示された。
「げ…」
勢いだけで使えるほど魔法石板は甘くなかったようだ。
「大丈夫か?」
レイモンドが不安げに私を見る。
「ド、ド忘れよ!急かさないで…」
私は記憶の中からモーザーが使っている姿を探り出した。
「これならどう…コール!補助魔法、装備強化、破壊力マックス、実行!」
手に持った杖が光り、死神が持つような鎌に変わった。
「やった、成功!」
杖の破壊力マックスがなぜ鎌なのかはともかく、これで真っ当な武器が手に入った。
「よーし、たたき切ってやるわ!レイモンド、どれが吸血鬼の化身か分かる?」
「吸血鬼の化身は目が赤く光っているはずだ」
レイモンドはコウモリの群れを凝視する。
「だめだ、動きが速くて分らん。それより魔法石板で俺の装備も強化してくれ」
確かにレイモンドの装備を強化して戦力アップという選択肢もあるが、吸血鬼ひとり倒せば済む話なら貴重な魔力はその発見に使いたい。
「コール!補助魔法、吸血鬼の化身を探せ、実行!」
魔法石板には『そのような魔法は登録されていません』と表示された。幸運な偶然は続かないようだ。
そうしている間にもコウモリ達が作る輪は狭まっていき、いずれ私たちは刃物のようなコウモリの羽根でミンチだ。
(吸血鬼って美女の血を吸いにくるのよね…)
私は改めてレイモンドの顔を見た。エキゾチックな顔立ちは美女と言えなくもない。
「レイモンド、パス!」
私は魔法石板を放り投げた。
「ばか者!王様からの大事な預かり物だぞ!」
レイモンドはあわてて持っていたステッキを投げ出し、魔法石板を両手でキャッチした。結果、手で隠していた彼女の巨乳が丸出しになる。
すると、コウモリ達の動きが遅くなり、その中の一羽が人型に姿を変えた。これこそが私のねらいだった。
『女だあ…血をよこせえ…』
吸血鬼は地の底から響くような声を上げ、真っ赤な目を妖しく光らせながらレイモンドに襲い掛かった。
「正体を現したわね、エロ吸血鬼!」
私は鎌を振り上げた。私だって可憐な乙女なのに吸血鬼に無視された件は、掘り下げると自分が傷つきそうだったので忘れる事にした。
その鋭い翼に触れればただでは済まない。
私は案内人の杖、レイモンドは魔法のステッキででコウモリをぶっ叩くが、武器ではないので威力は弱く、敵の数は中々減らない。
「もう、これじゃキリがないじゃない!」
私は舌打ちした。
「この中にコウモリを操っている吸血鬼の化身が紛れているはずだ。それさえ倒せば残りはザコなんだが」
レイモンドは破けた上着を左手で押さえながら、右手一本で応戦していた。
「もう、フィリップは何してんのよ!」
祭壇の方をみると、聖剣の前でフィリップがボンヤリしていた。相変わらず使えないヤツだ。
「そうだ!レイモンド、魔法石板があるじゃない!」
「どうするんだ、ここは圏外だぞ?」
「魔法石板の機能は通信だけじゃないでしょ?攻撃魔法に使うのよ」
「お嬢ちゃん、使い方が分かるのか?」
「任せてよ、モーザーが使うとこ何度も見てるから(何となく)分かる(気がする)わ!」
「そうか、お嬢ちゃんの能力を見くびっていたようだ、すまなかった」
「分りゃあいいのよ」
私は魔法石板を受け取った、が、考えてみれば白魔導士のモーザーは攻撃魔法を使わない。ここは持てる推理力を総動員するしかなかった。
「コール!…攻撃魔法…雷系のなんか…周りの敵全部…実行!」
私が宣言すると、無情にも魔法石板には『そのような魔法は登録されていません』と表示された。
「げ…」
勢いだけで使えるほど魔法石板は甘くなかったようだ。
「大丈夫か?」
レイモンドが不安げに私を見る。
「ド、ド忘れよ!急かさないで…」
私は記憶の中からモーザーが使っている姿を探り出した。
「これならどう…コール!補助魔法、装備強化、破壊力マックス、実行!」
手に持った杖が光り、死神が持つような鎌に変わった。
「やった、成功!」
杖の破壊力マックスがなぜ鎌なのかはともかく、これで真っ当な武器が手に入った。
「よーし、たたき切ってやるわ!レイモンド、どれが吸血鬼の化身か分かる?」
「吸血鬼の化身は目が赤く光っているはずだ」
レイモンドはコウモリの群れを凝視する。
「だめだ、動きが速くて分らん。それより魔法石板で俺の装備も強化してくれ」
確かにレイモンドの装備を強化して戦力アップという選択肢もあるが、吸血鬼ひとり倒せば済む話なら貴重な魔力はその発見に使いたい。
「コール!補助魔法、吸血鬼の化身を探せ、実行!」
魔法石板には『そのような魔法は登録されていません』と表示された。幸運な偶然は続かないようだ。
そうしている間にもコウモリ達が作る輪は狭まっていき、いずれ私たちは刃物のようなコウモリの羽根でミンチだ。
(吸血鬼って美女の血を吸いにくるのよね…)
私は改めてレイモンドの顔を見た。エキゾチックな顔立ちは美女と言えなくもない。
「レイモンド、パス!」
私は魔法石板を放り投げた。
「ばか者!王様からの大事な預かり物だぞ!」
レイモンドはあわてて持っていたステッキを投げ出し、魔法石板を両手でキャッチした。結果、手で隠していた彼女の巨乳が丸出しになる。
すると、コウモリ達の動きが遅くなり、その中の一羽が人型に姿を変えた。これこそが私のねらいだった。
『女だあ…血をよこせえ…』
吸血鬼は地の底から響くような声を上げ、真っ赤な目を妖しく光らせながらレイモンドに襲い掛かった。
「正体を現したわね、エロ吸血鬼!」
私は鎌を振り上げた。私だって可憐な乙女なのに吸血鬼に無視された件は、掘り下げると自分が傷つきそうだったので忘れる事にした。
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