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55 潜入したモーザーは秘密を知る

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モーザーはディスティニーランドのバックヤードにいた。

「合流地点はDの5区画か…」

手にした魔法石板に表示された地図に従って進んでいると、赤くX印が描かれた扉に突きあたった。

「この先がDの5だけど、見るからに開けたらヤバそうな扉だよね…」

「そこで何をしている!」

「え、えーと…道に迷ってる…とか?」

突然、声をかけられたモーザーが恐る恐る振り返ると、職員と思われるガタイのいい男が立っていた。

「何を言ってるんだ。お前、新人の飼育員か?」

「そ、そうなんです!」

「よし、仕事を教えてやる、ついて来い」

男は腰に付けた鍵束の中の一つで鍵を開けると、扉を開いた。


その部屋はとても広く、大小様々な動物の檻が並んでいた。

檻の一つを覗きこんだモーザーは、あり得ないものと目が合って驚愕した。

「魔獣!…本物?」

「何を今更…」

「き、危険じゃないですか?」

「魔獣にしか聞こえない催眠音波で操ってるからな、大人しいもんさ」

(どうりでリアルなはずだよね、カラクリ人形じゃなく、本物を使ってるんだから…)

「これって違法じゃないんですかね?」

「そりゃあ魔獣持ち込み禁止っていう大陸条約には違反してるさ。だがそれは、底辺の俺らが気にする事じゃない」

「そうなんですね…」

以前、違法とされる時間逆行の魔法を使った事のあるモーザーには、それ以上言う事はなかった。
それよりも、今はパテック達と早く合流しなければならない。

「ところで、ここからダンジョンに抜けるにはどうしたらいいんですかね?」

モーザーが振り返ると、男の姿はなく、入口は閉じられていた。

(え、閉じ込められた…)

あわててモーザーは出口を探すが、全ての扉には外から鍵が掛けられていた。

(困ったなあ…しょうがない、これを使うか…)

彼は魔法石板を取り出した。

「コール!結界魔法、物質透過、ミニマム、実行!」

彼の周りに見えない箱ができた。

「魔法残量が少ないから、あんまり使いたくないんだけど…」

文句を言いながら壁に近づくと、何の抵抗もなく壁をすり抜けた。


隣の部屋は真っ暗だった。

「困ったな、何も見えな…痛てっ!」

モーザーは壁にぶつかった、壁抜け魔法はすでに解除されていた。

「何だか狭そうだけど、何の部屋だろう…」

手探りで調べると、壁にはレバーの様なものがたくさん付いているのが分かった。

「そのレバー、全部下げて!」

聞きなれた声が響いた。

「パテックさん、ここに居たんですか。このレバーって何なんですか?」

「部屋の照明をつけるレバーよ」

「なるほど、さすがは最新施設、ランプに火を付けなくてもいいんですね」

モーザーは手当たり次第にレバーを下げた。

壁のランプが点灯し、部屋が明るくなる。ここは何かの制御室のようだ。

「パテックさん、やっと会え…」

振り返るがパテックの姿はなく、部屋にはモーザーしかいなかった。

次の瞬間、カーン、カーンと警鐘が鳴り出す。

「え、なんか僕、まずい事しちゃったんじゃないかな…」
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