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49 勇者パーティーお着換え中

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私の入った更衣室に用意されていた案内人の衣装は、着替える必要もないような一般的街着だった。小道具の杖のみが案内人の象徴らしかった、よく知らないが…

「なんだつまんない、ディスティニーランドの制服でもあるかと思ったのに」

せっかくなので用意された衣装に着替えて更衣室を出ると、勇者らしいライトアーマーに身を包んだフィリップが、見るからにオモチャといった感じの剣を振り回していた。

「パティ、どお、カッコイイ?」

「はしゃぐんじゃないわよ、オモチャの剣でも人に当たったら危ないでしょ」

「はーい」

フィリップは動きを止めた。まったく、私は引率の先生か…
しかし、勇者姿のフィリップは、黙って立っているだけならメチャクチャ美少年で、私はドキッとした。

「お待たせしました」

更衣室から現れたエベルは、薄いピンクのドレス姿だった。これは本来、私が着るはずだったものだ。

「エベル、とってもかわいいよ」

フィリップが珍しくイケメンな事を言った。

「僕もそのドレスが良かったな」

(そっちかーい!)私は心の中でツッコミを入れた。

「くそ、最悪だ…」

悪態を突きながらレイモンドが更衣室から出てきた。黒いマントを羽織っている。

「レイモンド、どうかした?」

「これをどう思う?」

レイモンドはマントを広げ、フリフリレースの付いた黒いミニのワンピース姿を見せた。
ワンピースは体にピッタリと張り付き、普段は男装で判らなかった彼女のグラマラスな体形を露わにしていた。

「レイモンド、あんたガタイがデカすぎんのよ」

彼女は平均的女性より二回り以上大柄だ、平均的体形のエベル用に準備されていた衣装はあまりにも小さかった。

「それにしても、魔女の衣装と言ったら地味でダボダボしているものではないか!」

「魔女の正装がどんなか知らんけど、それは予約したモーザーの趣味なんじゃない?」

「モーザー…会ったら殺す…」

レイモンドはボソリとつぶやいた。モーザー、ご愁傷様…

「フィリップ?」

エベルが、ジッとレイモンドを見詰めているフィリップに気付いて声をかけた。

「え…何でもないよ…」

フィリップは顔を赤らめて視線をそらす、明らかにいつもとは違う反応だった。

(これは怪我の功名ってやつじゃないか!)

マザコンのフィリップがレイモンドを性的な目で見ている、これは明るい兆候と言えた。

「次はどこに行けばいいんだ、お嬢ちゃん」

レイモンドに訊かれた私はガイドブックを開いた。

「んっと…国王の城で歓迎レセプションだって。ゲームのイベントかホントの事か分からないけど」

「本当ですとも」

いつの間にか、いかにも貴族といった出で立ちの初老の紳士が立っていた。

「びっくりした、どこから現れたのよ?」

「失礼しました。園内いたる所に関係者用出入口があるもので…わたくしはヌーシャテル王国の摂政コルムと申します。城に御案内しますので、こちらにどうぞ」
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