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45 モーザーの元へ、冒険の旅の行先は

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「どうしてそんな事になっちゃったんですか?」

モーザーは呆れ顔で答えた。私が、フィリップを冒険の旅に連れ出す事になったと報告したからだ。

「その場の勢いってもんがあんのよ」

「もう…思い付きで行動するの、パテックさんの悪い癖ですよ」

「ほーお、言うようになったじゃない?モーザー」

私はモーザーを睨みつけた。

「怖い目で見ないでくださいよ…それより、文句だけ言って帰ってくる筈だったのに命を助けようだなんて、やっぱりフィリップの事が好きなんじゃないですか?」

モーザーがしたり顔で言う。

「なんでみんな私とフィリップをくっ付けようとするかな…フィリップの運命の重さを理解できるのは、同じ体験をした私だけだし、言わばフィリップは、出来の悪い双子の弟みたいなものよ」

「うーん、一人っ子の僕には分らない感覚だけど…」

「で、話を戻すけど、フィリップが手軽に冒険できる場所ってどっかにないかな?」

「手軽にって段階で、すでに冒険として破綻してる気がするんですが、思い当たる場所はあります」

「それ本当?」

「はい、去年、ヌーシャテル王国に冒険をテーマにした遊園地が開園したんですよ」

「遊園地って、それじゃただの観光旅行になっちゃうじゃない!」

「それがそうでもなくて、ダンジョンのアトラクションは途中でギブアップする客が続出するくらいリアリティがあるらしいです」

「へえ、フィリップの精神を鍛えるには丁度いいかもね」

「ただし問題があって…」

「いっつもそのパターンね、何なの?」

「人気もすごくて、既に予約が二年待ちだそうです」

「二年後じゃ、もうフィリップは死んでるわよ!…いや、金に物を言わせて順番を譲ってもらえばいいのか…」

「まさか、またあれを使うんですか?」

「もちろん『王家の紋章』よ!」

「パテックさん、あんまり権力を乱用すると嫌われますよ」

「別に嫌われるの怖くないし。人の目を気にして生きてたって日常がつまらなくなるだけ、待っててもいい事なんか起きないわよ」

「その精神力、羨ましいいです…」

「よし、これでメンバーも行き先も決まったし、いつでも出発できるわね」

「ちにみにメンバーって」

「フィリップに、私に、レイモンドに、エベルに、モーザーよ」

「あ、やっぱり僕も入ってるんですね…」

「当たり前でしょ、あんたがこれを持ってこなきゃ、私の記憶が戻る事もなかったんだから」

私は魔法石板を取り出した。

「それも問題なんですけど…二つの記憶を永遠に持ち続ける事は不可能です。改変前の記憶で行動し過ぎると、記憶の調整機能で矛盾が解消された時、思いもよらない結果を招くかもしれませんよ」

モーザーが真剣な顔になる。

「思いもよらない結果って?」

「それは…言いたくありません」

「気になるじゃない、言いなさいよ」

「言いたくありません!」

珍しくモーザーは声を荒げる。私は思わず気圧された。

「…まあ、一応、気を付けるわよ」

「そうしてください、お願いします…」
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