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51 第一の試練、案内人よ謎を解け
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「ダンジョンには五つの試練が待ち受けている。
五つの試練を超えるには、五人の職種それぞれの能力が必要となる。
五つの試練を超えた時、魔王を倒す為のアイテムが揃う。
最後に現れる魔王を倒した時、伝説の秘宝を手にする事ができる。
…だって」
私はガイドブックを読み上げた。
ダンジョンの入口に立った私たちは、その扉を開けずにいた。石造りの扉には取手など一切なく、その少し手前には意味ありげに低い石碑が建っている。
「これが一つ目の試練という事か?」
レイモンドがコツコツと扉を叩く。
「えっと…第一の試練は謎解きだ、この謎は案内人にしか解く事ができない。これには二つの意味がある、だってさ」
「石碑に何か書いてありますね…『ナブリヒエオヌフリケ』…呪文でしょうか?」
エベルが私を見て言った。
「ナブリヒエオヌフリケ!」
私は叫んでみるが反応はない。
「私じゃなくて、もともと案内人役だったモーザーじゃなきゃだめなのかも。レイモンド、あんた魔法石板持ってるわよね?」
魔法石板どうしなら文書のやり取りができる。私はモーザーと連絡を取ろうとした。
「ああ、俺は持ってるが、モーザーも魔法石板を持ってるのか?」
「ちょっと裏ルートで手に入れたやつだけどね…」
私はレイモンドから魔法石板を受け取り、伝書魔鳥を呼ぼうとした。
「くそー…圏外になってる」
「よく考えましょうパテックさん、案内人という言葉に意味があるのでは?」
「案内人のナブリ…」
「パティ覚えてる?昔、よく暗号ごっこして遊んだよね」
フィリップがそう言った瞬間、私はひらめいた。
「なーんだー、私、分かっちゃった!」
「本当ですか?」
「案内人は常に前を歩いてるものでしょう?だからイならア、カならオみたいに五十音(※)の一つ前の文字に置き換えて読むのよ。
そうすると…ト、ビ、ラ、ハ、ウ、エ、ニ、ヒ、ラ、ク…『扉は上に開く』となるわ!」
「なるほど!しかしどうやって上に動かすんだ?扉に手掛かりはないぞ」
「レイモンド、扉の下を掘ってみてよ」
レイモンドは小道具のタクトでガリガリと扉の下の土を掘った。
「小さい穴があるな……だめだ、指もはいらん」
「パテックさん、その背負っている物はなんですか?」
エベルが私の背中を見て言った。
「案内人役の小道具の杖だって、邪魔くさいから背負ってたんだけど…」
答えながら扉の穴と石碑を交互に見ていた私は、ある事に気付いた。
「そうか、これよ!」
私はそれまで何の気なしに背負っていた小道具の杖を手に取ると、その先を扉の穴に差し込んだ。
「ほら、ピッタリじゃん!答えは、てこの原理だったのよ」
「てこの原理?」
レイモンドがぽかんとしている。
私は石碑の上面にくぼみを見つけ、杖をあてがってみた。それは思った通りピタリとはまった。
「石碑がてこの支点、扉の穴が作用点なんだわ」
「そんな細い杖では、石の扉の重みで折れてしまいそうだが?」
「チッチッチ、ここは遊園地よ、扉が本物の石とは限らないわ」
私はてこの力点にあたる杖の端を持って押し下げた。すると、扉はズルズルと上にせり上がっていった。
「ビーンゴ!レイモンド、杖を抜くから扉を支えといて」
レイモンドは扉の下を手で持った。
「なんだ、本当に軽いな」
そう言って扉を全開にした。そこには頭に角、背中にコウモリの羽が生えた悪魔らしき者が立っていた。
「ふははは!冒険者たちよ、我が魔宮へようこそ。我こそは魔界の王、その名も魔王である」
(えっ、いきなり…)あまりにも唐突な魔王の登場に、私は絶句した。
※ここでの五十音は異世界の言葉を意訳したものです
五つの試練を超えるには、五人の職種それぞれの能力が必要となる。
五つの試練を超えた時、魔王を倒す為のアイテムが揃う。
最後に現れる魔王を倒した時、伝説の秘宝を手にする事ができる。
…だって」
私はガイドブックを読み上げた。
ダンジョンの入口に立った私たちは、その扉を開けずにいた。石造りの扉には取手など一切なく、その少し手前には意味ありげに低い石碑が建っている。
「これが一つ目の試練という事か?」
レイモンドがコツコツと扉を叩く。
「えっと…第一の試練は謎解きだ、この謎は案内人にしか解く事ができない。これには二つの意味がある、だってさ」
「石碑に何か書いてありますね…『ナブリヒエオヌフリケ』…呪文でしょうか?」
エベルが私を見て言った。
「ナブリヒエオヌフリケ!」
私は叫んでみるが反応はない。
「私じゃなくて、もともと案内人役だったモーザーじゃなきゃだめなのかも。レイモンド、あんた魔法石板持ってるわよね?」
魔法石板どうしなら文書のやり取りができる。私はモーザーと連絡を取ろうとした。
「ああ、俺は持ってるが、モーザーも魔法石板を持ってるのか?」
「ちょっと裏ルートで手に入れたやつだけどね…」
私はレイモンドから魔法石板を受け取り、伝書魔鳥を呼ぼうとした。
「くそー…圏外になってる」
「よく考えましょうパテックさん、案内人という言葉に意味があるのでは?」
「案内人のナブリ…」
「パティ覚えてる?昔、よく暗号ごっこして遊んだよね」
フィリップがそう言った瞬間、私はひらめいた。
「なーんだー、私、分かっちゃった!」
「本当ですか?」
「案内人は常に前を歩いてるものでしょう?だからイならア、カならオみたいに五十音(※)の一つ前の文字に置き換えて読むのよ。
そうすると…ト、ビ、ラ、ハ、ウ、エ、ニ、ヒ、ラ、ク…『扉は上に開く』となるわ!」
「なるほど!しかしどうやって上に動かすんだ?扉に手掛かりはないぞ」
「レイモンド、扉の下を掘ってみてよ」
レイモンドは小道具のタクトでガリガリと扉の下の土を掘った。
「小さい穴があるな……だめだ、指もはいらん」
「パテックさん、その背負っている物はなんですか?」
エベルが私の背中を見て言った。
「案内人役の小道具の杖だって、邪魔くさいから背負ってたんだけど…」
答えながら扉の穴と石碑を交互に見ていた私は、ある事に気付いた。
「そうか、これよ!」
私はそれまで何の気なしに背負っていた小道具の杖を手に取ると、その先を扉の穴に差し込んだ。
「ほら、ピッタリじゃん!答えは、てこの原理だったのよ」
「てこの原理?」
レイモンドがぽかんとしている。
私は石碑の上面にくぼみを見つけ、杖をあてがってみた。それは思った通りピタリとはまった。
「石碑がてこの支点、扉の穴が作用点なんだわ」
「そんな細い杖では、石の扉の重みで折れてしまいそうだが?」
「チッチッチ、ここは遊園地よ、扉が本物の石とは限らないわ」
私はてこの力点にあたる杖の端を持って押し下げた。すると、扉はズルズルと上にせり上がっていった。
「ビーンゴ!レイモンド、杖を抜くから扉を支えといて」
レイモンドは扉の下を手で持った。
「なんだ、本当に軽いな」
そう言って扉を全開にした。そこには頭に角、背中にコウモリの羽が生えた悪魔らしき者が立っていた。
「ふははは!冒険者たちよ、我が魔宮へようこそ。我こそは魔界の王、その名も魔王である」
(えっ、いきなり…)あまりにも唐突な魔王の登場に、私は絶句した。
※ここでの五十音は異世界の言葉を意訳したものです
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